第4回行動結果報告書

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黙示録の戦いの勇姿を!

3人で!

4人で!

皆で!

第1回行動結果報告書第2回行動結果報告書第3回行動結果報告書第4回行動結果報告書

<第4回開戦状況>
城砦前荒野においては、最大数の人数が集まったことと、援護活動が効果的に働き、モレクや七魔の刺客たちを十分に牽制しました。
また、モレクの力の源である「ゲヘナの丘」がディーテ城砦近くに存在していることがわかりました。
調査により、ゲヘナの丘で行なわれる儀式を無効化することで、モレクの能力を大幅に低下させることができる模様です。
荒野での戦いは、ゲヘナの丘を攻略できるかどうかにかかっていますが、敵を止めつつ丘を攻略するという、攻守同時の戦いという難しい状況が待ち構えています。
左門は城壁内に侵入する冒険者が現れるなど、非常に優勢な状態です。一方、中央門・右門では戦線が膠着しています。
後方は七魔の刺客による攻撃が開始されていますが、対モレクに集まった兵力の影響もあり、大きな崩れは見せていません。
戦場全体としては次回、モレクを如何にして攻略するか、それと同期しての城砦への攻撃が重要となるでしょう。


第4回行動入力時戦力状況
参加人数:980人
※状況
=危険、=注意

左門中央門右門城砦前後方ゲヘナの丘合計モレクは「城砦前荒野」から出撃!

猛将 モレク
イラストレーター:墨

ほう、ちっぽけな猿どもが
少しは知恵をつけたか?
だが所詮は浅知恵よ、
足りない力でもがくだけ。
我が激情と破壊の力の前には、
吹けば飛ぶ塵芥も同然!
白兵戦 7.7% 7.6% 6.2% 8.2% 4% 5.6% 39.5%
救護・防衛 4.7% 3.1% 1.8% 3.9% 8% 2.9% 24.7%
調査(デビル) 0.4% 0.4% 0.2% 0.1% 0.8% 1.5% 3.4%
魔法戦 2.7% 2.2% 1.8% 2.3% 1.2% 3% 13.4%
偵察 3.5% 2.5% 2% 1.9% 2.7% 3.8% 16.7%
調査(カオス) 0.5% 0.5% 0.2% 0.1% 0.1% 0.5% 1.9%
合計19.7%16.5%12.3%16.7%17%17.5%100%



第4回援護行動結果
参加人数:1162人

達成率人数総計 作戦への影響
死と破滅の伯爵 ハルファス
イラストレーター:Hisasi

戦術で戦略的失態を補う事は
あたわずか。
強くなったな、汝らは‥‥。
‥‥汝らとの戦いに身を置くのは、
我にとって愉悦でもある!
救護104.7%  673人
炊き出し・物資確保101.5%  665人
武具の手入れ100.0%  669人
陣地作成117.6%  755人 防御力アップ
偵察132.8%  890人作戦成功率アップ
調査108.2%  820人



<第4回戦況>
最大の戦力が集まった左門はこれまでと優位を変えず、ついに城壁内に陣地を獲得しました。
中央門では左門への援軍で手薄になった分をつき、城門前まで優位性を回復することに成功しました。
しかし右門での戦力バランスは拮抗したままとなり、最終的には門の場所まで迫ることができませんでした。
また後方ではオレイが撹乱に侵入。中央門ではキマリス、荒野ではハルファスが進軍を続け、各所に爪跡を残しました。
ゲヘナの丘では多数の火の悪魔と七魔・ラウムの侵攻により苦戦。儀式を中断させたものの、丘を奪取することはできませんでした。
しかしゲヘナの丘の支援が切れモレクの力は減退。魔法による迅速な情報伝達が功を奏し、モレクの隙を突き撃破に成功しています。

モレク撃破後、デビルの本軍は戦闘を行いながら撤退を開始。
しかし広大なディーテの中に潜み反撃を狙う敵も存在し、事態はまだ混迷しています。

また、モレクの撃破が伝わり、地獄の門周辺のデビルが再集結し、ディーテに向けて進軍を開始しています。
>>>地獄の門


結果概略

成功結果冒険者の状況
左門  ◎城門突破! 城砦内に拠点
中央門  ○城門前まで戦況回復
右門  △一進一退
城砦前荒野  ○モレク撃破! 主軍は撤退
後方  △七魔をとめられずかき回される
ゲヘナの丘  ○儀式は止めるものの奪取ならず



■第4回報告書

●繰り広げられる激戦
「ここは通さないですよー!」

 中央門からの増援に向けて、『マジカル特戦隊』ラテリカ・ラートベル(ea1641)がシャドゥボムをぶっ放した。直撃を食らった魔物が「ギイィ‥‥ッ」と耳障りな悲鳴を上げる。すかさずラ・フレーメを構えて突っ込む月下 真鶴(eb3843)。出鼻を挫かれた魔物達に向かって一閃する。
 左門優位。その報を受け、だからこそこの優位を確たるものにしよう、と集まってきた冒険者達が居る。
 独立愚連隊『若葉屋団』を名乗る集団もその一派だ。彼らを率いるのはアマツ・オオトリ(ea1842)。日本刀を引っさげて集まった友人たちを指揮する彼女の元、シャクティ・シッダールタ(ea5989)を始めとするメンバーは各々、得意の技や魔法を振るって左門攻略に死力を尽くす仲間達の一助たらんと奮闘する。
 そんな仲間達の支援を受けて、果敢に城壁攻略を試みるのが『勝利の暁』のメンバーだ。セシリア・ティレット(eb4721)やラザフォード・サークレット(eb0655)を始めとするメンバーが城壁確保に走る。ここを確保すれば左門突破は見えたも同然。
 勿論それを黙って見ているはずもなく、砦の上から魔物が必死で魔法を放ち、攻撃を加えて邪魔をする。それをさらに海上 飛沫(ea6356)がウォーターボムで攻撃し、バランスを崩して落ちてきた者は傍に居た冒険者がすかさず止めを刺す。

「黒霧の効果が切れた瞬間ならッ!」

 本体の力を引き出した魔物には、なまじな攻撃は当たらない。だがその効果が切れた直後ならば、とアレクセイ・ルード(eb5450)は慎重に魔物の様子を伺っては、タイミングを合わせて大胆に切りかかる。一所に留まっていては重傷を負う恐れがある、と常に移動しながらの攻撃だ。
 めまぐるしく前衛と後衛が入れ替わり、怪我人が引いた所はすかさず別の仲間がフォローに入り、まさに波の如き勢いで押し寄せてくる冒険者に、増援を得てなお魔物はジリジリと後退せざるを得ない。あと少し、という思いが冒険者達に力を与え、後がない、という思いが魔物達に死力を震わせるが、情勢は明らかだ。

『リィム様、左後方からまた増援が来たようです』
「了解ッ!」

 仲間と交替してドラグーンに乗り込んだ『WG鉄人兵団』リィム・タイランツ(eb4856)が、起動させると同時にテレパシーを受けて振り返った。新たに押し寄せてきた魔物の軍勢を、仲間は巻き込まぬよう気をつけながら、当たるを幸いにぶっ飛ばす。
 その様子を確認した同チームのゾーラク・ピトゥーフ(eb6105)も、グライダーの機首を翻して救護を必要としている仲間の元へ駆ける。途中、情勢を見ては適時テレパシーを飛ばして仲間にフィードバックする事も忘れない。
 左門後方に簡易に置かれた救護所を守るデゴーズ・ノーフィン(eb0073)の肩を叩き、交替だ、と稲生 琢(eb3680)が微笑む。

「あと少しだ、頑張ろう」
「ああ」

 そう言いながら見やるは前線。鬨の声が高らかに響き、剣戟が空気を裂き、魔法の光が駆け、魔物の咆哮が空にこだまする、あの場所で戦う仲間が安心して帰って来れる場所を守る事。それが彼らの戦いだ。
 同じく救護所を守る池田 柳墨(ec3065)も、時に前線を抜けて迫り来る魔物と戦い、自らの傷や仲間の傷をポーションで癒す。さらに孫策 伯符(eb9221)も後方支援者を守るべく、魔物の攻撃を弾いてひたすら防御に徹した。退けた魔物を、別の仲間が攻撃する。

「行きます!」

 セシリア・カータ(ea1643)がオーラ魔法を駆使して身体能力を高め、最後の死力を尽くした抵抗を見せる魔物に切りかかった。ハロルド・ノートン(ea8222)、レイ・アレク(ec4772)もそれに続き、目に付いた魔物へと切りかかる。
 勢いに乗った冒険者は留まる所を知らない。この勢いは、左門を突破するまでは止まらない。今回は後続と引き離されるような愚も犯さない。

「サセルカ‥‥ッ!」

 魔物達の必死の抵抗。それが打ち破れるまで、あと少しだった。

(担当:蓮華・水無月)


●剣を交えぬ戦場
 ホーリーフィールドを多数張り巡らせ、中央門を臨む位置に作られた救護所では、多数の負傷者・疾病罹患者への手当てと、この場を狙って前線を飛び越えてくるデビルとの戦いとが繰り広げられていた。
 ディテクトアンデッドを使うワルキュリア・ブルークリスタル(ea7983)が察知した方向に、複数の護衛が駆けつける。結界に守られていても、それを突破されたら自力で逃げることの叶わぬ者ばかりだから、ここも一つの最前線だ。護衛達の武器には、風姫ありす(eb7869)がオーラパワーを付与している。アリス・メイ(ec5840)はクリスタルソードを渡したり、自身も迫る敵へと魔法を放っていた。
 そうして守られている陣の中では、護衛が敵の一体たりとも通すことないと信じて、アナマリア・パッドラック(ec4728)やジーン・インパルス(ea7578)、白翼寺涼哉(ea9502)など多数の者が負傷者と疾病罹患者を分けて治療に当たっていた。治癒魔法の発光が各所で光る。
 中には高川恵(ea0691)のようにクリエイトウォーターで水を作っている者や、それを各所に運んでいるマーナ・リシア(eb0492)のような働きをする者もいる。
 だが、それでも救護所の負傷者、疾病罹患者が減ることはない。
「無理をせず、傷を受けたら後退してください。深手を直せる術者は限られています。私のような未熟なものでも治療できるうちに手当てをうけてください。それが全体の負担を軽くします」
 中にはクレムヒルト・クルースニク(eb5971)の説得に応じて、自力で動ける内に万全の調子を取り戻しに来る者もいるが、多数は違う。
 前線まで同行したセレーナ・アクア(ec5865)が仲間の姿を見付けて、必死に手を振っている。自分では癒せない負傷者を運んでもらうためだ。突然現われた大蝦蟇に敵が集まるが、そこは呼び出した夜闇握真(ea3191)が盾になる。
 そうした状況を遠方から見て取ったサイーラ・イズ・ラハル(eb6993)のテレパシーで、周辺から冒険者が集まってきた。負傷者の搬送のために、馬や馬車を用意している者も多い。
 しばらくして、救護所には多数の負傷者が運び込まれたが、事前の応急手当てなどの甲斐もあり、命に関わるほどの者はいなかった。

(担当:龍河流)


●魂の炎の燃ゆる丘
 ゲヘナの丘――。
 謎の儀式?が行われている荒野の丘で激しい戦いが展開している。
 丘のデビル戦力は増強されており、さらに七魔の刺客の一人であるラウムが軍団を率いて到着。
 予想されたことである。モレクの秘密に関わる場所ならなおのことか‥‥。
「只貫く、その身をもって止めるんなら覚悟しろよ!」
 天馬に跨るマナウス・ドラッケン(ea0021)は上空から敵にチャージングをかける。デビルスレイヤーが地獄の兵士を粉砕。
「ここは通さんぞ!」
 燃え盛る槍を持ったネルガルたちは空も地上も構わず冒険たちに襲い掛かってくる。
 アシュレー・ウォルサム(ea0244)もグリフォン騎乗で上空から攻撃していたがネルガルに不意打ちを食らう。
「アシュレー!」
 マナウスはネルガルを叩き切った。
「すまん」
「何の、だが‥‥デビルたちも戦力を投入してきたか」
 突撃するレイジュ・カザミ(ea0448)、鷹翔刀華(ea0480)、伊達正和(ea0489)がネルガルたちと激突する。
「モレクの強さは如何様かよ、だったらその如何様、暴いてやるまでだ」
 カルロス・ポルザンパルク(ea2049)の一撃を跳ね返すネルガル。
「ふふん‥‥ここは我らの帝国だぞ、ここにおわすのは貴様らが伝説でしか知りえない魔神‥‥貴様らは神の怒りの前に露と消えるのだ!」
「やかましいわ!」
 カルロスは剣を振るったがネルガルは笑声を残して消えた。
 ライカ・カザミ(ea1168)、エヴァーグリーン・シーウィンド(ea1493)、シリル・ロルカ(ec0177)たちがメロディーを歌い出し、仲間達を鼓舞する。
「何としてもここは突破する!」
 荒野で戦う仲間達がモレクの弱体化を待っている。三好石洲(ea2436)、鷲尾天斗(ea2445)は敵の戦列に打ちかかった。
「地獄の野郎ども、これがあたいからのプレゼントだよ!!」
 クリムゾン・コスタクルス(ea3075)は飛び交うネルガルたちを射抜いていく。
「必ず‥‥無効化してみせる‥‥!」
 空漸司影華(ea4183)はグラン・バク(ea5229)とともに突進。
「唸れライオンハーテイド!」
 グランのソードボンバーがネルガルたちを打ち倒す。
「せっかく分かった弱点、です。皆さん、がんばりましょう‥‥!」
「おお!」
「行くぞ!」
 戦乙女となった水葉さくら(ea5480)の言葉に仲間達は奮い立つ。
 魔法使い達も攻撃開始。ティアラ・フォーリスト(ea7222)、エルザ・ヴァリアント(ea8189)、ケリー・レッドフォレスト(eb5286)、サスケ・ヒノモリ(eb8646)、デメトリオス・パライオロゴス(eb3450)が初撃を叩き込めば、恐るべき超越魔法の使い手、ジークリンデ・ケリン(eb3225)にヴェニー・ブリッド(eb5868)も容赦なくデビルたちに超絶的な破壊力の魔法を叩きつける。

「愚かな者どもよ‥‥たとえここまで来たところで、奴らになす術はない」
 丘の頂上では、豪奢な衣装に身をまとったデビルたちが地上の様子を観察していた。
 燃え盛るゲヘナの炎。デビルたちはその奥へと消えていく‥‥。

「‥‥悪魔だろうと、神だろうと‥‥寄らば斬る‥‥」
 地上で遮二無二剣を振るう藤袴橋姫(eb0202)。敵は多数、しかも厄介なことに自在に姿をくらまして襲い掛かってくる。
「何があろうと、この丘を制圧してみせるぞい!」
「囚われた魂の開放‥‥そのためにも、デビルを打ち倒しましょうぞ!」
 冒険者たちは諦めない。戦い続けるタウルス・ライノセラス(eb0771)やポール・ドテル(eb1221)、敵をグライダーで空襲するキース・ファラン(eb4324)、ゴーレム搭乗の田辺翔(eb5306)が援護する。
 伊達和正(ea2388)もオーラショットで援護射撃。
「禍根断つべし! ‥‥破刃! 天昇!」
 軍馬で戦場を突破するメグレズ・ファウンテン(eb5451)。必殺のソードボンバーをデビルたちに叩き込む。
 チームベイリーフの盟友たちも愛騎に跨りトライアングルアタックでデビルの戦列に一撃離脱を繰り返している。
「さて、ゲヘナの丘で楽しいピクニックと行こうか」
 同じくベイリーフのアルヴィス・スヴィバル(ea2804)、カジャ・ハイダル(ec0131)、リース・フォード(ec4979)はトライアングルアタックに合わせて範囲魔法を打ち込んでいる。
 凄まじい冒険者達の攻勢、デビルは一体、また一体と消えていく。
 ドラゴンライダーとなった閃我絶狼(ea3991)は上空から魔法掃射、同じくドラゴン騎乗のベアータ・レジーネス(eb1422)も空から範囲魔法を次々打ち込んでいく。  

 戦いは徐々に収まりを見せていく。凄まじい魔法攻撃の破壊力も手伝って、デビルたちの攻勢はついに減じていった。丘の制圧に向かう冒険者達。
 ルイス・フルトン(ec0134)は牙剥くネルガルをデビルスレイヤーで両断した。
「まだ終わりじゃない。味方が待っているんだ‥‥急がなくては‥‥」
 抵抗を続けるネルガルを狙い打つジッシュ・ザガルグ(ec1985)。
 最前線に飛び込んでいたチーム堕天師のメンバーは、ネルガルたちの戦列を駆け抜ける。
「もはやネルガルなど相手ではない!」
 イヴァン・ボブチャンチン(ec2141)らはネルガルを倒し、戦列を抜けて丘を駆け上がっていく。
「我こそは大嵐呼太郎なり、その首貰い受けた!」
 ネルガルに連撃を叩き込み止めを刺すと、大嵐呼太郎(ec2310)も走り出す。
 呂白龍(ec2900)、馬若飛(ec3237)、ウェンディ・リンスノエル(ec4531)ら、白兵戦に臨んだ者たちは続々とネルガルの戦列を突破していく。

(担当:安原太一)


●城門攻略戦・とにかく戦うの章
──右城門前方・6km地点
 悪魔達との戦いは苛烈な情況になっていた。
 冒険者劣勢という情況を打破しようとするが、いまだ右門までたどり着くこと叶わず。
 一時的にではあるが、冒険者達は門より6km後方に押しも度されていた。

「敵を恐れるなッ。悪魔相手に隙をつくるな。心に勇気の刃を持て!! 意志という兜をかぶれ!! 魂から武装せよ!! 皆、我に続けっ!!」
 冒険者達の戦闘で、ペガサスに跨がって叫んでいるのは【戦乙女隊】のリリー・ストーム(ea9927)。
 その横では、ずらりと並んだ【戦乙女隊】のンバーが、リリーの叫びと同時に一斉に抜刀。
 そのまま敵悪魔達に向かって突撃を開始した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 ホーリーランスを構え、グリフォンに跨がって突撃しているのはアニエス・グラン・クリュ(eb2949)。
 その体勢から次々とソニックブームを打出し、悪魔達に向かって先手を叩き込んでいる。
 その横でも、ウォーホースに跨ったシルフィリア・ユピオーク(eb3525)が、近寄ってくる悪魔達に向かって騎乗からスマッシュを叩き込んでいく!!
「はぁ〜ん。上等だぁね‥‥いくらでも相手シてあげるからかかってこいやぁ」
 そう叫びつつ、仲間たちの先陣を切って突撃していく。
 その【戦乙女隊】の動きに士気を高めた冒険者達は、次々と敵悪魔の集まる右門へと突撃していった。

「一気に形勢を立て直す! 手の空いてる者は俺に続けー!」
 それまで圧倒されていた冒険者達。
 だが、戦乙女隊の戦いを見て勇気を取り戻した壬生天矢(ea0841)の怒声と共に体勢をとりなおし、そこから反撃に転じていった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
 クルスロングソードを手に、タイタス・アローン(ea1141)も戦っている。
 今だ腕は未熟ながらも、仲間たちの援護に助けられつつ、一つ、また一つと悪魔を地に叩き伏せていく。
「タイタス!! 右が甘いっ!!」
──ガギィィィィィン
 と、横から飛び出し、タイタスに向かって一撃を叩き込もうとしているアンドラスに向かって、リオン・ラーディナス(ea1458)が素早く剣を構えてガード。
「済まない!!」
「ひとりで戦うなっ!! 数名でチームを組んで戦えッ」
 リオンの叫びに肯くタイタス。
 その近くでは、悪魔アロセーヌと戦う西中島導仁(ea2741)の姿もあった。
「ここから先、仲間達には一歩も近寄らせぬっ!!」
 すかさず繰り出す連撃。
 それに合わせて、アロセーヌも手にした剣で受け流す。
 悪魔の騎士と地上の騎士の一騎打ちというところであろう。
 
──ヒュンヒュンヒュッ!!
 巨大な槍を頭上で負のまわしつつ、近寄ってくる雑魚を蹴散らしているのはロックフェラー・シュターゼン(ea3120)。
「そこが中継地点と見たっ!!」
 そう叫びつつ、悪魔達の部隊の中央に向かって突撃するロックフェラー。
 まだ戦闘態勢の整っていない悪魔達の部隊に突撃し、その中央から敵を一気に蹴散らしていく作戦であろう。
 彼と共に突撃した奇天烈斎頃助(ea7216)やファースト・パーマン(eb1514)と共に、周囲の悪魔達を蹴散らしていった。

 既に右門周辺の情況は大きく変わっている。
 先日までの悪魔達の攻勢も、今日は防戦一方で、門の防衛に集中している‥‥。
 もう少し
 あと少しで門を突破できる所まで‥‥。

(担当:久条巧)


●乱戦
 ディーテ城砦中央門。
 そのいかにも重そうな門が開こうとする中、土御門焔(ec4427)が用いたテレスコープとエックスレイビジョンとカナード・ラズ(ec5148)達シフールの上空からの偵察で、内部のデビルのおおまかな戦力は把握されていた。
 周囲の警戒は各務蒼馬(ec3787)やキャル・パル(ea1560)、紀珠舞(ea5856)に ミリア・タッフタート(ec4163)他、全方位漏らすことなく多数の者が従事しており、敵騎馬隊の動きも環伽羅(ec5129)が見張っている。
 それらの偵察の情報が次々と全体に申し送られて、冒険者側の布陣が多少動いたところで、門が開いた。

「いい加減、落ちろよクソ砦!」
 いささか品は無いが、木下陽一(eb9419)が吼えて、開いた門へとヘブンリィライトニングの神鳴りを落とす。
 それで門の一部が崩れても、それを乗り越えて出てくるデビルの群れにはローリンググラビティーの魔法が駆け抜けた。その距離に違いはあれど、遠方を狙い、功を焦って近付いた小物を狙い、サラ・シルキィ(ec4856)やリーリン・リッシュ(ec5146)、ネフリティス・イーペイロス(ec4440)とアイリーン・バートウィッスル(ec2500)、アルスダルト・リーゼンベルツ(eb3751)といった地の精霊魔法使いがデビル達を地上から上へと巻き上げる。
「地獄の中でだって、主は必ずお助け下さる。頑張りな!」
 ベアトリス・マッドロック(ea3041)のグッドラックを付与されたウィザード達が、大分崩れたデビルの群れに、更に次々と魔法を浴びせていく。
 ガユス・アマンシール(ea2563)がストームで、キルト・マーガッヅ(eb1118)はウインドスラッシュ、テレーズ・レオミュール(ec1529)はアイスブリザードで戦列が薄いところや足の速い騎馬隊を狙う。
 これらの魔法を潜り抜けた空の敵には、アルテリア・リシア(ea0665)、キャロル・フェリアス(ec5841)、鏡桃菜(eb4540)達がサンレーザーで、オリタルオ・リシア(ea0679)のムーンアローが狙い打つ。
 地上の敵には、久駕狂征(eb1891)のスクロール魔法ファイヤーボムが向かう。
 そうして敵騎馬隊の進路と思しき場所にはユリア・サフィーナ(ec0298)達がホーリーフィールドを展開、進路の妨害を画策している。その邪魔を使用とするアンデッドはじめ、敵はアシュレイ・クルースニク(eb5288)のピュアリファイや所所楽林檎(eb1555)のブラックホーリーがその負の生命力を削っていった。
 彼ら、彼女らは魔力が尽きる前に一度後方に退き、回復薬などを煽るのだが、次に戦線に出る時には乱戦の中で味方を巻き込まない注意力が必要とされるだろう。

(担当:龍河流)


●城門攻略戦・とにかく護るの章
──右城門前方・7km地点
 ドドドドドドドドドドドドドドドドドッ
 忙しそうにベースキャンプの中を大勢の人た
ちが走りぬける。
 敵悪魔達の攻勢により、ベースキャンプも後方に移動。
 そこではいつもの如く、傷ついた仲間たちの手当が行なわれていた。
「次の人を連れてきて下さい!!」
 リカバーを施しおえたインデックス・ラディエル(ea4910)が、近くの医療班に向かって叫ぶ。
 既に前線より運びこまれている大勢の怪我人。
 それらの中には、今にも命の灯火が消えてしまいそうなものさえいる。
 そんな人たちをも救うべく、ラディエルは次々と魔法を唱えつづけていた。

──シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
 眼の前に転がっている傷ついた兎。
 それにたいして雀尾嵐淡(ec0843)はニュートラルマジックを唱える。
 やがて兎は傷ついた女性拳士に姿を変えていく。
「これでよし‥‥リカバーを急いでっ!!」
 その雀尾の言葉のタイミングで、リリス・シャイターン(ec3565)は『テスラの宝玉』を間者の腹部に当てる。
「今助けますからねっ!!」
 そう叫びつつ、宝玉に意識を集中するリリス。
 そんな時にも、次々と怪我人は運びこまれてくる。
 
──その頃
「右側から来ますっ!!」
 後方で仲間たちに指示を飛ばしているのはクリス・ラインハルト(ea2004)。
 偵察部隊として敵の動向を探っているうちに、悪魔達のとある部隊が、かつてクリスたちを苦しめていた『ヘルメス』の作戦と一緒であることに気が付いた!!
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィッ
 仲間たちの足元で突然発動する『簡易型破滅の魔法陣・アポカリスプ』。
 だが、その範囲から出る事が出来れば、死はま逃れる。
 それを知っていたクリスは、アポカリスプが発動するたびに、仲間たちに指示を飛ばしていたのであろう。

──さらに
「あわわわわわ。えらいこっちゃぁ」
 上空から偵察していたイフェリア・アイランズ(ea2890)が、とある場所でとんでもないものを確認する。
 それは一つの石碑。
 黒曜石で作り出されている石碑から、見た事のない悪魔が召喚されていたのである。
 全身を金色色の鎧のような外装甲に包まれている獅子。
 全身の大きさは10mをゆうに越えている。
 そんな化け物が突然姿を表わしたのであるから、それを見ていたイフェリアは堪らない。
「い、いそいで皆に伝えないと!!」
 そう叫びつつ、イフェリアは全力飛行で後方に飛んでいった。

(担当:久条巧)


●城門攻略戦・とにかくゴーレムの章
──右城門前方・6km地点
 イフェリア・アイランズ(ea2890)のもたらした情報を受けて、ゴーレム部隊が起動する。
 フロートシップにより石碑正面1kmにまで移動すると、そこから次々とゴーレムが飛び出していく。
「敵未確認悪魔を発見。これより迎撃する」
 風信機にむかってそう叫ぶ音無響(eb4482)。
──ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 その刹那、フロートシップ艦首より放たれた精霊砲が、金色の獅子に直撃した!!
──グォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 絶叫を上げる金色の獅子。
 だが、一歩も怯むことなく、金色の獅子はフロートシップを睨みかえす。
 驚異的な外装甲。
 その皮膚は一部が焼けているものの、致命傷には程遠い。
「そんな馬鹿なぁぁぁぁ」
「まだです!!」
 上空を飛んでいたシルビア・オルテーンシア(eb8174)のゴーレムグライダー。その後部座席に乗っていた月下部有里(eb4494)が、金色の獅子に向かってライトニングサンダーボルトを叩き込む。
──バリバリバリバリッ
 それは直撃し、一瞬だけ敵の動きが怯んだ。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ」
 全力で間合を詰めるフィオレンティナ・ロンロン(eb8475)のヴァルキュリア。
 その手に構えられたロングソードの一義気が、金色獅子の首に叩き込まれた!!
──ズバァァァァァァァァァァァァァァッ
 だが、間一髪という所で身を捻り躱わす金色獅子。
「そんなつ。この反応は一体なんなのよっ!!」
 素早く次の一撃を構えるヴァルキュリアに、金色獅子は口から炎のブレスを吐く。
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
 その熱気に、制御胞内部に乗っていたロンロンは絶叫を上げる。
「ふざけるなぁぁぁぁぁっ」
 ヴァルキュリアの援護に駆けつけたベアトリーセ・メーベルト(ec1201)のキャペルス。
 そのままシールドを構えて体当たりをかますと、体勢を整えている金色獅子に向かってスマッシュを叩き込む。
──ズバァァァァッ
 だが、やはりギリギリの所で致命傷を避けられてしまう。
「それならばっ」
 ヴァルキュリアとキャペルス、二機のゴーレムの同時スマッシュ!!
 角度とタイミングをずらしてのコンビネーションに、今度は金色獅子の胴部に二つの剣が直撃した!!
──グウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 絶叫を上げる金色獅子。
 だが、1度貫いた剣をそのまま押し込め、一気に心臓と喉をたたききり落とす!!
 やがてその身体を大地に横たえつつ、金色獅子は絶命した‥‥。
「仲間の援護に向かう!!」
 風信機から聞こえてくるキャペルスのベアトリーゼの言葉に、【メイ・ゴーレム隊】の全員が遊撃任務を開始した!!

 やがて戦局は一転し、冒険者優勢となっていく。
 悪魔達は防戦一方となり右城門前にて鉄壁の防衛陣形を築き上げていった‥‥。

(担当:久条巧)


●七魔との攻防
 中央門の戦いは、魔法攻撃の応酬に、矢の嵐が赤い空を覆うように続いた。
 ルーフィン・ルクセンベール(eb5668)、ロリンティア・ローリス(eb7874)、アザスト・シュヴァン(ec5560)達が上空から迫る敵を射落としていく。そうした射手は狙われることもあるが、リーン・パルト(ea8931)やアミ・ウォルタルティア(eb0503)はじめ、【誠刻の武】にも複数いる鳴弦の弓を持つ者達が、弦をかき鳴らして行動を妨げる。
 射手もレオ・シュタイネル(ec5382)のように乗騎がいれば周辺を駆け回り、敵を射落として味方の進軍を助け、そうでなければ前線に留まって遠距離攻撃を続ける。後者の周囲では、ナリル・アクトリス(eb4648)や秦劉雪(ea0045)などが、特に鳴弦の弓を鳴らす者達の背後の守りとして展開していた。
 そうやって敵の一部をひきつける者達がいる一方で、戦線を最悪この位置で維持、可能な限り押し上げようとしている者も多い。この門から溢れ出る戦力をモレクの元に合流させてはならず、また他の場所への応援に駆けつけさせてもならないからだ。
 とはいえ、実行は言うほどには簡単ではなく、テティニス・ネト・アメン(ec0212)ら『陽光隊』は戦線突破が叶わずにいた。他の人々と共に、最前線にて武器と魔法との押し合いになる。
 その合間を縫って飛び出そうとする敵の騎馬隊を足止めすべく、黄咲華(eb9694)やイリーナ・ベーラヤ(ec0038)などがその馬に攻撃を加えていく。デビルが操る以上はただの馬ではなかろうが、攻撃を受ければ反応は普通の馬と変わらない。
 かたやただの馬なら足をすくませる地獄の地でも、イシュタリシィ・レッドクリスタル(eb0504)のユニコーンやヘラクレイオス・ニケフォロス(ea7256)操る戦闘馬などは勇猛果敢に騎兵への突撃を繰り返す。馬に限らず、様々な乗騎が入り乱れ、その中を人が駆け回り、デビルが飛び、走る。
 デビルの大半は下級と呼ばれるものだが、時に図体からして大きなものがいて、重装備で固めた上に蒼麗風(ea8934)からオーラパワーの付与を武器に受けた狩野幽路(ec4309)などが、その力技を受けて立っていた。小賢しく姿を消したり、人の合間を縫って何事か囁くような動作をするモノを狙いすます天谷優一(eb8322)達もいる。
 不意に、中央門が開いて、青黒い仮面を付け、槍を持ったデビルが姿を見せた。見知った者がいれば、キマリスと名乗った輩と分かったろうが、それが全体に知れるより先に、咆哮が赤い空に響く。
『人の魂を奪えず、何が地獄の住人か!』
 これに冒険者側の勢いに押されていたデビルの、特に下級のものが奮い立った。けれども人の側とて負けてはいない。
 新たに加わったキマリス直下の軍勢が、やや後方に下がって展開する魔法使いの軍目掛けて殺到しようとするのを、常にデビルと魔法使いの合間に展開していた【誠刻の武】京都隊が迎え撃つ。人とデビルが入り乱れる中で、地獄から力を呼び寄せるデビルもいたが、目立ってデビルが有利となることはない。その反対の状況も、まだ招けていない。
 混戦の中、魔法使い側の前線に出てきた草薙麟太郎(eb431)は、デビルと姿は変わりないが、倒された後に塵ではなく黒い靄のようになるカオスの魔物がいないかを探していた。ようやく見出したそれは、デビル達が地獄から呼び出す力の靄に似て、魔力ある武器への耐性を生み出しているようだ。
 けれども、その情報は流石にこの場で周知されることは無く、
「後方で戦う仲間たちのためにも、敵の合流をここで阻止するのです!」
 マリーティエル・ブラウニャン(ea7820)が皆を鼓舞し、ケイン・コーシェス(eb3512)やシェリナ・グロンツ(ea7490)が他の門の状況も確かめ、伝令が飛び、走り回っていずこの戦線も突破されないように知らせ、指示して回る声が先んじて響いていた。
 最初から徒党を組んでいればその一隊で、そうでなくとも互いに間合いと攻撃方法の足りなさを補うように自然と形成された一団が、各所でデビルの騎馬隊と、下級デビルの我が身を省みない集団と、キマリス配下の兵らとぶつかり合う。
 だが、相手の様子が変わったことに、朧虚焔(eb2927)やフォン・イエツェラー(eb7693)が気付いたのは、キマリス配下の兵達が突然浮き足立ったからだ。それはデビルに徐々に伝播して、下級デビル達が先程までの勢いはどこに消えたかという勢いでじりじりと撤退していく。他のもう少し組織立っているが、何かが違う。
「絶対に生き残れ! 家族、仲間、愛する者の為に今一度奮い立て!」
 【誠刻の武】の空間明衣(eb4994)の声を枯らした叫びに、他の集団からも鬨の声が上がる。意気は確実に人の側が上、けれどもキマリスの指示で明らかに、けれども門を奪われないようにと下がっていくデビル達は総崩れとはならない。
 だがじりじりと押していく冒険者達は、左門突破の報と共に、自身も中央門の前へと到達したのだった。

(担当:龍河流)


●地獄で微笑む歌
 届けられた補給の品を手早く分類する。
 食料の類を炊き出し班に渡すと、純哉くう(eb5248)は薬や包帯を抱えて立ち上がった。皆の努力で清潔に保たれてはいるが、地獄の大地に天幕を張っただけの急ごしらえの救護所だ。設備の整った施設とは比べるべくもない。医薬品の類は出来るだけ外気に触れさせたくはない。
「あ、くぅさん。それはお薬ですか?」
 呼び止める声に、くぅは足を止めて振り返った。
 静かに歩み寄ると、レイチェル・ダーク(eb5350)はくぅが抱える品を確認して小声で囁く。
「端の天幕に木箱を用意しています。これは、そちらに移して頂けますか?」
 目を瞬かせたくぅに、レイチェルは困ったように苦笑してみせた。
「今は、いつ敵の襲撃があるか分からない状況です。万が一に備えて、すぐに持ち出せるように纏めておきたいのです」
 食料も勿論大事だが、戦場で医薬品は貴重だ。怪我人や病人は増え続けるが、医薬品は補給部隊が地上から運んで来る限られた量しかない。また、救護所のあちこちで使用されている為、いざという時に纏まった数を確保出来ないかもしれない。
「わかりましたの」
 こくんと頷く。
 その時だった。
「ふざけるなァッ!」
 激しく争う声が響き渡った。
 慌てて飛びだした2人の目の前で、傷に布を巻き付けただけの男がラルフェン・シュスト(ec3546)を突き飛ばす。無抵抗のまま地面に倒れ込んだラルフェンに、男は憤りが収まらぬ様子で叫んだ。
「命がけで戦って戻ってきてみりゃ、デビル扱いかよ! 冗談じゃない!」
 切れた口元を手の甲で拭って、ラルフェンは身を起こした。差し出されたレイチェルの手を断り、膝を立てると横柄に笑む。
「お前が、とは言ってない。‥‥なんで、そんなに焦ってるんだ?」
「‥‥っ、何を‥‥!」
 いつの間にか、人が集まって来ていた。ざわめきの中に非難めいた言葉が混じるのは、彼らの中に仲間を疑う者への不満が澱のように蓄積していたからかもしれない。ぎすぎすと尖って来る気配は、長引く地獄での戦いの疲れにささくれ立った心みたいに思えて、くぅは泣きそうに顔を歪めた。

-ひとひらの雪 はらはらと‥‥

 ひび割れから染み込むような優しい歌声が、爆発寸前の様相を呈していた場に流れる。高くもなく低くもなく、ゆったりと、静かに。

-美しい白 闇を纏う雪

 遠い昔に聞いた母の子守歌の記憶を呼び起こしたのは、リン・シュトラウス(eb7758)の柔らかな声。
 爆発寸前にまで膨れ上がった気持ちの荒ぶりが、急速に鎮まっていく。

-天の雫が足元に落ちて 雪の花が大地に芽吹くその刻を‥‥

 リンの歌に合わせて、リル・リル(ea1585)がハーモニカ「繊」を吹き始めると、その耳慣れぬ不思議な音色に聞き入る者が集まり、周囲は争っていた事すら忘れてしまったかのように凪いだ雰囲気へと変わっていった。
「おい、お前ら‥‥!」
 そんな中にあっても、未だ怒りが静まらない男の肩に、ラルフェンは腕を回す。
「一時の癒しをフイにするような野暮は止めようぜ。話なら、あっちで聞いてやるから」
 硬直した男を押し遣りつつ、ラルフェンは明王院月与(eb3600)と頷きを交わした。仄かに光を帯びている月与の姿に、男の目も吸い寄せられていく。男が月与に抱いたのは好意的な感情では無さそうだ。
 どうやら「当たり」のようだ。だが、男には確かに人の体と温もりがある。
 ラルフェンは苦々しさと苛立たしさに舌打ちをした−−。

(担当:桜紫苑)


●突破
「‥‥これで城内戦までこぎつける‥‥」

 静かな決意を胸に、オルステッド・ブライオン(ea2449)は眼前に迫る魔物をローズホイップでしたたか打ち据えた。その向こうでは小坂部 太吾(ea6354)が、城を攻め落とさんと奮闘する仲間を援護すべく、ファイヤーボムで敵を迎撃する。
 ディーテ城砦、その左門。そこは、これまでの冒険者達の戦いにより陥落まで今一歩、という所までこぎつけた。
 篁 光夜(eb9547)ら『TN特攻隊』も、隊長の号令と共に突撃する。当初より勇猛果敢に左門を攻め続けた隊員や、同じく左門で戦い続けてきた『【翠志】』の面々、他の多くの冒険者の胸にも、同じ思いが去来している。
 突破はもう目の前。先の戦いでは、わずかなりと城内への侵入を果たした仲間もいた。その優位を、何としてもこの戦いで確たるものに。
 前線で戦う者達の意気込みは、後衛にも十分に伝わってくる。

「TN支援し隊、特攻隊に続きます!」

 鳳 双樹(eb8121)の号令と共に、ディーネ・ノート(ea1542)ら隊員たちも戦場へ身を躍らせる。前衛の仲間にオーラパワーを付与して回りつつ、ウォーターボムやアイスブリザードを始めとする魔法で援護攻撃。ダメージを受けて怯んだ魔物に、すかさず近くの冒険者が止めを刺す。
 戦況は明らかに冒険者の有利。突破は時間の問題だ。無論、そうはさせじと中央門の方から魔物が増援で押し寄せてきたが、勢いに乗った冒険者達の並みの前では、足止めをするのが精一杯だ。
 攻撃は最大の防御、とアクア・ミストレイ(ec3682)はここぞとばかりに魔物を攻め立てる。魔物が此方に来ていると言う事は、あちらはその分手薄になったと言う事だ。

「あちらからも魔物が!」

 ブレスセンサーで敵の動向等を把握し、都度『Ochain』所属ハルカ・ヴォルティール(ea5741)が叫ぶ。その声に応えて敵を迎え撃つのは雨宮 零(ea9527)ら同隊の面々。もちろんそれのみならず、周囲の冒険者達も現れた魔物へと果敢に立ち向かう。
 剣戟と魔法の嵐が駆け抜けるが如き戦場にあって、後衛で救護に当たる者や、彼らを守護する者達もピリピリと神経を張り詰めていた。
 デオール・ノフリス(eb0071)や瀬野 梓(eb3274)らは交代で守備を固め、警戒を怠らぬよう、些細な動きにも気を配り、魔物を寄せ付けぬよう細心の注意を払う。さらに、合間を縫って倉城 響(ea1466)やフォーレ・ネーヴ(eb2093)が簡単に炊き出しを行って、警戒に当たる者や、応急手当を行ったり傷ついて体を休めている者に配って回った。

「う♪ 熱いから気をつけてね」
「腹が減っては戦はできぬ、と言いますから」

 後方の炊き出しには及ばぬ簡素なものだが、戦いの最中にあっては何よりのご馳走。そうして僅かな安らぎを得て、再び冒険者達は魔物との戦いへと駆け出してゆく。
 オラース・カノーヴァ(ea3486)がソードボンバーを放って魔物を切り裂くその向こうでは、夜久野 鈴音(eb2573)が舞うように刀を振るって先へ行かんとする仲間の露払いを務める。エヴァリィ・スゥ(ea8851)のメロディーが魔物の意識をかき乱し、戦線を乱れさせた。その隙を突くのはルーウィン・ルクレール(ea1364)。オーラ魔法を自らに付与し、乱れた戦線をさらにかき乱す。
 魔物を退けるのに合わせて少しずつ前方に簡易的な陣地を作成するヴィルジール・オベール(ec2965)が、この勢いでは作成が間に合わない、とため息を吐いた。

「やれやれ人手はいくらあっても足りませぬな‥‥」
「いや、もうその必要はないぞ!」

 そんなヴィルジールに、門周辺の偵察を行っていた『後方防衛部隊』張 真(eb5246)が、興奮を隠しきれぬ様子で叫ぶ。

「左門、突破成功だ‥‥ッ!」
「おお‥‥ッ!」

 その言葉に、ヴィルジールのみならず、周囲に居た誰もが歓声を上げ、前方へと視線を向けた。幾つもの視線が見守る中、左門はついに重々しくその口を開こうとしていた。

(担当:蓮華・水無月)


●縁の下の仲間たち
 左門の戦況は圧倒的に冒険者有利で、門の突破に成功した。中央門からの援軍も、最大勢力で止めおいている状態である。
 この有利な状況を作り出したのは、もちろん前線で戦う者達の功績が大きいのは確かだ。だが後方で援護や救護に当たっていた者達の功績も忘れてはならない。彼らがいなかったらどうなっていただろうか――それは彼らの献身的な動きから想像に難くない。

 【翠志】の勇貴閲次(eb3592)、室川太一郎(eb2304)らは前線に向かう者達の護衛にあたり、来生十四郎(ea5386)は左門攻略中の仲間達が有利に働けるよう、他の門からの援軍の気を引こうと動く。
 【TN支援し隊】は部隊を挙げて前線に向かう者達の援護をしていた。リスティア・バルテス(ec1713)は門に突撃する人達にレジストデビルをかけて回り、重傷者が出れば治療にあたる。
「やれやれ人手はいくらあっても足りませぬな‥‥」
 ヴィルジール・オベール(ec2965)の呟きが戦場に響く。後方とはいえこちらも別の意味で戦場である。
「TN支援し隊、特攻隊に続きます!」
「デビルなんて敵じゃない〜♪ 勇気と努力と友情で〜♪ がんばりましょう〜♪」
 同じく前衛にオーラパワーを付与して回る鳳双樹(eb8121)に、メロディーで士気を挙げる手伝いをするステラ・シンクレア(eb9928)。その意思だけでも心強いのに、ありがたいことだ。
「進めた成果を後退させぬように頑張ります」
 その言葉どおりエルディン・アトワイト(ec0290)はグッドラックとレジストデビルをもって前線を送り出す。
「今のうちに」
 作り出したムーンフィールドの中で治療をしている者達に声をかけるのはシェアト・レフロージュ(ea3869)だ。効果は永続しないが、少しの間でも安全に治療してもらえれば。地獄にも弱いが太陽や月はあるらしい。月魔法の使用に支障はなかった。
「安心してください。今治しますからね」
 優しく告げ、リカバーだけでなくメンタルリカバーも施してウェルス・サルヴィウス(ea1787)は怪我人の精神面もケアしていく。同時に救護所にデビルが紛れ込んでこないか注意を払っていた。
「先鋒が城砦を突破すれば他門との挟撃になる、それまでがんばるぞ」
 励ましの声が、飛ぶ。カイ・ローン(ea3054)はもしも敵がここまで攻めてきた時の準備万端で、治療に当たっている。
「戦線崩れの心配はなさそうだな」
 フロートシップで物資を運んできた鳳レオン(eb4286)が前線を眺めて満足気に頷いた。エリオス・ラインフィルド(eb2439)はシップから下ろした回復剤を積んで救護所へと走る。
「炊き出しの準備もしなくちゃだね〜」
 フォーレ・ネーヴ(eb2093)と倉城響(ea1466)が準備に入り、治療に当たっているルスト・リカルム(eb4750)、ルザリア・レイバーン(ec1621)、セフィード・ウェバー(ec3246)らはその分自分達か治療と警戒に当たります、と頷いて見せた。

(担当:天音)


●闇に潜みし悪意
 フリッツ・シーカー(eb1116)が斬魔刀を叩きつけると同時に、ジークフリート・ミュラー(eb5722)が斬りかかる。【白騎士団】の仲間同士、息の合った攻撃でデビルの体が吹き飛ばされた。
「おかしい‥‥よね」
 ぼそりと漏らしたジークに、額の汗を拭ったフリッツも頷く。
 おかしい。
 無数に湧いて来るデビルだが、まるで手応えがない。気付けば救護所からは大分離れてしまった。救護所にはデビルの襲撃に備えて相当数の仲間が詰めている。潜入するものを懸念して、隙なく探査しているし、それも十分に成果を上げている。
 なのに、何故だろう。
 奇妙な違和感がつきまとうのは。
「そう言えば、罠に掛かり過ぎるという話も聞いた」
「うん」
 救護所から地獄門にかけて仕掛けられた罠に、悉くデビルが引っ掛かる。デビルもそこまで馬鹿ではなかろうに。
 嫌な感じだ。
 仲間達は未だデビルの攻撃を防いで戦い続けている。アルファ・ベーテフィル(eb7851)の駆るヴァルキリアが腕の一振りでデビルの群れを弾き飛ばす様を見つつ、フリッツは斬魔刀を握り直して踵を返した。
「ここは【後方防衛部隊】に任せて戻ろう。黒玉、俺達は救護所に戻る!」
「何かあったのですか?」
 駆け寄って来た酌喇黒玉(eb3474)に手短に事情を説明し、仲間達への伝達を頼む。これで、他の部隊にも情報が伝わるだろう。
 だが、救護所への道を戻りかけて、彼らはすぐに異変に気付いた。
 進むごとに、打ち払ったはずのデビルが道を塞ぐ。
 確保したはずの経路が、いつの間にかデビルで埋められている。
「まさか‥‥」
 冷たい汗がジークの背を伝った。
 その頃、救護所においても異変は起きていた。
 デビルの疑いがある者を集めていた一角で暴動が起きたのだ。
「疑い」がある者達の中で、デビルが一斉に暴れ出したのだ。デビルであろうと目星をつけられた者の中には、蝶が激しく羽ばたいた時、その場にいたという負傷者達も含まれている。人数の多さに確認が追いつかなかったのが災いした。
 いや、それもデビルの策略のうちだったのかもしれない。
「落ち着いて!」
 声を張り上げるステラ・デュナミス(eb2099)も、その対処に戸惑うばかりだ。
 攻撃しようにも、怪我をおしてデビルと戦っている仲間がいる。
「とにかく、ここは死守するわよ!」
 呼応する仲間達の声を聞きながら、ステラは暴れるデビル達のまっ只中へと飛び込んで入った。
 そしてまた、救護所の外からもデビルは押し寄せていた。
「ここを取られては撤退を余儀なくされまする!」
 火乃瀬紅葉(ea8917)の放った紅蓮の炎も、前面にいた数匹のデビルを舐めるばかり。
「強襲に出た連中もすぐ戻って来ます! それまで持ち堪えてみせましょう!」
 戦闘馬でデビルを散らしながらミュルグレスを奮うレイムス・ドレイク(eb2277)の檄に、紅葉ははいと頷いた。
「悪霊退散‥‥悪魔退散‥‥全ての邪悪は、紅葉の炎で燃やし尽くしまする!」
 だが、そんな彼らを嘲笑うように突如現れた影が、紅葉の炎を払い、救護所の深く打たれた杭の1つにふわりと舞い降りた。
 つばの広い帽子を目深に被った男だ。
 男は、矢筒から取り出した矢を弓につがえた。しなやかに流れるような一連の動作に、その場にいた誰もが目を奪われる。
「っ!」
 その矢が狙う者を探して、イェレミーアス・アーヴァイン(ea2850)は咄嗟に振り返った。矢の先にいるのはーー。
 信じられないと思うと同時に、イェレミーアスは走り出していた。
「やらせるか!」
 矢が放たれると同時に、負傷者を抱え込んで転がる。びりりと鋭い痛みが全身を走る。
「イェレミーアス様!」
 悲鳴のような声をあげて駆けて来る花井戸彩香(eb0218)を止めようとして、イェレミーアスは顔を歪めた。体が痺れて腕を上げる事すら覚束ない。
「‥‥‥‥る、なっ」
 視線を巡らせれば、口元に酷薄な笑みを湛えた男が2矢めをつがえている。
 防ごうにも、体が動かない。
−守れ、ないっ!
「‥‥のォっ!」
 意志の力で動く事を拒否する体をねじ伏せて、抱えていた負傷者を彩香に向けて突き飛ばす。それが精一杯だった。
「イェレミーアス殿!」
「させないっ!」
「許しません!」
 ブレイズ・アドミラル(eb9090)、ボルカノ・アドミラル(eb9091)、グレン・アドミラル(eb9112)の三兄弟が男とイェレミーアスの間に入る。だが、男は動じる事なく弦を引いた。
 得物を構え、攻撃に備えるアドミラル三兄弟。
 しかし、矢は放たれる事はなかった。
「‥‥?」
 怪訝そうに、だが注意深く男の様子を探る。
 男は、矢をつがえたままあらぬ方向へと視線を向けていた。
 その視線の先にあるのは、今もなお激しい戦いが繰り広げられている荒野。
 ふ、と男が息を吐いたように見えた。
「‥‥命拾いをしたな」
 冷たい声が聞こえた。
 決して大きな声ではない。喧噪の中で埋もれ、消されてしまいそうな低い声。
 なのに、冷え冷えとした響きを伴って、冒険者達まで届いた。
 男は弓を下ろした。そして、ゆっくりと彼らに背を向ける。
「待て! 貴様は何者だ!」
 叫んだブレイズに答える事なく、男は軽く杭を蹴った。その姿は、蠢くデビルの間に紛れて見えなくなる。


-モレク撃破。
 ゲヘナの丘で行われていた儀式の力が一時的に弱くなった知らせが彼らの元に届いたのは、その後の事であった。

(担当:桜紫苑)


●天に届いた祈り
 ゲヘナの丘、頂上付近にて――。
 しふしふ同盟のしふしふたちが頂上の情報を持ち帰ってくる。頂上には少数のネルガルが残っているようだが、敵はほとんど居ないと。
 アリーン・アグラム(ea8086)はテレスコープで頂上を観察していた。
「何だあれは? 赤い火だけじゃないぞ、黒い炎が燃えている‥‥」
 ツルギ・アウローラ(ea8342)は周囲に警戒の目を向けていた。
「突破したとは言え、この丘自体が俺達を誘き寄せる罠を兼ねている可能性もある。警戒を怠るわけにはいかんな」
 シャリン・シャラン(eb3232)はフォーノリッジで見えた未来を仲間達に告げた。前回丘の頂上にあった魔法円の中で燃え立つ青白い炎が見える‥‥周りには貴族のような服装の人物達‥‥。
「これから何がおこるのだろう‥‥」
 ティス・カマーラ(eb7898)は武装した仲間達の援護を受けて上空からの偵察に臨む。
「これは‥‥」
 巨大な黒い炎が燃えている。半球状になったそれは頂上を覆っている。
【誠刻の武・裏】特殊偵察の先行でその半球状の炎が相当な大きさであることが分かった。ホーリーフィールドの何倍もの大きさだという。
 エレイン・ラ・ファイエット(eb5299)はアルアジフ断章を片手に頭を捻る。
「それは結界だろう」
「まあ妥当なところだが‥‥これほどの術、覚えがあるのか」
 エリンティア・フューゲル(ea3868)の問いに「いや」とエレインは首を振った。
「だが通常の術ではないだろう‥‥」

 丘の頂上では相変わらずネルガルたちが警備に当たっていた。冒険者達がやってくると残忍な笑みを浮かべ、槍を構えた。
「消えろ人間ども。地上は突破したようだが貴様らには何も出来ん」
「優しい悪魔さん、ゲヘナの秘密、知らないかな?(くす」
 アン・シュヴァリエ(ec0205)はリードシンキングを試みる。――愚かな人間ども‥‥無駄な足掻きよ‥‥この陣を崩すことは出来ない‥‥。
「陣? 一体ここで何を行っているの?」
 ネルガルはにんまりと笑った。
「ふん、読心の術か、見て分からぬか」
 ネルガルは黒い炎に包まれた陣の向こう側を差した。炎の向こう側では魔法円が不気味な光を放っており、魔法円の中には白い固まりが積まれている。そして魔法円を取り巻く貴族のような人物達。
「あそこに見えるのは人の魂、ここは生贄の祭壇。生贄の儀式はモレク将軍の力の根源だ。もっとも、お前達に止めることは出来んがな」
 ネルガルは決定的な言葉を吐き、高笑いを発した。
 と、魔法円から青白い炎が燃え立ち、空中に吸い込まれていく。シャリンが見た未来予知。儀式はすでに始まっているのか。
 陣の中にいる貴族風の人物が一人、悠然と黒い炎に身を晒して出てくる。
「人間達よ、ここの秘密に気付いたか。城砦を攻略しつつあるようだが、モレク将軍は倒せぬぞ。我らが力を与えている限りな。そしてお前達にこの陣を打ち破る術はないのだ」
 貴族姿のデビルは哄笑を見せ、いかんともし難い事実を冒険者達に突きつけた。

 マナウス・ドラッケン(ea0021)は上空から地上の様子を見つめていた。
「これでは手が出せん」
 正体不明の黒い炎に阻まれて、マナウスは往生していた。
 魔法使い達は超越級の魔法をぶつけていたが、黒い炎の壁には全く効果がなかった。これがデビルの結界なら全ての攻撃は遮断される。
 沖田光(ea0029)は悔しそうに結界を見つめる。
「みなさん結界に触れてはいけませんよ。大ダメージを食らう恐れがあります」
「何とかならないのか。このままじゃモレクと戦ってる味方がお陀仏だ」
 ランティス・ニュートン(eb3272)は魔法使い達に迫る。
「一体どうすれば‥‥」
 七瀬水穂(ea3744)はランティスの怒りを受け止めながら結界の前に立ち尽くしている。
「悪魔の術は尋常ではないです〜」
 エーディット・ブラウン(eb1460)は頭を抱え込んでしまった。
 ライア・マリンミスト(eb9592)、リーマ・アベツ(ec4801)、サイクザエラ・マイ(ec4873)ら魔法使いたちにもこれほどの術を打ち破る術はない。
「何てこった‥‥手も足も出せんとは」
 陰守森写歩朗(eb7208)は歯噛みする。ここまで来て準備してきた武器が全く役に立たないとは。
 ゼナイド・ドリュケール(ec0165)は無駄と分かっていても結界を叩いていた。ウェンディ・リンスノエル(ec4531)も同様だ。
 ここまでモレクを追い詰めた仲間達の力、だが魔法も武器も通じず‥‥冒険者達は敗れるのか。
 上位デビルと思われる貴族風の人物は憎たらしいほどに勝ち誇った笑みを浮かべていた。

 その時である、一人の冒険者が行動を起こした。ラヴィ・クレセント(ea6656)、あらゆる民族舞踊をこなすジプシーだ。
「想いが力になるのなら、ウチにもできることがあるです」
 そしてラヴィは神楽を舞い始めた。
「死者の魂が苦しむゲヘナの丘で神楽舞を舞い、得意の踊りで死者の魂を慰めてあげるです」
 デビルは眉をしかめた。
「想いの力だと」
 もう一人、祈る者がいた。ミリア・タッフタート(ec4090)、ノルマンのベテランナイトだ。
「聖水も白き技も無いけれど、祈る心は力になると‥‥」
 すると結界の中のデビルたちが騒ぎ出した。
 ――いかん! 儀式の炎が揺らいでいる!
「馬鹿な‥‥この地獄で祈りの力など‥‥!」
 デビルは慌てて魔法円の方へ戻っていく。
「祈りの力が通じるとは‥‥」
 鷲尾天斗(ea2445)は感心したようにラヴィとミリアを見つめた。何と祈りの力が儀式の炎を弱体化させる。
「みんな祈りだ! 祈れ!」
 天斗はしふしふたちにも、全員で祈りを捧げるよう言った。飛んでいくシフールたち。
 そしてゲヘナの丘の頂上で、集まった冒険者達の祈りが始まった。
 祈りの力が一時的にではあるが、魔法円の青白い炎を弱体化させていく。
「おのれ! させるか人間ども!」
 踏み出すネルガルをマナウスが切り倒した。
「ぐっ‥‥おのれ‥‥」
「祈りが続く間は黙っていてもらおうか。――よし、ネルガルたちを近づけるな!」
 ヴァンアーブル・ムージョ(eb4646)はこの状況をモレクと戦っている荒野の仲間達に告げる。
「こちらはゲヘナの丘なのだわ! 何とかモレクの力を弱体化させることに成功したのだわ!」

(担当:安原太一)


●ディーテ砦前・荒野
 モレクの放った七体の刺客の中でキマリスの動向を探っていたアナスタシア・ベレゾフスキー(ec0140)は人づてにそれらしいデビルは中央門に出現したと聞くことになる。
「これは無駄になったかも知れないな」
アンドリュー・カールセン(ea5936)が設置した夥しいトラップが作動する事は無いかも知れない。だがアナスタシアは寧ろそれを喜ぶのであった。ディーテ砦の攻略戦は冒険者が優位に進んでいると【しふしふ同盟】に所属するアメジスト・ヤヴァ(eb5366)からの報告が先刻届いていた。
「オレイとは何者だ、どこにいる!」
 呀晄紫紀(ec1369)が戦場で捕捉したデビルの喉元に星天弓の狙いをつけたまま尋問を行う。
「俺ごときが知る訳ないじゃないか」
 捕捉できたデビルは、本当に知らないようだった。
「そんなに知りたきゃオティスを捕えて聞けって言うんだ!」
 ぺっ、と唾を吐いて悪態をつくデビルもいた。デビルの中でも嫌われ者がいるらしい。
「紫紀さん、オレイらしきデビルは後ろの方に出現したみたい」
 アリティア・ラグトニー(ec2470)が急ぎ報告に来る。七体の刺客は後方と門に分散しているようだという話も聞こえて来た。

「モレクを攻めている皆に動きがあるようじゃ」
テレスコープとクレアボアシンスを駆使してモレクの動向を探っていたユラヴィカ・クドゥス(ea1704)が声をあげる。
「重大な何かが、起こったようじゃの」
 それは冒険者全体にとっては吉兆と言えた。しかし荒野に展開していた冒険者にとっては災厄の始まりでもあった。

「モレク、我の目の前で倒れることなど絶対に許さない!」
 地獄の門から強風が吹きぬけた。高速で戦場を駆け抜けた影は荒野に到達する。夥しい数のアクババとベルゼビュートフライを率いてハルファスが荒野に出現した。後方に控えた冒険者の部隊に討たれ脱落したデビルを一顧にもしないその行軍は、まさに自らが一振りの剣と化したが如きであった。
「ハルファス‥‥。冷静さを欠くことは遅れを取る事になる」
 ハルファスの傍らに従う者が諌める。
「我に諫言とはなかなか不遜だな、ユーリー」
 ハルファスは纏わりつく髪を整え後方に流すと一度地面を見て天を見上げる。
「カオスの瘴気に歪められたこの世界に閉じ込められて幾星霜。力が全てだと汝がかつて崇めた神も言っていよう。天に挑むは我らが必然。だが」
 ハルファスは呼気を吐かない口から、まるで嘆息のような呟きを漏らす。
「愛など無意味なのだ、ユーリー。最後の教えである。我が見せる醜態を見て学ぶのだ。愛する者を失う事に恐怖し戦を誤る我が性を」
 【ベイリーフ・A隊】、【堅牢】のチームがハルファスの行く手を遮る。

「汝にこれを預ける。既に我が汝を導く事はない。汝は汝の思うままに」
 ハルファスは少年の姿を持つ「それ」に書物を渡した。
「だが汝が我を好いてくれるのであれば、モレクと我の想いを託す。‥‥汝と共にあった日々はそれなりに楽しめた」
 ハルファスは微笑んでいた。想いを託す事ができる存在がいる事が嬉しいとは、と嘲る自分もいるのだが、心地よい心持になれた。それはかつて天使として何の疑問を持たず人を導くのに存在した自分の、真の欲求なのかもしれない。
「ならば、私はこれを最後の涙とする。これよりの我に人間の持つ情など一片もない。ハルファスの名を汚さぬデビノマニとして。貴方に血の川を捧げよう」
 不覚にも流れる涙をぐっと拭き、ユーリーと呼ばれた「それ」は冒険者の囲いを突破して行く。ハルファスに手渡されたはその全ての戦略知識を伝える「百戦奇法」の書。人の血で染められ怨嗟の念が封印された書で強化されたユーリーの魔法により、立ち塞がる者はその生命力を奪われ次々と倒れて行く。
 ユーリーの行く手を遮ろうと動く冒険者にアクババが襲い掛かり、戦場を貫くような声が響き渡る。
「どこを見ている。汝らの相手はこの我のはず。今こそ死と破滅のハルファスの名をその魂に刻め!」
 ハルファスが掲げた剣を地に撃ちつける。刹那、冒険者の体が天空に向けて引きずられる衝撃を受けた。

(担当:谷山灯夜)


●魔神の激情
 この戦いが始まってから、どれだけの時間が経ったのだったか。
 荒野にて、冒険者達とモレクの戦いは続いていた。
「前方、固まり過ぎるな! 奴の攻撃でまとめて吹き飛ばされるぞ!」
「そっちの人! 雑魚はうちらで引き受けたるさかい、モレクとの戦いに集中したってや!」
 【誠刻の武】の静守宗風(eb2585)、【皇牙】のシーン・オーサカ(ea3777)らの声が戦場に響く。
 だが、終わりの見えぬ地獄の猛将との戦い。さすがの冒険者達にも、少しずつ疲れが見え始める。肉体の損傷は魔法や薬で回復することもできるが、巨大な魔物を相手に一方的に攻撃を受け続けるだけの戦いは拷問にも等しいもので、心が挫けそうになる。
『どうした人間ども!! もう終わりか!?』
 多くの魂を贄とした儀式で得た力にものを言わせ、冒険者達が牽制や防御に徹しているのを良いことに、モレクは邪笑を浮かべて斧を振るった。手近な者から次々とモレクの犠牲になり、冒険者達は戦線を維持するのに必死だ。
「なんの! まだやれるっ!!」
「ええ! 私達は、けして諦めません!!」
 マグナ・アドミラル(ea4868)、ファング・ダイモス(ea7482)が盾を構えて前に出る。傷を受ける度に後方に下がって、仲間から治癒を受けたのはこれで何度目だろうか。しかし、その目にはまだ闘志が満ちている。
『愚かな猿どもが! その程度の力でどこまでも足掻くか!』
「何と言われようと構わない。けれど、最後に勝つのは‥‥!!」
 ドラグーンを駆るリューズ・ザジ(eb4197)の攻撃は、やはりモレクに通じないが、それでも彼女は今に反撃の機会が来ると信じて戦い続けている。
 そして‥‥。
「‥‥来たか!!」
 時を待っていたアレーナ・オレアリス(eb3532)に‥‥いや、荒野にいた全ての冒険者に伝えられる、テレパシーによるゲヘナの丘に向かった冒険者達からの連絡。だが、それは‥‥。
「丘の制圧に失敗‥‥だと!?」
『クハハハハッ!! やはり、人間など無力な存在よな!! さあ、我が前に跪くがいい!!』
 さすがに諦めにも近い感情が、冒険者達に漂う。
 だが‥‥。
『‥‥なっ!?』
 モレクの周囲を覆っていた黒い霧。それが、僅かに薄まる。
そう。丘からの伝令には続きがある。丘の制圧に失敗‥‥が、一時的な儀式の妨害には成功した、と。黒い霧が残っている以上、完全にモレクの防御を解いたわけでは無いだろう。しかし、かなりの魔力を秘めた武器や強力な魔法であれば‥‥。
 当然、冒険者達の士気は上がり、一斉に攻勢に動きだす。
「この機を逃すな!! 今こそモレクを叩く!!」
 陸堂明士郎(eb0712)は声を上げ、その盾に封ぜられた魔法を発動すれば、その身は空へと舞い上がる。
 距離を置いていた冒険者達も次々にモレクへと駆けだす。
『おのれっ!!』
 さすがのモレクにも見える焦りの表情。発動するは火の精霊魔法。黒煙が生まれ、あと一歩というところまでモレクに迫った冒険者達の視界を塞ぐ。
「そんなもので、俺から逃れられると思うな!!」
 パラディンのアンドリー・フィルス(ec0129)が行使するはパラスプリントの魔法。一瞬にして煙の中を抜け、モレクのいた地点へと瞬間移動する‥‥が、
「‥‥いないだと!?」
 モレクの巨体は、影も形も消え失せていた。煙に視界を遮られた多くの冒険者は、まだこのことに気づいていない。
「主に叛きし愚かなる者に、今こそ裁きを!」
 フランシア・ド・フルール(ea3047)がモレクの発生させた煙を神聖魔法にて解呪する。そこには‥‥。
「‥‥っ!?」
 果たして、モレクの姿はあった。地を駆けた冒険者達の頭上。空より攻めんとして下を向いていた明士郎や、ペガサスを駆るディアルト・ヘレス(ea2181)やアレーナにとってすら死角。そこにモレクの巨体が浮いていた。
 転位。上級悪魔の持つ能力の一つであり、一瞬にして空間を超える力。スモークフィールドの魔法は、これを使ったことを隠すための布石だったか。皆の注意はモレクが先までいたはずの位置に向けられている。一斉にモレクへと押し寄せた冒険者達は、隙だらけの状態でモレクの眼下に集まっていた。一瞬にして生み出された最悪の状況。
そして今、モレクの攻撃が‥‥否。
『グ‥‥ガアアッツ!!!』
 荒野に、初めて痛みに呻くモレクの声が響いた。空に放たれた一筋の閃光が、モレクの斧持つ腕を貫いたのだ。
「終わりだ、モレク‥‥」
 そう言って弓を下ろすのは皇牙の指揮官、天城烈閃(ea0629)。
丘の儀式が解かれた途端に多くの冒険者がモレクへと攻め逸った中で、彼はモレクがまだ奥の手を隠している可能性を考慮し、モレクがその力を使う瞬間を見極めるべく、もう一時を待った。その読み通り、モレクは転移の力で冒険者達を一網打尽にせんとし、警戒していた彼の矢よって阻止された。放った矢には、彼の隣にいたゼルス・ウィンディ(ea1661)による強力な魔法の付与があった。
「魂を弄び、人々に嘆きを振りまいた悪魔よ。天の怒り、その身に受けなさい!!」
 ――ドッ!!
「先の借り、仲間の分も返させてもらう!!」
 ゼルスの巨大な雷がモレクの巨体を撃てば、危機を脱した明士郎の剣が続く。業物の野太刀にオーラを宿した剣の一閃が魔神を切り裂いて‥‥。
『おのれぇ!! ‥‥人間どもがあっ!!!』
「これで最後だ、モレク!!」
『ガアアアッツツ!!!!!』
 再び空間を飛んだアンドリーの剣が舞い、地上よりマグナやファングの放つ衝撃波がモレクの巨体を捉え‥‥。
そのまま幾多の冒険者の剣や魔法を受け、地獄の猛将と謳われた魔神モレクは、ついに断末魔の声を上げて消滅したのだった。

(担当:BW)


●ハルファスの凶刃
「一体、何が起こったのだ〜!」
 ヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)は突然の事態に恐慌した。瞬時に周囲を確認するが今まさに暗黒の大地へと向けて落下している自分がいることしか理解できなかった。
「ちょっと、何でみんな空にいるの!」
シフールで飛行できるフィオナ・ファルケナーゲ(eb5522)は、あまりの事態に驚愕しながらも瞬時にテレパシーを使い連絡を取り合うことに成功した。
「間一髪、という所でしょうか」
 ベイリーフの隊長であるシルヴィア・クロスロード(eb3671)がペガサスを駆り空中に瞬間移動されてしまった隊員を助けあげる。シャロン・シェフィールド(ec4984)とオイル・ツァーン(ea0018)も空中に投げ出された事に気がついたが、地上からまっすぐ飛行してくる愛馬を、空中で思わず抱きしめてしまう。
「エーリアル、オイルさんも助けて!」
 風がシャロンの髪を揺らした。あまりに不快な地獄の光景の中にあっても、風を感じられることは嬉しい。
「シャロン、助けられた」
 落下をシャロンのペガサスに救われてオイルは戦線への復帰を果す。地を見れば闘気を漲らせハルファスに対峙している日高瑞雲(eb5295)の姿があった。
「派手にやってくれるもんだな」
 肌蹴た肌が怒気で紅潮している。野太刀「物干し竿」から繰り出される一撃がハルファスに命中、したはずだったがハルファスは僅かにステップを踏みそれをかわした。
「よい踏み込みだ」
 ハルファスが答えるように剣を振るう。既に幾人の血を吸っている剣には不気味な刻銘が浮かんで見てとれた。
「気になるか。『モレクに我が存在の全てを捧げる』と刻まれている」
 ハルファスの転移によって空中に歩織り出され落下した冒険者を展開したホーリーフィールドの中で治療に当たっていた琉瑞香(ec3981)は、凶行に及ぶハルファスと主に殉ずると言うより一個の女として行動するハルファスの、どちらが真の姿なのかに想いを馳せてしまう。所詮デビルと人では分かり合える存在ではないが、人のそれと存外変わらぬ行動や思考を時折見せるデビルに混乱する時もある。
「故に、我の目の前でモレクが倒されるなどありえぬ。我が黒鳩の剣に討たれたくなければそこをどけ」
 追いすがる瑞雲を振り切り、ハルファスは目の前に立つ冒険者にその凶刃を振り続ける。冒険者が手にする武器を払い薙ぎ跳ね飛ばしていく。
「好き勝手やりやがって」
 ハルファスに従い突き進むアクババの攻撃をオルフォーク・ザーナル(ec1004)が真っ向から受け止める。デッドオアアライブによって弾いたアクババに剛剣を叩き落とした。
 【堅牢】のデューセイグ・ヴォルザース(ec1788)、アリティア・ラグトニー(ec2470)、朱 空牙(ec3485)、マーリア・バルテス(ec4366)らが呼応してハルファスの軍を構成する下級デビルを駆逐していく。
「何をそんなに急いでいるのかは分からないけど」
 ペガサスに跨り天空より帰還したシルヴィアら【ベイリーフ】の面々ががハルファスの行く手を塞いだ。
「仲間達のためにも、ここを通すことは私が許さない」
 ハルファスに向かい剣を撃ち込めば、剣戟が火花を散らす。
 冒険者は寄せ来る波のようにハルファスとその軍に向かい衝突を繰り返し、ハルファスとも幾筋かの剣を交えた。無限の時間にも思えた戦いは、大きな歓声と共に終焉を迎える。
「モレクが、モレクが、倒れたよぉぉぉぉぉっ!」
 上空からパラーリア・ゲラー(eb2257)の声がする。モレクへ向かった冒険者をフロートシップでサポートとバックアップに務めていた【ウィル双翼騎士団】の面々、越野春陽(eb4578)やギエーリ・タンデ(ec4600)が互いの腕を差し出し、ぐっと握手を交わした。

「我が望み、遂に破れたか」
 シルヴィアや瑞雲の前でハルファスは天を見上げる。襲い掛かる剣を惰性のようにステップで交わしながらその姿は徐々に薄く、おぼろげになっていった。
「モレク。共に高天の頂まで戦いに征くことを想い、どれほど胸が熱くなっただろうか」 紅の眼が地獄では見ることも適わない碧天を映す。
「見事な戦いであった。だが我は我の道を貫くとしよう」
 立ち止まるハルファスに大勢の冒険者の剣と矢と魔法が命中する。が、朧へと変化しつつあったハルファスの姿、そして最後まで付き従っていたデビルの残党の姿は、ふと消えてしまった。
 地獄に集結した冒険者は知らない。遠くロシアの地に仮の姿を置いていたハルファスが本体を召喚し冒険者との戦いに全てを賭けた事を。

 一方その頃、カオスの調査を試みていたヴァイナ・レヴミール(eb0826)は不思議な光景を眼にする。地獄の中にわき出したように現れたカオス。冒険者を血に染めながらも討たれたその時、地獄の地に吸い込まれてしまうように見えた。
「この呪われた大地は‥‥」
 不気味な、風が深淵から吹き付けてくる。遠くから得体の知れない何かがこちらを凝視している気配を突然、感じた。

(担当:谷山灯夜)