<第4回開戦状況>
ルシファーは万魔殿と融合し、「黙示録の竜」とも言うべき異様をとっています。本来なら七つあるその竜の首は、今は封を解かれた一つのみが動いており、陽の力を取り込んで攻撃を仕掛けてこようとしています。
ルシファーを止めるためにはその身に注がれる瘴気の力を断つか、封の解かれた竜頭の冠を破壊し改めて封を施すか、あるいは儀式により封印の鎖をさらに強化するほかありません。
万魔殿周辺では、上級デビルは失ったものの、封印されていた魔物はいまだ健在です。ムルキベルの爆破もあり、後方は安全な状態とはいえません。ルシファーを封じた後に撤退ができなくなる可能性もあります。
第4回行動入力時戦力状況
参加人数:792人
※状況
万魔殿 | 冠の竜 | 瘴気の障壁 | 封印された 魔物 | 合計 |
| ||||||||
白兵戦 | 10.1% | 8.2% | 3.7% | 8.4% | 30.5% | ||||||||
防衛・救護 | 4.4% | 4.7% | 7.8% | 5.5% | 22.6% | ||||||||
祈り・儀式 | 7% | 3.2% | 8.8% | 2.3% | 21.5% | ||||||||
魔法戦 | 2.7% | 2.7% | 1.5% | 4.2% | 11.3% | ||||||||
偵察・伝令 | 5.3% | 2.5% | 2.2% | 3.7% | 13.8% | ||||||||
合計 | 29.6% | 21.5% | 24.2% | 24.4% | 100% |
万魔殿攻略戦 結果(7月14日〜7月21日)
参加人数:1025人
救護 | 94.9% | 727人 | 救護体制一部不備 |
陣地作成 | 109.3% | 750人 | 防護陣地回復 |
万魔殿(パンデモニウム) | 309.9% | 1832人 | 魔物との戦い有利に |
<第4回戦況>
第4回では、これまでにない規模での負傷者を多数出すものの、ルシファーの封印に成功しました。
万魔殿周囲の瘴気の障壁やコキュートスの封印された魔物との戦いは、ムルキベルの自爆により後方の援護体制が破壊されたことにより苦戦。救護体制は何とか復旧したものの、体制は万全でないままの開戦となりました。
瘴気の障壁をふくむ万魔殿周辺では、動き出した「黙示録の獣」が降らせた硫黄の雨により多数の被害が出ています。救護に出ていたフロートシップも巻き込まれ、これまでの戦いのダメージの蓄積もあり大破したとの報告が寄せられています。
コキュートスにはベルフェゴールが出現し、多くの混沌の魔物が猛威を振るいましたが、万魔殿の封印が成功すると同時に撤退を開始した模様で、万魔殿周辺の戦いでは、何とか防衛に成功しています。
冠の竜及び万魔殿内部の戦いはかなりの激戦となりましたが、多数の冒険者の連携により、冠の竜より「キングスエナー」を奪還。あわせて儀式の成功により活性化した神の封印の鎖の効果により、冠を奪われ力を減じられたルシファーは、青銅の門の奥、コキュートスの氷の下へと封印されました。
現在、地獄最奥の万魔殿及びコキュートスでは、急速に封印の氷が再活性しており、万魔殿も氷の底に封印されつつあります。
境界の王が滅び次元の壁をこじ開ける力が弱まったこと、そして神の封印により混沌の力が再封印されたことにより、まもなく、地獄へと向かうことは難しくなるでしょう。
地上に侵攻した上級デビルはいまだ暗躍していますが、ルシファーが力を取り戻す(数百年はかかるでしょう)までは、今回のような地獄の総力を挙げての地上への侵攻は不可能と考えられます。
こうして、地上が未曾有の危機を脱したことで「黙示録の戦い」は終結を見ました。
結果概略
成功結果 | 状況 |
| ||||||||
万魔殿 | ○ | 封印成功 | ||||||||
冠の竜 | ○ | キングスエナー奪還 | ||||||||
瘴気の障壁 | △ | 被害大、防衛成功 | ||||||||
封印された魔物 | ○ | 被害大、防衛成功 |
■第4回報告書
●守る為の戦い
「さぁ、これで地獄での戦いなんて辛気臭いものは終わらせるぞ!」
【伊勢ノ志】所属、鋼 蒼牙(ea3167)が鬨の声を上げた。それに応え、或いは触発されて、周囲から湧き上がる声。ざわめき。
別の方を見晴かせば、そこには【翠志】の面々が居る。地上への帰路を確保すると言い、自らゲートの前に立ちはだかって盾となる事を決めた室川 太一郎(eb2304)の横で、護衛を務める勇貴 閲次(eb3592)が霊斧を構え、押し寄せてくる魔物の群に立ち向かう。
冒険者がデビルと戦えば戦うほど、その瘴気がカオスの力を増大させる――その情報は多くの冒険者を悩ませた。敵と相対するのに、デビルへの殺意などの負の感情を完全に殺して戦う事はかなり難しい。だがそうして戦う事が、敵に力を与える事になると言うのだ。
ゆえに一つの選択肢として、祈りの儀式の力でそれらの瘴気を打ち消し、払えないかと、試みる冒険者達の護衛を勤めるのはアラン・バーネル(ec5786)。
「憎しみじゃない、明日も笑って過ごしたいから。それじゃダメかな」
「良いだろうさ。僕だって人々を守りたい、だからここにいる」
アランの言葉に、聞こえたロイ・グランディ(ec3226)が言った。全員が全員、世界平和とかそんな、高尚な願いを抱えて戦場に立っている訳ではない。だがささやかな1人1人の願いが、集まれば力となるはずだ。
大切な誰かを守る為に。誰かの笑顔の為に。
「祈り紐‥‥これで瘴気を払うことが出来れば‥‥」
祈りの儀式と同じように、人々の祈りの込められた紐でも、もしかして瘴気が払えるのではないか。そう考えた【世界騎士団】フォルテュネ・オレアリス(ec0501)らは戦場を巡りながら、祈り紐に自らの祈りも込める。戦場に、祈りの力を振り撒く。
そんな戦場とはまた別に、救護所の中でも勿論、戦いは続いていた。人々の命を繋ぐと言う戦い――そのために忙しく立ち働く冒険者達の1人、【春夏秋冬/救護協力班】高川 恵(ea0691)が仲間に声をかけた。
「お水も氷も、できる限り用意しますから。足りなくなったら言ってください」
「助かるが、無理はせぬようにな」
殆ど休みなく魔法の水や氷を生み出し続ける恵に、峰 春莱(eb7959)が労いの言葉をかけた。ムルキベルの自爆によって半壊した救護体勢を立て直すべく、多くの冒険者が尽力したお陰で何とかそれらしき形は整ったが。
自爆によって被害を受けた仲間をも、どんどん救護所に運び込む。【拠点防衛隊】張 源信(eb9276)らがそれらの仲間を診察し、薬やポーション類、時にリカバーをも使用して手当てする。
だが、救護所へ運ぶのが間に合わないものも勿論、居る。そういうもの達はエリー・エル(ea5970)らを始めとする、戦場にあって癒しの力を持つものなどが応急処置を施した。友人達で【鶺鴒団】というチームを作り、救護として参加し続けてきた荊 信(ec4274)や志摩 千歳(ec0997)、伊勢 誠一(eb9659)もまた戦場を馬車で巡り、応急処置が可能な者はその場で手当てし、そうでないものは馬車に乗せて救護所まで急ぎ、連れて帰る。月下 樹(eb0807)も怪我人を見つける度、安全域へと連れて行って手当てした。
戦場は、苛烈を極めているようだ。その前線の戦いを支える為にも、後方での彼らの戦いがある。そしてそれを守る為に、成史 桐宮(eb0743)やヴァイエ・ゼーレンフォル(ea2066)、柾木 崇(ea6145)らのように、主戦場ではなく救護所周辺の警護に全力を注ぐ者が居るのだ。
【マジカル特戦隊】エルディン・アトワイト(ec0290)は迫り来る魔物を前に、超越ホーリーフィールドを展開した。地獄の血色の空の下に現出する、神秘的な光。必ず守り抜いて見せるのだと、そこには強い願いが込められていて。
「慈愛の神よ、どうか私達をお守り下さい――」
呟き天を仰ぐ、その祈りは届くのか――魔物達との攻防は、いまだ続く。
(担当:蓮華・水無月)
●雨
地より湧き上がる地獄の瘴気。
陽炎のように、霞のように。揺らぎ、渦を巻き、漂う負の気配。
実体を持たぬ姿でありながら、どういう作用か。強固に侵入を阻む壁として君臨している。
急流を逆らって泳ぐ事にも似ていた。
「気がつきました。瘴気とはつまり不良息子ですわ。愛を持って説けば改心するはずです」
言って、壁の前にきちんと正座し、夜久野鈴音(eb2573)は説教垂れる。
ありがたい訓示が示されるも、まさに暖簾に腕押し。というか押しても無い?
「まぁ向こうは置いといて‥‥。託された想い、今こそ使わせてもらう!!」
オーラの力を拳に込めて。風烈(ea1587)は瘴気の壁に渾身の力を叩き込む。
握った祈りの結晶から暖かな波動を感じる。
抵抗は僅か。
吹き飛ばされるように、瘴気が消し飛んだ。
☆ メイ・ゴーレム隊。仲間の巨大なゴーレムですら手を焼いている壁が、小さな拳一つで的確に穿たれる。
「いける!!」
続けざまに叩きつければ、瘴気の壁は徐々に削れていく。
「結晶は天より賜りし物。結局、魔に抗するは神自身しかないのでしょうか」
複雑な思いで、ユリア・サフィーナ(ec0298)は壁の歪みを見つめる。
祈るだけでは、神に見放される。そう危惧したが、人がただ向かって無力化できるものではない。
神聖魔法は勿論、精霊魔法の正常なる自然の力、生の生命力を利用したオーラ・忍法。
そして、人々の祈りが凝縮された祈りの結晶。
そうした手段を得て、ようやく瘴気の壁に挑む事が可能。
ただ、それらで攻撃を加えるも全体から見れば微々たるものだった。
祈りの儀式により瘴気は抑えられてはいるが、消失させるには至らない。
さらに、
居場所をかぎつけたか。続々と魔物たちが邪魔をしに訪れる。
いずれも雑魚。魔王クラスなど望むべくも無いが、散発的に統率も無くやってくるのは逆に面倒だ。
気弱でいてはいけない。
思い直すと、ユリアはホーリフィールドを展開。カオスの力に対抗する布石を作り上げる。
瘴気を直接壊すにはいささか決定打に欠ける。
ならば、瘴気を抑える祈りの儀式は邪魔させまいと、防御により熱が入る。
「よっしゃ、まだまだ行けるで! 負けへんよ〜!」
ウォーターボムにアイスコフィンで、群がる魔物を蹴散らすシン・オオサカ(ea3562)。
その活躍を見ながら、ルイザ・フィード(ec4489)もそっと身構える。
「魔物だけの怒りだけで戦っているわけじゃない‥‥。救えるのなら救いたいんです。ルシファー!!」
今は遠くにいる敵。
恐るべき魔王にも訴えるレイン・ヴォルフルーラ(ec4112)。
「ムルキベル殿の忠義には感服するが、我々も負ける訳にはいかぬのだ!!」
祈紐を胸に抱き、七刻双武(ea3866)も太刀「文寿」を手にする。
例え敵であろうとも、敬意を示せるのは度量の大きさか。
「誰も、世界の破滅など望んではいません。カオスの思い通りにはさせません」
「この世の全てが貴方の創り賜いし愛し子なら、母が子を見捨てぬように一筋でも慈悲と救いを」
吹きすさぶ風が身を裂こうと、祈りの声は止まらない。
セーラ神にミスリル・オリハルコン(ea5594)が瘴気を打ち消す事を望めば、オルテンシア・ロペス(ea0729)は仲間への加護、悪魔すらも含めた犠牲者への救いを求める。
テラ・ソード(ea8235)もまた祈る。地獄の底にも聖なる母の慈愛の光が差すことを‥‥。
「祈りましょう。皆さんが無事に帰ってこられることを」
「そうね。そして、必ず取り戻すの、決して平穏なだけとは言い切れないけど大切な日常を」
万魔殿で。いや、地獄の各所で。
今、目の前ですら繰り広げられている血みどろの戦いに綾小路瑠璃(eb2062)は胸を痛める。
地上もけして平和ばかりとはいえない。それでも、あそこは生きた世界。あと少しで帰れるその場所。
少しでもより多くの人との生還をレイル・セレイン(ea9938)は望む。
「大丈夫。皆がこんなに頑張ってるんだから、きっと明日は今日よりいい日になるよ」
黄莫邪(ec4332)がにこりと笑う。
「その為には、あの障壁が取り除ければ‥‥そうすれば、後は人の手で成すべき事」
エリザベート・ロッズ(eb3350)が睨むも、瘴気の壁は手強い。ただ居座るだけの癖に。
そんな中で、タイタス・アローン(ea1141)は空を見上げる。
「あれは?」
敵と戦いながらも、注意は自ずとそちらを向く。
魔物たちの歓喜と叫びが入り混じる。
そして、硫黄の雨が降り注いだ。
(担当:からた狐)
●氷の大地、蠢く怪物、死者、生者
「本当にこれで、最後の戦いとなるのでしょうか‥‥?」
シャルロット・プラン(eb4219)が呟き、眼下に視線を落とす。
地獄の空を翔る、フロートシップの甲板より見える光景。
それはひび割れていく氷の大地であり、蠢く巨大な怪物であり、死者であり、生者であった。
瘴気渦巻く原初の混沌の中で、人と、デビルと、アンデッドと、その何れ為らざる者どもが刃を交えている。
地上の戦火を避けるため、高い高度を航行するフロートシップからは、暗い地上の様子は、まるで夜に望む海のように曖昧で、判然とはしない。
見えるのは、夜光虫のように瞬く、地上の灯り。
聞こえるのは、潮騒のような、絶え間ない戦場の喧噪。
「シャルロットさん、地上にいる【☆ メイ・ゴーレム隊】の利賀桐 真琴(ea3625)より連絡が入りました! 右前方一キロ地点に負傷者多数、至急救援を乞う、だそうです!」
風信器を耳に当てていた、岬 沙羅(eb4399)が叫ぶ。
その言葉に、シャルロットの背後に立っていたリーディア・カンツォーネ(ea1225)もまた声を上げた。
「行きましょう、シャルロットさん。船内の救護所には、まだ余裕があります。私達がこの船にある限り、負傷者を見捨てるようなことは決していたしません!」
力強くガッツポーズを作るリーディアに、シャルロットは笑みをこぼし、すぐに表情を改めた。
そうだ、感傷に浸っている暇はない。救いを求めている者はまだ、幾らもいるのだから!
「‥‥了解しました、リーディア総司令! 騎士団、進路面舵!」
シャルロットが右手を上げると、精霊機関の唸りとともに、船体が右へバンク。【ウィル双翼騎士団】、【TN守護隊】双方の協力によって空飛ぶ救護船へと変貌を遂げたフロートシップは、その進路を負傷者の待つ地上へと向ける。
比較的安全な高空とは違い、コキュートスの地表に降りればどのような化け物が襲ってくるかも判らない。ラルフェン・シュスト(ec3546)、リュシエンナ・シュスト(ec5115)兄妹ら、警護に当たる者達が甲板上で己の武器を抜いた。
「リュシエンナ、出来ればお前には後ろに下がっていて貰いたいんだがな‥‥」
「ここまで来て、それは言いっこなしですよ、兄様♪」
―――実際、地表での戦いはより激しさを増していた。
無数のアンデッド共と、デビル達の脅威に晒されているのは何も最前線に限った話ではなく、それはここ、後方救護所であっても変わらない。後方と言っても、既にコキュートスの氷の上なのだ。警備の者が得物を振るい、救護班のクレリックが攻撃呪文を唱え、それでも手が足りずに、果ては施設に搬送されてきた当の負傷者達までもが、薬瓶をラッパ飲みしながら剣を抜くといった有様である。
「大物倒しとるのに楽にならんのはどーいうこっちゃ?!」
「そりゃ、一番の大物のルシファーがまだ元気にしてるせいだろうなっ!」
九烏 飛鳥(ec3984)が愚痴りながら降魔刀を振るう横で、七槻 錬太(ec1245)も同様に日本刀で亡者共を薙ぎ払っていく。
全く、きりがない!
今のところ、救護所に向かってくるモンスターの大半はズゥンビ様の低級な亡者ばかりであったが、もしより格上のデビル達が姿を現せば、とても支えきれるモノではないだろう。
「救護所周辺の偵察に出ていた方達が、そろそろ帰ってくる頃合いです。良い知らせを期待しましょう‥‥」
その、フォン・イエツェラー(eb7693)の言葉が終わるよりも早く、知らせは救護所に届けられた。
‥‥それは、思いの外間近に聞こえる重い地響き。
同時に、偵察から戻った雷瀬 龍(eb5858)の大きな声が救護所中に響き渡る。
「いかん、皆下がれ! 動くぞ、万魔殿が動いておるぞ!」
「動く? あのお城が?」
‥‥なわけないやろと、雷瀬の言葉にツッコミを入れつつ、九烏が空を見上げた。
彼女の視界を埋める、高く高く屹立した歪な城。
コキュートスのどこからでも見ることが出来る、壮麗で邪悪な宮殿。
ルシファーの住まうデビル達の本丸、万魔殿。
それが今、眇める彼女の視界の中で確かに身震いをしていた!
まるで、眠りから目覚める巨人のように城壁を震わし、瘴気を撒き散らしながら、尖塔が生き物のように伸び上がる様を、九烏と同様に空を見上げた多くの冒険者達が目撃する。
「動くって‥‥まさか、歩き出したりなんてしないですよね?」
城を見上げ、不安そうに呟くベル・ベル(ea0946)の言葉に、傍らで鳴動に耳を寄せていたルカ・インテリジェンス(eb5195)が答える。彼女の鋭敏の耳は、鳴動の正体にかなりの程度まで肉薄していた。
「その、まさかの可能性が高そうね。これはどうやら、救護所そのものを後方に下げた方が良いかもしれない‥‥」
ルカの言葉尻に、また、突き上げるような激しい鳴動が重なる。
逃げ惑う冒険者達。もう、それは誰の目にも明らかであった!
輝く十二の翼、明けの明星、最も輝かしき者が天なる神の御手によって地獄に投げ落とされてより幾星霜。揺らぐ筈のない、動く筈のない神の牢獄が、今、動き出したのだ!
(担当:たかおかとしや)
●想いを剣に
万魔殿は、ルシファーと一体化したその巨大な建造物は、今やゆっくりと移動を開始しようとしていた。轟音が鳴り響き、激震が地獄の最下層を揺るがす。あるいは破滅への行軍か。
万魔殿の表面からは巨大な腕が生えて冒険者たちをなぎ倒し、生物の口のようなものが開いてブレスが吐き出されていた。また瘴気の一部が零れ落ち、コキュートスに徘徊する低級の魔物となって出現していた。
万魔殿の内部は、地獄の底につながる孔のようになっていた。その内壁同士をつなぐ形で細い橋や階段が網の目のように張り巡らされている。
冒険者たちはこの巨大な敵を前に、悪魔王へ最後の戦いを挑む‥‥。
月詠葵(ea0020)は後退しながら万魔殿の足を止めていた。長曽弥虎徹を振るって巨大な腕を切り飛ばす。
「‥‥弱い心は地獄のどこかに置いて来て強い心で立ち向かう。大切な人の為にも」
「俺は護りたい。愛する人が生きるこの世界を。人を見守っている存在が居るというのなら‥‥一瞬だけで良い、力を貸してくれ。ルシファーをもう一度眠らせるんだ、今度は優しい夢を見せる為に戦う」
デビルスレイヤーを振るうマナウス・ドラッケン(ea0021)。
アシュレー・ウォルサム(ea0244)は祈りの結晶を括りつけたホーリーアローを祈りと共にルシファーに打ち込んでいく。
「でやい!」
ソニックブームを叩き付ける瀬戸喪(ea0443)。
「このまま出てくることなく封印されてくれればいいんですが。そう上手くいったら苦労しませんが」
「おおおおりゃあああ!」
チャージングを仕掛けていくレイジュ・カザミ(ea0448)が突撃すれば【誠刻の武】 射撃部隊指揮官の菊川響(ea0639)が号令を下す。
「撃てえ!」
無数の矢が万魔殿目がけて飛んでいく。
「神様への感謝を俺達は忘れてない、祈りは加護の見返りの為じゃない。ただ強く強く、明日を願うんだ」
「神の力が及ばなければ、阿修羅神が為す迄です!」
三笠明信(ea1628)はライオンハートを叩き付ける。
「闇の王よ、地上進出の野望を捨てよ! 行くぞケイ、シャクティ‥‥! 最後の戦いだ!!」
突進するアマツ・オオトリ(ea1842)に続いて結城友矩(ea2046)が猛進する。
「此処が正念場でござる。各々方、努々油断めさるな。此処まで来たからには悪魔王の首を取る」
デビルを切り裂き駆け抜けて行くカルロス・ポルザンパルク(ea2049)。
「‥‥やると言ったからな」
ロックハート・トキワ(ea2389)は万魔殿と同化しているルシファーの肉体に攻撃を仕掛ける。
「‥‥だって、やると言ってしまったんだもの‥‥!」
ルシファーの反撃は万魔殿の一部を動かしてのサンダーブレス。
「愚か者‥‥!」
「ぐ‥‥」
トキワの身代わりが一撃で崩れ去る。
三好石洲(ea2436)に続いてケイ・ロードライト(ea2499)が攻撃する。
「汝を縛るは幾千万の人の想い。天への反逆心では解けませんぞ」
「世界を統べる余の力を見るが良い!」
万魔殿のそこかしこからブレスが吹き出してくる。
「俺は生きて、イヴェットと、歩んでいきたい‥‥いや、いく!」
ファイゼル・ヴァッファー(ea2554)はダメージに耐えながら剣を振るった。
「昔神と何があったか知らないけど! あたしの薔薇色人生にあんたの存在は大いに邪魔なの! 子々孫々の為にもここで消えて!!」
神無月明夜(ea2577)の攻撃を受けても万魔殿は小揺るぎもしない。
「それでも!」
李斎(ea3415)は湧き出る魔物を次々と潰していく。
「確実に1体1体、連携して敵を潰すよ!! 敵戦力を減らすことが作戦を成就させる方法だからねっ。(にかっ)」
空漸司影華(ea4183)は仲間達の影からルシファーに一太刀浴びせる。
「影に咲く華‥‥影華が‥‥…斬る‥‥」
ダブルアタック+ポイントアタック+シュライクを打ち込むイグニス・ヴァリアント(ea4202)。
「―――――刺し、穿つッ!!」
「拙者らに構うな、先へ進め、奴を倒せ!」
囮となってルシファーの隙を作り出す尾花満(ea5322)は、反撃の黒い閃光を受けて崩れ落ちた。
万魔殿に向かって駆ける武藤蒼威(ea6202)、神田雄司(ea6476)、その横から炎の鳥がルシファー目がけて飛ぶ。御神楽澄華(ea6526)のファイヤーバード。
「悪魔王よ、止まれ!」
フレイア・ヴォルフ(ea6557)は尾花満と組んで露払い。WシューティングやEXで雑魚の足を止める。
「‥‥派手にやるよ満、あんたがいればあたしは何も怖くないんだから」
騎乗チャージング万魔殿に楔を打ち込むアルビオス・レイカー(ea6729)、ラフィリンス・ヴィアド(ea9026)はすでに狂化して海王の槍を縦横に振るっている。
飛天龍(eb0010)は空から迫り来る魔物群れを押し止めていた。
「渾身のカウンター、Pアタック、Wアタック、ストライクEXだ!」
「禁忌の子として生まれたのなら、ここで果てるも定めか‥‥。我が命と引き換えに、必ずや魔王を葬る!」
雪月華(eb0597)の拳が万魔殿のルシファーにめり込む。
「人の子よ、無駄な抵抗だ‥‥」
ルシファーは腕を一振りすれば、黒い炎が月華をなぎ倒す。
凄絶な戦いの中、陸堂明士郎(eb0712)はみなの思いを受けて魔王と相対する。
妻のアゲハ・キサラギ(ea1011)とともにルシファーと対峙し、愛の素晴らしさを証明する為にルシファーの目前にて口付けを交わす。
「人の想い、愛の力、その無限の可能性をお前に教える為に来た」
「ならば、愛に生き、愛に滅びよ人の子よ」
ルシファーの反撃を仲間達が盾になって受け止める。
「団長、こいつに話し合いは通じないんだねぃ」
「止むを得まい‥‥ならばここでけりをつけるまで」
明士郎は剣を抜いた。哉生孤丈(eb1067)は陸堂の指揮下で【誠刻の武】仲間達を前進させる。
ルシファーの攻撃の前にばたばたと傷つき倒れていく仲間達。
フリッツ・シーカー(eb1116)がそれでも突進し、フレア・カーマイン(eb1503)は矢を撃ち続ける。
「防がれたか。まぁこれは布石やからな」
倒れても起き上がり進む冒険者たち。前進飛葉獅十郎(eb2008)、八城兵衛(eb2196)、クーリア・デルファ(eb2244)、鷹碕渉(eb2364)、苗里れいか(eb2457)、南雲紫(eb2483)、静守宗風(eb2585)。
アルディナル・カーレス(eb2658)はアゲハの盾となってルシファーの攻撃を受け止める。
「行くぞ!」
突き進む志波月弥一郎(eb2946)、緋鳳(eb3149)。
「留まれば磨り潰されるぞ! 斬り払え! 押し潰して突き進め! 隊列を維持して蹴散らしてくれるわい! ここが補給の踏ん張り時だからな! 必ず前線へ届けるんだぞ!」
ドナン・ラスキン(eb3249)は敵勢を蹴散らして仲間を送り届ける。
「ルシファー‥‥ここで仲間達がお前を封印する。これ以上進ません。もう一度眠りに付け!」
駆け抜ける苗里西紀(eb3329)、任谷煉凱(eb3473)、レジー・エスペランサ(eb3556)、 苗里らんか(eb3698)、アレックス・ミンツ(eb3781)、苗里るか(eb3899)。
突き進む武者小路繰空(eb4606)――。
「ムルキベル‥‥嫌いではなかったのだが、な」
「奴がいない以上この世界にいる意味の大半が無きに等しい‥‥ではそろそろあっさり終わりに向かって突っ走るとするか」
飛葉静馬(eb4754)彼も【誠刻の武】。陸堂の指揮下で戦い続ける。
空間明衣(eb4994)はルシファーに散華(シュライク+ポイントアタック)を叩き込む。
「私の本気受けてもらう! 奥義散華!」
「人の子らよ‥‥受けよ我が力、悪魔王と呼ばれる余の力の前に滅びよ!」
ルシファーから降り注ぐ魔法の嵐。
そんな中メグレズ・ファウンテン(eb5451)は魔法に怯みながらもルシファーに攻撃を仕掛ける。
「簡単だ。諦めず戦うのは越える為。先に進む為。そして己に恥じる事無く生きる為!」
メグレズの剣がルシファーを切り裂く。
「妙刃、水月!」
鳴滝風流斎(eb7152)はアゲハの側にあって戦況を見つめていた。
「ここが正念場でござる」
マラキム・ニカマ(eb7696)が魔物を粉砕すればシュネー・エーデルハイト(eb8175)はチャージで突入。
「これからの未来の為に‥‥」
「世界はお前のものではない。お前の勝手にはさせない」
アヴァロン・アダマンタイト(eb8221)、ケリー・クーア(eb8347)は渾身の一撃をルシファーに叩き付ける。
「これからの生まれ来る命の為に!」
ドラゴンライダーとなったセイル・ファースト(eb8642)は巨大なルシファーの顔の前を通り過ぎながら剣を一閃する。ルシファーの顔に傷が付く。
「平和のために‥‥戦う!」
リューフェル・アドリア(eb8828)はスマッシュをルシファーに叩き付ける。
「道を開く! 後は任せる!」
篁光夜(eb9547)は道を切り開き、仲間たちの攻撃の機会を作った。
高比良左京(eb9669)、ルイス・フルトン(ec0134)が突進すればシャロン・オブライエン(ec0713)はオーラ全開で攻撃。
「阿修羅神よ、ご照覧あれ!」
突進するリンカ・ティニーブルー(ec1850)、ミケヌ(ec1942)、白鳳多輝(ec2111)、清原静馬(ec2493)、結城弾正(ec2502)が溢れる魔物たちを打ち倒していく。
「鍛治屋の意地をみせてやりますわぃ」
ヴィルジール・オベール(ec2965)はルシファーの万魔殿に肉薄、渾身の一撃を見舞う。
「悪魔の思いすら捻じ曲げるとは。まったく、カオスというのは美しくないですね」
狩野幽路(ec4309)は言って刀を一閃、魔物を切り倒して仲間の道を開く。
「さあ、来るであ〜る! 地獄に返すであ〜る!!」
トゥエニエイト・アイゼンマン(ec4676)はルシファー目がけて突撃を繰り返していた。
アザスト・シュヴァン(ec5560)、ジョリオ・アスベール(ec6048)、松桐沢之丞(ec6241)らが道を切り開き、冒険者たちはルシファーへ果敢に攻めかかっていく‥‥。
(担当:安原太一)
●封印されし風の悪夢
──風の亜竜
それは巨大なる竜ににた存在。
翼の両翼は500mをも越える。
その巨大な存在が、ゆっくりと冒険者達の待機する砦の上空を飛来していた‥‥。
コキュートスの氷がトけ出したことにより、封じられていた魔物が解放された。
先日まで、それは『魔風使いの魔物』と呼ばれていた。
だが、大勢の冒険者を食らい、地上から送られてくる命の球を食らい、人々の恐怖を糧として、それはあらたなる進化を遂げていた。
いま、彼はただゲートを越えることを考えている。
そのゲートの向うには、彼にとって最高の『餌』が存在するから‥‥。
──ヒュンッ!!
大宗院透(ea0050)が引き絞った弦を放つ。
勢いよく飛んでいった矢だが、それは奴の胴部にも届かない。
「ダメです‥‥あんなに上空では、手も足もでません‥‥」
そう口惜しそうに告げる透。
「諦めちゃダメだよっ!!」
チップ・エイオータ(ea0061)がそう叫びつ矢を放つが、どうかんがえてもあそこまで届く筈がない‥‥。
それでも、上空から時折翼を広げ突風を放ってくる。
それは冒険者達の待機している砦に直撃すると、城壁を次々と破壊していく‥‥。
そして、地上からは『大地の魔物』と呼ばれている異形の存在が、いくつもの下僕を連れて城内に突入してくる‥‥。
「ここから先には通しませんっ!!」
ルーウィン・ルクレール(ea1364)がオーラによって強化された武器で次々と異形の下僕達を薙ぎ倒していく。
その横では、やはりオーラを使用して戦うセシリア・カータ(ea1643)の姿もあった。
「この程度の悪魔‥‥地上で戦った奴とは比較にならないわっ!!」
次々と切り捨てては、ボスクラスの悪魔を探すセシリア。
「どぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉれぇぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
と雄叫びをあげつつ、ゆっくりと近づいてくる『大地の魔物』。
そのまま巨大な腕を振り上げると、力一杯セシリアとルーウィンに向かって振回す。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォッ
その一撃を受て、二人は後方に吹き飛ぶ。
だが、鎧によってダメージはかなり軽減されている。
「油断してはいけませんよ‥‥」
と呟きつつ、二人の横をすり抜けて『大地の魔物』に向かって駆けていくはルイス・マリスカル(ea3063)。
そのまま素早く剣を抜くと、いっきに連撃を叩き込んでいく!!
──ドガガガガカガッ
だが、ルイスの攻撃もまた、ぶ厚い鎧のような装甲によって阻まれてしまう。
「ブウェッブウェッブウェッブゥェッ‥‥」
言葉ともなんともつかない声で笑うと、今度はルイスに向かって一撃を叩き込む。
──ゴギィィィィッ
その一撃をもろに胴部に受け、そのまま壁に叩きつけられるルイス。
(ぐぅっ‥‥肋骨が逝きましたか‥‥でもまだまだっ)
口から血を吐き出すと、ルイスはゆっくりと体勢を取り直した。
「畜生‥‥こっちにも羊野郎はいないかよっ‥‥邪魔だこの肉饅頭っ!!」
そう叫びつつ、リュリス・アルフェイン(ea5640)が『大地の魔物』に向かって渾身の一撃を叩き込む!!
──ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
装甲を貫き、その肉体から褐色の体液が吹き出す!!
「その傷が突破口だっ!!」
レインフォルス・フォルナード(ea7641)が素早く駆けつけると、リュリスの付けた傷に向かってピンポイントで連撃を叩き込む。
──ドシュッッッッッッッ
傷はさらに拡大する。
そこに目掛けて、ルーウィントセシリアも連撃を叩き込む。
徐々に傷が広くなっていく。
だが、『大地の魔物』もまた、近寄っている冒険者に容赦ない一撃を叩き込む。
「ゴレデオジマイダッ‥‥」
そう叫ぶと同時に、『大地の魔物』の装甲が激しく点滅する!!
「なんだっ!!」
そうリュリスが叫ぶと同時に、輝いた装甲から無数の光線が発せられる。
それはセシリア達の肉体を穿つと、その部位を腐敗させていった‥‥。
「こ、これはまずいっ!!」
「急いでクレリックに‥‥」
と叫ぶルイスとルーウィン。
二人はかすり傷程度ですんだが、リュリスは右肩に直撃を受け、方から腕が千切れ落ちた。
セシリアに至っては腹部にもろに受けてしまい、生きているのがギリギリの状態である。
そして『大地の魔物』はその一撃で全てをだしきったらしく、その場で絶命していた‥‥。
やがて遠くからクレリック達が駆けつける音がする。
ピュアリファイで腐蝕を補い、リカバーで治療を行う。
一通りの手当がおわったのち、一行は再び戦場へと赴いていった‥‥。
(担当:久条巧)
●世界を喰らう竜
『これよりこの世界は終焉を迎える。そして、我が創る新たな世界が始まる』
破滅の光。漆黒の炎。禍々しき牙。
その巨大なる竜こそは、解放されし悪魔の皇帝の力。
「はあっ!!」
竜の頭上より流星のごとく、エイジス・レーヴァティン(ea9907)が剣を振るう。
「精霊の歌声、あんたに使わせ続けはさせん」
「取り戻すぞ、あの杖を!」
ラザフォード・サークレット(eb0655)やブレイン・レオフォード(ea9508)も周囲の冒険者達と協力し、次々と冠の竜へと攻撃を仕掛けていく。
しかし‥‥。
『愚かな』
巨大な首が瘴気の闇に蠢いて、冠の竜は真っ向から冒険者達の攻撃を受け、まるで効果のあった様子も見せず。
「くっ、化け物め‥‥」
『良い人の子らよ。理解するのだ。汝らの力など、力を取り戻した我の前には、何の意味もない。今は、ただ安らかに、滅びの時を迎えるがよい」
絶望的なまでに力の差を見せつける冠の竜。
周囲の瘴気の力も取り込んで、その身は、まさに無限とも思える魔力に満ちている。
本当に、勝てる可能性があるのか。
自分達がしていることは、意味の無いことなのか。
焦燥が、諦めが、失望が、冒険者達の心にまで闇が飲み込もうとしていた。
そんな中、幾人かの耳にふと、誰かの鼻歌が聞こえた。それは、竜の耳にも。
『何だ‥‥?』
「分かりませんか? 希望の音色です。どんなに絶望が支配する状況だって、自分達は超えてきました。だから、諦めたりなんて、しません」
それは冠の竜へと攻撃を繰り返していた冒険者の一人、フルーレ・フルフラット(eb1182)の声。
『‥‥そうか。では、その希望ごと我の前から失せるがよい』
竜の口が開かれ、フルーレへと‥‥。
「させません!」
竜の側面より、ペガサスを駆るシルヴィア・クロスロード(eb3671)や、リール・アルシャス(eb4402)の駆るドラグーンが攻撃をかける。
「どこ見てんねん、こっちやこっち!」
ジルベール・ダリエ(ec5609)も他の冒険者に合わせて、竜へと矢を放つ。
『理解を拒み、あくまで足掻くか人の子らよ』
「当然だ!」
竜がフルーレやシルヴィア達に気を取られた隙をついて、アンドリー・フィルス(ec0129)は魔法で竜の頭上に飛ぶ。その手には、仲間達の魔法を受けた剣。
渾身の連撃を、竜の頭上に輝く冠、キングスエナーの取りこまれた宝玉へと叩きこむ。
『‥‥ぐっ』
初めて、竜の口より呻き声が漏れる。
効いている。まだ破壊に至らぬまでも、宝玉に小さな傷が幾つか。
だが、アンドリーが次の攻撃を放つことは出来なかった。凄まじい衝撃。竜の首がアンドリーを大地に叩きつける。
けれど、冒険者達は諦めない。
「その陽の輝きはキエフの民のものだ。返して貰うぞ」
「これで‥‥っ!」
ミュール・マードリック(ea9285)やファング・ダイモス(ea7482)が、己が全ての力を込めて、宝玉へと剣を届かせた。
欠けた破片が幾つも宙に舞い、伝説の魔杖センブンフォースエレメンタラースタッフの、その姿がついに露わになる。
あと、ほんの少し‥‥。
『させぬ』
ーーーーッ!!
竜の身が光に包まれて、目を眩ませた冒険者達の動きが鈍る。首が大きく動き、頭上の冒険者達を振り払う。
開かれた竜の口より熱線が放たれ、冒険者達を貫いた。
(担当:BW)
●仲間を救う者
救護・防衛に当たる冒険者たちは地道ながら仲間たちの戦闘を支え続ける。
「地獄のような日々だけど、笑顔は忘れないようにしないとね。ほらほらっ、そんな顔してたら悪魔が喜ぶよっ!!」
楊志(ea1072)は超越級の猟師スキルで動物たちの世話をしながら補給作戦の手助けを行っていた。
エヴァーグリーン・シーウィンド(ea1493)の歌声が万魔殿に鳴り響く。傷つき、倒れた仲間たちは赤い空を見上げ、束の間激闘を忘れて歌声に聞き入った。
ログナード・バランスキン(ea3067)は運び込まれてくる負傷者を振り分けていた。出来ること、癒すこと、手当てすること、全力で。送られてくる怪我人を重傷・中傷・軽傷と振り分けてそれぞれ担当できる人の元へ送る。軽い傷には自身が魔法を使った。
シャクティ・シッダールタ(ea5989)は仲間手当てをしながら祈紐を持って祈った。
「憎しみよりも、むしろ慈愛を以って魔王と対峙しましょう皆様。御仏の心は、全ての魂の救済なのですから!」
ジュディ・フローライト(ea9494)は仲間たちが集めた情報を整理していた。現れる魔物の特徴を判断していたが、ジュディの見たこともないモンスターばかりで見当もつかない。恐らく遙かなる神魔大戦の折に封印されたのであろうが‥‥。祈りの結晶を胸に、周りの方達を鼓舞しながらジュディは戦いに臨んだ。
「希望は、そう簡単に潰えませんもの、ね」
「人の義がカオスを切る力であると信じたいところだが‥‥」
白翼寺涼哉(ea9502)慌しさを増す救護所の指揮を取りながら患者を割り振っていた。
【赤】【緑】【茶】と患者治療に札を付けていく。症状に応じ各種魔法・薬水等治療用品を併用。祈紐で脈診、祈り通し治療を続ける。
「神の加護ではなく、人と人との絆が僕達に力を与えてくれる! ルシファー、貴方はもう退場すべきだっ!」
デニム・シュタインバーグ(eb0346)は仲間達の盾となって、この過酷な状況で剣を振るっていた。
ヴィスコ・ヤンセン(eb2270)は【ジャパン医療局】に協力して救護活動に当たる。
「みなしっかり」
桜葉紫苑(eb2282)は救護所の警備に当たっている。入り口に聖なる釘を使用、清らかな聖水をまいたり祈り紐を結んだり、少しでも危険を遠ざけられる様手を尽くす。負傷者の運搬等力仕事中心に手伝い、重傷者は素早く後方に移送していく。
明王院浄炎(eb2373)も同じく警備に当たっていた。ガラントスピアを担ぎながら、救護作業を手伝う。
任谷修兵(eb2751)、クリューズ・カインフォード(eb3761)、シェンカー・アイゼルリッシュ(eb5613)は戦場に赴いた陸堂の妻アゲハの側にあって、彼女を守っていた。
陽小娘(eb2975)は恒例の炊き出しを行っている。ジャパンから運んだ祈り餅を持ち込んでいた。
「日蝕にちなみ丸い海苔をくっつけた祈り餅、聖火で暖めてみんなに食べさせるね♪」
愛妻クーを抱き寄せ祈紐を預けたケント・ローレル(eb3501)。負傷者を振り分け、怪我人は馬で搬送。愛の石や祈紐、毛布等で看護を続ける。
「最後に愛が勝つ!」
ネフィリム・フィルス(eb3503)は祈紐を繋いで行き思いを繋ぎ、結界を編んでルシファーの瘴気に対抗する。また救護所に迫り来る悪魔たちを切り伏せながら祈紐を護る。後は何時ものように死傷者は回収する。
ターニア・アイオライト(eb3578)はリカバー・クローニングで回復援護。
将門夕凪(eb3581)は 【ジャパン医療局】【誠刻の武】と行動を共にし負傷者を後方に搬送している。悪魔を切り払う夕凪。
「ここは私に任せて負傷者をお願いします」
ソード・エアシールド(eb3838)、イシュカ・エアシールド(eb3839)は救護所の警戒、紅谷浅葱(eb3878)はこれまでの活動で集めた装備を布の上に種類毎に積み上げ、どんどん持って行って貰う。矢は使いやすいよう5本毎に軽く纏めている。戦況の変化に合わせて装備を布で包み、馬に積んで移動。激戦で装備が壊れた人の為に‥‥。
シターレ・オレアリス(eb3933)は祈り紐と救護活動をする皆を助け、死傷者を回収。
葛城丞乃輔(eb4001)は味方後方にて、警戒と同時に、飛び道具での支援射撃を行っている。また、常に陸堂の妻のことは気にかけていた。
「守る‥‥」
ラルフィリア・ラドリィ(eb5357)は重傷者をスクロールアイスコフィンで固めていく。近くの悪魔はアグラベイションで動き鈍らせ仲間を支援する。
「‥‥じゃましちゃいや」
アレクセイ・ルード(eb5450)は【祈紐・聖火】に参加、祈り紐は杏黄旗に括り、結界を強化できるようにする。ルシファーを繋ぐ鎖の傍に打ちつける。
「愛され過ぎるのも困りものだ」
「護りましょう、僅かでも、ここを護ることが‥‥大切です」
ルナティック・ファッティス(eb5696)は刀を構えて迫り来る悪魔を撃退していく。
ジークフリート・ミュラー(eb5722)は最前線で補給線を失わないためにも土地感「雪上」で雪上戦を指南する。部隊の寒冷地での戦闘力強化を図る。空襲に目がいっているんで、足下が疎かにならないように。
アルジャン・クロウリィ(eb5814)はカオス調査班、連携して得た情報を取り纏め、解析。十全な対策を練ることが出来る様、魔物の来るであろう位置を素早く割り出す。
「魔物を倒す」ではなく「仲間を護る」‥‥その気持ちで戦い、瘴気の発生を少しでも抑えられる様に。
スズカ・アークライト(eb8113)は儀式の邪魔をさせない為に仲間を守る。
「ここには私の大切な人達がいるから通さないわ、神様もこれだけみんな頑張ってるんだからちょっとは願いを聞いてよね!」
リスティ・エルスハイマー(eb9192)は怪我人救護に奔走。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
アガルス・バロール(eb9482)は押し寄せる魔物に立ち向かっていた。先頭にたって敵の攻撃をデッドORライブで防ぐ。
朝海咲夜(eb9803)は影から影へ、封印の鎖強化の準備を進めている仲間たちを護衛して回る。
「悪いけど、儀式の準備はさせないよ」
国乃木めい(ec0669)、シェラ・カーライル(ec3646)らは救護所本陣で奮戦、ミリア・タッフタート(ec4090)は祈紐を設置する人、祈りを捧げて無防備な人を護衛する。
「後もう少しだから、がんばろう!」
救護班の激闘は続く‥‥。
(担当:安原太一)
●祈り
瘴気の壁は、厚く深く侵入者を拒む。
「慎重に運んで下さい。傷などつけないように」
地上各地より運ばれる聖遺物に祈りの品。高価で貴重な物があるのも確かだが、人々の思いを軽んじて傷つける訳には行かない。
護衛にも気を使う。山王牙(ea1774)は、拠点防衛隊のメンバーにも入念に指示を出していく。
瘴気を晴らすは祈りの力。
だが、目に見えぬ物は不確かでもある。
ルシファー復活以降、収まる気配の無い瘴気の高揚。押さえるべく祈りを捧げるが、その何がどう効くのか、明確に答えるのは難しい。
それでも信じる事こそが大事なのだと、厳かに儀式は展開される。
「儀式の準備を。場を清めて整え、祈りを捧げましょう」
僧侶ゆえか。いささか自身の分野に偏りがちだが、所属する楽団30人未満は宗教不問を伝えている。
それは承知しており、天涼春(ea0574)は護摩壇に火をくべると、他の歌にも合わせて木魚を叩く。
「武器は持たない主義だけど、それは戦わないという意味ではないわ」
サラン・ヘリオドール(eb2357)が両手を握り締める。
「大切なものを守る為に戦うこともあるのよ。守りたい思いは悪ではないわ。その為に戦うことも‥‥」
地獄ではついぞ拝めない陽の光。
一つ息を大きく吸うと、見えぬ太陽求めて踊り出す。
陽光隊の義妹と共に、テティニス・ネト・アメン(ec0212)も太陽神に向けて踊りを捧げる。
江戸雛隊のイクス・エレ(ec5298)も聖書を手にして、聖歌を歌う。
己を見つめ、悪意と戦わんとする強い意志が遠く響き渡る。
「皆の祈りを一つに‥‥」
その声に合わせてヴァジェト・バヌー(ec6589)もまた踊る。
「終わらせる為ではなく、先の未来が続く為に。無は、有があってこそ。その逆もまた然り。ならば、不要なものでは決してないのですから」
レラ(ec3983)の踊りにも迷いは無い。
東間宮古(eb2120)は何やら不可思議な歌と踊りを神妙な面持ちで披露していた。
「よくよく考えれば勿体無いよな。壊す方向にしか力が行かないんじゃ、宝の持ち腐れだ。知ってるか? 壊すよりも、育てたり守ったりする方が、よっぽど大変で凄いんだぞ?」
エリオス・ラインフィルド(eb2439)が告げるが、瘴気は答えない。
もし答えたなら、価値観の違いを笑うか、嘆くか。
いや、考えても詮無い事だ。
「より瘴気の強い部分に、ピンポイントで祈りの力を注げないかな?」
「ピンポイント? より強い場所? 祈ってやろうじゃないの。シャリオラオラオラオ(後略)!!!」
ミトナ・リプトゥール(ec0189)の疑問に、シャリオラ・ハイアット(eb5076)が気合を込めてみる。
が、そもそも思考の細かい方向性はどう持たせたらいいのやら。
「瘴気を祓うのも大事だけど。私は無粋な邪魔が入らないよう、神仏に祈らせてもらうわ」
「大丈夫ですよ。私もですが、儀式の邪魔がないよう、気をつけてる人も多いですからね」
カリ・カーラ(ec6423)に賀茂慈海(ec6567)が笑う。
実際、デティクトアンデットで探っていると、姿を消して傍まで近付いているモノもいた。油断はならない。
けれど。脅威は、魔法で見付かるモノが全てではない。
「雨?」
皆に合わせて祈っていたアリアン・アセト(ea4919)は、感じた熱い水滴に違和感を感じる。
熱い?
瘴気で黒く閉ざされた空。その濃度が増したのはいつからか。
ルシファーの動きに呼応し瘴気も活性化している。黒雲のように結集した瘴気が、熱い硫黄の雨をもたらしていた。
「きゃああああああ!!」
溶ける金属、焼ける肌。たちまち周囲は悲鳴に包まれた。
「神に見守られ、天も、地も聖なる愛の光に満ちているのです。たとえ神の加護が絶えようとも、ランたちの祈りが天へと昇り、皆さまをお守りいたしますわ!」
異様な臭気。燃える水。強力な酸性雨が全てを穿つ。
それでも変わらぬ祈りを、揺ぎ無い信念と共に【誠刻の武】ラン・ウノハナ(ea1022)はひたすらに念じる。
「いずれにせよ、私は出来る事をやるぐらいですね」
為す事は変わらない。瘴気より降り注ぐのなら、その瘴気を抑えればいい。
愛編荒串明日(ec6720)は、酸で千切れようと祈紐を作り続ける。
「まだ太陽は天にあり。光をこの地へ!」
ククノチ(ec0828)も天を仰ぎて、太陽のカムイに思いを馳せて舞い続ける。
「この冷たい地に、暖かい風が流れますように。優しい月光が注ぎますように‥‥」
横笛に祈紐を結わえると、アニエス・ジュイエ(eb7954)はそっと奏で出す。
せめて叶わぬ夢ならば。一時でもいい、その幻想が紡げるようにと。
リュシエンナ・シュスト(ec5115)の歌声が響く。
瘴気の壁を退けられるよう、強い祈りに答えてか。握り締めた祈りの結晶が強い輝きを見せていた。
(担当:からた狐)
●最後の、その時を迎えるまで
「皆さん、此方に集まってください」
雀尾煉淡(ec0844)の呼び掛けに、多くの冒険者が彼を中心に輪を作る。そうして放たれる純白の輝きはレジストデビル、範囲内の全てのものに神の加護を。
更には様々な色合いの輝きがあちらこちらから上がった。
ルミリア・ザナックス(ea5298)のオーラボディ、シーン・オーサカ(ea3777)のレジストコールド。これが最後の決戦になるのならば、誰一人力を惜しんでなどいられない。
「そう簡単にやらせへん! 勝負や!!」
振るわれる杖が描いた軌跡の向こう、広げられる翼は何頭ものペガサス達。
「お願い、力を貸して」
琉瑞香(ec3981)、ガルシア・マグナス(ec0569)、アイリス・リード(ec3876)らの天馬達が、煉淡の術に間に合わなかった仲間達を守護する。
「これ以上のぶつかり合いは‥…悲しみの連鎖は‥‥どうか、断ち切れますように」
アイリスは両手指を折り重ね陽の射さぬ空に祈る。
この祈りが、どうか天に届くように。
そしてその祈りを守る為に剣を抜くオイル・ツァーン(ea0018)ら剣士達。
「斬り付けて倒したところで事が済むとは思えない‥‥祈りが鍵になるのなら、彼らを守るまで」
前に出て構える彼の隣には、やはり同じ思いを抱えたカノン・リュフトヒェン(ea9689)や伏見鎮葉(ec5421)らが並ぶ。
刀に結ぶ、祈紐。
その一太刀にも想いを込めて戦おうという彼らに守られて、祈りに集中する彼女達もまた純白の光に包まれていた。
サクラ・フリューゲル(eb8317)のホーリーフィールド、麻津名ゆかり(eb3770)のムーンフィールド、それらが等間隔に、竜を囲むよう、輪となって形成されていく。
「祈りの紐で竜を囲むのです」
そう皆に指示を出すシャリーア・オレアリス(eb4801)に、否を唱える者はない。
「祈りましょう」
「奏でましょう」
爪弾かれる弦の音色は、単音から和音へ。
合奏へ。
「みんなバラバラな旋律を奏でるよりは誰かの音にあわせて演奏した方が、より大きく強い力を発揮できるんじゃないかな?」
ならばそれは、此処以外でも祈る皆と揃える事は出来ないだろうか。そうして一つになる音が、心が、やがては敵を抑え、仲間を守る力となるように。
セフィナ・プランティエ(ea8539)は仲間によって張られたホーリーフィールドの内側で膝を付き、十字架を手に包む。
「この深き地でも神はわたくしたちの声を拾ってくださる」
ならば神の手を離れた子にも安らぎを。
光を――。
(担当:月原みなみ)
●大空を制する者
──地獄・コキュートス・上空
そこはまさに激戦区。
有効射程は実に500m。
大宗院鳴(ea1569)の放ったライトニングサンダーボルトが『魔風使いの竜』に直撃した。
それはほんのわずかのダメージしか与えなかったが、今までとは違う。
命中るし、ダメージも叩き込める。
この彼女の行動の直後、地上の魔法兵団が次々と上空に向かって魔法を斉射する。
「私も頑張るっすよぉ♪〜」
そう叫びつつ、クリシュナ・パラハ(ea1850)がグラビティキャノンを唱える準備に入る。
彼女の魔法では届かない為、上空の『マフ鬱かいの竜』が怒りで接近してきたときに叩き込もうというのだろう。
「闇よっ!!」
レティシア・シャンテヒルト(ea6215)がシャドウフィールドを発動。
それは『魔風使いの竜』の頭部付近に発動するが、ほんの僅かで魔竜はそのフールド範囲から飛び出してしまう。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇつ」
シェリル・シンクレア(ea7263)とルメリア・アドミナル(ea8594)のライトニングサンダーボルトが発動。
次々と稲妻が地上から上空へと放たれる。
「続いて第二波っ!!」
さらに ジル・アイトソープ(eb3988)とリーマ・アベツ(ec4801)のグラビティキャノンが発動。
さらにそこに追い撃ちを書けるように深螺 藤咲(ea8218)のファィアーボムとハロルド・ブックマン(ec3272)のアイスブリザードも叩き込まれる。
だが、そのほとんどがかすり傷程度しかダメージを与えることはなかった。
辛うじてライトニングサンダーボルトによってその皮膚が引き裂かれたものの、それ以外は全くといっていいほど無キスに近い。
「こ、ここまでダメージか入らないなんて‥‥」
地上にいる敵ならばまだ対処のしようがあるだろう。
だが、いま上空を飛んでいるのは、まさしく最強。無敵の存在。
早く飛び、硬く、耐久力が高い。
そんなシンプルなものだが、それが逆に手を出せない要因となっていた‥‥。
「も、もうダメなのでしょうか‥‥」
そう半ば諦め顔になっていたのも束の間。
突然『魔風使いの竜』は反転し、遥か遠くへと旅立ってしまった。
地上へは向かえない何かがあったのだろう。
そしてこのタイミングで、冒険者達は反撃の狼煙を上げた。
数多くの悪魔や魔物など、それらの殆どを返り討ちにする。
そしてきがつくと、砦を制圧していた悪魔達は一掃されていた‥‥。
(担当:久条巧)
●祈りが力に、想いよ届けと
万魔殿に設けられたその祈りの場所は、今までのどこよりも色濃い瘴気が満ちていて、そこがルシファーのいる敵の本拠地である事を、嫌がおうにも感じさせられた。
「いってらっしゃい、頑張って☆」
そんな地にあってそれでも明るさを失わないのは【楽団30人未満】のジュディス・ティラナ(ea4475)。出陣式とばかりに手を叩き、戦いに赴く彼らを見送る。戦いに行くみんなと大好きな家族とお友達に、ありがとうといってらっしゃいを込めて。
「祈りの力増幅、結界、そして精霊の助力を願う場に、神様と、精霊さんに祈るのです」
六芒星陣を作ってその中心に祈りの結晶を設置したユーリユーラス・リグリット(ea3071)。この際、通常は信仰は一つだなんて事を言っている場合ではなく。大切な人を護ってください、力を貸してくださいと思いを込めて曲を奏で始める。
「皆で心合わせるのが大事だからね」
祈紐の設置を済ませたフィン・リル(ea9164)は指揮を取り、まずは隊員達と共にメロディーを使用して儀式の目的や流れを伝える。ここに集まった者はそれぞれ皆、祈りに思うところがあって集まっているのだろう。その祈りが全て束ねられれば、きっと素晴らしい力になるに違いないから。
♪
誰も彼も 違うのに気付く
1人でも 強く生きたい
君の手に 温もり感じ
嬉しくてつい 握り返す
君からの愛 伝えたくて
誰かを愛し 広げてゆく
これからもずっと 繋がっていて
慈愛の気持ちを込めてメロディーに乗せられた白翼寺花綾(eb4021)の歌が場に響く。
【拠点防衛隊】は儀式の護衛をしながらその歌に耳を傾けていた。イレイズ・アーレイノース(ea5934)は祈紐を手にしながら、デティクトアンデッドで周辺警戒を。
「流れ込む瘴気がルシファーを解放していくなら、瘴気を祈りの力で消す事が出来れば、力の解放は大きく減じる筈」
万魔殿に運び込まれる祈りの品々の護衛をしながらバル・メナクス(eb5988)は呟く。デビルやカオスを憎いと思う心すら、戦い自体が瘴気を増やす原因になってしまうのなら、祈りの力で対抗して見せよう――そんな思いがわいてくる。
品物を祭壇に運びながらも心の中で祈りを捧げるのはトレント・アースガルト(ec0568)。ラグナート・ダイモス(ec4117)とダリウス・クレメント(ec4259)は仲間を守るように、退路を守るように戦いながら、祈る。
「瘴気を断たなければ、いずれ更なる災厄が起きる予感がする」
だから祈るのだ、とボルカノ・アドミラル(eb9091)は儀式に加わった。
「祈り紐を繋いでいき、祈りと想いが皆の心が繋がるように、優しい祈りを、母の愛を込めて祈り、カオスの瘴気を弱め、ルシファーさんを再び眠りにつかせようと思います。即ち、何時の日かの改心を信じて」
「祈り紐と皆さんの祈りを繋いで、光の鎖を形成してルシファーさんの瘴気を減じていき、混沌竜ではなくムルキベルさんが敬愛したような皇帝としての姿と心を取り戻せるよう祈りましょう」
会場に響く美しい歌にあわせ、【世界騎士団】のゼノヴィア・オレアリス(eb4800)とカーラ・オレアリス(eb4802)が祈りを捧げる。ルシファーよ、何時か彼が元の姿に戻りますように、と。
祈りには様々な想いが抱かれている。人の数ほどその想いはあるのだ。
【白騎士団】のマリア・オロソフ(eb8873)は一心不乱に祈る。
「大きな力が眩しかったり、闇が深いのはわかる。でも、小さな光を集めても闇を照らせるし、優しい灯りになると思う」
「ルシファーを封印できるように気合を入れて祈りますっ!!」
小さく拳を作ったのは深海未咲(eb1839)。
「この祈りは、今だけの祈りじゃない! 愛と平和は、私たち皆の永遠の願いなの!! ルシファー、あなただって忘れてるだけよ。愛の素晴らしさを」
シーダ・ウィリス(ea6039)が万魔殿の奥に向かって叫ぶ。
「あなたは大いなる父に愛された日々を忘れているだけです」
フローラ・タナー(ea1060)は聖母セーラの慈愛を説き、最愛の夫や子供たちとの幸せな日々をルシファーに語りかける。きっと、届くと信じて。
明るく、希望に満ちたメロディーでティアラ・ノート(ea6119)は歌う。
草の香る大地 優しさ染み入る水
家族を温める炎 頬を撫でる風
駆け回る子供たち 愛するあの人
なんでもない幸せがほしい♪
「これ以上悲しみを重ねるのはやめましょう? 元は明けの明星と讃えられた貴方様。明星は私達の生ける大地を照らし見守るもの。どうかそのお気持ちを思い出されて下さいませ。神は貴方をも見守っておられますわ、きっと」
万魔殿の建物を見上げて、【淡雪守護隊】のラヴィサフィア・フォルミナム(ec5629)は切々と語りかける。無駄な事だとは思わない。この想い、ルシファーに届くと信じている。
「私に戦う力はないけど、祈ることなら私にもできる」
ルシファーに再び眠りを――アズライール・スルーシ(ea6605)は祈る。
「ルシファーよ、神に反逆した天使が『神になる』とは矛盾しておらんか? お前にとって神は憎むべき存在なのにそれでも神になると?憐れな‥‥自分の意思すら無いのか?」
慈悲と哀れみのこもった室川風太(eb3283)の祈り。
「封印の力が強まるようにそして、ムルキベルさんもきっと、ルーさんがカオスに飲まれてしまうのは望んでないから」
「お前はカオスに利用されているだけだ。本来の自分を取り戻せ。大天使長だった頃の記憶を思い出せ。お前は本来優しい天使だったばすだ」
カルル・ゲラー(eb3530)のリュートが紡ぐ優しい音色に室川雅水(eb3690)の蛇皮線での鎮魂曲。
「いやぁルシファーはんのために祈らせてもらいまわすわ〜」
アンリィ・フィルス(ec0088)がそう宣言し、そして「ど〜も、このおっさん転寝してる間に戦争始まったんちゃいますのん?」と付け加える。眠りについているルシファーを、より強化して目覚めさせるために七つの冠の探索が始まったのであるからして、最初はルシファーが眠りについていたことは否定できない。
「ルシファー殿。これ以上の瘴気は貴方自身を蝕みます。貴方に忠節を尽くした悪魔達の為にもどうかご自分を保って下さい」
ホーリーフィールドで仲間たちを守りながら、雀尾嵐淡(ec0843)が叫ぶ。
「色んな思いのこもった物を鎖につなげばいいんだよね、じゃあボクも頑張っちゃうぞ」
「では、私も近くに」
レムリナ・レン(ec3080)とマール・コンバラリア(ec4461)は「眠れ」と想いを込めて祈紐を結び。
「『人』を甘く見たのがあなたの敗因よ。諦めて眠りなさい、悪魔の王」
最悪の事態を招かないためにも出来ることはする。それだけのことだ――そう語ったリフィーティア・レリス(ea4927)は歌と踊りで祈りを捧げ、フレイ・フォーゲル(eb3227)はそれが大きな結界になれば、と祈紐を結んでいく。
祈りと想いと――封印の鎖は少しずつではあるが確実に強化されていった。
(担当:天音)
●精霊の加護、その先へ――
戦いが、始まる。
白兵戦を挑む者、魔法戦を挑む者がそれぞれに冠の竜を目指し、行く。
「援護は任せて!」
魔剣を構え周囲の皆に檄を飛ばす水無月冷華(ea8284)の声に応えるように、荒巻美影(ea1747)やシャノン・マルパス(eb8162)らが地を駆る。
放たれる竜のブレス。
「!!」
「させない!」
それと仲間の間に割って入るのはシャリーア・フォルテライズ(eb4248)が駆るドラグーン。続くキャペルスはガイアス・クレセイド(eb8544)。
「っ‥‥!!」
機体の内側にいても感じる衝撃の強さに、機体を壊せば工房長が泣くか怒るかと思う搭乗者達は、しかし。
「幾ら壊されても、それより早く直してあげるわよ!」
ウィルの工房に所属するゴーレムニスト達が支える。
機体が壊されても。
「くっ‥‥!」
例えば仲間の身、そのものが傷付いても。
「はぁっ!」
倒れた仲間を庇い、エセ・アンリィ(eb5757)が声を荒げる。
「要救助者一名、急げなり!」
「運べ!」
「っ‥‥俺はまだ、戦える‥‥っ」
ジラルティーデ・ガブリエ(ea3692)が鎧の効果で再び立ち上がろうとするも、リト・フェリーユ(ea3441)がさせない。
「いけませんっ、苦しみや痛みを抱いたままでは効く攻撃も効かなくなってしまいます」
ですからお願いですと応急手当を施すリトの手を、ジラルティーデは拒めない。
「‥‥っ」
こうして動けぬ時間を歯痒く思いながら見上げた空には、パラーリア・ゲラー(eb2257)のロック鳥が負傷者や、‥‥時には死者を乗せて翔けていく。
この戦いは、これが最後。
「はぁああああっ!!」
「うぉらああああっ!!」
幾重もの太刀が振るわれ、その度に竜が暴れる。
『ヴォオオオオオオオ‥‥!!』
咆哮。
業火。
「急げ危ない!」
「救護スペースへ!」
クレリックの元へ負傷者を運べと何人もの冒険者が戦場を駆ける。
「‥‥っ‥‥行く」
「ジラルティーデさん、怪我がまだ」
「此処で命を懸けなければ未来そのものが失くなってしまうんだぞ!」
此処で勝利しなければ残るは破滅、逆に此処で勝利したなら人の世は守られる。例え其処に自分の命は残らずとも、共に此処まで戦ってきた仲間達が。その、大切な者達が紡ぐ未来は終わらない。
「俺達は、そのために此処にいるのだろう?」
「‥‥っ」
その言葉を否定する者などいない、皆が同じ想いだ。
だから、こそ。
重なる旋律。
歌う。
舞う。
心を、一つに。
『‥‥人の世を、守らなければ‥‥』
不意に響く柔らかな声と、地獄の空に輝く光。
冒険者達の想いに応えたのは、かつて彼らによって救われた月姫――マルバスによって封じられ、境界の王によって目覚めさせられた月姫は『人の世と地獄を繋ぐ唯一の』アルテイラ。
『‥‥精霊達よ‥‥』
彼女の広げる腕に、冒険者達が同伴していた精霊達が応える。祈る。
広がる、光。
『精霊達よ‥‥私達の友を‥‥仲間を、家族を‥‥彼らの未来に続く道を、護りましょう』
「――‥‥!!!!」
月姫の声に応えるように精霊達の輝きが瘴気の障壁を貫く。
それは、冒険者達の心が精霊の加護を受けた証。
これまでたくさんの犠牲を払いながら、ようやく得た光の先。
彼らの結末は何処に向かっているのだろうか――。
(担当:月原みなみ)
●覚醒する貴族
──地獄・コキュートス・ゲート
その貴婦人はゲートの向う、人間の住まう世界からやってきた。
配下の悪魔達を従えてゆっくりとゲートを越えてくると、ゲートを護っていた冒険者達に向かって戦闘を仕掛けてきた。
「あんた、名前は?」
来生十四郎(ea5386)がそう呟きつつ、ゆっくりと魔剣ストームレインを構える。
「人に名を訪ねるのなら、先ずは自分の名を告げるのが人間の礼儀ではないのか?」
クスリと笑いつつ、そう呟く悪魔。
「全くだが‥‥悪魔に告げる名前なんてねえよっ!!」
──ズバァァァァァッ
勢いよく振りかざしたストームレインが悪魔に直撃。
だが、傷がまったく入らず、ただ衣服を切り裂いたのみであった。
「ば、馬鹿な‥‥デビルスレイヤーだぞ? 無傷なんてことあるのかよっ!!」
驚愕してそう呟く来生。
「ほう‥‥そんななまくらがデビルスレイヤーだとは側痛いわ。憶えておくが言い。妾の名はベルフェゴール‥‥そなたの魂を食らうものよ‥‥」
そう告げた刹那、来生の胸部にベルフェゴールの抜き手が突き刺さる。
そのまま背中に突き抜けた手には、来生の心臓か握られていた。
──ブシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
一気に握り潰された心臓。
そして鮮血を流しつつ来生は絶命した。
「次はだれが掛かってくるのじゃ?」
艶のある笑みを浮かべつつ、その場に居合わせる冒険者にそう呟くベルフェゴール。
「う‥‥嘘だろ‥‥」
仲間の死。
ライル・フォレスト(ea9027)はゆっくりとそう呟くと、目の前のベルフェゴールに向かって『サンクト・スラッグ』で斬りかかった。
これもまたデビルスレイヤーであり、悪魔を斬る為に作られた魔法剣である。
だか゜。
──ガギィィィィィィィン
そのライルの一撃を手にした杖で弾き飛ばす。
「アリオーシュ‥‥やっておしまいなさい」
そう告げると同時に、同行していた悪魔アリオーシュにライルの相手をさせるベルフェゴール。
「じ、邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
そう叫びつつアリオーシュに向かって切りかかるが、ライルの攻撃はアリオーシュに届かない。
「ベルフェゴール様。このものの魂はそこそこに上質。いかがなされますか?」
「いらぬ。そなたが食らうがよい」
そうにこやかに告げると、ベルフェゴールは周囲の冒険者を威圧しつつ、コキュートスへと歩きはじめる。
「悪いけれど、先には進ませないよっ」
エイジ・シドリ(eb1875)がそう告げつつ、ベルフェゴールの前に立つと縄ひょうを構える。
「ほう」
と笑いつつ、ベルフェゴールも杖を構える。
「大方、おまえさんの狙いは上空を飛んでいるあいつじゃないのか?」
トンプソン・コンテンダー(ec4986)もそう呟きつつ武器を構えて前に立つ。
その動きに合わせて。周囲を大勢の冒険者が囲む形を取る‥‥。
「ならば、これ以上先には進ませませんっ」
桂木涼花(ec6207)もまたそう啖呵を切りつつ身構える。
「これだけの数の冒険者を1度にどうこうできるとでも?」
そう呟きつつ、一気に間合を詰めてベルフェゴールに向かって切りかかるマリナ・レクシュトゥム(ec4664)。
──ズバァァァァッ
だが、やはり衣服を切り裂くのみで本体には傷一つつかない。
「‥‥そんなナマクラじゃあ‥‥ダメね‥‥」
そう呟きつつ、指をパチンと鳴らすベルフェゴール。
と、突然彼女の横に漆黒の炎が燃え上がると、それはマリナに向かって飛んでいく。
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
と、その炎に全身を焼かれ、マリナは瀕死の重傷となる‥‥。
「さあ、次の相手はどなたかしら? それとも素直に道を譲って頂けるかしら?」
そう呟くが、冒険者達は一歩も譲らない。
「そう‥‥そんなに死に急ぐの‥‥」
そう呟くベルフェゴールの表情から笑みが消える‥‥。
そして、ゲート付近の冒険者達はほぼ全滅状態まで追込まれてしまった。
だが、それでもベルフェゴールを先に進ませることはなく、彼女を再び地上へと撤退させることに成功した‥‥。
(担当:久条巧)
●魔法使いたちの奮戦
万魔殿の魔法部隊も仲間を支援し、ルシファーとの激闘に入っている。
「大魔王さんよ‥‥もういい、もういいだろ!!」
巴渓(ea0167)はオーラショットを連発。この無意味な戦いの終結を望んで戦う。
「古よりの神の鎖、今を越えその先を創るための皆の祈り‥‥」
常葉一花(ea1123)は魔法を詠唱しながら味方を鼓舞するように言葉を叩き付ける。
「そして今、此処で二つを繋ぎ封をするは、我らが闘い」
常葉は腕を一振り、閃光がほとばしってルシファーに叩き付けられる。
「さあ、無限に続く封印の鎖を繋ぎ留める錠(かぎ)となりましょう!!」
ライカ・カザミ(ea1168)はメロディーで士気向上、レジストメンタルを使い、ムーンアローで攻撃。
「飛べ飛べ吹っ飛べ!」
ガユス・アマンシール(ea2563)はストーム達人を連発してデビルたちを吹き飛ばしていた。
ピチュア・リティ(ea5038)は【白騎士団】の火番♪ 食事は温めた方が美味しいし、コキュートスは寒いから手足も温めたい。のんびり火を起こせない時はファイヤーコントロール使う。
「危ない! マグナブロー!」
「あんたいい加減消えて! 出ないとここが寒いのよ!! うう、あったかいスープが恋しいわっ!! ってふざけてる間にもサンレーザー!」
ターム・エリック(ea6818)はルシファーにレーザーを打ち込んでいく‥‥。
ドリス・クルーガー(ea9966)は【白騎士団】の罠結界担当。儀式や補給をしてる仲間の直衛。上空からの襲撃に対処できる手段は少ないだろうからマグナブローとファイヤートラップの配置で迎撃。
「ここで下がる訳にはいかないでしょ!!」
「家族との生活が、今の私の宝物ですの」
キルト・マーガッヅ(eb1118)は言って呪文を唱える。ブレスセンサーで隊列把握。戦線が薄い場所を優先してウインドスラッシュ、ストームで範囲攻撃し敵軍を牽制する。
所所楽林檎(eb1555) は舞うような足取りで魔法を完成させると、ブラックホーリーにて仲間を支援していた。
「愛‥‥天のもたらすそれは勿論‥‥あたし自身の愛も、見つめ‥‥」
キドナス・マーガッヅ(eb1591)は【誠刻の武】 仲間のしんがりから簡易救護。
「これくらいなら、自分でも癒せる…貴殿に武運を」
仲間にリカバーをかけて送り出す。
久駕狂征(eb1891)もルシファーの元へ赴いた陸堂の妻、アゲハを守っていた。
「団長の奥さんである、姫様を守るのが役目だね」
スクロールのファイヤーボム初級で牽制、月魔法のコンフュージョンで悪魔を混乱させて、同士討ちを狙う。
「愛は偉大だと思いたいね」
「悪想念渦巻くこの地に癒しの風を」
十野間空(eb2456)は言って魔法の力を解き放つ。テレパシーの支援とシャドウボムで仲間を援護。
「混沌は存在を取り込み奪う。この世界の心や意思、歪ませはしない」
ローガン・カーティス(eb3087)はFエリベイションを付与すると、ファイヤーボムは祈紐や仲間巻き込みに注意して敵勢中心に攻撃。
アルスダルト・リーゼンベルツ(eb3751)も【誠刻の武】フレイムエリベイション専門を自身とアゲハに付与。高速詠唱+グラビティーキャノン初級をお見舞い。ローリンググラビティ専門は味方を巻き込まないよう注意。
マイユ・リジス・セディン(eb5500)もまた【誠刻の武】フレイムエリベイション専門を自身に付与、高速詠唱からのアイスコフィン専門とアイスブリザード専門を叩き付ける。
ジム・スミス(eb6087)は【白騎士団】の応援団長だ。フレイムエリベイションでフレーフレー。空襲してくる敵にはローリンググラビティーで岩や氷を巻き落として体勢を崩す。
「連携して撃墜してやる!」
ビーツァー・パルシェ(eb6563)もまた【誠刻の武】、コアギュレイト専門(高速詠唱)で敵を拘束して援護。
「今は戦う時、そうだろう?」
エメラルド・シルフィユ(eb7983)はTN特攻隊の一員、敵の攻撃を盾で防ぎ、剣で打つ払いつつ、レジストデビルを皆に付与していく。リカバーでの治療も行う。
「テンプルナイトの名において」
クローディア・ラシーロ(ec0502)はレジストデビル・ブレッシングを仲間にかけつつ、前線で武器を振るいリカバーで戦線を維持する。
ミルファ・エルネージュ(ec4467)はTN支援し隊、【神霊儀式】に参加。水の基点に立って祈りながら攻撃を援護する。
「いくわよ!」
アイスブリザードを空中の敵に。
リーリン・リッシュ(ec5146)、彼女もまた【誠刻の武】京都隊。高速詠唱ローリンググラビティー専門で攻撃していく。
「ルシファーは暴走してるだけだと思うのよね。だから誰かが止めてあげないと」
カナード・ラズ(ec5148)もまた【誠刻の武】京都隊、ムーンアロー専門で敵を牽制、味方が攻撃する隙を作っていく。
かくして魔法使い達は、迫り来るルシファーと魔物の群れに立ち向かう仲間達を支援していく‥‥。
(担当:安原太一)
●限界を越える
瘴気の雨はさらに濃度を増し、負の結実となって降り注ぐ。
コキュートスの絶望の風に乗って、どこまでも広がりそうな勢いを持ちながら、その実、範囲は限定されている。
まるで何かに阻まれているかのように。
「皆の祈りが瘴気の広がりを抑えているのか? 全滅するか、食い止めるられるか‥‥。帰って鍛冶に専念したいんでな、早く終わらせてくれ」
水に狂化を起こしながらも、バルザーガ・ロストロ(ea9632)がバーニングソードをかけて回る。
「折紐を付けておくと、効果があるかもみたいなんだけど」
エラテリス・エトリゾーレ(ec4441)がマトックofラックに祈りの紐を結びつけ、思いっきり叩き付ける。
果たして効果は‥‥。
「ダメか」
落胆の声は、誰の物か。
紐は祈りの手段であって、力の結集とはまた違う。
「無駄だ。ルシファー様の力により、地獄の瘴気そのものが力を増している。お前たちの曖昧な祈りなど恐れるに足らぬ」
現れたカオスニアンの放つ雷が一帯を打ち払った。
「魔王に組する者!! 柄じゃないが、ここは祈る仲間を守るのが最善。お相手願おうか!」
「よく言った! 己らの無力さ噛み締め、地獄の瘴気に消えやがれ!」
グレイン・バストライド(eb4407)がホーリーパニッシャーを構える。
浅黒い肌に、黒い髪。肌に刺青を掘り込んだ集団が、氷山の高みから笑みを零して滑り降りてくる。
「まだ、終わっていないでござる! ピンクの靄の力を使って、障壁中和!! お楽しみはこれからでござる!!」
【ジャパン医療局】の暮空銅鑼衛門(ea1467)が、羞恥心の志を共にする仲間たちと飛び出してくる。
引き抜きたるは、エロスカリバー!! ある意味世界で一番危ない剣!!
駆られる全裸衝動に、衣服脱ぎ捨て身構える。大事な所は靄で隠れはするものの‥‥、
「まずい、皮膚が炎症を!! 急いで蘇生を!!」
仲間からのレジストコールドで冷気は防いだが、瘴気までは。
已む無く倒れて救護班に強制収用。
「どこ見てるのですか。余所見はダメですよ」
目を点にして固まった敵たちに、エルマ・リジア(ea9311)のアイスブリザードが襲い掛かる。
「この!!」
正気に戻り、怒りも露わに打ちかかってくる。
「俺に出来る事を、出来る範囲でやるってところですかね〜」
どことなく暢気に告げると、井伊貴政(ea8384)は太刀「鬼神大王」で迎え撃つ。
「俺達の世界に手を出さねば、こうはならなかった‥‥。人それを『自業自得』という。貴様らはやりすぎた! 人間をなめるな!」
【西中島隊】が動く。
オーラ全快。西中島導仁(ea2741)が霊剣「ミタマ」に力を乗せて、振り下ろすとばっさりと血肉が断たれる。
「だが、それもここまでよ。壁すら越えられぬ愚か者。所詮貴様らは掌の上の猿でしかない!」
血反吐を吐きながらも、なお相手は余裕の表情でせせら笑うが。
「いーや、まだだよ! 一度で駄目でも、何度でも続けるだけ! 水が石を穿つように。皆が大好きって思いが届くまで!!」
ミリア・タッフタート(ec4163)が弓を引き絞る。
祈紐が添えられた矢。いや、大勢の人の祈りが結晶化した矢の形をした護符は、瘴気を弾いて輝いてすら見える。
「馬鹿な! そんな物が?!」
敵の間に動揺が走る。阻止しようと動く者があったが、その隙を逃す筈も無く、闇に還される。
そして、矢は放たれた。
「とーどーけーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ミリアの叫びと共に、祈りの聖矢が空を切り、瘴気の壁に突き刺さる。
――!!!!!!!
もろく薄い音を上げて、瘴気が剥がれ落ちた。
「エレメンタルフィールド全開!! カオスゴーレムが身に纏っていたのと同じならば、これでいける筈!」
大きく穿たれた穴が修復される前に、☆ メイ・ゴーレム隊のベアトリーセ・メーベルト(ec1201)操る巨大なゴーレムが手をかけた。
瘴気の圧が揺らぎ、壁が波打つ!
合わせて、精霊魔法を打ち込んでいけば千切れる様に瘴気が消える。
「精霊の力は有効。‥‥だったら、これでどうだ!」
風生桜依(ec4347)が名刀「獅子王」を叩き付ける。
瘴気がカオスの力であるならば、生命の力であるオーラをぶつける。オーラパワーとオーラエリベイションを行使し、素早く掠めるように刃をただ一点に集中し、穿つ。
「くっ!!」
音も無く、桜依が弾き飛ばされた。
見ると、壁は確かに削れている。だが、すぐに湧き上がる瘴気が穴を塞ぐ。
「まだよ! 仲間とお茶を楽しむ為にも怯んでられない! ‥‥全ての力を、祈りを! ただ一点へ!!」
朱蘭華(ea8806)はオーラを纏うと気を発し、形成された猛虎が壁を叩く!!
絶望の雨は降り注ぎ、死を振りまく。
だが、折れる者は誰もいない。過酷な状況の中でも、ただ挑む。
(担当:からた狐)
●呼び声に答えし者達の祈り
封印の鎖を強化するための儀式は、未だ続けられている。
「勝利は勝利でも力尽くで倒しても仕方がないと思うんだ。だから、祈りの力が、愛の力がこれほどに強いというのを見せつけてあげる!」
自分の祈りが愛する人の力になりますように――【誠刻の武】のアゲハ・キサラギ(ea1011)は、静かに祈りを捧げる。
(「篭めるのは‥‥うまく表せないけれど、確実に在る‥‥愛」)
鉄笛と剣を使用した舞で、【誠刻の武】京都隊の所所楽柳(eb2918)は愛を表す。
「祈りか‥‥闇に生きる忍なれど、光があるからこそ闇は美しい。闇だけの世は面白くないのでな‥‥と、不遜なことを言うが神仏に対する敬虔な心はある。どうか、闇を照らす光が大きくあらんことを」
前線で戦う主を思ったのか、【VizurrOsci】の百鬼白蓮(ec4859)は控えめに呟いた。
「ぐっ‥‥」
その時、誰かがうめいた。誰もが、感じていた。一瞬であるが、瘴気が強まった気がしたのだ。もしかしたら、外で何かあったのかもしれない――だが今はそれを知る術は無い。ここで祈りを続けるしかないのだ。
神に、そして精霊に祈る儀式が今行われようとしていた。
神は天使という御使いを遣わされた。それでは、精霊は?
(「アトランティスで会ったアナイン・シー様にも協力願えないかな‥‥?」)
【TN支援し隊】の鳳双樹(eb8121)はアトランティスで出逢った月の上級精霊、アナイン・シーの事を思い出していた。かの精霊は折に触れて様々な儀式で祈りや愛の力を集めて地獄へと力を送ったりと、何かと力を貸してくれていた。そして――彼女は地獄に来ているはずだった。双樹自身、その説得に加わったのだから。
「知ってる顔があってよかったわ」
「!? アナイン・シー様!?」
地獄の戦いでは常に後方での伝達やメロディーでの慰撫などに力を裂いていたというアナイン・シーが、突然前線に現れた。白い服を纏った長い髪の乙女。手に竪琴を持ったその姿で、少しばかり宙に浮いている。
「コキュートスでカオス八王の一人、炎の王が遊んでるのよ。さっき一瞬瘴気が増えたのもきっとそのせい。けれども今、別働隊が炎の王を追い払う為に動いているから、安心して祈りを続けて」
「カオス八王の一人!? それって大変な事なんじゃ‥‥」
顔色を変えた双樹に、アナイン・シーはいつもの艶然とした笑みを浮かべて微笑んだ。
「あちらに向かった仲間を信じて。多少儀式に影響が出るかもしれないけど、大きな影響は出さないで終わらせてくれる――そう信じるのよ」
「あの、本物の月の精霊様、ですか〜?」
「ええ、もちろん」
「じゃあ、私達の祈りに力をお貸しください〜」
リア・エンデ(eb7706)の言葉に、アナイン・シーは「ここまできたら乗りかかった船だしね」と快諾。
「思いは一つ、みんな無事に地上に帰ってシアワシェアリングなのですよ〜」
神霊儀式が始まる。
リアは神と精霊に祈り、星宮綾葉(eb9531)は月の精霊に祈る。
「彼との未来のために」
♪その身を温めるのは沢山の祈り心の熱さ
その剣を握るのは 魔道書を開くのは一人じゃないよ
添えられた手をどうか信じて‥‥
月の精霊よ安らぎの光を‥‥
竪琴とメロディーで紡がれるのは、シェアト・レフロージュ(ea3869)の月精霊への祈り。
神へと祈りを捧げる者は、陣の中心に集まっていた。
「悔しいけど‥‥もうボクじゃ力不足‥‥」
【TN特攻隊】の猫小雪(eb8896)は神に祈る。皆を守って、と。
「デビルを倒す力を‥‥」
【TN守護隊】のロラン・オラージュ(ec3959)は、剣に想いを込めて。
「皆が無事に帰れますよう‥‥」
「私がいた世界とアトランティスそしてジ・アース‥‥、今は3つの世界を守る為に祈りましょう」
柊雪那(ec3723)も琴乃宮雅(ec3789)も一心不乱に祈りを捧げ、リスティア・バルテス(ec1713)はセーラ様へと祈りを捧げる。
「【精霊の友】たる私が陽の精霊に請い願う、ルシファーを封じる為に力を貸して!」
陽の基点に立ったレア・クラウス(eb8226)が。
「火の精霊よ、阿修羅神よ‥‥皆に力を!」
「火の精霊よ、ボクに力を貸して‥‥」
炎の基点に立った鳳美夕(ec0583)と鳳爛火(eb9201)が。
地の基点に立ったリディア・レノン(ec3660)が。
そして。
「清らかな風が私達の願いを届けてくれますよう‥‥」
風の基点に立ったカスミ・シュネーヴァルト(ec0317)が祈れば、6精霊に、そして神への祈りが完成して。
(「お力をお貸しください‥‥!」)
そんな強い願いに惹きつけられて地獄に降り立った精霊が他にもいた。
「アナイン・シーが戻ってきたりいなくなったりと忙しないとは思っていたが‥‥我が力が必要か?」
突如その儀式の場に現れたのは、白銀に輝く鎧を身につけた美しい女性。宙に浮いていることから、彼女が人間でない事はわかる。
「風の精霊力を感じます‥‥まさか」
カスミが立ち上がり、女性を見上げる。
「我が名はヴァルキューレ。普段はアトランティスのとある島にいるが‥‥この戦いは正義のための戦いか?」
「も、もちろんです!」
その場に集まった複数の者達が、立ち上がって頷く。それを見たヴァルキューレは満足げに頷き。
「ならば喜んで我が力を貸そう。共に祈りを捧げればよいのだな」
「お願いします!」
再び、一同は配置につく。
想いを胸に、祈りを紡ぎ――そして、封印の鎖の強化を狙う。
目に見えないものだから。
けれども確かに存在するものだから。
力になる、と信じる事が重要で。
目に付く成果がないことで、諦めないことが重要で。
彼らは、祈り続ける。
戦うだけが全てではないと。
強き想いが、祈りが、力になる素晴らしい現象を、彼らは今までに何でも起こしてきた。
だからこそ、今ここで。
最後の、祈りを。
ヴ‥‥グル‥‥グァ‥‥‥。
万魔殿にうめき声のようなものが響いた。
それは強化された封印の鎖に動きを縛られた、ルシファーの声だった。
(担当:天音)
●陽を解き放つ光
凄まじい熱線が冒険者達を襲い、薙ぎ払った。
およそ人知を超えた領域の力を見せつけて、冠の竜は冒険者達を見下ろす。
『終わりだ。人の子らよ』
「いいや、終わりじゃない!!」
「ええ。私達の祈りも、夢も、希望も、まだ何一つ消えてなんていません!!」
その時、赤き光の星が煌めいて、闇を貫いた。
天城烈閃(ea0629)の投げ放った光の槍が、ゼルス・ウィンディ(ea1661)の炎の付与を得て‥‥。
ーーーーッ!!!
幾人もの冒険者の攻撃を受けて、それでもまだ冠に取り込まれていたキングスエナー。
しかし、今ついに最後の一撃を受けて。
封じられた太陽は人の想いの光を受けて、空へと解き放たれた。
『馬鹿なっ‥‥!?』
驚愕する冠の竜。だが、キングスエナーを再び取りこむべく、その巨大な首を‥‥。
「させるか!」
真幌葉京士郎(ea3190)とカイ・ローン(ea3054)が、その身を呈して竜の前に立ち塞がる。
放たれる斬撃と霊矛が竜の身体を切り裂く。先ほどまで竜を覆っていた強大な魔力が、その力を失っているのが分かる。
『どけぇ!!」
しかし、竜も必死。今までの余裕さえ見えた皇帝竜の威厳は最早無く。暴れ狂う邪神の、醜い蛇の姿となり果ててなお、最後の力をもって、二人を地に墜とす。
果たして、キングスエナーは‥‥。
ーーガシ。
「悪いが、こいつは返してもらう」
掴んだのは、鳥に身を変じていたジェームス・モンド(ea3731)。
急速に闇に覆われていた世界は色を変えていく。淡い明滅を繰り返していた神の鎖が、その輝きを取り戻していく。
「今一度、封印の鎖に縛り付けられ眠るがいい! 永久に!!」
東雲辰巳(ea8110)が叫んだ。人の祈りが、想いが、鎖の輝きを増していく。
『何故だ? 何故、人ごときに皇帝たる我が‥‥!?』
「今はカオスにのみ込まれたのであろうと、この地に堕天したのは、あなたの意思、あなたの罪によるもの。再び、悔いあらためる時が来たのです、ルシファー」
エミリア・メルサール(ec0193)は、かつて明けの明星と呼ばれた堕天使に、そう最後の言葉をかけた。
『おのれ‥‥おのれぇ‥‥!!』
「これで、最後だ!!」
なおも暴れる竜に、雪切刀也(ea6228)、アンリ・フィルス(eb4667)らが次々と攻撃を加えていく。
そして‥‥。
『覚えておけ、人の子らよ‥‥。我は滅びぬ。たとえ今もう一度、この地獄に封じられようとも、我はいつか必ず‥‥』
地獄の皇帝は、神の鎖に引きずり込まれるように、再び地獄の奥底へと封じられたのだった。
(担当:BW)
●永劫の牢獄
地獄にそびえる万魔殿の中に漂う瘴気と悪意。その中に充満する淀んだ重石が、ふと、解き放たれたような感覚を、そのとき冒険者たちは味わっていた。
「冠を取り返したしふー! ルシファーを封印したしふよー!」
万魔殿と、その周囲の戦いの場を飛び回るクリスタル・ヤヴァ(ea0017)たち【しふしふ同盟】や、広大なこの戦いの中で伝令をかってでた者たちが勝利を告げ、その報告にあわせるかのよう、万魔殿の内部に正常に澄み渡った、ともすれば酷薄な空気が漂い始めていた。
「あれは‥‥!」
万魔殿内部に渡る数多の橋の上の一つ、偵察の足を止めた限間 時雨(ea1968)の目に映ったのは、音もなく染み出るように現れた輝く鎖が、皇帝の腹の中ともいえるこの通路にいくつも姿を現すところだった。
覗き込んだ通路の遥か下、底の底では黒く淀んだ何かが水を引くように沈みこみ、あるいは鎖に絡めとられて引き込まれていくのが、ありありと感じ取れる。
「青銅の門ごと、混沌は封印されるようだね」
「‥‥この、戦いの元凶を突き止めたかったのですが‥‥」
万魔殿内部の調査を行い、神と悪魔の何たるかを探ろうとしていた沖田 光(ea0029)は、時が毛ないことに気づきつぶやき、皆に合流しつつ臍を噛む。
封印のための永遠の獄舎であればこそ、そこに人知の及ばざる世界、その抗争に関わる叡智は残されていなかった。
「しっかしまあ、これだけ手に入ったんだからよかったじゃねえか」
「ホントに持ってきてよかったんでしょうか‥‥?」
「そりゃ、持ち出した方がいいに決まってるだろ?」
仲間とともにいくつかのマジックアイテムを持ち出しながら、ルンルン・フレール(eb5885)の疑問にリスター・ストーム(ea6536)はどこ吹く風で答える。
「もし、こういった力ある品が一緒に封印されて、皇帝様に取り込まれでもしたら大変だからな!」
「おお‥‥? そんなことより、こりゃ、どうもおおごとぢゃぞ!」
バ・ジル(eb0246)がそういって指差した先、青銅の門があると思われる混沌のよどみが、突然としてその色を濁りから白へと変えていく。万魔殿の中の温度が急速に下がっていく。
「‥‥もしかして、封印が始まってるってこと?」
後退するための先を探っていた紅林 三太夫(ea4630)の懸念を指し示すかのように、空気が瞬間的に凍って爆ぜる音が、白く輝く永劫の氷とともに、ゆっくりとだが確実に、万魔殿全体を覆い始めていた。
見れば遥か先の視界の端では、万魔殿‥‥ルシファーの体からこぼれ生まれた魔物が醜い悲鳴を上げたかと思うと、通り過ぎる寒波に一瞬にしてその身を凍らされ、封印されていくのが見て取れる。
「こりゃ、早く抜け出したほうがええの〜」
「あああ‥‥神さま、罪深き我らに慈悲の手を〜。もう好き嫌いとかしないから〜!」
封印から逃げる魔物と遭遇し、戦いながら、広がり始めた永劫の氷から逃げるシトラス・グリーン(eb0596)と、一行の願いが万魔殿へと響き渡る。
そして、巨躯というには言い足りぬあまりにも巨大で黒き威容を誇った塔は、まるで溶けるかのように低く、低く、青銅の門の奥の混沌とともに、嘆きの氷に沈み込んでいった‥‥。
(担当:高石英務)
●氷に沈む嘆きの河
ルシファーは封印された。
その知らせは【しふしふ同盟】や、その他多くの直接、間接的な伝令によって、瞬く間に地獄中の冒険者達に伝達される。
「しふしふ〜♪ 最新ニュース、戦いが終わったよ〜!」
アウラー・サシカイア(ea2883)のその言葉を、周囲の者達は初め、なかなか信用しようとはしなかった。
「本当かい? あんたの『驚きの最新ニュース』には、毎度騙されてるからねぇ?」
ベアトリス・マッドロック(ea3041)が疑い深げにそう言えば、ヴィクトリア・トルスタヤ(eb8588)もうんうんと頷いた。
「アウラー君の前回のニュースは、『驚き! 全長二百メートルのシフールの神様が降臨した!』でしたから。今回は、それに比べれば多少インパクトに欠けると言いますか‥‥」
「いけませんわ、お二人とも!」
からかい半分の二人の態度に、ほっぺたを赤く膨らませたアウラー。
三人の間に、姜 珠慧(eb8491)が割って入る。
「アウラーさんは、決して嘘を言おうとして嘘を言っているのではないんです。ただちょっと、いつも裏付けに対する思慮がすっぽり足りないだけで、決して悪気は‥‥」
「うえ〜ん! 違うよ〜、本当にルシファーが封印されたんだよ〜!!」
「皆さん、喜んで下さい! 遂にルシファーが倒されたそうです。苦しい地獄での戦いも、これで終わりですよ♪」
ゴーレムグライダーから降り立った結城 梢(eb7900)の開口一番。その言葉の内容に、冒険者達は一斉に沸いた。
終わったのだ! それは勿論、地獄のポロリ大会が!
「ワッツ?! ミーの娘&妻命なアフェクションがジャストミートネ?」
「いや、我が輩の股間の物干し竿から醸し出される男気こそが、勝利の秘訣なりよ」
「やれやれ。男だらけ、地獄のポロリ大会もようやくお終いじゃな。全く、寿命が五十年は縮んだわい」
サントス・ティラナ(eb0764)、奇天烈斎 頃助(ea7216)、カメノフ・セーニン(eb3349)らが、裸の腕を組み合って互いの健闘を称え合う。それは、エロスカリバーのピンクオーラで瘴気の壁を破壊するという、頭も悪ければ、ギャラリーの精神にも悪いという乾坤一擲大作戦。付近はピンクの靄に包まれ、ポロリポロリの雨あられ。全く激しい戦いだった!
迂闊にも作戦に協力を申し出てしまったリーラル・ラーン(ea9412)が、傍らのエヴァリィ・スゥ(ea8851)にそっと漏らす。
「復活した途端にこんなモノ見せつけられたら、そりゃあルシファーさんだって引っ込みますよね‥‥」
「‥‥いや、私は、そんなに嫌いじゃない‥‥かも‥‥」
「えぇっ?! (すてーん どんごろごろぐしゃ! そして流血)」
―――戸惑い、一瞬の思考停止の後の大騒ぎ!
ルシファー再封印の報に接した冒険者達の反応は、大体どこも似たようなモノだった。本来ならここで、戦勝祝いの大宴会へと洒落込みたいところではあったが、そうはいかぬ事情もある。
初めに、その事に気がついたのは草薙 麟太郎(eb4313)であった。
彼の駆るグライダーの翼に、いつのまにか分厚く張り付いた白い霜氷。このまま、翼が重くなりすぎては墜落してしまう。慌てて近くの救護所の敷地内に着陸した草薙は、何事かと駆けつけてきた明王院 未楡(eb2404)にもその事情を説明する。
「コキュートスの温度が下がっている‥‥ですか? そう言えば、確かにそのような‥‥」
未楡が周囲の凍る大地を見渡した。
確かに寒い。
一度は溶けかかっていた筈のコキュートスの氷さえ、どうやら再び固く凍結し始めているようだ。
不安げに救護所の柵から外の光景を見つめる未楡に、サイーラ・イズ・ラハル(eb6993)が後ろから声をかける。
「どうしたのかしら、あなたは喜ばないの? 向こうでは今、秘蔵の酒樽の蓋が割られたところだけど」
「‥‥サイーラさん、お祝いの宴席は‥‥もしかしたらもう少し後にした方が宜しいかもしれません‥‥」
未楡は、言い様に踵を返す。
彼女の【アルボルビダエ】の仲間達は、まだ周囲で臨戦態勢のまま警戒を続けている筈だ。至急彼らと‥‥いや、地獄中の全冒険者達と連絡を取らなければ行けないかもしれない―――
「大丈夫、まだ乗れますから、押さないで!」
ポーラ・モンテクッコリ(eb6508)がフロートシップの甲板上で声を嗄らす。クァイ・エーフォメンス(eb7692)、レリアンナ・エトリゾーレ(ec4988)ら、【TN守護隊】を中心とした『空飛ぶ救護船』の面々達も、列を成す乗船希望者を捌くのに手が一杯である。
元より、救護船に改造されたフロートシップでは、重傷者や死亡者については地上か、それに近い最後方の救護所にまで後送する予定ではあった。それが、当初の予定に倍する乗船希望者を受け、すっかり予定が狂ってしまったのだ。
原因は、コキュートスを急速に包み込む厳しい冷気にあった。
浮かれ騒ぎ、この日の為にと隠し持っていた酒樽を開けた冒険者達も、中のワインや日本酒がざっくり凍り付いた様を目の当たりにすれば、流石に異変に気がついた。
寒いぞ? 何で? いくら何でも寒すぎる!
魔法的な効能を持つ耐寒具ならいざ知らず、あり合わせの薄い防寒着程度では、とてもではないが耐えられる寒さではない。冷気に耐えかねた冒険者達は、ある者は徒歩で、馬で、チャリオットで。そして多くの者達は、巨大なフロートシップに続々と乗り込み、白い闇に沈みゆこうとするコキュートスを後にする。
未楡の悪い予感は当たった。
‥‥いや、それは有る意味、神の封印が戻ったことの良い証拠でもあったのだ。
地獄の魔物を封じ込める氷の牢獄にとって、全てを凍らせる寒さこそが有るべき姿。
嘆きの川は冷え、凍え、白い氷に飲み込まれていく。
コキュートスは急速に、神の定めし往古の姿を取り戻しつつあった。
その本来の、永遠の牢獄の姿に―――
(担当:たかおかとしや)