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■11月の重大ニュース

●【秋の散策】

 一年中恋の季節の貴婦人マダム・パピヨンからギルドへ、紅葉狩りの招待状が届けられました。
 調理したそれを天界の香味料で彩り鮮やかに飾り、弁当に詰めて秋の風景目掛けて出発です。
 賑わう冒険者を乗せた馬車は、色づいた風景のもとへ。
 お互いの愛に触れ合う者。想い馳せ、思い耽る者。仲睦まじい者。
 この時ばかりは冒険者も戦いを忘れ、良い思い出を持ち帰りました。

(紅葉狩り 10月19日〜10月21日)

●【材料樹園防衛戦】

 須藤まりえの立ち上げた製紙工場‥‥作業にも慣れ始めたこの頃、新たな問題が出てきました。
 材料の採取元である樹園で、狼などの危険な野生の動物の出没が目立ち始めてきたのです。
まず領主のモーガン・ホルレー男爵から話を聞いていた冒険者達は、そこで、ホルレー男爵とフオロの関係は宜しく無い事を知りました。
 樹園周辺を調べた冒険者は、木に残る獣の歯研ぎ跡や、溜池の水が猪に飲まれた痕跡を見つけます。この時期は、冬眠に備え働き者になる季節。
 鳴子等の罠を準備していた冒険者達は、狼の無力化、熊の撃破を果たします。
 尚、製紙事業も順調に進んでおり、はれて『アトランティス新聞』発行の運びとなりました。

(まりえのアトリエ〜成功は蜜の味:生存編 10月19日〜10月23日)

●【日々を生きるからこそ】

 収穫祭では大量のエールや料理が振舞われます。  輸送などの労働、調理係等々の募集通知がギルドに張り出されました。
 仕事さえこなせば飲食の自由が許される依頼とあって、参加者は胸を躍らせながら当依頼に取り掛かりました。
 料理は天界ではお馴染みの料理、サンドイッチ。作って楽しい、食べて美味しいその料理に、お世辞抜きの賛辞が送られます。
 お祭りは、順調な盛り上がりを見せました。
 参加している村人は、富に余裕がある‥‥とは決して言えない者達です。しかし、いやだからこそ、この一時に悔いの無いような思い切った楽しみ方をするのです。
 その後、冒険者達は律儀にギルドの係員へのお土産も持ち帰りました。

(収穫祭☆エール祭り! 10月21日〜10月25日))


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●【拾ったものはちゃんと届けましょう】

 砂糖は、一樽30G(時価)の貴重品です。その紛失の調査に冒険者が駆りだされました。
 もし貧民が盗んだのなら吊り首の刑でも不思議の無い事件ですが、盗難事件と最初から決まっているわけではありません。王都〜ウィンターフォルセ間の道を除けば、道は凸凹がひどく、速度によっては馬車は荷崩れも必然となります。
 同環境で馬車を引き検証した冒険者は、砂糖樽の落下地点を発見しました。
 周辺を調べた結果、冒険者達は砂糖を『拾った』子供達を発見し、樽は無事に届けられて事件の決着となりました。


(新少年色の尻尾3〜消えた財宝 10月23日〜10月27日)

●【アーメル兵士誘拐事件】

 王都から西北、ルーケイと隣接した土地の王領アーメルは、慌しい政権交代が記憶に新しいところです。政権不安の象徴ともいえるアーメルにて、兵士誘拐の事件が起きました。
 代官である、傭兵隊長ギーズ・ヴァムの手に余るこの事件は、ギルドに張り出される事になります。
 冒険者は代官へ、事件にナーガが関与している可能性や現在進行中の『竜との和平』の事などを話して聞かせました。
 依頼に出た冒険者は、森の上空にてナーガを発見。状況的に仕方がなくナーガと戦いました。その後、謝罪と説明、治療の申し出、そしてアーメルの兵士の返還を要求しました。
 また、冒険者はこの謝罪の際、袋詰めされた清らかな塩をナーガに送ります。ナーガの住まう地の間近に住む山の民の間には、友好や謝意の印として塩を贈る風習があるのです。
 話し合いは、双方に公平な感覚ではない様でした(ナーガは基本的に、自分達が人間より格上に思う傾向が強い)が、なんとか話は纏まりました。
 食料その他の対策費として渡した100G(ルーケイ与力、バルバロッサ男爵による私財投資)により、和解となりました。
 また、この依頼により信頼を回復した冒険者が、ギルド総督の取り決めにより、処分を撤回されました。

(竜の力を継ぎし者〜アーメルのドラゴン 10月22日〜10月26日)

●【未知の生息地】

 ワンド子爵領の魔獣の森への調査依頼が出されました。
 まず一日目の調査により、約50cmミミズ、小鳥程の大きさのスズメバチなどが見受けられました。
 次の二日目、1mの蜘蛛、大鷲、グリフォン、翼を広げた巨大な銀色のドララゴンなどが確認されました。
 最後三四日目で、ドラゴンの下級眷属フォレストドラゴン、夕刻には黒きドラゴンが発見されました。
 尚、魔獣の森のモンスター達は人間を恐れません。かえってそれに興味を持ち、近付かれる可能性がありますので、注意が必要です。

(魔獣の森〜人跡未踏の大地 10月24日〜10月28日)

●【精霊賛美の土地】

 王都に近い北方に位置するアキテ子爵領。そこは、極端な精霊信仰地であり、人間より精霊が尊ばれる独特の習慣が根付いています。
 伝書鳩によってギルドに届けられた依頼はスライム退治。冒険者は、聖地である(ウィルは精霊信仰篤い)その地を目指します。
 対峙したスライムは、体長2mにも及ぶブラックスライムと、酸性の体当たり攻撃が厄介なビリジアンスライムです。
 魔法と格闘の連携により、冒険者はこれらを問題なく倒しました。
 尚、アキテは精霊信仰ともう一つ大きな特徴があります。それは、女系相続のという体系です。紳士諸君は、清き精神を忘れずに。

(アキテの巫女〜スライムの群れ 10月24日〜10月26日)


●【恐獣、遺跡に現る】

 エーロン王子の忠臣(パシリと同義語)、ルーカス氏を経由して、王子の依頼がギルドに持ち込まれました。
 それは、遺跡の調査です。この遺跡、最近魔獣と思われる姿が見られたとの事。正体の解明、危険な存在の場合はそれの退治‥‥これが今回の依頼内容です。
 この依頼には、ストーンゴーレムが一体、特別に貸し出されました。
 魔獣の正体は恐獣でした。参加冒険者の中には、別の呼称に覚えのある者もいた様です。
 携帯型風信機を使った兵装運用によるグライダー低空飛行からの斬撃、ストーンゴーレム・バガンによる攻撃、魔法等を駆使し、冒険者は三体の恐獣を仕留めました。
 ゴーレムに負った傷から、以降、恐獣対策に追加装甲検討の声が挙がったりもしました。

(狩場から出てきた魔獣? 10月28日〜11月03日)

●【天界の祭事(?)、ハロウィン】

 王都からやや離れた田舎ともいえる土地、エヴァンス子爵領。王都の子爵屋敷近い付属地。そこにはエヴァンス子爵の児童保護施設、虹夢園があり、親を持たない子供達が常日頃、冒険者を中心とした先生から教育を受けています。
 日常は学習に勤しむ子供達ですが、良き教育には適度な休息が必要です。というわけで、子供達は近所にて、天界のお祭り『ハロウィン』を行う事になりました。
 この時ばかりは先生方も、より取り見取りの仮装に身を包み、イベントを楽しむ事にただひたすら‥‥というわけではなく、事前に近所に対する通知や諸準備に余念がない辺りは、さすが生徒の模範たる存在、といった所でしょうか。
 ここの子供達は夢を抱き、今日も頑張っています。それがいつか、朝空けの虹の様な、美しい未来に成ってほしいものです。

(希望の虹12〜ハロウィンハロウィン 11月02日〜11月04日)

●【空の守護者候補たち】

 ギルドにそれは、久方ぶりの公募となりました。ゴーレムグライダー講習、段階別に区分された内容、今回も訓練を希望する天界人や鎧騎士が集りました。
 基礎訓練。まずはセオリーと基本の習熟が、全ての土台となります。座学では、天界の航空技術が説明されました。
 応用訓練。実戦想定下という事で内容は生死に関わり、必然的に緊張の訓練となります。尚、対魔獣を想定した戦いに、騎士道を考慮せずとも結構です。
 防寒訓練。実戦以上に危険度の高い内容です。己自身を見極めるかどうかも重大な評価事項との事です。当然ながら、訓練参加者は皆満身創痍となりました。
 尚、訓練後にエーロン王子から、シャルロット・プラン氏は空戦騎士団団長、レイ・リアンドラは副団長、とそれぞれ任を受けました。エリーシャ・メロウも副団長の任を受けましたが、それはジーザム陛下の名代、カイン・グレイスからとなりました。
 就任者三名がいずれは、ウィルの空の守護者として称えられる‥‥かは、これからにかかっています。

(私のエアルート〜旅に出る夢に手を振り 11月05日〜11月09日)

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●【ルーケイ領歓楽地、提案各々】

 有力冒険者とのコネ作りのため、水上兵団のリリーン・ミスカ氏が酒席の催しを計画しました。
 しかし来たのはルーケイ伯やその与力というのは、何かの偶然でしょうか? 兎にも角にも、参加者達は丁寧に出迎えられました。
 そして各々、紅花村の歓楽街について、伯や与力からの提案がなされましたが、その他の参加者からも、実に有意義なアイディアが話されました。
 天界の伯爵令嬢から温泉の提案。周辺に温水が湧き出てはいませんが、体に良いと言われる泉はあるので、それを温める事は可能です。
 按察官の女性からは、『ルーケイパーク』の提案。天界の発想ではありますが、そのスケールの大きさにリリーン氏は甚く心を打たれていた様です。
 筋骨隆々とした男のクレリックからは、天界のマッサージ(?)。『表』と『裏』の境界にもなりそうです。
 男性鎧騎士は、天界人の口を借りながら、紅花村の名物となるよう、天界の遊戯であるトレーディングカードゲームを提案。それは、リリーン氏をチェスよりも熱中させるものでした。
 仲間に助け舟を出していたその天界人からの提案は、濃度の濃い酒の話に始まる、様々な天界知識でした。多すぎる新概念や知恵に、聞き手も書き手も疲れ気味でしたが、貴重な知識になりそうです。

(黎明ルーケイ〜歓楽地建設事始め 11月04日〜11月06日)

●【風信ラジオ、はじまる】

 距離を越えて声を届ける事ができる風信機。それを使ったこの取り組みは、天界で言うところの『ラジオ』と呼ばれるものです。
 集った冒険者で、放送内容を煮詰めていきました。
 まず前提にあるのは、内容を政治利用しないという事です。
 噂話や天界、歌唱、冒険者の話、中には日々の生活に使えそうなものまでもありました。今後の方針として、個人コーナーの設立も検討されています。
 各所に投稿箱が設置され、放送もトラブルなく開始されました。
 冒険者達は、住民達のリアクションは、果たして?

(黎明ルーケイ〜歓楽地建設事始め 11月04日〜11月06日)

■ニュース記事

●サンドイッチパーティ

「折角だし、もう少し飾りつけに凝らない?」
 到着早々、レイリー・ロンド(ea3982)は動いた。街の人と相談しながら、手早く絵を描いたり彫り物をしたり‥‥それら飾りつけは、祭りに華を添えるため。
「即席サンドイッチパーティにしませんか? 収穫祭に参加するのは、大人達だけではありませんし」


サクラ・スノゥフラゥズ(eb3490
結城 絵理子(eb5735
 一方サクラと絵理子は、厨房でサンドイッチ作りに勤しんでいた。
「うさぎ肉や鹿肉は初体験ですね‥‥どんな味になるのか楽しみです♪」
 貰ったパンを薄く切り、間に肉やジャムを挟んだサンドイッチ。サクラと絵理子は即席のそれを手際よく作っていった。
 その間、響やアトスは力仕事に勤しみ‥‥そうして、祭りの準備は滞りなく完了した。
「これで良いのかな?」
 まるごとメリーさんを着込んだレフェツィア。仮装というよりは着ぐるみなのだが、可愛いから良し!
 同じく、響はまるごとわんこさん、サクラは髪をお団子にしチャイナドレスにショール姿だ。
「こっちならこれくらいで十分仮装だろ」
 言う昼野日也(eb6239)は普段着。とはいうものの、天界から来た時の服装は、アトランティスの者達から見れば成る程、立派な仮装だろう。
「収穫祭という事で、お祭りの間だけ仮装をしよう」
 発端はレイリーの提案だった。張本人はターニップヘッドを被りマントを着け、カブで作ったランタンを持ってハロウィン気分だ。
 もう一人、黒ずくめの魔法使い風衣装にとんがり帽子、な絵理子もハロウィンを意識している‥‥キメっ!、なポーズもバッチリだ。
「ご苦労様でした、先ずは一杯、どぞ」
 そんな絵理子達が会場を訪れると直ぐ、エールを並々と注がれたジョッキが差し出された。弾ける泡が何とも魅力的だ。

「わ、早速ですね‥‥いただきます」
 サクラを始め、飲める者は皆口々に礼を言い、受け取る。
「こちらは都の人のお口に合うか、分からないですが」
 料理を勧める娘さんには、どこかおずおずした風だ。
「塩気が十分行き届き旨味が引き立っている。私自身は大満足です」
 だが、口にしたアトスは率直に告げた。味付け自体は成る程、単純だ。しかし、それは肉の持つ本来の味を引き出しており、アトスを満足させてくれたから。
「あっ、私と絵理子様もサンドイッチをたくさん作ったんです」
「みんなにも食べて欲しいです、倉城さんもどうぞ♪」
「ありがとう‥‥すっっっっっごく美味しいです」
 響の賞賛は決してお世辞ではなかった。それは街の人々も同じ。
「うさぎ肉は‥‥意外とアッサリ風味ですね」
 自らもほお張りながら、興味深そうに絵理子。
「これも満足してもらえると思うわ」
 と、アトスの鼻先に差し出されたのは、香ばしい香りのする皿。
「御領主様からのいただきものよ」
 得意げに胸を張るおばちゃん。その鹿肉は確かに美味で。
「さて、この料理にはどれが合いますか」
 アトスは並べられたエールへと手を伸ばした。
 琥珀色をしたものは、苦味が強くて少し酸味が感じられた。褐色がかったものは、ホップが利いた苦味のあるもので、炭酸は少な目か。後は、苦味が弱く口当たりが甘い、マイルドな赤褐色なものや、軽い口当たりの暗褐色なものなど、色合いノド越し等、微妙に異なる様々なエールが所狭しと並べられ、振舞われている。
「えっと、このエールは何処のエールですか?」
 ザルでない絵理子は、ちょっとずつ味見しつつ、何やらぶつぶつ呟いている。産地とエールの味を覚えようとしているのだ‥‥帰ってから、ギルド員に感想を聞かせて上げられるように。
「これで少しは参加した気分になるかもですよ♪」
 絵理子に、隣人や彼氏へのお土産を物色していたサクラも、ニッコリと大きく頷いた。
「基本的には、飲んで飲んで飲んで飲んで、食べて騒いで楽しむって感じなんだな」
 エールを順番に味わいながら、烈は故郷を思った。その年の収穫を祝い、翌年の豊作を願う‥‥基本は変わらず、といったところか。
「至福の一時を過ごせて幸せです。彼らにも是非お土産を‥‥」
 飲み比べ、というよりも、ゆっくり味わっているアトスは、お土産について交渉を始めたのだった。そう、今のうちに、と。




●私のエアルート〜旅に出る夢に手を振り


 耐寒訓練が終わった日の夕刻。シャルロット、レイ、エリーシャの三人はドイトレに呼ばれた。
「何事ですか?」
 問うシャルロットに向けて、
「これから見ることは他言無用。まだ極一部の者しか知らぬでな」
 ドイトレは唇立てた人差し指を見せる。かなり長い時間歩いた末にたどり着いた格納庫。
「‥‥きれいだ!」
 エリーシャは思わず声を漏らした。目の前に見たこともないゴーレムがある。フォルムはスマートで美しい。
「これがコロナ・ドラグーンである。盟友リグに納めるためにここに運ばれてきた」
 ドイトレは声を潜めるように話す。
「未だトルクにも数えるほどしかない。内密の試験のため、グライダー講習を中断しておった。バガンの何倍も強く、しかも空を飛ぶ」
「ドイトレ殿。これを見せても良いのか?」
 尋ねるシャルロットに、
「貴殿らにはその資格がある。何せ、新生空戦騎士団の幹部であるのだからな」
「「え?」」
 レイとエリーシャが唱和して聞き返す。
「卿(おんみ)らはいずれ、ドラグーンに乗る日が来るであろう」
 困惑の三人の耳に後ろから届く声。


エリーシャ・メロウ(eb4333
シャルロット・プラン(eb4219
レイ・リアンドラ(eb4326
「で、殿下!」
 カーロン王子がそこにいた。
「シャルロット・プラン。汝を空戦騎士団団長に任ずる」
 片膝を着き、王子から鞘ごと渡されるサンソードを押し戴くシャルロット。騎士団長ともなれば、いずれは正騎士となって国運を担う者である。プラン家の復辟は半ば為ったも同然。思わず涙がこぼれる。
「レイ・リアンドラ。 汝を航空騎士に叙し、合わせて空戦騎士団副長に任ずる。 シャルロット団長を輔弼せよ」
「はは。ありがたき幸せ」
 恩賜の剣を受け取るレイ。
 最後にカーロンは、エリーシャに向かい
「エリーシャ・メロウ。汝を叙すのは私ではない」
手招きで現れたのはエルム・クリークとカイン・グレイス
「エリーシャ・メロウ。ジーザム陛下の名代として任命します。空戦騎士団副長としてトルクとウィルのために働いてください。そして、いつの日にかあなたがドラグーンを駆る雄姿を拝見したものです」
 カインの手からサンソードが手渡された。
「新生空戦騎士団は、トルク家の物でもフオロ家の物でもありません。ウィルの剣としてウィルのために働く騎士団です」
 賢人会議の意を承けて、トルクが譲歩した結果であった。尤も、このドラグーンの存在は、まだエーガン王ですら知らぬ秘密であると言う。

「父上も兄上も少しづつ変わって来た。しかし、強すぎるゴーレムの存在はトルクに対する疑念を大きくしかねない。いずれ時が来れば話せる日も来ると思う」
 賢人会議に対する連名以来、一年前には考えられないくらい両家の仲は修復されている。しかし、トルクとフオロの対立が深刻であったのは事実である。密かに開発されていたドラグーンの存在は、一つ間違えばエーガン王やエーロン王子の猜疑心を煽りかねない。
 カインは云う。
「ドラグーンがフオロに向けられたトルクの剣ではなく、ウィルの鎮めたる守り刀となる為には、あなた方の力が必要です。トルクでもフオロでも無い、ウィルの国の騎士団を建設せねばなりません」
「はっ。未熟なる我が身の全てに換えても」
 レイが宣誓する。
「それがジーザム陛下の思し召しとあらば是非もございません」
 エリーシャの献身。 「私は、再編に関しては海戦騎士団や冒険ギルドと連携を深め、実戦を繰り返し実績を築いていくべきではと愚考いたします。冒険者ギルドがフオロの物であると同時にトルクの物であるように、新生空戦騎士団もあれたら幸いに存じます」
 シャルロットは団長としての方針の是非を問い。ジーザム名代を務めるカインと、フオロ家として融和を望むカーロンが頷くことで承認した。ただ、解決しなければならない問題は多い。