リアルタイムイベント 呪眠〜死の風〜
シナリオ形態リアルタイムイベント
難易度普通
参加費無料!
募集人数無制限
報酬100,000(全作戦参加)
※活躍により
さらに追加報酬あり
スケジュール:
○ページ公開
2008年09月19日
○OP公開
2008年09月25日
○第1回結果発表
2008年10月07日
○第2回行動入力開始
2008年10月08日
○第2回結果発表
2008年10月15日
○エピローグ公開
2008年10月20日

■エピローグ■

 アレハンドロ、シュネイテーシスでの大規模な戦いがひとまずの集結を見せて数日後。
 王都エカリスはアレハンドロへの対応や周囲の町や村への救済で、いまだ多忙を極めていた。大きな戦いは終わったとはいえ、避難した住民達が自分達の家へすぐ帰れるかといえばそうはいかない。ブランカや小型スエーノの残党、暴れまわる暴走エレメントやモンスターの退治が済んで安全が確保され、更には建物が被害にあっている場合はそれを修繕してからでなくては今までどおりの生活は行えない。
 それはグヴァール島対岸においても同じで、アレハンドロへ向かっていたブリーダーが戻ってきた事で、ようやく以前どおりクヴァール島から訪れる敵対策にブリーダーを派遣する事ができるようになった。


「失礼します。ギルド長、ダグラス大臣はこちらにいらしてますか?」
「おお、ローラか。ダグ? いや、今日は見ていないが」
 ブリーダーギルドに訪れたのは、管理局局長ローラ・イングラム。用件は本人が口にした通りだが、ギルド長オールヴィル・トランヴァースの返答を聞いて小さく眉をしかめる。
「‥‥そうですか」
「ダグのやつ、また逃げ出したのか?」
 苦笑というよりどこか少し楽しそうに告げるオールヴィルに、ローラはあからさまな溜息をついて。
「まあ、この忙しさだからな。天下のサボリ魔大臣でなくても逃げ出したくなるだろうよ」
「だからといって逃げ出されては困るのです。猫の手も借りたいほど忙しいのですから」
「猫の手か‥‥」
 そういえばダグの奴は確か猫を飼って‥‥
「‥‥‥ギルド長、そういう意味ではありません」
「‥‥む、それは勿論わかっているよ」
 何故ちょっと思い浮かべただけの事が分かってしまったのだろう、もちろん本気で考えたわけではないが。


 その頃サボリ魔大臣は――王宮内のとある部屋に隠れていた。もちろん、事後処理の忙しさから逃げ出したのも理由だが、それだけではなく――。
「いいんですか? ローラさんが探していると思いますよ?」
「いいんだよ。息抜きくらいさせてくれ」
「そんな事言いながら、いつも息抜きしているんじゃありませんか?」
 くす、部屋の主が口元に笑みを浮かべる。
「そんなところは五年前と変わっていませんね」
「うるせえ」
 命令を下す大臣という立場にあるフェイニーズとしては、直接でないとはいえこの部屋の主の時間を、五年間奪ってしまった事をちょっとばかし気にしていたので来てやったというのに。この人物は五年前と変わらず余裕のある表情を浮かべている。
「それにしてもローラさんが年上になって、しかも管理局局長とは‥‥なんとも不思議な感じですね。アイラも大きくなっていましたし」
「まあ俺やヴィルなんかは五、六年年取ったってそんな変わりはねーが、人間の女っていいうのはアレだよな、五年もありゃ大分化ける」
「それはあまりにも女性に失礼ですよ。変わらない、ということはフェイニーズさんは五年間、変わらずに逃げ回っていたということですね」
 部屋の主が意地悪くフェイニーズをつつく。折角逃げてきたというのにここでも肩身の狭い思いをしなければならないのか――さて次はどこに逃げようか、そんなことを考え始めたフェイニーズの脳裏に、ふと反撃の言葉が浮かんだ。
「変わったといや、姫さんが一番じゃねーか?」
「姫さん? シア姫ですか?」
「ああ、ありゃあお前のせいだな。あのお上品な子供だった姫さんが、今じゃ自ら前線に向かう戦姫だ」
 あえて誤解を招きかねない表現を混ぜてみる。言葉が足りないのはまあ、仕様だ。
 フェイニーズはこの五年間の姫の出撃を次々と語って聞かせる。今回指揮官として最前線へと赴いたことも勿論。
「今じゃ筋骨隆々の逞しい姫さんになっちまってなぁ。アレじゃ嫁の貰い手がないだろよ。お前のせいだぜ?」
 それは剣を教えた者として責められているのか、それとも――
「フェイニーズさん、冗談も程ほどにしてくださらないと、ローラさんに居場所を告げ口しますよ?」
 部屋の主はフェイニーズの言葉を頭から信じ込んだ様子はなく、相変わらず柔らかい表情で彼をいじめようとするのだった。


 シュネイテーシスの拠点から船に乗り、アレハンドロまで戻る。すぐにでも帰りたい場所があったが、アレハンドロにて指揮官としての任務をこなさなくてはならなかった。
 エリューシア・リラ・ジュレイガーが戦地よりエカリスへ帰還したのは、戦いが集結してから数日後だった。
「姫様、ご無事のお戻り、お喜び申し上げます」
「この度の作戦の成功、見事でございました」
 城に入ると待っていたかのように姫を取り巻く老人達。出陣時はあれだけ文句を言ってきたというのに、戻ってきてみれば掌を返したような対応。
「この度の作戦の成功は、わたくし一人の力ではありません。沢山のブリーダー達が力を合わせたから成功をおさめたまでの事」
 エリューシアはマントを外し、侍女に手渡しながら廊下を歩く。一秒でも早く行きたいところがある。だがそこへ行くにはしっかりと湯浴みし、汗を流して軽鎧をドレスに着替えてからにしたいと思うのが年頃の女心。この後続くであろう老人達の言葉が分かっているから尚更――
「この度の戦の成功で姫様も満足されたでしょう。そろそろ前線にお出になるのはおやめになって、ご結婚を――」
「――」
 ぴたり、一歩先を行くようにしていた彼女は立ち止まって振り返る。その顔立ちは相変わらず美しいが、表情は厳しくて。
「わたくしは遊びで戦いへ赴いているわけではありません。そのような言葉、侮辱も良いところですわ」
 エリューシアは老人達を黙らせると、侍女を引き連れて自室へと向かう。
 戦場に出ない老人達には分からないのだ。戦場とは、そのような軽い気持ちで赴いて無事に帰ってこれる場所では無いということが。


 髪を下ろし、湯を浴びる。汗を流してそして、約束を守ったことを伝えに行くのだ。
「姫様‥‥あの」
 お湯の流れる音に混ざるように、侍女の遠慮がちな声が届く。
「なにかしら?」
「その、言付かっていたことがありまして‥‥『お目覚めになった』とお伝えすれば分かるとの事ですが‥‥」
「!? 何故それを一番最初に言わないのです!」
 ガタンッ‥‥湯桶を投げ捨てるようにしてエリューシアは浴室を出る。ああ、服を着て髪を整える間ももどかしい。それでもきちんとした姿でお会いしなければ――それは王族のプライドというよりは女心で。


 控えめな、それでも急いたノックの音。
「どうぞ」
 部屋の主は柔らかい声で入室を促す。側にいたフェイニーズは、反射的にベッドの影に隠れるようにした。
「‥‥‥クレイ?」
 扉を開けて戸惑うように姿を現したのは、青系統の長いドレスに身を包み、生乾きの髪をそれでも精一杯梳いて髪飾りをつけた、美しい女性。
 パタン、ドアを閉めてエリューシアはその場に立ち竦む。
 五年間、寝顔だけを見続けていた人が、今目の前で起き上がり、こちらを向いている。
「‥‥シア姫、そんな所にいないでもっと近くで顔をしっかり見せてください」
 部屋の主――クレイ・リチャードソンの優しい声に、ゆっくりとエリューシアは歩みを進める。
 彼しか使わない愛称、忘れもしない彼の声、そして微笑み。涙が溢れそうになるのを何とか堪える。
「活躍されているとの事。聞きましたよ」
 五年前、剣を教えていた時はまだ少女だった。だが今目の前にいる姫は、立派な女性へと成長していて――。湯上りの肌の放つ甘い香りが、なお一層時の経過を感じさせる。
「クレイ、クレイ‥‥クレイっ‥‥本当に、目覚め‥‥」
 ベッドに上半身を起こすように座っている彼の手を取り、ベッドサイドに膝をついた姫は、憚らず涙を流す。最後まで言葉にならない。
「(いや、姫さん俺がいる事気がついてないだろ? やべえ、こりゃ暫く出れねぇな‥‥今出たら完全にお邪魔だしな)」
 ベッドの影に隠れているフェイニーズは、どうすべきかと一瞬悩む。だがクレイは自分の存在を知っているはずだ。ならばまずい展開には陥るまい――え、まずい展開って?
「シア姫は、話に聞いていた通り素敵な女性におなりですね。こんなにお美しくなられて‥‥きっと方々から是非お嫁に、と引く手数多でしょう」
「っ‥‥どうしてっ‥‥」
 クレイの思わぬ言葉に、エリューシアは一瞬呆然とし、そして絞り出すように続けた。
「どうして貴方が、よりによって貴方がそんなことを言うのですか――!」
 ベッドサイドに突っ伏すように崩れ落ちた姫。そのまだ乾ききらぬ髪の一房を逆の手で取り、クレイはそっと口付けをした。
 ――五年前と変わらぬ、忠誠の証を示すために。


「(さーてそろそろ退散しようかね。こっそりと)」
 フェイニーズがそんなことを思った頃。ドアをノックする音が部屋に響いた。
「はい」
「アイラです」
 その声にクレイは姫の髪を撫でる手を止め、エリューシアは涙を拭って立ち上がり、居住まいを正す。フェイニーズは来訪者がアイラ・バレッサだと知ってほっと胸を撫で下ろし――
「どうぞ」
「失礼します」
「――げ」
 扉が開き、入室してきたのはアイラと――ローラ。
 思わず声を上げたフェイニーズは、姫にもその存在を気付かれて。
「フェイニーズ!? ず、ずっとそこにいらしたのですか!?」
「‥‥‥ダグラス大臣」
「いや、その、な。クレイの見舞いにな」
 こうなったら腹をくくるしかない。フェイニーズは何事も無かったかのようにベッドの影から出て、開き直る。
「ダグラス大臣、大臣の分の仕事はきちんとご用意してありますので、今日中に全て片付けてください」
「今日中!? つーかなんで俺の居場所がわかっ‥‥」
 ローラの言葉に、溜まった書類の山を想像してげんなりしたフェイニーズの視線がアイラの肩に止まっている一羽の鳥エレメントに止まる。そのエレメントには見覚えがある。見覚えがありすぎる。
「っ! クレイ、お前裏切ったな!?」
「裏切り、は聞こえが悪いですよ。僕はただ、アイラにローラさんを呼んできてくれるように『お願い』しただけです」
 中性的なその顔に笑みを浮かべるクレイ。そう、アイラの肩に止まっている鳥エレメントはクレイのパートナーだ。
「ご協力有難うございます」
「やっぱり裏切ったんじゃねーか!」
「失礼ですね。僕がローラさんをお呼びしたら、偶然そこにフェイニーズさんがいらっしゃっただけですよ? ね、アイラ」
 兄のように慕っているクレイに言われ、アイラは素直に頷く。
「‥‥はい」
 感情を出すのが苦手であることから表情も余り変わらず、淡々とした物言いになってしまうがクレイがこうして目覚めてくれた事、アイラは心から喜んでいる。
「さあ大臣、そろそろ真面目に仕事をしていただきます」
「フェイニーズさん、またお会いしましょう」
 ローラに厳しく言われ、渋々退散しようとするフェイニーズにクレイは笑顔を投げかける。
「このっ‥‥腹黒がっ!」
 退室際にフェイニーズはそう捨て台詞を吐いた。そうだ、この男は前からこうしてたまに黒い所があったのだ。
「‥‥‥くす」
 そんなやり取りを黙って見ていたエリューシアの口から、笑みが漏れる。
 平和だからこそ、交わされるやり取り。
 クレイの目覚めがなければ、このような場面はありえなかった。
 アレハンドロ、そしてシュネイテーシスを沢山のブリーダーが協力して守ったからこそ、実現したこの風景。
「‥‥‥姫様」
 姫の前に差し出されたのは一枚のハンカチ。それを差し出したアイラは、無表情で姫を見つめている。
「あ‥‥」
 その時エリューシアは初めて気がついた。自分が涙を浮かべていることに。
「ありがとう、アイラ」
 アイラの優しさを、彼女は知っている。アイラもクレイの目覚めを信じ、この五年間を共に過ごしてきたから。
「‥‥もう、大丈夫です」
 短い、言葉。けれどもそこには、アイラの想いが沢山つめられていて。
「そうね」
 言葉を返した姫は、そっとアイラの手を握った。


 かくして要塞都市アレハンドロは陥落を免れた。
 シュネイテーシスでは謎の女性を退け、アレハンドロの眠りの原因である巨大なスエーノは撃退された。
 アレハンドロの人々は目覚め、事件が起きる前の生活を取り戻そうと必死で働いている。
 シュネイテーシスに現れた謎の女性と銀髪の男性、そしてアレハンドロ付近に現れた男性の行方や正体は杳として知れなかった。
 だがクヴァール島からのもう一人の帰還者クレイ・リチャードソンの目覚めにより、謎に包まれていたクヴァール島について、そして五年前に何が起こったのか、今判明している以上の情報が得られると思われる。

 けれども今は少しの間、平和をかみしめる時間を。
 いつまた平和が破られるかもしれぬからこそ、この時間を大切に。



■解説

 ◇本作戦について

 情報1(事件発生地域の情報)
 情報2(カルディア主要人物の紹介)
 情報3(関連依頼一覧)
 情報4(質問事項まとめ)
 情報5(出現モンスターの情報)
 情報6(小型スエーノの情報)
 情報7(第1回戦功一覧)
 情報8(第2回戦功一覧)

 特別情報(本事件概要)


■NPCより
キオ・クルトス ...Illustration:猫R。

厄介な相手だったけど、何とか終わったみたいだね。

わい変わらずどこも忙しいようだね。
それはボクの店もそうだけど。

作戦掲示板を見る
プレイングの提出
第一回リプレイ閲覧
第二回リプレイ閲覧
戻る