エピドシス解放戦線 「雲霞」
シナリオ形態リアルタイムイベント
難易度普通
参加費無料!
募集人数無制限
報酬50,000
※活躍により賞を授与し
アイテム報酬あり
スケジュール
08月11日:
 第3回行動入力開始
08月17日:
 第3回行動入力締切
08月25日:
 エピローグ公開

●エピローグ

 エピドシスを覆う暗雲から生まれ、ヨロウェルと名付けられた破壊の天使。
 それが大気へ還ったとの知らせを受け、首都エフィオラに住む人々は一様に空を見上げた。
「どうか、安らかに‥‥」
 夕暮れの茜色に染まり始めた大気に包まれ、人々はその死を悼む様に手を合わせ、頭を垂れる。

 これがカルディアや他の国でなら、町は歓喜の声に包まれることだろう。
 だが、ここは静かだった。
 彼等にとってエレメントは神の化身。
 それが心身に変調を来し異形の存在となるのは、人の犯した罪をその身に受ける為。
 彼等「荒ぶる神」は倒されて大気に還る事によって、背負った罪もろとも浄化される。
 そうして、神々は人の世を穏やかに保つ様、守ってくれているのだ‥‥
 エピドシスの民は、そう信じていた。

 だから、彼等は祈り、感謝の言葉を捧げるのだ。
「ありがとう」
 ‥‥と。
 消えて行った存在にも、それを消し去ってくれた異国の者達にも、同様に。


「きっと、誰かがどこかで大きな罪を犯してしまったのでしょう。あの様なものが生まれてしまうほどの、大きな罪を――」
 白亜の神殿、そのバルコニーに姿を現した大神官アンジェリカ・エピドスが、眼下の民に向けて語る。
「祈りましょう。我が身を犠牲に、我々人間を救って下された心優しき神の為に。そしてこの様な事が二度と起きぬよう、その魂を悪に染める事のないように‥‥」
 大神官の呼びかけに応え、集まった人々は幼い頃から馴染んできた「祈りの言葉」を唱える。
 祈りの声は漣の様に、神殿前の広場から首都エフィオラの隅々まで静かに広がっていった。
 やっと言葉を覚え始めたばかりの幼児から、枯れ木の様な老人まで、殆ど全ての者が一心に祈る。
 誰も、大神官の言葉に疑いを抱く者はない様に見えた。

 その光景を、大神官の背後から冷ややかに見つめる者がいた。
 七賢者のひとり、メルキーナ・メティオス‥‥数年前にこの大任に就いたばかりの、まだ若い女性だ。
(「確かに、あれが生まれたのは誰かが罪を犯した結果なのだろう‥‥」)
 メルキーナは心の中で呟く。
(「あの黒い雲からは、彼等の人間に対する恨みや憎しみ、そして怒りの感情が降り注いでいた」)
 そして、その黒い雲の中から、あれは生まれた。
 黒く染め上げられた心を持って。
(「あれを生み出したのは、あのラアと呼ばれるあの人型の存在だったのかもしれない。だが、それを可能にしたのは‥‥」)
 メルキーナの視線は目の前に立つ大神官の背に吸い寄せられる。
 だが、あからさまな疑いの目を向ける訳にはいかなかった。
 七人の賢者達は、互いに互いを監視している。
 少しでも離反の心ありと取られれば、仲間達の手によって消される事になるのだ。
 それだけは避けなければならなかった。
(「今は、まだ‥‥」)
 しかし、その時は近い。
 彼等が‥‥そして自分が、その支配体制を固持する為に行って来た事。
 それを白日の下に晒し、民の審判を仰ぐ時が。

 既に歴史は動き出した。その流れはもう、止められない。
「女神エフィオラに幸あれ‥‥」
 祈りの声が、今はまだ静けさの中で微睡む島を柔らかに包んでいた。



 その翌日。
「えぇーーー!? あたしまだエピドシス料理食べてないー!!」
 カルディアの臨時公使館に、ジル・ソーヤの悲痛な声が響く。
「嘘つけ、昨日さんざん食っただろ、この食欲魔人!」
 しかも俺のツケで、と臨時公使フェイニーズ・ダグラスは特大の溜息をついた。
「だってまだコンプリートしてないー!」
「お前、その食欲がカルディア女の標準だと思われたらどうすんだよ、国の恥だぞ!」
 そこまで言うか‥‥いや、言いたくなる程の凄まじい食欲ではあるのだが。
「‥‥熊、こいつ連れて先に帰ってくれ。ふん縛ってでも良いから」
「わかった」
 苦笑いと共に、オールヴィル・トランヴァースが頷く。
「‥‥ダグ、お前は? お前も帰るんだよな?」
「ああ、最後の船でな」
 つい今朝方、エピドシス政府から届けられた書簡。
 それは政府関係者を含めた全ての外国人に対する退去要請だった。
「ま、元々そういう取り決めではあったんだが、な」
「ええ!? あたし聞いてないよ!?」
「そりゃそうだ、言ってねえし」
 カルディアからの救援を受け入れる際に、エピドシス側が要求したもの‥‥
 それは、事態が収拾した後の速やかな撤退と内政不干渉。
「つまり、開国する気はさらさらねえから、用が済んだらとっとと出てけって事だな」
 まあ、そんな事を公表すればブリーダー達の士気に関わる為、今まで伏せておいたのだが。
「でも、あたしはまだ帰りたくない! 復興の手伝いとか、出来る事はまだまだ一杯‥‥!」
「気持ちはわかるが、そいつは必要ねえだろ」
 霊峰アルタミナの山頂にあった魔石を破壊し、ヨロウェルを倒した事によって、エピドシスは元の平和と静けさを取り戻していた。
 全土を震撼させた赤目のエレメントも姿を消している。
 この島に固有のエレメント達は、普段なら余程の事がない限り人を襲う事がない、大人しいものばかりだった。
 後はこの国のブリーダー、いやディフューザー達だけで対処出来るだろう。
「ひとまずは家に帰って、家族を安心させてやる事だな」
 事態が収束した今、国としてもこれ以上ここに留まる理由はなかった。
「また‥‥いつか来れるよね?」
 ジルの問いに、フェイニーズは静かに頷く。
 危機的状況による一時的な措置とは言え、この国の鎖国は破られた。
 このままで済む筈がない。
「何かが壊れる時なんてのは、あっという間だ。自由に行き来が出来る様になるのも、そう遠い先の事じゃないだろうさ」
 願わくば、その変化に犠牲が伴わなずに済む事を。
 穏やかで温かいこの国の人々が、これ以上その心を痛める事のない様に‥‥


 帰国の途に就くブリーダー達を乗せた最後の船が海流を超えた。
 いつか再び訪れる事を願いながら、彼等は遠ざかる島影に別れを告げる。
 目を転じると、水平線が大きく弧を描く様に空と海とを分けていた。
 その向こうに霞むのは、故郷の岸辺だ。
「‥‥ただいま」
 誰かが、小さく呟いた。



■解説

 ◇基礎情報(今回の作戦について)
 情報1(エピドシスについて)
 情報2(発見されている新種モンスターについて)07月24日更新
 情報3(関連依頼一覧)
 情報4(白亜の巨人「ヨロウェル」について)08月11日更新

 第1回戦功ランキング
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 第1回特別功績者一覧
 第2回特別功績者一覧
 第3回特別功績者一覧

 特別プレイヤー情報(スキル・魔法の省略について)
 特別プレイヤー情報(エレメント進化アイテム交換所)
 特別プレイヤー情報番外編(その頃彼らは・・・)




■NPCより
ジル・ソーヤ ...Illustration:荻原みくみ
 ようやく終わったんだね。
 みんなお疲れ様!
 まずはゆっくり休んで
 一っっ杯ご飯を食べよう!

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