<第3回開戦状況>
前回の優勢をさらに推し進めるべく、冒険者たちの攻撃は左門・中央門に集中しました。
結果、左門では敵城砦直前まで攻め入り、次回はディーテ城門・城内での攻防が予想されます。中央門も戦況は有利でしたが、敵の動きに対して偵察が追いつかない部分があり、左門ほどの優勢は得られていません。
右門は前回に比べ戦力がやや少なくなっており、モレクを前面に押し出した突撃を食い止めることができませんでした。しかし戦線の解除は早く、前回に比べると交戦による致命的な被害は少ない状況です。
前線を突破したモレクはそのまま城砦前に布陣。その余波を受け、城砦前荒野の戦線は後退しています。また、一部戦力がモレク率いる本軍とは別の動きを見せているとの情報もあります。
後方は前回と変わらぬ体制を確保。ただ七魔の刺客が現れるという流言があり、次回の行動に少なからず影響が見られます。
第3回行動入力時戦力状況
参加人数:1024人
※状況
赤=危険、黄=注意
左門 | 中央門 | 右門 | 城砦前 | 後方 | 合計 | モレクは「城砦前荒野」から出撃!
| ||||||||
白兵戦 | 8.7% | 8.2% | 7.9% | 8.6% | 4.2% | 37.8% | ||||||||
救護・防衛 | 4.6% | 3.5% | 3.2% | 6% | 7% | 24.5% | ||||||||
調査(デビル) | 0.6% | 0.5% | 0.4% | 1.3% | 1.2% | 4.3% | ||||||||
魔法戦 | 3.5% | 3.1% | 2.5% | 2.6% | 1.5% | 13.3% | ||||||||
偵察 | 4% | 2.7% | 2.7% | 5.4% | 2.7% | 17.6% | ||||||||
調査(カオス) | 0.5% | 0.4% | 0.1% | 0.3% | 0.4% | 2.1% | ||||||||
合計 | 22.2% | 18.6% | 17% | 24.6% | 17.3% | 100% |
第3回援護行動結果
参加人数:1100人
達成率 | 行動人数総計 | 作戦への影響 | |
救護 | 118.2% | 425人 | |
炊き出し・物資確保 | 124.1% | 396人 | 防衛力アップ |
武具の手入れ | 98.1% | 359人 | |
陣地作成 | 137.4% | 477人 | 防衛力アップ |
調査 | 138.6% | 591人 | 作戦成功率アップ |
偵察 | 187.5% | 632人 | 作戦成功率大幅アップ |
<第3回戦況>
城砦前・荒野においては、最大数の人数が集まったことと、援護活動が効果的に働き、モレクや七魔の刺客たちを十分に牽制しました。
また、モレクの力の源である「ゲヘナの丘」がディーテ城砦近くに存在していることがわかりました。
調査により、ゲヘナの丘で行なわれる儀式を無効化することで、モレクの能力を大幅に低下させることができる模様です。
荒野での戦いは、ゲヘナの丘を攻略できるかどうかにかかっていますが、敵を止めつつ丘を攻略するという、攻守同時の戦いという難しい状況が待ち構えています。
左門は城壁内に侵入する冒険者が現れるなど、非常に優勢な状態です。一方、中央門・右門では戦線が膠着しています。
後方は七魔の刺客による攻撃が開始されていますが、対モレクに集まった兵力の影響もあり、大きな崩れは見せていません。
戦場全体としては次回、モレクを如何にして攻略するか、それと同期しての城砦への攻撃が重要となるでしょう。
結果概略
成功結果 | 冒険者の状況 | 敵の行動次回予測 | |
左門 | ◎ | 優勢、一時的だが城砦内突入成功 | 他の門の戦力が投入 |
中央門 | ○ | 一進一退 | 左門へ戦力移動 |
右門 | △ | 冒険者側やや押される | モレク・荒野の勢力と連動? |
城砦前 | ○ | 各デビルの封じ込め成功、ゲヘナの丘発見 | ゲヘナの丘防衛・他の門を挟撃? |
後方 | ○ | 冒険者側やや押される | 敵伏兵あり? |
■第3回報告書
●城壁の攻防
ディーテ城砦、左門。もはや、この場の戦いの主導権は、冒険者の側にある、と言っても過言ではなかった。
『TN特攻隊』鳳 美夕(ec0583)や瀬名 北斗(ec2073)は、隊長の突撃命令が出るのを今か今かと待ちながら、ゆっくり、だが確実に前へと進んでいく仲間の背後を護ってファイヤーボムを放ち、剣を振るう。
すでに城壁はすぐそこにまで迫っている。だが、伸ばせば手が届きそうに思えて、その距離は遠い。
防御へと転じた魔物は、これまで以上に仲間同士で連携を取り、油断ない構えで冒険者達を阻んでいる。その足並みを少しでも崩そうと、キリ・ノーファ(ea8859)はわずかな隙を見つけては弓を引き絞り矢を放った。ジョセフィーヌ・マッケンジー(ea1753)も的を城壁の上の魔物に絞り、ダブルシューティングで確実に致命傷を与えていく。
とは言えまだ油断は禁物だ。
「そろそろカタをつけたい所、なんだよね」
ムーンアローを放ちながら、知らず最前線を見やった『マジカル特戦隊』エレェナ・ヴルーベリ(ec4924)とて、それ位はわかっている。ここでは有利な展開だが、他の戦場から伝わってくる戦況はそれほど楽観視できるものではない。
同じ隊のアリスティド・メシアン(eb3084)もまた、グリフォンから見下ろす地上に同じ感想を抱いている。味方を巻き込まないようシャドゥフィールドを放ち、時に門の上空まで飛んでは一矢報いて帰ってくる。だが戦場を見晴るかせば、決してそれほど有利な戦いではない。
それでも、だからこそこの拠点は確保したい。そう願っているのは前線も後衛も同じだ。井伏 響(ea0347)やカルナ・バレル(ea8675)、柿本 源夜(eb3612)、瀬崎 奈雪(eb9920)らは交代で救護所の守護を務め、傷ついて一時戦線離脱した者、そんな仲間を治癒する者達を護っている。
誰もが眼前に迫った門扉を目指して剣を振るい、魔法を放ち、戦場を駆ける。一体一体、地道ながら確実に魔物を屠っていくロイ・クリスタロス(eb5473)のはるか前方に居るのは『WG鉄人兵団』が操るゴーレムとドラグーンだ。
起動限界もあり、単純に疲労蓄積と言う問題もあってローテーションを組んだ団員の、今の操者はアリル・カーチルト(eb4245)にアリア・アル・アールヴ(eb4304)。城壁などにダメージを与えたり、群がった敵をまとめて攻撃するなど、大胆ながら頼もしい動きを見せている。ちなみに今回も事後の運用報告書は必須だ。
負けじとばかりにチャージングで敵を吶喊するクナード・ヴィバーチェ(eb4056)に、大上段からのど迫力のスタッキングPAで攻めたてる燕海山 銀之介(ec4221)。魔物から放たれる反撃の魔法は、仲間の魔法が防いでくれる。
とは言えここは戦場、負傷者が出るのは避けられない。今回も戦う仲間の応急手当に走る冒険者はそこかしこで見られた。イシュカ・エアシールド(eb3839)もその1人だ。強い覚悟の表情で白魔法を駆使し、仲間を癒し、援護する。その傍らに居るのは親友のソード・エアシールド(eb3838)。仲間の為に奮闘するくせに自身を護る術を持たない親友を、代わりに護るのが自分の役目、とイシュカの分まで辺りへの警戒を怠らない。
門扉まではもう後少し。もしかしたら先頭に立つ者は、すでに門を突破したかもしれない。
『ケンブリッジ防衛隊』のシャルロット・スパイラル(ea7465)もまた、門の間際まで迫っていた。
「どこぞの悪魔はこう言った、生み出でし時は神の下僕だったと‥‥離反した理由は‥‥何であったのだろうなぁ‥‥?」
見上げれば首が痛くなりそうな威容に、思わずそんな呟きが漏れる。しかし今は考える時ではない。この勢いを持って魔物を押し込むのだ。
騎馬が荒々しい粉塵を巻きたて、魔法の光がそこかしこで閃く。耳がしびれそうな鬨の声。剣戟。怒号。破壊音。
いかん、と誰かが叫んだ。
「後ろの連中がまだ追いついてない! 進み過ぎだ、引け、引け!」
ハッ、とその声に我に返る。優勢に飲まれ、いつの間にか戦陣が分断されかかっている。
慌てて最前線に居た冒険者達は、ジリジリと後退を開始した。功を逸り過ぎて、逆に後衛の仲間を危険にさらしたのでは本末転倒。
だが確かに、戦いの流れは冒険者の側にあった。
(担当:蓮華・水無月)
ディーテ砦前荒野・最前線
「重傷者は赤、中傷は黄、軽傷は青の布を巻きつけるのじゃ。軽傷者にはわしがリカバーするからの」
峰春莱(eb7959)が走り回りリカバーの詠唱を続けている。ディーテ砦前の荒野ではモレクへ向かった冒険者、あるいはゲヘナの丘へ出立した冒険者が帰ってくるまで戦線を護るために戦う人々がいた。次々に運ばれてくる負傷者を回復させ再び戦場に、あるいは地上に戻すための戦いは重要な仕事である。
「天国に行くにはまだ早いぞ」
春菜の隣ではヴィタリー・チャイカ(ec5023)や元馬祖(ec4154)、キリル・ファミーリヤ(eb5612)、クレイ・バルテス(ec4452)が治療を行っていた。チーム【堅牢】、【ウィル双翼騎士団】が荒野に伸びて展開されている戦線の守備に就いている。
「あらあら、大変。すぐ修理するわね」
フロートシップに運び込まれるゴーレム兵器をミーティア・サラト(ec5004)、ギエーリ・タンデ(ec4600)、ラマーデ・エムイ(ec1984)が修理し戦線へと復帰させる。最初は驚いたゴーレム兵器の存在だが、ともに戦ううちに今ではジ・アース側の冒険者にも馴染んだ光景になった。互いに戦場からの無事の帰還を祈り、励ましあう仲へと変化しつつあった。
(担当:谷山灯夜)
●城門攻略戦・とにかくゴーレムの章
──右城門前方・1km地点
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
全長8mの悪魔・アバドンに向かって、ヴァルキュリアがロングソードを叩き込む!!
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ヴァルキュリアの制御胞では、龍堂光太(eb4257)が叫び声を上げている。
その一撃により、アバドンの8本の首の一つが千切れ飛ぶ。
「今まだっ!! 敵が怯んだいまこそっ!!」
そうゴーレムチャリオットの上で叫ぶ門見 雨霧(eb4637)。
その彼の操るチャリオットでは、ウォルター・スティーヴンス(ec0506)がミョルニルを構えている。
徐々に加速を付けたゴーレムチャリオットによるチャージを叩き込もうというところなのだろう。
──ゴォゥゥゥゥゥゥゥッ
だが、気配を察したアバドンの口から、毒ガスの息が吹き出す。
それはモロにゴーレムチャリオットにふきかかると、その上に乗っていた者たちを次々とマヒさせた。
やがて制御が効かなくなったチャリオットは、そのまま加速を停止しその場で立ち止まる。
と、そこに向かって周囲から悪魔達が次々と襲いかかっていくが、それはシルビア・オルテーンシア(eb8174)の搭乗しているキャペルスが蹴散らしていく。
「仲間たちには指一本触れさせませんわ」
そのまましばらくはチャリオットの護衛を続けるキャペルス。
その頃、上空ではとんでもない情況になっていた。
「フロートシップというのか、これは‥‥」
ベアトリーセ・メーベルト(ec1201)の指揮するフロートシップ。
そのブリッジに、突如一体の悪魔が飛来した。
「こ、こんな近くまで接近を許すなんて‥‥」
驚愕するベアトリーゼに向かって、その悪魔−ヘルメス−はにこやかに笑う。
「まだ現世界に戻るほどの回復はしていないが、我々の世界では十分に活動することができる。こっちが実体なのでな‥‥」
そう告げると、ヘルメスはベアトリーゼにむかって右手を差し出す。
「近寄るなっ!! 汚らわしい悪魔めっ!!」
そう叫びつつ抜刀し、ヘルメスにむかって身構えるベアトリーゼ。
──パチィィィィィィィン
と、ヘルメスが指を鳴らす。
その刹那、ベアトリーゼの姿は一匹の兎に変えられていた。
「うふふふふ‥‥これよこれ。この感触‥‥久しぶりだわ‥‥」
そう淫媚な笑みを浮かべると、ヘルメスは次々と乗組員達を小動物に変えていく。
やがて、フロートシップは飛行を続ける事が出来ず、残っていた乗組員達がなんとか不時着し、墜落は真逃れた。
だが、そこに大勢の悪魔達が取り付くと、次々と抵抗できない乗組員達を貪り食らっていった。
やがて、悪魔達が姿を消した跡、生き残った乗組員達もその術から開放される。
そしてどうにかフロートシップを飛行させると、地上で戦っていた同志達を回収し、一旦ベースキャンプへと戻っていった。
(担当:久条巧)
●様々な戦い
「搬送者が通る、道を開けてやれ!」」
白翼寺 涼哉(ea9502)が声を上げ、馬に乗った【ジャパン医療局】の面々が急ぎ、しかし負傷者の傷に触らないよう慎重に本救護所へと向う。
「退いて、退いてっ!」
「怪我人が通るぜぃ!」
所所楽 苺(eb1655)、ケント・ローレル(eb3501)が愛馬を駆って立塞がるアガチオンを蹴散らす。明王院 浄炎(eb2373)は蒙古馬で続き、しつこく食い下がる一匹は将門 夕凪(eb3581)がぶん殴る。
前線後方。セフィナ・プランティエ(ea8539)、マリーナ・アルミランテ(ea8928)らが張ったホーリーフィールド内の簡易の救護所へは、程度の大小に関わらず怪我人が絶えず運び込まれていた。手に負えない程の重傷人達は涼哉の指揮のもと、順次TN守護隊の待つ拠点へと運ばれて行ったが、忙しさは変わらない。
「はいはい、痛いのは生きてる証だ、もーちょい我慢しな。ん、よしっと、動いてみ。」
「すいません、解毒お願いしまーす!」
「こっち、水足りてないよ!」
「‥‥はい、水ですっ!」
明 豹星(eb3669)が手当てをする後ろで、高川 恵(ea0691)はクリエイトウォーターで桶に清水を作り注ぐ。マーナ・リシア(eb0492)はアンチドートで解毒治療。戻れるくらいに回復した者へは、風姫 ありす(eb7869)がオーラパワーをその武器に付与してから送り出す。
次から次へと 座り込み、あるいは横たえられている仲間達の間を走り回る彼女達の額には、薄っすらと汗の珠が浮いている。
「できることは少ないけれど手は必要だものね」
既に力を使い切るほどの治療に当たった白井 蓮葉(ea4321)はまだまだ救護の手となりたいと、赤坂 さなえ(eb4538)に指示してもらいながら応急手当に当たっている。そして、その近くではアナマリア・パッドラック(ec4728)がアユギで意識の無い仲間を仰いでいる。
「剣は握れませんが、これも一つの戦い方‥‥ここは退けません」
その言葉は、治療に当たる仲間達の心を代弁していた。自分達は自分達に出来る戦いを。一人でも多くを癒し、その命を繋ぎとめる為の戦いに集中を。
――それが出来るのもまた、仲間を信じているからこそ。
「しふしふ〜。後ろからアンデッドが来てるよ〜」
中央門攻略チームの背後を偵察していたキャル・パル(ea1560)からの報告。
『アンデッド、後ろから来るわ』
テレパシーでそれを伝えるサイーラ・イズ・ラハル(eb6993)に了解と返して、アリス・メイ(ec5840)は視界に入ったその群めがけてライトニングサンダーボルトを放った。
「この先には通しません!」
「止めるわ!」
魔物の突進を遮ろうと盾を構えて進路に立つワルキュリア・ブルークリスタル(ea7983)。ソニックブームで迎撃するマリアール・ホリィ(ec5844)と鳳 麗春(ec5846)。白 麗花(ec5864)はインプを鞭で絡め取る。彼女達救護所を守る仲間を信じるからこそ、治療班は治療にのみ集中することが出来るのだ。
「重傷者です! リカバー頼みます!」
新たにまた、傷つき倒れた仲間が運び込まれて来た。門攻めに集中する仲間を守ろうとしたのか――血塗れで搬送されて来た嵐山 虎彦(ea3269)を預けて、タイタス・アローン(ea2220)は再び前へと戻って行く。
入れ替わるようにして、パーナ・リシア(ea1770)と浅井 雷菜(ea7704)がやって来て、状態を診るとリカバーを唱えた。
前線の戦いが続く限り、後方の戦いもまだまだ終わらない。
――ところで。
「ねえ、あなたはこれから何をしに行くの?」
救護所の外で、鳳凰院 あすか(ec5863)はチャームをかけるのに成功した魔物からこんな話を聞いていた。
『クケ、決マッテル。冠ヲ捜スノサ』
「ふぅん? ‥‥冠ってどこにあるの?」
『知ラナイ、知ラナイ、ダカラ捜ス。ドコニデモアルカモシレナイ。じ・あーすニモ、あとらんてぃすニモ。フルカス様は、あとらんてぃすニモアルカモシレナイト言ッテイタ』
「‥‥えっ」
(担当:まどか壱)
●蠢くは、七魔
シャリオラ・ハイアット(eb5076)は祈っていた。
雑然とした救護所の中、2つ重ねた土嚢の上に肘をつき、一心不乱に偉大なる父に祈りを捧げる。
「シャリオラさん、あんまり根を詰めちゃ‥‥」
祈り続けるシャリオラの肩に手を伸ばしたジュディス・ティラナ(ea4475)は、彼女の唇から漏れる小さな祈りの言葉に気付き、耳をすませた。
「‥‥偉大なる父よ‥‥。カオスについて私めに教えてくれちゃったりなんかすると嬉しいんですけど、どーでしょ?」
くるり。
ジュディスは回れ右をした。
「ジュディちゃん?」
ちょんと首を傾げる白翼寺花綾(eb4021)の手を取り、ふるふると首を振る。
「ううん。何でもないの。さあ! 行くわよ、花綾ちゃん! 皆で楽しい気持ちになれば、血腥い地獄だってこわくないわっ」
「う‥‥うん?」
胸元から太陽の扇子を取り出したジュディスに頷いて、花綾も近くに転がっていた木箱の上にぴょんと飛び乗った。
ーー君が想ひ ぬばたま照らす兆しとならん
花綾の歌声が響き始めると、周囲のざわめきがゆっくりと引いていく。痛みに呻いていた負傷者も、殺気だった様子で出撃の支度をする者も、柔らかな歌声にしばし耳を傾けた。
ーー君へ届け 生きる希望‥‥
「想いの力‥‥か」
確かに「それ」はあるのだろう。
仲間達が生気を取り戻していく様を離れた場所から眺めながら、水上銀(eb7679)は小太刀の柄へと手をかけた。火を燃やし続ける為には薪や炭が必要だ。人が生きていく為には食事が。
口元を緩めて、銀は小太刀の鞘を払った。
雀尾煉淡(ec0844)と頷き合い、間合いを詰める。
「まったく、油断も隙もないとはこの事だね」
「ええ。でも、私は誤魔化せない」
煉淡の放ったブラックホーリーで吹き飛ばされた男に、銀がトドメを刺す。人の形をしてはいるが、それは人ではない。いつのまにか、デビルは救護所にまで侵入を果たしていたようだ。
「かわい〜コに手ぇ出してい〜のはあたしだけだよっ」
「あらあら、困ったことね」
レシーア・アルティアス(eb9782)のキツイ一撃に倒れたデビルを、【TN守護隊】のセレスト・グラン・クリュ(eb3537)が締め上げる。一瞬、羨ましいと思ってしまったレイムス・ドレイク(eb2277)は、慌てて首を振ると、捕らえたデビルを引き立てて行った。一ヶ所に集め、纏めて対処するらしい。
少しでも情報が得られるなら、御の字だ。
「さあ、知っている事をお話しして下さい。モレク達の弱点は何ですか?」
晃塁郁(ec4371)の問いかけに、デビルの死体は何も答えを返さず、やがてゆっくりと崩れていった。
「やはり無理かな」
雑魚デビル達には大将軍の秘密など知らされていないのかもしれない。
「テレパシーで」
塁郁の髪を小さな手が引っ張る。肩の上に乗ったティアラ・サリバン(ea6118)が、じぃと塁郁を見上げていた。
「デビルと少し話をしたのだ」
え、と塁郁はティアラを凝視した。
「誰から命令されたのかと聞いたら、オレイという名前が伝わって来た」
「オレイ? モレクではなくて?」
周囲にいた仲間達も集まって来る。
「違う。オレイって誰って聞いたけど教えてくれなかったのだ‥‥」
重ねて問えば、言い淀む気配が伝わって来た。知らないのか、それとも消滅寸前でも答える事すら出来ない程、畏怖する存在が関わっているのか。
まだまだ地獄の闇は深そうだ‥‥。
(担当:桜紫苑)
●悪魔たちの思惑
ディーテ城砦の左門を臨む荒野の一角。
門の向こうからデビル達が虎視眈々とこちらを狙っているだろうが、シェアト・レフロージュ(ea3869)は出来るだけ門に近付いてパーストを使用した。可能な限り過去まで、魔力を全部使う勢いで何回も。
「白い珠が‥‥」
繰り返した魔法の中で、デビル達が白い珠の入った箱を大事そうに抱えて移動していく姿が見えた。その数は、百や二百では効かない。
戦闘が始まってしまえば、デビル達の不穏な動きを追うのは心得がない者には難しい。それぞれが持っている技能を活かし、またこれと決めた場で動くだけだ。
サシャ・ラ・ファイエット(eb5300)が魔法で生み出した水が容れ物に溜まると、あっという間に汲み出されてあちこちに運ばれていく。一部は喉の渇きを癒すのに、大部分は救護所まで運ばれてきた負傷者の傷口を洗うのに使われる。
救護所には多数の負傷者と、その間を行き来して手当てをする者達がいる。ルスト・リカルム(eb4750)やルザリア・レイバーン(ec1621)などがリカバーを、必要があればセフィード・ウェバー(ec3246)がクローニングを、それでも追いつかない多数の負傷者には、瀬崎鐶(ec0097)達がこれまでにあちこちから寄付された回復のためのポーションを飲ませていく。
けれども、前線では救護所で傷を癒したのと同じだけ、もしかするとそれ以上の負傷者が作り出されていた。自力でその場から逃げられればよいが、そうではない者も多数いる。
気合一閃。
室川太一郎(eb2304)のバーストアタックが、城砦の厚い壁を薄く削る。それで身を引いたデビル達の手の先から、数名が負傷者を引き摺り上げ、伊勢誠一(eb9659)の戦闘馬を繋いだ馬車の荷台に載せる。後方に送る余裕もない重傷者なら、同行している志摩千歳(ec0997)がリカバーを使うが、大抵はデビルの猛追を振り切って救護所まで向かう。
救護所付近では、エルディン・アトワイト(ec0290)達がホーリーフィールドを展開して、空を飛んでくる敵の襲来に備えていた。空にはカイ・ローン(ea3054)達、飛行騎乗動物を駆る者達がいるが、敵も数で押してくる。救護所に突撃されないように、張られたホーリーフィールドをアラン・バーネル(ec5786)達と協力し、飛び掛ってくるデビルを薙ぎ、魔法で打ち払う。
そうして発生したばかりの負傷者が、また救護所に担ぎこまれてくる。裂傷を負った青年を見て、ウェルス・サルヴィウス(ea1787)がユキ・ヤツシロ(ea9342)の目を覆った。負傷者にも自身や他人の出血で狂化した者は少なくない。それでも懸命に治療に当たる者も多いのだが、どれだけ自分を律してもどうにもならないことは補い合うべきだろう。
負傷か狂化か錯乱か、いずれか理由は分からぬ悲鳴が幾つもして、メンタルリカバーが使えるクレリック達がそちらに向かう。
負傷者もまた癒されて、気分を奮い立たせて前線に戻っていくのだ。
戦場では、デビルとカオスの魔物というのは簡単に区別が付くものではない。特に地獄で見るのはほとんどがデビルで、カオスの魔物は稀な存在のようだ。
けれども前線にこそ両者の違いを示す何かがあるのではないか、時に使う黒い靄の能力を調べようと城砦直前まで近付いたエイジ・シドリ(eb1875)と草薙麟太郎(eb4313)とは、デビルならリリスと呼び、カオスの魔物なら黒きシフールと呼ぶ個体が二体倒されるのを目にした。
片方はただ塵になって吹き飛び、もう一方は塵というより靄となって、周囲のデビル達に纏わり付くようにしてから消えていったのを、確かに見たのである。
(担当:龍河流)
●地獄の門
地獄門をディーテ城砦攻略の補給基地にする。
そう提案したのは【白騎士団】のフローラ・タナー(ea1060)だ。
「出来ればモレクの攻撃にも耐え得るよう、防備を強化したいのです」
この門を攻め落とす為に、どれほどの犠牲を払ったことか。冒険者達は、身を以て門の強固さを知っている。
「考えたね。門を使えるなら、前線で戦っている皆も、負傷者も安心出来るだろうね」
頷いたのは、同じく【白騎士団】のジークフリート・ミュラー(eb5722)。だが、そう簡単には行かない事も、彼は分かっていた。
巨大で堅固な門。かつてケルベロスが守護していた門は、開放された後に人の世と地獄とを繋ぐ道となったが、彼ら冒険者はそこを完全に掌握しているわけではなかった。門を占拠し続けるには相応の戦力が必要だ。前線との補給線の確保、負傷者の保護と治療、炊き出し、武具の手入れ‥‥正面をきって敵と戦う機会こそ少ないが、前線の命綱としての役割がある。
「でも、確かに門は重要だよ。モレクとの戦いの最中、背後を突かれたりしたら‥‥」
言いかけたドリス・クルーガー(ea9966)が、何かを感じて振り返った。直後、何者かの侵入に反応したトラップが炎を吹き上げた。これで何度目になるだろう。ドリスは息を吐いて肩を竦めてみせた。
「デビルってやつは、結構勤勉だよね」
言葉を発する間にも、どん、という音と共に震動が断続的に伝わって来る。森里霧子(ea2889)らがあちこちに仕掛けた罠が発動しているのだ。
「次!」
霧子の声を合図に、チュチュ・ルナパレス(ea9335)がぴんと張られたロープを切る。数秒を待たずして、鈍い衝撃音が響く。
「次!」
投石の次は、聖別された水を仕込んだ槍衾だ。石をかわしたデビルも続けての攻撃にダメージを受ける。けれども、幾重にも重ねられた罠も、全てのデビルを防げるわけではない。
「申し訳ありませんが、こちらも手加減は出来ませんので!」
エル・カルデア(eb8542)のローリンググラビディで高く飛ばされたデビルを、ルメリア・アドミナル(ea8594)の放った雷が打ち、動きの鈍ったデビルはロッド・エルメロイ(eb9943)のマグナブローが焼き尽くす。
「よ‥‥容赦ないしふ‥‥」
とんでもないものを見てしまった‥‥。
冷や汗を拭って、アメジスト・ヤヴァ(eb5365)は繰り出される超絶技の連続攻撃に、大嵐に吹き散らされる木の葉のごとく散らされるデビルに少しだけ‥‥シフールの爪の先よりもほんのちょびっとだけ同情したのであった。
「頃合いか」
各所であがる火の手、土煙。
冒険者達の陣へと潜り込ませた者達は、悉く排除されているようだ。
満足げに笑うと、彼はゆっくりと手を振り上げたーー。
(担当:桜紫苑)
●城門攻略戦・とにかく戦うの章
──右城門前方・2km地点
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ
絶叫を揚げつつ、手近の悪魔に向かって切りかかっているのはカルロス・ポルザンパルク(ea2049)。
彼の目標はモレクただ一人。
だが、そのモレクの姿が、この右門周辺には見当たらないのである。
その為、右門を突破し、城内に向かって入っていこうとするのだが、右門を警護する悪魔の数が圧倒的に多すぎるのである。
まるで‥‥この右門の向うに何か『触れてはいけないもの』があり、それを守護するかの如く。
「ここから先にはいかせないよっ!!」
カルロスの眼の前に姿を表わしたのは、双頭の竜に乗っている、天使の翼を持つ子供。
その子供が、竜から飛びおりるや否や、カルロスに素手で向かっていく!!
「姿かたちには惑わされぬ‥‥」
「そうだね。それがいいと思うよっ!!」
ニィィィッと笑いつつ、その悪魔−ヴォラック−は素手でカルロスに向かっていった。
その近くでは、ルイス・マリスカル(ea3063)が、手にした不思議な水瓶から発せられている音に気を配っている。
「近くにかなり強力な敵がいます!! みなさん気を付けてください!!」
そう叫ぶルイスの声に、周囲の仲間たちは周囲を警戒。
その刹那、あちこちから大量の悪魔が噴出し、一斉に冒険者にむかって襲いかかっていく!!
「ちっ‥‥対した腕ではないが、数でこられると厄介だな」
「ああ‥‥まったくでござる」
伊東登志樹(ea4301)と葉霧幻蔵(ea5683)の二人が、そう呟きつつも防戦に入る。
幻蔵の大ガマが次々と悪魔達を蹴散らし、登志樹がそこそこの奴を潰していく。
「荒野で戦う仲間たちのためにも、少しでも数を減らさなくては!!」
シュトレンク・ベゼールト(eb5339)がそう叫びつつ、悪魔達を撃破していく。
だが、やはり数には勝てず、徐々に撤退する方向に追込まれつつある。
そしてそれは、他のエリアで戦っている仲間たちにもその風潮が広がっている。
「撤退する方は急いでや!! 私の魔法にも限度があるんやからな!!」
撤退を開始した仲間たちの援護に、日田薙木穂(eb1913)がサンレーザーを発動し、追撃してくる悪魔達を分断している。
「吹けよ吹雪、轟け嵐っ!! アイスブリザードっ!!」
アークスタッフを構え、ジェシュファ・フォース・ロッズ(eb2292)がアイスブリザードを発動。
その凍てつく吹雪に巻き込まれ、下級クラスの悪魔達は次々とその場に崩れていく。
だが、それをくぐりぬけつつ、悪魔達は冒険者達に向かって戦いを挑む。
右門正面は、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた‥‥。
(担当:久条巧)
●一進一退の攻防
「索敵がおろそかじゃ、どんな強い部隊でもその力を発揮できやしない。ここはレンジャーの腕の見せ所だね」
「皆の為に、って思えば頑張れるね☆」
頼もしい言葉を残して偵察へ向ったエクレール・ミストルティン(ea9687)とカズィ・クロスライド(ea1940)。敵はどう動きどこを狙って攻めてくるつもりなのか。白井 鈴(ea4026)、酌喇 紅玉(eb3479)、川北 水藻(eb5239)達は中央門から出てくる騎馬隊の動きを警戒する。インビジブルで姿を消しているルンルン・フレール(eb5885)や、忍び犬二匹と行動を共にする鳴滝 風流斎(eb7152)も同様。荒野のモレクの元に合流させるわけにはいかないだけに、増援は是が非でもここで食い止めなければならない。
「奴ら、留まる所を知らないわねぇ‥‥」
呟くアリーン・アグラム(ea8086)がテレスコープで視る中では、前衛が荒野への援軍と激しく衝突している。一方で、警戒する荒野からの挟撃についてはまだ情報がない。
「荒野に夢中なのかしらね」
遠くにモレクの巨体を見つけたアニェス・ジュイエ(eb9449)がぽつりとこぼす。手下共も、反転してこようという姿はとりあえず無い。後ろからの脅威の可能性はぐんと減ったわけだがさて――前の戦況は、どうなっているだろうか。
「騎馬小隊、新たに門から出現! ‥‥左門へ向おうとしています!」
環 伽羅(ec5129)が正面を示して仲間達に伝える。出鼻を挫こうと、エリオス・ラインフィルド(eb2439)は騎馬隊の前方を狙ってファイヤーボムを放った。
「アメン神の御力を受けなさい!」
後方からネフティス・ネト・アメン(ea2834)、フォルテ・ミルキィ(ea8933)、キャロル・フェリアス(ec5841)が足止めを狙ってサンレーザーを撃つ。
「今のうちに!」
そう仲間に叫ぶのはユリア・サフィーナ(ec0298)。伊達 正和(ea0489)に空漸司 影華(ea4183)がすかさずコアギュレイトで動きの鈍った騎馬を狙って攻撃する。
「弓隊も止めるぞ!」
菊川 響(ea0639)が合図代わりに弓矢を射、ロリンティア・ローリス(eb7874)、アザスト・シュヴァン(ec5560)に陽光隊のエスリン・マッカレル(ea9669)も参加して一斉に足元を射撃する。
「我が名はアヴァロン。この身は消して破れぬ盾なり。これより先は一歩も進めぬものと知れ!」
吠えて、アヴァロン・アダマンタイト(eb8221)は突破を狙う歩兵を炎の槍を振りまわして薙ぎ払う。その絶大な威力の前に、グレムリン達が悲鳴を上げて吹き飛ばされた。
「荒野には行かせない!」
リュドミラ・エルフェンバイン(eb7689)もそれに続く。
『ギャアアッ!!』
更に別な場所では、ホーリーとブラックホーリーを食らって倒れる悪魔もあり。
「…攻撃こそ防御、試練は耐えるものではなく、立ち向かい崩すべきです」
「皆で明日を迎えるために、も…やらなきゃ、です」
所所楽 林檎(eb1555)、所所楽 銀杏(eb2963)姉妹は塵となって消えた悪魔から視線を外すと、援護を必要とする箇所はどこかと状況を伺った。
「中央門での優位を取り返せるように!」
ケイン・コーシェス(eb3512)が剣を振りながら叫ぶ。隊に所属する者もそうでないものも協力し合って門を落とそうと懸命になっていた。
「他を助けるためにもここで優勢に持っていくぞ!」
【誠刻の武】指揮官代理の空間 明衣(eb4994)が隊員達に発破をかけて士気を高める。それは共に門を攻める御神楽 澄華(ea6526)達Ochainも同じ。
「止まらず、押し込みましょう!」
その前方ではダイアン・シュンカ(ea9107)やローシュ・フラーム(ea3446)が門の破壊を試みている。
――だが、門の突破はならない。後方や左右の門への援軍の足は止められている。だが、優位に立って攻め込んでいるとは言えない状況。
「頑丈な門だねぃ‥‥いつになったら落ちるやら」
スマッシュで魔物の肩をざっくりと切裂いた哉生 孤丈(eb1067)は、陥落の気配を見せない門を見上げて嘆息した。
この一進一退の攻防は、いつまで続くのだろうか――
(担当:まどか壱)
●城門攻略戦・とにかく護るの章
──右城門前方・4km地点
ドドドドドドドドドドドドドドドドドッ
忙しそうにベースキャンプの中を大勢の人たちが走りぬける。
「次の怪我人をこちらに!! 手の空いている方は治療のサポートを御願いします!!」
七神斗織(ea3225)が運ばれてきた怪我人にたいしてリカバーを唱える。
その間にも、大勢の仲間たちがこのベースキャンプにやってきて、防衛に付いている。
「また怪我人が到着したっ!! 急いで治癒をたのむ!!」
前衛部隊の怪我人を、三菱扶桑(ea3874)が救出し、ここまで運びこんできたらしい。
「皮膚が腐蝕している‥‥誰か怪我ではなく病気の治癒を急いでください!!」
富島香織(eb4410)が運ばれてきた怪我人を診察し、そう叫ぶ。
リカバーでは直らない感染症か、もしくは悪魔によって病気を植え付けられているらしい。
「軽い怪我のかたはこちらに!! 急いでください」
ラン・ウノハナ(ea1022)もまた、七神の横で治療を行なっている。
だが、いくら癒しても、その数は尽きるとことはなかった‥‥
徐々にベースキャンプに禁してくる者たちの数が増えている。
それだけ、悪魔の手勢が勢いを増しているのであろう。
──その頃
「儀式の準備??????」
遥か遠く、はぐれ悪魔達の集まっている丘の周辺で、 レミィ・ヴァランタイン(ea1632)が、偵察部隊としてここまでたどり着いていた。
確かに、彼女の眼下では、悪魔達があつまり。なにやら儀式めいた事をしているのがはっきりと見て取れた。
──ヒュヒュヒュッ!!
と、どうやら悪魔達にも偵察がばれてしまったらしく、レミィは急いで撤退、中継地点で待機している仲間に伝令を行った。
「遠くの丘で、悪魔達が儀式を執り行っているよっ!! かなり大規模の儀式のようだったよっ!!」
そう告げられて、アニス・リカール(ea2052)が告げられた伝令を復唱しつつ、次の伝令の待つポイントへと急いだ!!
「グエッェッェッェッェッェッ!!」
そのアニスの後方から、アンドラスが追撃を開始、アニスに向かって襲いかかってきた!!「近寄らないでよ!! この悪魔っ!!」
「ホーーーーッホッホッホッホッホッホッ。貴方を行かせる訳にはいかないのです。全てはあの御方のためなのです!!」
そう叫びつつ、一気に間合を詰めると、アニスに向かって渾身の一撃を叩き込む!!
「きゃぁぁぁぁぁぁ‥‥」
絶叫をあげつつ落下していくアニス。
だが、間一髪の所で、次の伝令であるスチカ・スピカ(ea8654)の元までたどり着いた。
「アンドラスが襲ってきて‥‥丘の向こうで悪魔達が儀式を行なっているの‥‥かなり大きな‥‥アンドラスがまだ近くに‥‥」
「判ったわ!! 安心して休んでいてね!!」
そう告げると、スチカはアニスを近くの岩影に隠し、そのまま負ってであるアンドラスを引き付けつつも次の伝令に向かった。
「ホーーーーーーーーーーーーーーーーッ」
大きく雄叫びを上げるアンドラス。
と、また別のアンドラスか゛やってきて、二人がかりでスチカに向かって襲いかかる。
「五月蝿い悪魔ですね‥‥アンドラスが二体もいるなんて‥‥」
そう呟きつつも、スチカは次の伝令の元にむかう。
そして次の伝令であるアメジスト・ヤヴァ(eb5366)が待機している岩影にたどり着くと、すぐさま情況を説明した。
「すぐ近くにアンドラスが二体、私達を追撃しているから、丘の向うには儀式を行なっている悪魔達がいて、なにか大きな事が起こりそうなの‥‥」
「判ったわ。っていうか、アンドラスうっとおしいし‥‥」
そう告げつつ、アメジストも飛び立つ。
すると、さらにアンドラスが集まり、いつのまらかアンドラスばかり4体でアメジストを追撃する。
「なんか‥‥チョーヤバイっていうかぁ‥‥絶体絶命?」
にこやかに呟きつつも、アメジストは素早く移動。
そしてあるポイントまでたどり着くと、近くのいわかげにかくれていた 魔法兵団が一斉に姿を表わす。
そして次々と魔法を連射すると、アンドラス達を撃破していった。
そして無事にベースキャンプにたどり着いたアメジストにより、幾つかの有益な情報がもたらされた。
「なんか、アンドラスが丘の向うに集まっているっていうかぁ。大きなアンドラスを召喚する儀式が始まるッていうかんじぃ?」
ま、まあそういうことなのか?
とまあ、途中でかくれていた しふしふ同盟達も後日合流し、お互いの情報を交換。
さらに情報が怪しくなりつつあったとさ。
(担当:久条巧)
●地獄に燃える丘
モニカ・マーベリック(ec3699)はこれまでの情報を総合して、ある意味必然とも言える結論を下した。
それは少なからず多くの者たちが感じていたことでもあるが‥‥。
「ゲヘナの丘で行われる儀式‥‥丘の炎は恐らくモレクのパワーの源よ」
モニカの言葉にフレア・カーマイン(eb1503)も同意する。
「どうせゲヘナとゆう丘に何かがあるんやろうけどな。悪魔やから生贄とかの儀式とちゃうんか?」
「とは言え‥‥何か見え見えすぎて逆に罠に思えて仕方がないんだけど‥‥」
ロックハート・トキワ(ea2389)の疑惑ももっともだ。何しろ相手は凶悪なデビルのボス。簡単に情報が掴めたのも、或いはモレクの策略かも知れない。
と、その時である。丘の探索に向かう冒険者達の上空に突然一体のデビルが姿を見せる。炎が燃え盛る邪悪な瞳、大鷲を肩に止まらせ、豹の毛皮を来た大男の姿をした悪魔。何も無いところから突如現れたそのデビルは驚いた様子の冒険者たちに向かって、真摯?な眼差しを向けた。
「ゲヘナの丘の火を消せ。いや、消してはならん。丘の火を消すと恐ろしいことが起きるぞ」
「???」
冒険者達は突然現れたデビルの言葉に呆気に取られた。
「子供の謎かけじゃあるまいし‥‥って、お前何者だよ」
ロックハートは上空のデビルを見やる。
「わざわざ弱点を教えに来るとは‥‥モレクはよほど自信があるのでしょうね」
モニカの言葉にデビルは一転して邪悪な笑みを浮かべる。
「‥‥我らは全て王の捨石。生き残るにせよ、善なる者を引きずり出し、王に服従させねばならぬ。我らが王の復活は近い。儀式の炎は我らが王に捧げられたもの。ゲヘナの丘は地獄で最も苦痛に満ちた場所、魂は永遠に地獄の業火に焼かれ、断末魔の叫びは王の心を震わせるのだ‥‥」
デビルはそれだけ言うと、笑声を残して消えた。
「支離滅裂だな」
ロックハートは呆れたようにデビルが消えた空を見つめていた。
一体ゲヘナの丘で何が起こっているのか、冒険者達はじわじわと胸が締め付けられるような感覚を味わった。予想は付くが、モレクの秘密を暴くためにも、儀式をその目で確かめなくてはならない。
「丘って事は、小高い山になってる場所かな?」
リスター・ストーム(ea6536)は荒野に踏み出していた。激しい戦闘が行われているが、そちらには近付かず、ゲヘナの丘を探す。
「デビルの言葉が気がかりだけど‥‥モレクを倒すためには丘の秘密を解かないと」
シフールのイフェリア・アイランズ(ea2890)も上空から丘を探す。クリムゾン・コスタクルス(ea3075)、島津 影虎(ea3210)、レン・ウァールウィンド(ea7361)らも激しい戦闘の背後で偵察を進める。
アン・シュヴァリエ(ec0205)はミミクリーで大梟に変身して戦場を飛んでいる。
「あれは‥‥」
シフールのクンアール・シュトゥルム(eb3769)は上空から荒野の一角にある炎に目を凝らす。同じくシフールのヴァンアーブル・ムージョ(eb4646)も燃え盛る炎を目に留めた。
「あれがゲヘナの丘?」
ムージョは超越テレパシーで仲間達に丘の大まかな位置を伝えていく。
地上から丘の位置を負っていたフォックス・ブリッド(eb5375)はムージョのテレパシーを受けて丘に近付いていく。
「どうやらあれがそうらしいが‥‥」
「しっふしふ〜、みんなを呼んでくるよ。一人じゃ危なそうだからね」
伝令のしふしふ、揚白燕(eb5610)はそう言って仲間たちを呼びに向かった。
‥‥方々に散っていた偵察隊の冒険者達が集まってくる。目の前にはゲヘナの丘。
「どうだ、入り込めそうか?」
天城烈閃(ea0629)の問いにフォックスは肩をすくめる。
「残念ながらネズミ一匹、いや蟻一匹通れそうにない」
丘の守りは厳重で、燃え盛る炎の槍を構えたネルガルたちが冒険者達を油断無く見つめている。
「ここまで来て手ぶらでは帰れんな。押し通るしかあるまいが‥‥」
是非もなし、天城の言葉に悪党チーム「堕天使」のメンバーは悪辣な笑みを浮かべる。堕天使のメンバーはみなゲヘナの丘への攻撃を考えており、ここでモレクに一泡吹かせてやろうと目論んでいた。まあ悪党チームと言っても、当然ながら悪魔と仲良くしようと言うわけではない。
「とは言え‥‥敵の警戒も厳重。迂闊に入り込めばこちらも瞬殺だろう」
冒険者達は策を練った。そこで、攻撃力の高いメンバーで悪魔の注意を引き、その隙にシフールたちが侵入し、僅かでも情報を持ち帰るという作戦を立てた。
「無理は禁物だ。危険を感じたらすぐに引き上げるように」
天城はシフールたちに忠告する。ミシェル・サラン(ec2332)は緊張した面持ちで頷く。
「私の情報で勝敗が決まるなら。命賭ける価値あるわね。みんな頼んだわよ」
攻撃を開始する冒険者達。イリア・アドミナル(ea2564)や、シーン・オーサカ(ea3777)が魔法攻撃をネルガルに浴びせかける。白兵部隊も突撃。
丘の警備が一瞬乱れた隙を突いてシフールたちは一気に飛び込んだ。囮攻撃は長くは持つまい。シフールたちは急ぎゲヘナの丘の頂上に飛んだ。
「あれは‥‥?」
シフールたちが見たもの。それは、燃え盛る炎に囲まれた魔法円である。不気味な魔法円の中心にうずたかく積まれているのは、白い固まり。それはデスハートンによって奪い取られた魂の数々であろう。ネルガルたちは無造作に魂を積み上げている。
魔法円は不気味な光を放っており、これが恐らくデビルたちの言う儀式なのだろうと思われた。魂を生贄に捧げ、何らかの力を得ているのだろう。それが果たしてモレクの力の根源なのかは分からないが。
得られた情報は決して多くは無い。だが、ゲヘナの丘では紛れも無く悪魔たちが何らかの儀式を行っている。
シフールたちの帰還を待って、偵察部隊は引き上げたのであった。
(担当:安原太一)
●血と殺戮の魔神
血と殺戮の魔神。
その強大な力の主に、冒険者達は挑み続けていた。
『全く、人間とはどこまでも愚かな生き物よ!! 己が無力さを未だ理解できぬか!!』
「いや〜。それが生憎と‥‥」
「諦めてはいませんので!」
井伊貴政(ea8384)と井伊文霞(ec1565)の姉弟がモレクの足下の隙を狙い攻撃をかける。
しかし、その巨体は全く揺らぐ気配はない。モレクは二人を一蹴する。
『小手先の技など、我には無意味!!』
「ならば‥‥」
「私達の武、存分に味わうがいい」
猛るモレクの前に立ち塞がったのは【誠刻の武】。
結城友矩(ea2046)、南雲紫(eb2483)、陸堂明士郎(eb0712)が同時に攻撃に動いた。黒雷、白雷とも称される二人の猛者に、率いるは戦場の死神と呼ばれる男。
さらに、【ウィル双翼騎士団】のウィングドラグーン、キャペルス、カークランも同時に仕掛ける。搭乗するのは、、シャルロット・プラン(eb4219)、エリーシャ・メロウ(eb4333)、白鳥麗華(eb1592)。いずれも、その名高き優れた乗り手達。
彼らの並ぶ姿のなんと壮観なことか。
『ほう。少しは楽しませてくれそうか』
「ウィル騎士の力、見くびるな!」
麗華のカークランがモレクへと突撃するのと同時、叫ぶエリーシャのキャペルス、シャルロットのドラグーンが続く。
「こちらも行くぞ!」
明士郎の合図。ゴーレムの動きに合わせ突撃をかける。しかし‥‥。
――ブオオオオッツツ!!!
「な‥‥ぐああっ!!」
世界を紅に染めるはモレクの炎。直撃を受けた友矩達に続けて放たれるは大斧の衝撃波。盾のあった明士郎はこれを凌いでモレクに一太刀浴びせる。だが、やはり効果は見えず、反撃の斧を受けて散る。
「‥‥まだっ!! 蟷螂拳‥‥連環地脚!」」
頑強なゴーレム達も持ちこたえた。麗華のカークランがモレクへと繰り出す連撃。しかし、魔力と闘気に溢れたモレクの巨体は微動だにしない。他のゴーレムの攻撃も結果は同じ。
「くっ、こうも容易く‥‥!!」
『その程度の連携が我に通じると思ったか? ‥‥このモレクも嘗められたものだな!!』
モレクの身体より赤き発光。そして、精霊の力により生まれるは一帯を覆う黒煙。
「くぁ〜! あの大将、精霊魔法も使えたのかよ!?」
馬若飛(ec3237)の視界も煙に遮られた。封じられた視界の中で、次々に冒険者達の悲鳴が上がる。
「それ以上はさせません!!」
フィーネ・オレアリス(eb3529)が唱える解呪の魔法。煙の晴れた大地には多数の負傷者。シェリル・オレアリス(eb4803)は死者の蘇生に動く。
『さあ、次に我が贄となるを望むのは誰だ!!』
放たれる火球が爆ぜて大地を焼き、灼熱の手に掴まれた者の絶叫が地獄に木霊する。赤く燃える斧が振るわれる度、一人、また一人と冒険者の命が消える。
「無理してはいけません。モレクに有効打を与える手を待ちましょう!」
「攻撃するんは後回しにして、とにかく今は時間を稼ぐことだけ考えるんや!」
クーリア・デルファ(eb2244)、将門司(eb3393)が周囲の冒険者らに呼びかける。
「粘り強さでは負けぬぞ。さあ、どんどん治してやるぞえ」
ヴェガ・キュアノス(ea7463)が運ばれてくる負傷者に次々に治癒魔法をかける。
傷を受けては薬を使い、倒れては魔法で蘇り、ただひたすらに冒険者達は耐える戦いを続けた。
しばらく後に、モレクに力を与えているゲヘナの丘発見の報が冒険者達に伝えられる。
だが結局、今回の交戦でモレクの強固な守りが解かれることは無く、冒険者達は反撃の機会を得ることなく終わる。それでも多くの冒険者が協力しあい、入れ替わり立ち代わり身を呈してモレクの足を止めたことで、他の地域へのモレクの進行は阻止され、モレクの軍を荒野に留めることに成功したのだった。
果たして、この地獄の猛将が討たれる時は来るのだろうか‥‥。
(担当:BW)
●七魔との戦い
ミラ・ダイモス(eb2064)、ファング・ダイモス(ea7482)の兄妹が警戒の報を伝える。荒野を囲むように進軍して来る軍には噂に聞く七魔の視覚らしきデビルたちの姿も見える。その一角には続く戦いで因縁が出来たデビルの姿も見て取れた。紅眼のデビルは今回陣頭に立ち自ら攻め込んで来るようであった。それだけ冒険者のとる行動が核心を突いていたのだろうか。
「ハルファスが来るぞ、飛ばされるなよ!」
数人の冒険者が声をかけ、同時にレジストデビルの詠唱が起こる。作戦会議の中で伝えられたハルファスの能力に敵味方問わず抵抗できなかった者を転移させてしまう、と言う情報が伝えられたからである。しかも報告には無かった話だが当のデビルは自らその話をした。ハルファスの戦好きは宿業のようなものである。
「戦いに向かう姿も初戦の時と比べ見違えるようだ。よかろう。今こそ我が剣を受けよ」
奇妙な刀身の剣を地面に突き立てると、ハルファスの周囲にいた20騎程の騎兵が消えてしまった。瞬間、冒険者の陣の中央で顕わになった右脚を躍らせ剣を振るうその姿があった。
「敵襲!」
マグナス・ダイモス(ec0128)が大声を張り上げながら紅眼のデビルに向かい斬り込んで行く。【皇牙】、【堅牢】、【TN戦乙女隊】のチームの動きは迅速を極めた。最初から決めていた行動に迷いはない。サクラ・フリューゲル(eb8317)のレジストデビルが飛び交い、オルフォーク・ザーナル(ec1004)が敵の騎士の駆逐に回る。
中央に飛び込んで来たハルファスは他の冒険者に任せヴェニー・ブリッド(eb5868)が超長距離のライトンニングサンダーボルトを詠唱し、魔軍の接近の阻止に成功する。
「戦術で戦略的失態を補う事はあたわずか。モレクの過信は戦略家としての我には容認できぬものであるが、あの蛮勇にこそ我は恋をしているからな」
ハルファスの動きを逐一見ていた利賀桐まくる(ea5297)は、自ら負けを認めるようにも見えるハルファスの呟きに少し驚く。冷徹な戦略家であるハルファスには戦の天秤がどちらに傾いているのかが見えるのかも知れない。ハルファスによる急襲も戦局に影響を与える事は出来なかった。
「一度戦略を立て直す。強くなったな、汝らは。汝らとの戦いに身を置くのは我にとって愉悦でもある」
大きく翼を広げるとハルファスは黒い天空に帰って行った。モレクの丘に向かった冒険者がこの戦いの趨勢を決する成果を挙げたのはまさにその時であった。
(担当:谷山灯夜)