<第1回開戦状況>
地獄の門の門番・ケルベロスの撃破に伴い、アケロン川を渡ることなく、地獄への進行が可能となっています。
現在、地獄の奥底に向かう途中にある大城砦・ディーテでは、地獄の軍勢が結集を開始しています。
軍を率いる大将軍・モレクは、七大魔王に匹敵する力の持ち主と言われ、現在は城砦に陣取り、出撃の機を待ち受けている模様です。
地獄の門を過ぎた後、地獄の中ほどにあるのが地獄の城塞都市「ディーテ」です。地獄の中でも最も荒れた厳しい場所のひとつで、城砦の周りには草木一本は得ない死の荒野が広がっています。
ディーテ城砦に集ったデビルの軍勢は、順次、3つの門より進撃しています。現在のところ、門によって敵の進軍に違いはない模様です。
また現在、モレクの進軍ルートは判明していません。モレクを迎え撃つのであれば、偵察が重要になるでしょう。
ディーテ周辺では、ケルベロスの撃破に応じて動き出していた七魔の刺客やその他のデビルにより、荒野に伏兵が潜められている可能性があります。
また地獄の門との連絡を狙う敵が出現する可能性もあり、後陣だからと言っても予断を許しません。
第1回行動入力時戦力
参加人数:1032人
左門 | 中央門 | 右門 | 城砦前 | 後方 | 合計 | モレクは「ディーテ城砦右門」に出没!
| ||||||||
白兵戦 | 7.8% | 7.2% | 8.2% | 6.7% | 4.2% | 34.3% | ||||||||
魔法戦 | 3.4% | 2.9% | 2.6% | 2.7% | 2.1% | 13.8% | ||||||||
救護・防衛 | 3.5% | 4.2% | 4.2% | 4.3% | 9.1% | 25.5% | ||||||||
偵察 | 3.3% | 3.8% | 3.2% | 4.3% | 3.4% | 18.4% | ||||||||
調査(デビル) | 0.6% | 0.6% | 0.6% | 0.9% | 1.1% | 4.1% | ||||||||
調査(カオス) | 0.6% | 0.5% | 0.6% | 0.6% | 0.9% | 3.5% | ||||||||
合計 | 19.6% | 19.5% | 19.7% | 19.8% | 21.1% | 100% |
<第1回戦況>
各門から出撃する地獄の軍勢と、冒険者たちの部隊の激突が開始されました。
総合的な能力では互角であり、中央門・左門では敵防衛ラインに止められながらも、有利に戦闘が行われています。
しかしモレクが出現した右門は冒険者たちの陣を突破。モレクは右門前面・ディーテ外部に陣を敷き、荒野への攻撃を目論んでいます。
また、ディーテ前面の荒野では空中からの攻撃への警戒は高かったものの、悪魔の騎馬による平面機動に対する速度差で押し込まれた部分がいくつか出ていました。
後方は妥当に陣地を構成し、無事補給路を確保していますが。地獄の門の方面を牽制したほうがよいのでは、との声もあります。
戦場全体としては、前面に出たモレクの対処を中心として、予断は許さない状況です。
結果概略
成功結果 | 冒険者の状況 | 敵の行動次回予測 | |
左門 | ◎ | 敵の防衛ラインに止められる | 防衛ライン構築・強化 |
中央門 | ○ | 攻撃は成功、防衛やや後手 | 騎乗戦力の投入? |
右門 | △ | モレクが冒険者の陣を突破! | モレクは右門に布陣、後方に向けて進軍開始 |
城砦前 | ○ | 敵は少ないが機動性で劣る | モレク進軍に合わせ突撃 |
後方 | ◎ | 後方物資確保・防衛 | 地獄の門周囲のデビルの動きあり? |
■第1回報告書
●死の荒野
「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」と記されている地獄の門。かつてこの門を守備していたケルベロスは最早いない。勢いを増した冒険者は、部隊として統率を取りながら、あるいは個別に遊軍としてその門を潜り抜ける。
目の前に広がるのは荒涼とした大地であった。空は赤く血の色に染まり、大地も空気も呪われているように黒ずんでいる。
「カオスの気配‥‥」
この世界を構成する全てにオイル・ツァーン(ea0018)は混沌の力の気配を感じる。
地獄の門を通る前までと通った後ではそれほどまで世界が違うのである。何か大きな力で世界そのものが無秩序に歪められているようにさえ感じる。それも一歩、一歩と足を前に踏み込むごとに混沌の力が増大するようにも。この先には一体何があると言うのだろう。
地獄の門を潜り抜け突如現れた冒険者を見つけた地獄の亡者が一斉に集まってきた。亡者は冒険者の軍に怯むどころか自らの飢えと渇きを満たすべく血肉を求めて襲い掛かって来る。
どす黒く変色した両腕を伸ばして向かって来る亡者の群。それをなぎ払うべく躍り出たルイス・マリスカル(ea3063)は、亡者達にカオスの瘴気を感じていた。
倒しても倒しても尽きる事のないように現れてくる亡者との戦闘ではあったが力差で勝る冒険者の進軍を止めるまでには至らなかった。
そして今、目の前には町のように見える建造物の集積がある。トペニ(eb5348)がデビルの中の一体から、その町に関する情報を得た。
「城塞都市ディーテ」
それが町の名であるらしい。大きな城塞。そして重厚にそびえる三つの門。冒険者はそれぞれに役割を担い、ここに攻城戦が開始される。
城塞の前に守備隊らしきデビルの軍勢が陣を取っていた。門を攻撃する冒険者に「ここは受け持つ」「先に行け」と促し冒険者の一翼がこれに対峙する。空から来襲したデビル、アクババに向けてハロルド・ブックマン(ec3272)がアイスブリザードを放ち応戦する。
「現状、一進一退の状況のようです!」
ディーテの町、そして門の状況の偵察に向かっていた綾辻糸桜里(eb0762)が帰還し報告をする。冒険者の軍は均等に展開できたため、3つの門、全てでの戦闘は拮抗しているようだ。伏兵の存在は気になるが門から敵が出現しない今は砦の前の敵を掃討し征圧する好機とも言える。
【遊撃隊】、【VizurrOsci】、【TK突破】、それに【☆ メイ・ゴーレム隊】の一部が攻撃を掛ける。敵のデビルはカオスフィールドを展開し破られないように身を固めていた。冒険者たちの激しい攻撃の前にそれはいつか破られるだけの、単なる時間稼ぎにしか見えない。地獄の門から敵を駆逐し後顧の憂いを断ってきた。伏兵にも充分警戒して進んできた。制空権も多くの術士や空を飛翔できる冒険者とそのペットたちの成果により既に制圧している。挟撃はありえない以上、何の時間を稼ぐのか。
(担当:谷山灯夜)
●開戦
――ディーテ砦中央門。
まだ開かれる気配のない門前ではしかし既に、攻める冒険者達とそれを返り討ちにせんとする魔物との間で激しい戦いが始まっていた。
「‥‥古来より、迷いそうな時は正面突破って決まってんだ!」
「ここは抜かせん、真幌葉京士郎参る!」
突破を阻むべく大量に待ち構える魔物の群へと突撃しつつ吠えるのは、シン・ウィンドフェザー(ea1819)と真幌葉 京士郎(ea3190)。
「どんどん掛かって来やがれ、敗残者ども!」
トール・ウッド(ea1919)もスマッシュとソードボンバーの合わせ技でもって目の前の魔物達を纏めて薙ぎ払う。二刀流から我流奥義を繰り出す将門 司(eb3393)、任谷 煉凱(eb3473)らも含め、まず積極果敢に攻めていくのは何れのチームにも属さない者達。各々の獲物でもって薙ぎ払い、一歩でも門の近くへ進もうとする。
「推し通る!」
その集団の先頭に立って槍を振るうのは地獄侵攻部隊のルミリア・ザナックス(ea5298)。オーラで地力を高め、後続の仲間のために道を斬り開いていく。
――中央門、最前。
「『打ち砕くもの』の名の通り目前の敵を打ち砕く」
抑揚のない声で言い、クーリア・デルファ(eb2244)はミョルニルで目の前の魔物の頭を吹き飛ばした。
「正面の敵に気を取られ過ぎない様に!」
邪魔な魔物を払いつつ、バーストで門の破壊を試みている静守 宗風(eb2585)と八城 兵衛(eb2196)。
そんな中央門攻防において目を引くのは【誠刻の武】の面々。主席・陸堂 明士郎(eb0712)の指揮の下で先陣を切るのは南雲 紫(eb2483)。初陣を派手に飾るべくラ・フレーメで敵部隊を裂いて進む後には、飛葉 獅十郎(eb2008)、哉生 孤丈(eb1067)らが続く。あわよくば立塞がる敵を押し戻し、城砦へ突入しようという勢いだ。
「デビル共、天下一の大猪が成敗するでござる!」
オーラを付与した刀を抜き放った結城 友矩(ea2046)も高らかに声を上げ、愛馬左門に跨り味方の作った道を突撃する。
「長期戦だ。功を焦らずにな」
自身もシュライクで魔物の腕を切り飛ばしながら、空間 明衣(eb4994)は前へ前へと進むことに気が急いている仲間達へ声をかける。
「最大の功績は生きて帰る事だからな」
その声に、周囲の隊士達は「おおっ」と大きく応えた。
応えつつも皆、敵大将の姿を待ち望んでもいる。ここへ来い――モレクがあの門より姿を現すと信じ、彼らは只管に門の突破を目指す。
(担当:まどか壱)
●突撃敢行
ディーテ砦城、その左門。
「突撃ィ!」
「我らの一撃が砦瓦解の狼煙にならんことを!」
口々に鬨の声を上げて魔物の群れに突っ込んで行ったのは、ケイ・ロードライト(ea2499)や藤村 凪(eb3310)の属する『TN特攻隊』の一団だった。彼らは兵力を左門に集中し、上空と地上からモレクの出現に備える策を取り。それぞれに先陣を切り、或いは援護射撃で魔物を狙う。
それは連係行動を取る『TN戦乙女隊』も同じ。セリア・バートウィッスル(ec0887)も己にオーラエリベイションをかけ、先陣を切る隊長リリー・ストーム(ea9927)を見つめながら、諸先輩達と連携を取り剣を振るう。
今回、多くの冒険者が意識したのは1人で先走らない事、仲間と連係する事。チームの一員としてそれを実践しようとする者もいれば、成史 桐宮(eb0743)のように友人たちとチームを組んで戦いに望んだものも居る。そうでなくとも周りで戦う仲間への協力は惜しまない、というのは積み重ねてきた戦いで学んだ事。
不気味な所だ、と渋面を作りながら前線を抜けてきた魔物に小太刀を振るう龍深城 我斬(ea0031)の隣では、オーラパワーで威力を増してレヴィアス・カイザーリング(eb4554)がスマッシュEXを放つ。すべての魔物を前線が止められるわけではないし、魔物は門から出てくるのみではない。ならば仲間の背後を守り、さらに背後に続く救援部隊を守る為の戦いも必要だ。
さらに魔物の前にはゴーレムに乗る一団『WG鉄人兵団』も立ちはだかる。基本はゴーレム工房の管理下で機密として扱われるゴーレムは、今回の戦いでも前線に投入された。とは言え流石に手放しでという訳には行かない。ガイアス・クレセイド(eb8544)やリール・アルシャス(eb4402)を始めとする面々は、後日稼動報告書を出す事を約束してこの場に立っている。
小さな的に集中するのは難しいが、群れを成す魔物は的としては十分な大きさ。さらにドラグーンに乗った加藤 瑠璃(eb4288)もオーラ魔法を駆使して能力を高め、裂帛の気合で攻撃を仕掛ける。
口元に巻いた手拭の下、無言で魔物と戦うジェームス・モンド(ea3731)が張ったホーリーフィールドは仲間を守り、その一助たらんと榊原 康貴(eb3917)やサイ・キリード(eb4171)、シャルウィード・ハミルトン(eb5413)も群がる魔物を相手に、少しでも数を減らそうと得物を振るい。その上空では『黒騎士団』が一員イリアス・ラミュウズ(eb4890)が制空権を賭けて空飛ぶ魔物と対峙する。
彼方此方で響く鬨の声、剣戟、怒号。それらの間隙を縫い、指揮官レベルの魔物を狙うのはデュランダル・アウローラ(ea8820)率いる『強襲遊撃団「黎明」』。
「一人の力はわずかでも、互いに補い合い協力すれば、それはやがて大きな力となるだろう」
その言葉に頷くエイジス・レーヴァティン(ea9907)、過去の戦いで単独行動を選択し、危機に陥った。だが今回はそう簡単に負けてやるものか、とロングソードを手に隊長の後に続く。
隙あらばディーテ城砦へ突撃せんとマラキム・ニカマ(eb7696)や清原 静馬(ec2493)は機を見ては近付こうとするのだが、彼我の実力は拮抗しており、戦況は一進一退を繰り返していた。この状態ではディーテ城砦の外壁に取り付けた所で、魔物に狙い撃ちを受けるのは必至。ファン・フェルマー(ec0172)も弓矢で敵の間合いを崩すなど支援攻撃を重ねるが、退けた、と思った先には魔物が現れている。
だがそれは魔物にとっても同じだ。互いの連携を強めた冒険者の攻撃は、個でありながら1つの大きなうねりとして魔物達をも翻弄する。救護班送りになった仲間の抜けた穴を別の仲間がすかさず補い、魔物達もまた先へ進む事が出来ない。
そうして、少しでも先へ進まんと戦う冒険者達にもたらされた情報――大将軍モレクは右門に出現したとの報。そちらの戦況がどうなっているのかまでは、ここには伝わって来ない。
あちらではあちらの戦いがあり、こちらにはこちらの戦いがある。ここを抑える事は必ず、モレクを討つ一助に繋がるはずだ。
それを信じ、目の前の魔物を討ち果すべく、冒険者達は戦い続ける。
(担当:蓮華・水無月)
●攻防戦
「特攻隊!突撃ぃ!!」
二頭の竜を連れ先陣を切るのはセイル・ファースト(eb8642)。それに続いて同じ【TN特攻隊】の面々が続く。デニム・シュタインバーグ(eb0346)とリンカ・ティニーブルー(ec1850)、【TN戦乙女隊】のリリー・ストーム(ea9927)、アニエス・グラン・クリュ(eb2949)が空戦力に対応している間に、ベイン・ヴァル(ea1987)が露払いへと向かう。
「いくよー!」
突撃するケイ・ロードライト(ea2499)の後に続く猫小雪(eb8896)や鳳爛火(eb9201)。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
アガルス・バロール(eb9482)の雄たけびは、敵を萎縮させるだけでなく仲間を鼓舞して。
「一人の力はわずかでも、互いに補い合い協力すれば、それはやがて大きな力となるだろう」
【強襲遊撃団「黎明」】ではデュランダル・アウローラ(ea8820)の言葉に頷きつつ、エイジス・レーヴァティン(ea9907)も突撃する。信頼できる仲間がいるということの、なんと心強い事か。背中を安心して任せることのできる仲間達と一緒であれば、存分に強敵との戦いに専念できる――虚空牙(ec0261)もそう感じていた。
【WG鉄人兵団】からはドラグーンが出撃していた。その不思議な兵器は見慣れぬものを圧倒させたが、その力でもって悪魔達を蹴散らしていく姿を見れば、仲間である事の確信は強まる。後ほど詳細な報告書を作って提出しなければならないという義務もあるようだが、それはこの戦いが終わってから考えよう。
魔法支援部隊は白兵部隊の援護をすべく、カメリア・リード(ec2307)、エリザベート・ロッズ(eb3350)らがライトニングサンダーボルト、マアヤ・エンリケ(ec2494)がアイスブリザード、サイクザエラ・マイ(ec4873)がファイヤーボムなどで応戦している。「僕達はここで負ける訳にはいかないから、突っ切らせて貰います!」
沖田光(ea0029)はファイアーバードで飛び回り、敵の撹乱に勤めた。
彼らが安心して戦えるのは、後方に支援・救護部隊があるからである。
【翠志】の来生十四郎(ea5386)、室川太一郎(eb2304)、勇貴閲次(eb3592)は戦場の状況を良く見極め、危険に晒されている仲間達の援護、そして退避警告を発した。一人が敵を牽制している間に一人が重傷者を後方へと運ぶ。その連携の取れた動きには他に救護に当たっていた者達にも意欲を与える。
救護所は【TN守護隊】によって守られていた。負傷者の収容を邪魔しようとする者達からクァイ・エーフォメンス(eb7692)やサラ・クリストファ(ec4647)が守り抜く。
「ここで傷ついた人を見捨てる事なんて出来ないでごじゃる」
「私もできる事を行なっているだけです。何かできることはあります、がんばりましょう」
黒城雀丸(eb1113)を励ましつつ、ウェルス・サルヴィウス(ea1787)は自分にできる事を探す。
一人一人の力は小さいかもしれないけれど、皆で協力をすれば何かが出来るはずだから。
――地上の勇者、ここに集い、戦いに臨まん♪地獄にありても神は我等に微笑むだろう♪
戦場に歌声が響く。ステラ・シンクレア(eb9928)を初めとするメロディーの魔法だ。彼女だけでなく、リーナ・メイアル(eb3667)、シャルル・ファン(eb5267)、レティシア・シャンテヒルト(ea6215)も歌っている。
戦場で戦う皆の士気を挙げるために。
――皆、頑張って、と。心を込めた歌声は、剣戟と魔法の音の中を不思議な速度で駆け巡り、そして冒険者達を奮い立たせていった。
(担当:天音)
●激変する戦場
中央門の偵察隊。
門前の攻防の混乱の中をすり抜けて砦への侵入を試みる者達がいた。隠密技能を活用して最深部進入を試みる大宗院 透(ea0050)にモレク進軍のルートを探るのは零式 改(ea8619)。ジェイラン・マルフィー(ea3000)やカルル・ゲラー(eb3530)はバラのマントで姿を隠し、敵を避けつつの探りが続く。
その上空、ウィル双翼騎士団のエリーシャ・メロウ(eb4333)が操縦するゴーレムグライダー後部には、双眼鏡を首から下げた木下 陽一(eb9419)が同乗して敵の様子を伺っている。
その顔が、右方向に向けられて止まった。
「如何しました、陽一殿」
「何か、右門が騒がしいような‥‥」
「今日の花占いでも、中央突破で驚きの結果が‥‥ってあったもの」
インビジブルのスクロールを使いうまく攻撃を掻い潜ったルンルン・フレール(eb5885)。同じく城壁まで近付けた上杉 藤政(eb3701)がエックスレイビジョンで探るのをじっと見つめる。情報こそ、勝利への近道。
果たして透視によって得られた情報は――
「どこも戦況は似たり寄ったりやなぁ」
フライングブルームで上から状況を確認する将門 雅(eb1645)。その限り、どの門でも五分五分の戦いが行われている様子だった。
「モレクの情報はまだ入って来ませんか‥‥」
【誠刻の武・裏】のウィルフィン・シェルアーチェ(eb1300)と秤 都季(eb2614)は所属メンバーから調査報告が届くのを待っていた。それを指揮官へと届けるのが彼らの役目である。そこへ、機動力を生かして伝達役を行っているしふしふ同盟の燕 桂花(ea3501)が急いだ様子で飛び込んで来た。
「しふしふ〜。調査結果を預かってきたしふよ〜!」
その情報は、テレパシーを通じて前線へと送られていく。
――中央門後方。
「力一杯吹き飛ばすよ〜!」
こちらは後方より、わらわらと湧き出す魔物めがけてティアラ・フォーリスト(ea7222)がグラビティーキャノンを叩き込んだ。キルト・マーガッヅ(eb1118)、ガユス・アマンシール(ea2563)はウィンドスラッシュにて味方の攻撃を援護している。
「怪我人だ! 回復を頼む!」
「対デビル戦は、僧侶の本領発揮ってとこか?」
オルフェ・ラディアス(eb6340)から情報が入ると同時に運ばれて来た怪我人へ、リカバーをかけてやりつつ呟いたのは毛利 鷹嗣(eb4844)。ヴェガ・キュアノス(ea7463)の張ったホーリーフィールド内は前線の簡易救護所と化し、キドナス・マーガッヅ(eb1591)、所所楽 銀杏(eb2963)らが手当てをしつつ、隙を見つけては援護射撃を行うことも忘れない。
「地獄の業火より強烈なの、お見舞いしてあげるわ!」
華岡 紅子(eb4412)が狙いを定めたのは魔物の群の後方。久駕 狂征(eb1891)はファイヤーボムのスクロールで、ヴェニー・ブリッド(eb5868)とジークリンデ・ケリン(eb3225)は互いに合わせて広範囲の魔物を爆発で焼き、或いはライトニングサンダーボルトで掃討する。何れも、味方を巻き込まない地点だからこその遠慮無しの大規模魔法だ。
「大将はまだ姿を見せないか」
アイスブリザードで攻撃していたマイユ・リジス・セディン(eb5500)は前方を伺う。最前は既に門に到達出来た筈だが、依然閉ざされているということは突破出来ていないということ。
「偵察隊は‥‥?」
戦況は分の悪い方へ転がるわけでもないが、好転するわけでもない。一進一退の戦いのじれったさの中、【誠刻の武】の傍で戦うリーリン・リッシュ(ec5146)は偵察に向った仲間の姿を無意識に探した。
「明士郎さん、伝令ですっ!」
そこへ響く所所楽 柚(eb2886)の声。それは偵察へ向っていた【誠刻の武・裏】からの報告。
「モレクが現れました、場所は中央ではなく‥‥右門より出現したとのことです!」
(担当:まどか壱)
●死地への旅路
「ライカは左から!! ターニャは右からまわりこんでっ!!」
眼前に広がる巨大な壁。
そこに見えているのは、地獄の門の右門。
そしてその手前に広がる魑魅魍魎の軍勢。
門に至るまで、まずこの敵陣を突破しなくてはならない。
大勢の冒険者が、そこを目指して突撃を開始していた‥‥。
レイジュ・カザミ(ea0448)は仲間であるライカ・カザミ(ea1168)とターニア・アイオライト(eb3578)のふたりとともに行動、敵悪魔を次々と撃破していった。
だが、その数はあまりにも多く、3人だけでは到底たどり着く事が出来ない。
「敵正面の門まで、まずは道を切り開く!! さあ、道をあけてもらうぞ!!」
天城烈閃(ea0629)のその叫びと同時に、デュラン・ハイアット(ea0042)やクレア・エルスハイマー(ea2884)、メレディス・イスファハーン(eb4863)、ライア・マリンミスト(eb9592 )、マリエッタ・ミモザ(ec1110 )らライトンングサンダーボルト隊が一斉に正面の敵に向かって魔法を発動。
幾条もの電光が一直線に飛び、そして数多くの悪魔をその場に朽ち果てさせる。
その直後に、待機していた白兵戦部隊が一斉に突入。
右門前は乱戦状態となっていた。
「こ‥‥こんなバカなことが‥‥」
大量の悪魔。
それにむかって 勇猛果敢に突撃していった『ベイリーフ隊』。
仲間たちと陣を組突入していったものの、悪魔は魔法や特殊能力を駆使し、ベイリーフ隊のメンバーをその顎に掛けていった。
キュアン・ウィンデル(eb7017)とアイシャ・オルテンシア(ec2418)、ミシェル・コクトー(ec4318)の3名は、悪魔の手によって狂気に落ちたトゥルエノ・ラシーロ(ec0246)によって次々と惨殺。
伏見 鎮葉(ec5421)とアルヴィス・スヴィバル(ea2804)もまた、同じ様に操られてしまったらしい他の仲間と共に同士討ち。
そして指揮を取っていたアルヴィス・スヴィバル(ea2804)と正気に戻ったトゥエルノも、突然眼の前に姿を現わした巨大な牛脳頭を持つ悪魔〜モレク〜の戦斧により、一撃でその肉体を血塗られた肉塊としてしまっていた。
──一方その頃
ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)はテレスコープを駆使しての調査を行なっていた。
「て‥‥敵悪魔確認。場所は右門正面、大きさは5mほど‥‥牛のような頭の巨大な人型で‥‥」
そのユラヴィカの説明を横で聞き取りつつ、それが一体何者であるか、自分の知識を元に調べているディラン・バーン(ec3680)。
「ダメです‥‥該当する悪魔は存在しません!! それがなにものなのか、まったく判らないです!!」
そう叫ぶディラン。
「しふしふー。それを前線に伝えてきたらいいのね?」
慧斗萌(eb0139)がディランの言葉を聞き取り、素早く上昇。
そして仲間たち『しふしふ同盟』の 力を狩りで、そのエリア全ての仲間に敵の総大将らしきものが出現した事を伝令しはじめた。
「大きさは5mほどで、牛のような頭の巨大な人型の知らない悪魔が出現したって!!」
その説明を受けて、アウラー・サシカイア(ea2883)が他の仲魔のもとに伝令を続ける。
「5mの牛の悪魔のような知らない悪魔が出現したって!!」
さらにそれは、ベル・ベル(ea0946)にも伝えられた。
「5mの牛が、知らない悪魔と一緒に出現したって!!」
そしてしまいには‥‥
「5mの脚が悪魔に連れ去られていったぁ?」
メル・ティア(ec5482)に届いた伝令はもう訳の判らないものである。
それでも、ニュアンスは伝わったらしく、冒険者達は総大将らしき敵に向かって突撃を開始していた。
(担当:久条巧)
●モレク出現、そして放たれる刺客
「右の門、大変です!」
伝令を努めていたクリス・ラインハルト(ea2004)が駆けつけ戦況の変化を伝えた。
「巨大なデビルです! モレク、出現しました!」
巨大な斧を振り回すデビルの猛将、モレク出現の報が知らされる。
「門だけじゃないの! こっちも大変だよー!」
上空から声がする。ロック鳥のちろに登場したパラーリア・ゲラー(eb2257)が「後ろ、それに右に左!」と叫んでいる。前方の敵しか見ていなかった冒険者は、その時自分たちの置かれている戦況が激変したことを初めて知ったのだ。警戒はしていたはずだった。なのに、たった一体のデビルにはその戦況を激変させるだけの能力があったのだ。
「敵襲!」
冒険者の集団の後部に位置していた術士にデビルが襲い掛かって来た。デビルの軍の最深部に大きく脚を露出させる衣装を纏った女の姿が見える。血で染まったような紅い瞳が爛々と輝いている。
「放たれたと伝え聞く七魔の刺客には注意が必要と思っていましたが‥‥」
完全包囲された現実を知り朧虚焔(eb2927)は歯軋りをする。
「一瞬にして大軍を移動させると聞くデビル。確かその名はハルファス、でしたね‥‥」
ハルファス。モレクの配下にして魔界の侯爵にして26の軍団を率いるデビルである。人に軍略を授け互いを争わせる事で流れる血を飲むのを至上の喜びとする。妖艶な衣装を纏いながらもその指揮は堂に入っている。追放されたとは言え天界の住人であっただけの貫禄がある。剣を構えたハルファスが冒険者を掃討するための指示を命じた。
「左右のクルード隊、アイスブリザードの斉射、連撃。正面ネルガル隊は顔オスフィールドを解除しファイヤーウォール展開。鶴翼の中軍は敵の後背を突く。一気に押し潰せ!」
その容姿から想像もつかないしわがれた声が戦場に響く。数百を超えるデビルの集団が荒野に陣取った冒険者の後部から襲い掛かって来た。ベルゼビュートフライが酸の霧を吐きグザファンが手にしたふいごから炎の塊を吹き上げ襲い掛かってくる。左右は吹き荒れるアイスブリザードとクルードの吐き出す霧で状況さえ掴めない。しかもどの方向の敵に向かっても相手に背中を見せることになる。敵は正面に向けて攻撃をすれば当たるのに対し冒険者の背負った負荷は甚大だった。
「さしずめ炎氷地獄陣と言うべきか。猪突猛進のアロセールやケルベロスとは違うと今こそ知れ。陣形の整備もせずに進軍する貴様らに破られるほどモレクも我も甘くはない!」
ハルファスが配下のデビルに冒険者の嬲り殺しを命じる。
「霧と煙幕で視界を奪え。さらに伝令を駆逐するのだ。奴らの目を奪った後で各個に撃破せよ」
伝令の中でも充分な移動速度を持たない冒険者が次々と標的にされて行く。
「後衛拠点を失えば一気に士気が下がってしまう‥‥。希望を残すためにもなんとしてでも守るんだ!」
長弓を構え応戦するマナウス・ドラッケン(ea0021)が檄を飛ばす。負傷者の治療に当たっていた月下部 有里(eb4494)も電撃の魔法で応戦する。シェリル・オレアリス(eb4803)のホーリーフィールドが結界により辛うじてデビルの侵攻を食い止める事に成功した。
「今更後ろに戻っても間に合わない。とにかく前に進まなければ」
レイア・アローネ(eb8106)がソードボンバーで前面にいるネルガルをなぎ倒す。開かれた穴を機動力に勝る王冬華(ec1223)が更に広げ、遂に突破口が出来た。空を飛ぶ伝令の中で残っている者や隠密の技能に優れている者が後衛の術士や負傷している者を誘導し、態勢を整える事に成功した。
「総崩れになりそうな所まで追い詰めても、そこから回避できるだけの能力は持っているか。面白い」
遠く、後方でハルファスが口元を歪め笑っている。ディーテの門を攻略している冒険者が地表へと帰るための退路は辛うじて確保できた。しかし戦況の悪化によっては孤立される懸念が生じた。
(担当:谷山灯夜)
●目的の為に、他者の為に
デビル・モレクが右門に現るの報は、中央門にももたらされた。
けれどもそちらに応援に勢力を割く余裕はなく、目くらましか多勢のデビルが出てくる中央門でも一進一退の攻防が繰り広げられていた。
人の血とデビルの偽りの血とが吹き出し、人の血だけが荒野を染めていく。サイーラ・イズ・ラハル(eb6993)やシエル・ジェスハ(ea2686)が見付けた負傷者や遺体のありかを、それらを後方に送り返す救護班へと伝えている。
「道の確保は出来たかっ」
ジャパン医療局と名乗る一団のリーダー白翼寺涼哉(ea9502)が、チーム・キエフ堅牢のラディッシュ・ウォルキンス(ec1503)を振り返った。そこは負傷者達に応急処置を施し、後方の救護本部へと移送する中継点だ。チーム編成しているのはこの二つではなく、魔法戦団、世界騎士団、誠刻の武など、それぞれに少しずつ目的を違えながらも一つの目標のために活動している。死傷者を一人でも少なくすること。
主に治療に当たる国乃木めい(ec0669)やヴィタリー・チャイカ(ec5023)、雀尾嵐淡(ec0843)などは、同時に前線救護所を維持するための結界を張ったりする。同様の活動をしている者は少なくないのだが、すでに人手は足りていない。
モレクが右門に現われようと、中央門での戦闘が沈静化することはなく、デビルとの戦いは激しさを増すばかりだった。人によっては、相手をカオスの魔物と呼ぶが、その違いを明朗に説明できる者はいない。
異変が起きたのは、その時。
乱戦と呼ぶにふさわしい状態が、デビルの一斉移動で変化した。これまで必死に戦っていたものが、なぜか一点に集まったのだ。
「道を確保します!」
デビルが集まった方向と自分達の間に、フレイア・ケリン(eb2258)が炎の壁を作った。続いて救護本部を設置する間のその場の維持と、更にここまでの道を切り開いた堅牢のマーリア・バルテス(ec4366)が、こちらに背を向けたデビルを深追いするなと叫んで、デビルとは別にまだ周辺で蠢いているアンデッドの排除に回る。すでに手近の敵を切り伏せ、薙ぎ倒す者がいて、別には負傷者や欠けてしまった四肢や息絶えた仲間を包んだ毛布を背負い、抱え、馬や馬車に乗せていく者がいる。
仲間がアンデッドを倒し拓かれた道を、蒙古馬の手綱を取る明王院浄炎(eb2373)が、連れている怪我人の負担が少ないように早足に進んでいく。その後ろから、目を閉じたシフールを抱えたメイユ・ブリッド(eb5422)が小走りに行く。
けれども、新たに現われたと思しきデビルが何か吠え、それに呼応したデビル達が四方八方にまた散った時、そうした怪我人と救護班とは絶好の得物だ。当然、次々と彼らを目掛けて押し寄せてくる。
「こら、襲って来るな。ボクは怪我人担いでるんだぞ」
パラの誰かを背負っていたレムリナ・レン(ec3080)が叫んだが、もちろん相手は聞く耳を持たない。今にも爪が怪我人を襲おうとした時、援軍は迎え先からやってきた。
「ま〜だまだ、やらせないよ〜」
龍陽友(ec1235)はじめ、救護本部の護衛に当たっていた人々が、様子を察して迎えに来てくれたのだ。
その場で新たな乱戦の場が形成されるも、怪我人を連れた一団は振り返ることもなく救護本部の結界の中に飛び込んだ。そこから取って返して戦線に戻る者と、治療を再開する者とに分かれていく。
多数の冒険者がいる中、デビル達を従えた新たなデビルの姿を見たことがある者はなく、それが気付いた人々の不安を煽ったけれど‥‥次々と運ばれてくる怪我人への対処に追われて、誰も詳細を確認することは出来なかった。
その後も戦線は一進一退で、双方がじりじりと戦力を減らして、機を見てそれぞれの陣へと帰っていったのである。
(担当:龍河流)
●護る為の戦い
鋭い爪の一撃を盾で弾くと、山王牙(ea1774)は抜き放った愛刀を軽く滑らせた。
斬り飛ばされた毛むくじゃらの腕と、聞くに堪えない絶叫とに眉ひとつ動かさぬまま、大刀の柄を握り直す。痛みと怒りとで我を失ったデビルの猛撃を掠める寸前で躱し、そのまま後ろへと飛び退る。
威嚇の叫びをあげ、デビルは呆気なくその誘いに乗った。
「‥‥馬鹿が」
低く呟くと、牙は深追いしすぎたデビルに向けて大刀を振り下ろす。同時に、防戦していた仲間達も次々に攻撃へと転じた。
うまく誘い込まれて分断されたデビルの群れ。後は1つ1つ叩いていけばいい。
【後方奇襲部隊】の思惑通り、後方拠点を狙うデビルの軍団はこれで殲滅出来るだろう。だが、ここは敵地だ。増援が到着するのも時間の問題だ。それまでに、救護所を中心とした備えを固めておかねばならない。
「みんなが帰る為の大事な道にございますゆえ、何があろうとここは守らせて頂きまする!」
連絡役の仲間達が奇襲の成功を伝えられて、火乃瀬紅葉(ea8917)は大きく頷いた。敵の主力は削がれた。だが、敵は戦いの掟すら知らぬ地獄の魔達だ。秩序もなにもなく、ただ殺戮を求めて襲いかかって来る輩も多い。
「よし、俺達もこのまま行くぞ!」
ヘヴィ・ヴァレン(eb3511)が振り回したロッドが周囲のデビルを弾き飛ばす。怯んだデビル達に向けて、ブリード・クロス(eb7358)とクリス・クロス(eb7341)兄弟が息の合った連携攻撃で道を切り開いていく。
デビル達を斬り伏せていく彼らを援護するのは、魔法を使える者達だ。
ロッド・エルメロイ(eb9943)の炎が一群を焼き尽くせば、エレェナ・ヴルーベリ(ec4924)のムーンアローが残ったデビルを1匹ずつ確実に仕留めて行く。
「フロートシップだ! レオンが戻って来た!」
前線で傷ついた者達を収容し、戻って来た鳳レオン(eb4286)が操るフロートシップの姿に歓声を上げて、メルシア・フィーエル(eb2276)は小さく手を打った。仲間が傷つくのは辛いけれど、それでも無事に戻って来てくれるのは嬉しい。
「みんな〜っ! 【白騎士団】も戻って来てるよ〜! 後で美味しいご飯が食べられるよ〜! 頑張ろうね〜っ!」
フローラ・タナー(ea1060)の率いる【白騎士団】は、地上からの補給経路の確保を主に動いている。メルシアの励ましは、どんな魔法よりも仲間の士気を回復させたのだった。
(担当:桜紫苑)
●地獄の中の天国
急拵えの救護所の幕を捲りあげると、レイル・セレイン(ea9938)は辺りを見回した。きょろきょろと落ち着きなく視線を動かし、何度か周囲を確認した後に小走りに駆け出す。
「‥‥どうかしたのですか?」
到着したばかりの補給部隊から受け取った薬草を腕に抱えて、リーディア・カンツォーネ(ea1225)が首を傾げる。地獄の環境に慣れず、落ち着かない者が沢山いる事を知っていたから、挙動不審なレイルの様子もその現れだろうと温かく見守っていたのだが、どうも様子が違うようだ。
「あの変な子が出て来ないかと思って」
「変な子?」
レイルの話によると、ケンブリッジを防衛した折に、人の世に現れたデビルの大群は仮初めの姿で本体は地獄にあると教えた人物がいるという。いつの間にか傍にいて、いつの間にか消えていた黒髪の青年。
「まあ‥‥。それは変ですねぇ」
「でしょう? だから、また現れるんじゃないかと思って‥‥」
そう言ってレイルは辺りに視線を巡らした。
「その青年は、人がそうそうに知り得ない情報を持っていた事になりますね。‥‥何か見返りを要求されませんでしたか?」
古来より、デビルが人に何かをもたらす時には、見返りが必要になると言われている。青年がデビルである確証はないが、尋ねるリーディアの表情は真剣そのものだ。
「わ、私は学食奢る以外何も約束してないからねっ!」
「学食、ですか?」
そんなものを要求するデビルがいるのだろうか? いるとしたら相当の物好きか、もしくは‥‥。
考え込んだリーディアに影が落ちる。
見上げた2人の頭上を、フロートシップが悠然と越えていく。
前線から負傷者を連れ戻って来たのだ。
勇敢な冒険者とて、無限に戦えるわけではない。戦いに傷つき、疲れた体を癒して再び立ち上がる為に、多くの者達が前線からこの場所に戻って来る。
「どいてどいて〜!」
ぐつぐつと煮えた大鍋を抱えて、美芳野ひなた(ea1856)は走っていた。少しでも均衡を崩すと大火傷では済まない。けれど、まったく気にした様子もなく、てってけ走っていく。
「ひなたさん! あなたはただでさえ転びやすいのですから、もう少し‥‥」
水無月茜(ec4666)の忠告も、彼女の耳には届かない。
ひなたの心を占めているのは、疲れ切って戻って来た者達に温かな食事を、ただそれだけだ。
「茜さん‥‥行くわよ‥‥」
ふ、と微笑んでひなたを見送った忌野貞子(eb3114)の言葉に、茜はええと頷く。
この救護所が前線で戦う冒険者達の生命線である事は、デビル側も分かっている。いくら後方だと言っても放っておいてくれるはずがない。
「今も戦っている皆の為に、傷ついて戻って来た人が安心して体を癒す事が出来るように、必ず守ってみせます」
自分に言い聞かせるように呟いた茜に、貞子はただ微笑むばかりであった。
「落ち着いて、息を吸って下さい。‥‥そう。今度はゆっくり吐いて」
穏やかな指示に、脂汗を浮かべて横たわっていた怪我人の表情が微かに緩む。その一瞬を見逃す事なく、大鳥春妃(eb3021)はその折れた足を固定し、副え木をあてて手際よく包帯を巻いた。
「これで大丈夫ですよ」
「よかったですね」
春妃を手伝っていたリン・シュトラウス(eb7760)も、ほっと息を吐いて笑顔を見せた。人が傷つき、苦しんでいる様を見るのは辛い。けれど、苦しんでいる人達は、自分なんかよりももっと辛い思いをしている。
「歌を‥‥歌いますね。少しでも楽になれるように」
怪我人の額の汗を手布で拭って、リンはそっと目を閉じた。
選んだのは森を流れる清水のせせらぎと、穏やかな木漏れ日の歌。
太陽の光も届かない、血と腐臭に満ちた地獄にあっても、安らぎを感じる事が出来るようにと、リンは祈りを込めて歌い始めた。
(担当:桜紫苑)
●反抗
ディーテ砦城、左門。前線で魔物を打ち伏せるべく奮戦する仲間達の一助にならん、とレティシア・シャンテヒルト(ea6215)はペガサスから地上の様子に目を凝らした。
上空でも制空権を賭けて戦う仲間の姿があり、地上では門を目指して数多の冒険者が群雄割拠する。相対するは魔物。時に崩れそうな戦線は駆けつけて援護し、ジェイミー・アリエスタ(ea2839)も鞭を振るって魔物を威嚇。相手がひるんだ隙に怪我人を救護所へ運んでいく。
その救護所では富島 香織(eb4410)やウェルス・サルヴィウス(ea1787)ら医学知識を持つ者が、己が知識の限りを尽くして仲間の治療に当たった。
「大丈夫、受けた傷は私達が治療しますから!」
励まされ、治療を受けた冒険者はまた、戦線へと戻っていく。支えがあるからこそ、心置きなく戦えると言うものだ。
その支えたる救護所を守るべく、シャリーア・フォルテライズ(eb4248)は仲間のゴーレムやグライダーと連係しつつ、自らもグライダーを駆る。アシュレイ・クルースニク(eb5288)も神聖魔法を駆使し、魔物に正当な裁きを与えてくれん、と奮闘した。
同時に、回復アイテムを持つ者や簡単な治癒を行える者は、緊急を要する怪我人や魔物に道をふさがれ救護所までいけない仲間の応急処置にも従事する。
「はいはい、痛いのは生きてる証だ、もーちょい我慢しな」
威勢は良いが思いやりに溢れた言葉で、弓を携え治療に当たるのは明 豹星(eb3669)。邪魔をする魔物は射撃で蹴散らし、前線の仲間を治療する。
【翠志】チームの来生 十四郎(ea5386)や室川 太一郎(eb2304)らも、偵察に向かった仲間の報告を受けつつ、悪魔を攻撃して味方を援護。同時に怪我人の応急処置をし、魔力の尽きた者へ回復アイテムを渡して回り。
前線からは空飛ぶ絨毯などでも怪我人が運ばれてくる。ロラン・オラージュ(ec3959)も怪我人の運搬を手伝い、同時に仲間に回復アイテムを配って回る。陽 月斗(eb8229)も前線の仲間にオーラ魔法をかけながら、傷付いた仲間には癒しの手を。
『鶺鴒団』に属する伊勢 誠一(eb9659)や志摩 千歳(ec0997)、荊 信(ec4274)らも連係プレーで戦った。誠一や信が敵を薙ぎ払い、その向こうで千歳が怪我人を治療する。守ってくれる仲間が居る、だから安心して己のなすべき事に集中出来る。
サクラ・フリューゲル(eb8317)やシャルル・ファン(eb5267)も、己の出来る事を精一杯努める。
「敵が奇襲等をしてきたという事は私たちが追い詰めている証拠です‥‥!」
ならばこの勢いのままに行ければ良い。仲間を鼓舞する願いを込めて、彼女たちが歌うメロディーは仲間の耳に確かに響く。
前線で魔物と退治する仲間達を支える事、背後を守り仲間が安心して戦いに集中できるよう勤めること。それが救護や防衛をすると決めた冒険者達の戦い方。
「リカバー!」
カグラ・シンヨウ(eb0744)が癒しの魔法を駆使し、ある程度回復した所で救護所へと誘導する。手薄になったところにはカイ・ローン(ea3054)が駆けつけ、仲間と共に剣を振るった。勿論その後、負傷者の治療も忘れない。
上空からもレティシアがメロディで空をかける仲間を鼓舞する。特に、経験の浅い冒険者を見かけた折には、傍によって励ました――誰もが最初は初心者。ならば経験を積んだ者がフォローを入れれば良い。
「さて、モレクはどうなったであろうか‥‥」
日本刀を振るって仲間の援護に勤めながら、ディアルト・ヘレス(ea2181)はふと遥か向こうの別門の方を眺めやった。モレクはあちらから出撃したらしい、という話は彼らにも伝わってきているが、その戦況はやはり不明。
だが、戦線は遅々として前に進まないが、後ろにも下がっては居ない。背後に居る仲間達は大丈夫だ。みんな、まだ戦える。
その想いを胸に、冒険者は仲間を助けるべく得物を振るい、力の限りを尽くして仲間の手当てに奔走する。
(担当:蓮華・水無月)
●門突破作戦
デビルが守る左門では、門突破をかけての戦いが行なわれていた。
そんな中、【TN特攻隊】のミケヌ(ec1942)や尾上彬(eb8664)、【TN口伝部】の彩月しずく(ec2048)、【WG鉄人兵団】のキルゼフル(eb5778)、【翠志】のチップ・エイオータ(ea0061)、一式猛(eb3463)、ライル・フォレスト(ea9027)らは敵の情報を素早く分析、そしてチームの仲間達に伝え回っていた。
【威力偵察隊「月」】の面々は猛将モレクの現れを警戒し、常に門を見張っている。
「モレクは出てこないな」
アリオス・エルスリード(ea0439)が呟いた。
「門の中に入ってみましょう」
次々と悪魔が倒されているというのにモレクは顔を出さない。ならばこちらから偵察に、とリ・ル(ea3888)は進言する。
「しふしふ〜」
その時、【しふしふ同盟】のレミィ・ヴァランタイン(ea1632)とアニス・リカール
(ea2052)が飛んできた。そして戦場に響き渡る大声で飛んで回る。
「モレクは右門に出現したらしいしふ〜!」
「「!!!」」
「それならば、少し門の中へ偵察に行ってみてもいいかもしれない」
戦闘は一進一退という状況ではあるが、モレクがいないだけこちらには余裕があるはずだ。ギルス・シャハウ(ea5876)の言葉に琥龍蒼羅(ea1442)、キット・ファゼータ(ea2307)、リアナ・レジーネス(eb1421)、ヒルケイプ・リーツ(ec1007)も賛成し、悪魔達の隙をついて門付近へと近寄った。
【ウィル双翼騎士団】のレイモンド・クーパー(eb4403)と越野春陽(eb4578)はゴーレムグライダーを駆り、上空から悪魔達の動きを観察していた。
「悪魔達の動きが変わった?」
敵の行動に何か法則性が無いものかと注意していたツルギ・アウローラ(ea8342)が何かに気がついた。
悪魔達はどこかに集まろうとしている――次の攻撃に備えているというのか?
「‥‥さて、ここが当たりかどうか‥‥まぁ地獄行きが決まってる俺にしては、ここで死のうが構わんが、地上を好き勝手にされるのは性に合わないんでな」
モレクの軍勢がいないのならそれを伝えてくるぜ、と鳴神破邪斗(eb0641)は戦場へと戻る。
悪魔達の移動具合を見ていると、次にどこの門から集中攻撃が繰り広げられるのか、分かりそうだった。
次にモレクが現れるのは――。
(担当:天音)
●ゴーレム隊善戦するが
「ふうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
制御盤に設置されている精霊制御球に手をかざしつつ、真崎翔月(eb3742)は必死にゴーレムチャリオットの制御を続けている。
その後ろでは、利賀桐 真琴(ea3625)とミィナ・コヅツミ(ea9128)、グラン・バク(ea5229)と言ったメンバーが次々と襲いかかってくる悪魔達を撃退、仲間たちのサポートを行なっていた。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォッ
モナルコスの1機が、目の前の巨大な悪魔に向かってギガントスターを振るう。
その一撃を受けて、巨大な蛇人のような悪魔は後方に退く。
「ぐっ‥‥だめか。一撃では無理か‥‥」
素早く2撃目を打ち込む体勢を作る伊藤登志樹(eb4077)のモナルコス。
『こちらバガン2の音無です。援護はいります!!』
音無響(eb4482)の乗っているモナルコスから連絡が入る。
「了解。可能なら、横から出てきいてる二つ頭のドレイクを何とかして欲しい」
『了解。そちらの排除にまわります』
と告げて、音無のモナルコスはツインヘッドドレイクとの戦闘に突入。
ゴーレムがあればかなり戦局が楽になる筈であったのだが、ゴーレム自体の持てる巨大な魔法武具は存在しない為、外部で1度魔法を付与してもらい、それを装備する必要があった。
ゴーレムが装備している場合、その武具には魔法は付与できないのである。
それゆえ、悪魔と真面に戦える時間は限られている。
それに、鎧騎士がゴーレムを起動できる時間も限られている為、それほどおおきな作戦に参加することは出来ない。
今は、右門付近に集まっている悪魔達を駆逐する事しか出来ないようである。
その付近でもまた、騎乗している騎士の一団が、悪魔との激しい戦いを続けていた。
「早く、ベイリーフ隊の亡骸を回収してくれ!!」
そう叫びつつ、悪魔モレクに向かって必死に戦いを挑んでいるのは『太陽騎士団』の一人、ミュール・マードリック(ea9285)。
ミュールの連絡を受けた救護班達が、次々とその場で崩れ落ちているベイリーフ隊の亡骸を回収している最中であった。
「はぁぁぁぁっはっはっはっはっはっ。おもしろい、おもしろいぞ人間っ!!」
そう叫ぶや否や、モレクはいきなりその口から火炎を吹いた!!
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
それはかなり広域に広がり、救援部隊であるベアトリス・マッドロック(ea3041)や三菱扶桑(ea3874)、 月下樹(eb0807)といった面々が次々と炎に巻き込まれ、焼き殺されていった。
「この化け物がぁぁぁぁ」
パウル・ウォグリウス(ea8802)もまた、ミュールと共にモレクに戦いを挑んでいった。
が、それは後方で傷ついている仲間たちが逃げ延びるまでの時間稼ぎである。
(そろそろだな‥‥)
周囲の情況を確認したキサラ・ブレンファード(ea5796)は、ミュール、パウルの二人に目配せを行う。
「くっ‥‥この化け物め‥‥」
と捨て台詞をきつつ、太陽騎士団はそのまま徹底を開始。
それとは入れ違いに突撃してきたアイミス・ユーニード(eb0502)が、手にしたダガーでモレクに挑む!!
「ここは突破させていただくわっ!!」
「ふん‥‥無駄な事を!!」
──ドッゴォォォォォォォォォォォォッ
アイミスの攻撃にたいして、カウンターで打ち込んできたモレク。
だが、その激しい一撃はアイミスには命中しない。
彼女が一撃を受ける直前、横から駆けつけたテラ・ソード(ea8235)がアイミスを庇った。
その一撃で、テラの頭部が粉砕し、脳漿が飛び散った‥‥。
「う‥‥うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
絶叫を上げてモレクに向かって突撃するアイミス。
その動きに合わせて、横から飛び出してきた黄桜喜八(eb5347)も武器を構えて飛込んでくる!!
「一人は危険やで!! 一緒したるわ!!」
「その通り!! 一人で突撃するのは危険だ!! 彼女の死を無駄にしてはいけない!!」
さらにナノック・リバーシブル(eb3979)が愛馬アイギスと共に姿を現わした!!
──ズバズバズバァァァァァァァッ
同時に武器を叩き込むが、モレクの皮膚を掠めるだけである。
「愉しい‥‥愉しいぞ人間共ぉぉぉぉぉ!!」
歓喜の声を揚げつつ、戦斧を次々と振り落とすモレク。
その攻撃を躱わしつつ、その場から撤退する黄桜とナノツク。
そしてアイミスもまた、相手との力量の差を思い知られ、止む無く後方に撤退する。
(担当:久条巧)
●調査
「魔物らは何を目論んでいるのだろうか」
【WG鉄人兵団】のソウガ・ザナックス(ea3585)はヴァラス・シャイア(ec5470
)と共に手近にいたカオスの魔物を捕まえていた。尋問するとそのカオス魔物は楽しそうに笑って。
「世界を混沌に陥れるのが我々の役目。メイディアのリンデンにいる歌姫を狙うのも、あの地の人間の崇拝の対象となっている歌姫が死ねば、人々は混乱し、大騒ぎになるだろうからだ‥‥クク‥‥」
また、別の所でカオスの調査を行っていたジェレミー・エルツベルガー(ea7181)は、何となく自分達が侵略しているような感じを覚えていた。それに何となくだが、地獄の奥に向かうほど、デビルやカオスの力が強くなってきているように感じる。
「地獄‥‥帰る道がなくならないか不安。精霊力についても気になります‥‥」
「なら、ムーンロードを使ってみましょうか」
シャクリローゼ・ライラ(ea2762)の呟きを聞いていたフィディアス・カンダクジノス(ec0135)がムーンロードを唱える。
すると――どこへ繋がっているのかは分からないが、月道が、開いた。
戻る道はある、だが、敵もいつでも襲ってこれるのだ――。
(担当:天音)
●そは似て非なるもの
ジ・アースではデビルは知られた存在である。
逆にアトランティスではカオスの魔物が広く恐れられる存在だ。
では、この両者はどう違うのか。
エアハルト・クラウディウス(eb5442)が持ち、他に多くの者が知りたいと思っている疑問には、一つの答えが与えられた。
「どれほど見目が似ようと、別物よ」
ジ・アースでデビルはその存在を広く知られている。
尊大に言い放たれた言葉は、中央門から出てきたデビルのもの。
マリス・メア・シュタイン(eb0888)が偵察部隊から手に入れた情報では、見た目で明朗にデビルとカオスの魔物を区別することは出来ない。そもそも今この荒野にいるのが、デビルだけなのか、それともカオスの魔物だけなのか、その両者の混成軍なのかすら判然としないのだ。
そのため、実際にその戦いぶりなどから情報を得ようとしていた烏哭蓮(ec0312)やメアリー・ペドリング(eb3630)、アナスタシヤ・ベレゾフスキー(ec0140)は、突然中から現われたとしか見えない相手に身構えた。けれどもその時には、相手の得物の切っ先が届く範囲だ。
大柄な黒い馬に乗った、怪しげな獣を模した仮面を付けた屈強な男。周囲の者の感知魔法もアイテムも、それがデビルだと告げている。ただし、実はカオスの魔物なのかもしれない。
けれども周辺で乱戦状態になっていた下級と呼ばれるデビル達が、目の前の敵に背を向けてまで、このデビルの足元にかしずくように集まり来たのが異様な光景だ。いかなる能力か、それとも統率力か、各所から放たれた魔法はそれらのデビルが身を盾にして止めている。
「お前は、何者ですか」
エリンティア・フューゲル(ea3868)が声を張り上げると、デビルは一言言い置いた。
『キマリス』というのが、デビルの種類を示すのか、それとも固有の名前なのか、その瞬間には分かった者はいない。
この時までに、デビル達のまとう黒い靄が発生してから効力を発揮するまでに、魔法の詠唱と同じだけの時間が掛かることと、その効果が多くのデビルで六分ということまでは、これまでの調査や今回の観察で判明している。まれに見られる中級とされるものは、更に長い。
だが、
『奮い立て、我が同胞! 戦場にて、小賢しく我らが力を伺う輩の首を刎ねよ! 胴を薙げ!』
キマリスの雄叫びに、呼応したデビル達の様子は違っていた。まるで何かに取り付かれたように、キマリスの元に集った時とは反対に周囲に散る。その言葉を実現するために。
襲い来るデビルに魔法が飛び、刃が煌めく。人とデビルがかち合う円周の外から、更に双方の仲間が応援に押し寄せる。
「あやつらがどこから来たか、我は知らぬが‥‥思い出せ、この世に生まれ出でた時の我らは天に属した神の下僕ぞ」
乱戦の中央にぽかりとあいた空白地帯の真ん中で、『キマリス』が口にした言葉を、聞いた者がいなかったわけではない。
この情報を持ち帰らねばと奮戦する姿は、でも帰路が開けた時には相当少なくなっていた。
(担当:龍河流)