第2回行動結果報告書

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黙示録の戦いの勇姿を!

3人で!

4人で!

皆で!

第1回行動結果報告書第2回行動結果報告書第3回行動結果報告書第4回行動結果報告書

<第2回開戦状況>
各門から出撃する地獄の軍勢と、冒険者たちの部隊の激突が開始されました。
総合的な能力では互角であり、中央門・左門では敵防衛ラインに止められながらも、有利に戦闘が行われています。 しかしモレクが出現した右門は冒険者たちの陣を突破し、都市外部に陣を敷くに到りました。
また、ディーテ前面の荒野では空中からの攻撃への警戒は高かったものの、悪魔の騎馬による平面機動に対する速度差で押し込まれた部分がいくつか出ていました。
後方は妥当に陣地を構成し、無事補給路を確保していますが。地獄の門の方面を牽制したほうがよいのでは、との声もあります。
戦場全体としては、前面に出たモレクの対処を中心として、予断は許さない状況です。


第2回行動入力時戦力状況
参加人数:992人
※状況
=危険、=注意

左門中央門右門城砦前後方合計モレクは「右門前陣地」から出撃!

猛将 モレク
イラストレーター:墨

さぁて‥‥新たな宴の時間だ。
我らを、地獄を楽しませろ、
人間ども!
脆く崩れる小さな体と、
苦しみに呻く嘆きとでな!
白兵戦 8.9% 8.8% 7.8% 5.8% 5% 36.5%
救護・防衛 4% 4.7% 4.5% 5% 7.9% 26.3%
調査(デビル) 1.2% 0.9% 0.7% 1.1% 1.4% 5.3%
魔法戦 3.1% 3.7% 2.7% 1.8% 2.6% 14%
偵察 3.4% 3% 2.8% 3.6% 2.7% 15.6%
調査(カオス) 0.5% 0.4% 0.3% 0.3% 0.6% 2.1%
合計21.2%21.6%18.9%17.7%20.3%100%



<第2回戦況>
前回の優勢をさらに推し進めるべく、冒険者たちの攻撃は左門・中央門に集中しました。
結果、左門では敵城砦直前まで攻め入り、次回はディーテ城門・城内での攻防が予想されます。中央門も戦況は有利でしたが、敵の動きに対して偵察が追いつかない部分があり、左門ほどの優勢は得られていません。
右門は前回に比べ戦力がやや少なくなっており、モレクを前面に押し出した突撃を食い止めることができませんでした。しかし戦線の解除は早く、前回に比べると交戦による致命的な被害は少ない状況です。
前線を突破したモレクはそのまま城砦前に布陣。その余波を受け、城砦前荒野の戦線は後退しています。また、一部戦力がモレク率いる本軍とは別の動きを見せているとの情報もあります。
後方は前回と変わらぬ体制を確保。ただ七魔の刺客が現れるという流言があり、次回の行動に少なからず影響が見られます。
戦場全体としては次回、、荒野に陣取ったモレク本軍の動きへの対処、それと城砦への攻撃が重要となるでしょう。

結果概略

成功結果冒険者の状況敵の行動次回予測
左門  ◎優勢、門前まで迫る城壁内からの攻撃
中央門  ○偵察にやや不備モレク進撃と挟撃?
右門  △モレクが冒険者の陣を突破!モレクは荒野に布陣、包囲戦か突破か?
城砦前  ○防衛は成功・モレクが目前まで進軍中モレクとは別行動?
後方  ○各所に対して救護の援護敵伏兵あり?



■第2回報告書

●地獄に渦巻く混沌
「敵の動向におかしな点は無いか‥‥」
 セシル・ディフィール(ea2113)は偵察部隊からの報告を受けて、何か新しい情報はないかと頭を悩ませていた。そこに入ってきた情報は、『冠』に関するものだった。
「デビル達の探している『冠』は世界各地に散らばっているらしい」
「モレクの侵攻に合わせて各地域で捜索が開始されているらしいです」
 鏡桃菜(eb4540)も得た情報を伝達していく。
 世界各地に散らばっているということは、各地でデビルたちが暴れだすということか――。
「悪魔も元は天属。その力も天使と似たモノ、もしくは反対のモノかも」
 エリンティア・フューゲル(ea3868)が開いたのは写本「悪魔学概論」。そこには気になる記述があって。

   高貴なる悪魔には更なる力有り
   さりとて其は万能ではなく
   ある者は神聖なる木より作られし剣に弱く
   ある者は力欲するも時と高貴なる魂を要し
   ある者は月の満ち欠けと力を同じくする

「‥‥これは噛み砕くと、上級のデビルには更なる力があるということでしょうか」
 吟遊の知識を持ち出して、オリタルオ・リシア(ea0679)がその文章の解読にかかる。
「でも弱点も力を使うのに条件もあるってことかな?」
 デメトリオス・パライオロゴス(eb3450)が首を傾げた。


「しふしふ〜☆ なんだか地獄の奥に向かうほど、地獄の力が強くなっている気がするしふ〜」
 眉を顰めたメイフェイ・ナーシィル(ea8290)の言葉に神話や各地の話でカオスの動きに見合うものが無いかと調べていた田辺翔(eb5306)が声をかけた。
「あながち間違いではないのかもしれません。紛れ込んだカオスの魔物との戦闘があったと聞きますし‥‥アトランティスでは霧を纏って強くなったカオスの魔物もいたという話ですから」
 一体カオスの魔物とは何なのか。
 地獄とカオスの魔物の関係はどういったものなのか。
 まだまだ謎は多い――。

(担当:天音)


●死力を尽くす戦い
「よぉし、いっけーッ!」
「グラビティーキャノン!」

 耳が痛いほどの鬨の声にも負けない大音声で、冒険者達は次々に魔法を打ち放っていた。
 ジル・アイトソープ(eb3988)が最前線で敵に向かって放った魔法で、出来た道を仲間達が武器を振るいながら駆け抜ける。そんな彼らに『TN支援し隊』リンデンバウム・カイル・ウィーネ(ec5210)がフレイムエリベイションを付与して回り、同じ隊のジャン・シュヴァリエ(eb8302)やリスティア・バルテス(ec1713)、リディア・レノン(ec3660)も仲間を援護せんと攻撃魔法を放ちつつ、レジストでビルやホーリーフィールドを駆使して魔物に対抗する。
 魔物達は時に黒い霧を身に纏い、冒険者達を苦しめる。一番弱い魔物でも、本体の力を引き出せば初級レベルの魔法は効かない。
 だが彼らとて永遠に、ひっきりなしに本体の力を利用できるわけでもなく。

「ギィヤ!?」

 霧が消えた所を見計らって魔法を放てば、弱い魔物なら初級でも通じないことはない――倒せるかどうかはまた別問題だが、ここには頼りになる仲間がいる。せめて、一瞬なりと足止めが出来れば。
 友人達と『soin』というチームを組んだヴァイエ・ゼーレンフォル(ea2066)も、友人達のみならず、周りで戦うすべての仲間を援護すべく、ウォーターボムを打ち放つ。同じくシン・オオサカ(ea3562)やラピス・ブリューナク(ec4459)も、この魔法が役に立つならば、と惜しみなく持てる限りの呪文を唱える。
 『TN特攻隊』に所属するラシュディア・バルトン(ea4107)や十野間 空(eb2456)らは、部隊長からの指示に従って仲間達にテレパシーを送って連携を取りつつ、手薄になった所には魔法を打ち込んで援護射撃とする。七瀬 水穂(ea3744)、『はぐれ屋『必殺』』所属のジリヤ・フロロヴァ(ec3063)らもそれぞれに、得意とする攻撃魔法を放ちながら、魔物の威勢を殺がんとする。

「これが、戦場‥‥」

 仲間達と同じく、だが己の実力は弁えて足手まといにならないように、やや後方からひたすら魔法攻撃をするリーナ・ラリック(ec6094)は、思わずそう呟き、唇を噛み締めた。戦いの心得はあるが、彼女は実戦経験は殆どない。だが大変な時だからこそ、自分に出来る事があれば、と思いやってきた。
 大挙する魔物の群れに、初陣でない者だって思わず足がすくんでもおかしくない。だが、ならばそんな仲間の事は、経験豊富な歴戦の冒険者がフォローすれば良い。
 ウィル・スミス(eb2921)やオークス・ガードナー(ec3867)らも、バーニングソードやフレイムエリベーションを仲間に付与して回る。魔法で強化する、と言っても限界はある。だがやれる限りの力を尽くしてこそ、望む結果も近付くと言うものだろう。
 上空を見上げれば、バーク・ダンロック(ea7871)がフライで空を飛び、上空の敵を攻撃していた。確実に止めを刺す、というよりはむしろ大量の敵を当たるに任せて吹き飛ばす。地上に落ちた魔物は、辺りにいた仲間によって止めを刺された。

「このまま押し切れるか?」

 ローリンググラビティーを放ち、更に突破してきた魔物は刀で叩き斬りながら、閃我 絶狼(ea3991)は周りの戦況の変化をじっと見つめていた。
 次第次第、魔物達は攻勢から防御へと戦い方を変えているように思える。それだけこちらが押していると言う事だろうか。
 それは気のせいではなく、やがて冒険者達と魔物の攻防は、防戦一方になった魔物達を押し切らん、とする冒険者達のうねりへと変化する。中央門の方でも戦いは有利に進められているようだ。
 ならばこの拠点、何としても確保したい所。
 全員が同じ願いを胸に抱き、魔物達の向こうにある左門に辿り着かん、と力を振り絞っていた。

(担当:蓮華・水無月)


●中央門の攻防
「魔物はすべて滅するであ〜る!!」

 ディーテ城砦中央門。威勢よく叫んで突撃するトゥエニエイト・アイゼンマン(ec4676)を皮切りに、門を確保せんとして次々に冒険者達は魔物の群へと突っ込んで行く。
「どうせ戦うなら真ん中がいいですからね」
「このまま‥‥推し通る!!」
 瀬戸 喪(ea0443)と空漸司 影華(ea4183)はとにかく手近な所にいる敵から確実に仕留めようと試みる。何せ味方も多いが敵も多い乱戦状態。一人突っ走ればあっという間に囲まれて袋叩きに遭うだろうことは、想像するのに容易い。
 先陣を切ろうという意気込みはあれど、それと無謀とを履き違えるほど愚かなものはこの場に少ない。東雲 大牙(ea8558)もそのうちの一人。
「我は剣、我は牙。穿つ事で、人を護ろう――」
 道具も人も、使い潰していいものではない。有用の力は常に有効に振るわれなければならないのだ。

「まずは門の確保を目指します」
 和泉 綾女(ea9111)、アイミス・ユーニード(eb0502)らは門の確保を目指して、フェイントアタックやブラインドアタック等のCOを使いながら敵に対処していた。しかし、切り捨てても切り捨てても湧いてくる敵の多さに難儀し、一歩進んでは三歩交替させられる。
「くっ、数が多い‥‥」
 マリーティエル・ブラウニャン(ea7820)は前へ進めないもどかしさを呻いた。そのまま左を狙うインプへと剣先を向けようとしたが、その前へと人影が躍り出る。
「ここは引き受けました! 皆さんは、一刻も早く先へ‥‥!」
 蒼 麗風(ea8934)、ヴェルディア・ノルン(ea8937)を始めとした、門へ向う味方を援護しようという者達だった。後方からはロリンティア・ローリス(eb7874)が弓でも敵を射抜いている。
「有象無象の敵をちまちま単体で相手するのも面倒だからねえ‥‥」
 ダイアン・シュンカ(ea9107)は彼女の方へと向ってくる一塊を見、にやりと笑うとソードボンバーで迎え撃つ。
「敵が手負いになれば、味方も攻撃しやすくなるってもんさ」
 その通り、大打撃を受けた魔物の元へは仲間が即座に向かい、或いは後方よりの射撃でその息の根を止めていく。
 しかし、気がかりが一つ。
「騎馬隊の姿が見えないねえ‥‥」
 見た目も凶悪な金棒で敵の頭を粉砕した(加賀 舞姫)ea9110はぽつりとこぼした。皆が警戒する騎馬の姿、それがまだ見えない。
 先陣はそろそろ門へ到達しようかというところ。カウンターを狙って投入されるならば、そろそろ出て来る頃だろうか――

「――来たでござるっ!!」

 上より降って来る声はテラー・アスモレス(eb3668)のもの。グリフォンで空にいた彼の目は、門から姿を見せた騎馬隊の姿を捉えていた。
「弓隊、構えろ!」
 【誠刻の武】主席の陸堂 明士郎(eb0712)が指揮を執り、同隊の菊川 響(ea0639)、京都隊のレジー・エスペランサ(eb3556)ら弓手達が矢を番えて構える。前回に同じく【誠刻の武】の顔触れが目立つが、しかし当然彼らばかりがいるわけではない。
「みゅー、1体ずつ着実に敵を狙ってゆきますですよー」
「厄介な敵は前衛に任せる。――じゃ、死んで?」
 アミ・ウォルタルティア(eb0503)やフローライト・フィール(eb3991)を始めとした無所属の者達も、今は同じ目的のもとで行動を共にする。目的とはつまり、向って来る騎馬隊の機動力を奪うこと。
「――撃て!!」
 静守 宗風(eb2585)の声に応じて、突撃してくる敵騎馬隊へ向けて一斉に弓矢が放たれた。

(担当:まどか壱)


●祈りと祝福と
 中央門での戦いは、冒険者側がやや優勢だ。あふれ来るデビルやカオスの魔物達を防戦一方に追い込んでいる。
 だがだからといって怪我人が出ないというわけではない。
「歩ける者は応急処置を済ませたら歩いて後方へ! 早期に魔法治療が必要な人を見つけたら合図を!」
 【ジャパン医療局】の中でも【地獄救命】の国乃木めい(ec0669)の声が響く。負傷者の度合いを見て治療順を判別するトリアージが取り入れられ、適宜回復魔法が施されていく。自力で歩くことの出来ない負傷者や重傷者は騎馬に乗せられ、更に後方へと運ばれていく。他のチームと連携をして、負傷者運搬時の安全を確保してもらっていた。
 明王院浄炎(eb2373)、ケント・ローレル(eb3501)将門夕凪(eb3581)、所所楽苺(eb1655)らが率先して負傷者を運搬し、戦場から離脱させる。
「次、手の空いてる者は彼を運んでくれ!」
 仮設置された中央門後方の救護所では白翼寺涼哉(ea9502)の指示が飛んでいた。この場所は彼やヴェガ・キュアノス(ea7463)、セフィナ・プランティエ(ea8539)、メイユ・ブリッド(eb5422)、雀尾嵐淡(ec0843)、アナマリア・パッドラック(ec4728)らがホーリーフィールドを張り、そして治療を続けている。ここでの治療で命を繋げて、怪我人はより安全な後方の救護所へと運ばれていく。もちろん、それはこの救護所を守る者達あってのことだ。
「救護が無事ならば、この戦から生きて還れる者も増える。邪魔はさせぬ!」
 小鳥遊郭之丞(eb9508)は治療を行なっている仲間に攻撃が及ばぬよう、身を挺して施療者たちを守る。
「ここは譲りませんわ!」
 オーラパワーを付与した武器を手に勇敢に敵に立ち向かうシトリン・ルーリィ(ec5867)。
『そこ、手薄になっているわ。危ないわよ』
 サイーラ・イズ・ラハル(eb6993)のテレパシーを受けたマリアール・ホリィ(ec5844)が近くにいた鳳麗春(ec5846)やマリア・タクーヌス(ec2412)
声をかけ、素早く対応して防備が手薄になっている箇所をカバー。狙ってくる敵たちを退けていく。
 少しでも、命を繋ぐこの場を何とか守るために。
 できる限り皆で、国へ帰れるように。
 ティズ・ティン(ea7694)が舞うように武器を振るう。所所楽柳(eb2918)のソニックブームが敵を襲う。
「騎馬の突破を許すわけには行きません」
「さて、俺は俺の役割を果たすとしよう」
 リースフィア・エルスリード(eb2745)と不破斬(eb1568)も武器を手に取り戦う。
 彼らに守られてパーナ・リシア(ea1770)や浅井雷菜(ea7704)、マーナ・リシア(eb0492)らが治療を続ける。
「向かってくる敵を先には通しません!」
 ワルキュリア・ブルークリスタル(ea7983)の強い意思を持った言葉が力になる。
「神様、おいらがんばるから怪我をした人達に祝福を頂戴」
 イルコフスキー・ネフコス(eb8684)の祈りが、地獄の暗鬱とした空気の中に響いた。

(担当:天音)


●勇猛なる突撃
「最前線の連中には背中は気にするなと伝えろ!」

 勇ましく太刀を振るいながら叫んだ美淵 雷(eb0270)の言葉に、ジラルティーデ・ガブリエ(ea3692)も大きく頷いて目の前に現れた魔物を切り裂いた。
 ディーテ城砦、左門。魔物との戦いは依然、拮抗している。その中で偵察に向かった者達から戦況や彼我の位置情報を確認しながら、冒険者達は各々の役割を果たさんと全力を振り絞って戦い続けていた。
 後衛を護る仲間への確かな信頼感、それに支えられた前衛の冒険者達の攻撃も気合は十分。引き続き左門を攻める『TN特攻隊』が一員、イリュード・ガルザークス(ec2015)も仲間達と共に、魔物に囲まれないよう気を付けながら、全力で持てる技を尽くして力を振るう。

「ここは押し込む所じゃろ!」

 空中から地上の敵に向かってヒットアンドウェイを繰り返すガルガス・レイナルド(eb2572)。その上空でも空翔る魔物が冒険者目掛け、肉塊に変えてくれん、と攻撃の手を緩めない。
 魔法を得手とする者達も、援護の為に、攻撃の為に魔力を振り絞るように魔法を放ち続ける。そんな仲間達を癒す為に戦場を駆ける者、仲間の為に少しでも情報を集めようと知力を尽くす者達を護らんと、前線ではなく防衛ラインを護る事に徹する者が居る。
 秦 劉雪(ea0045)がダブルアタックで怯ませた敵に、石動 悠一郎(ea8417)や山本 建一(ea3891)が間髪入れず攻撃を加える。それぞれが、それぞれに出来る最善を。そしてこの戦場の主導権を、冒険者達のほうへ引き寄せるのだ。
 『強襲遊撃団「黎明」』乱 雪華(eb5818)は魔物の動きを妨げんと、グリフォンを駆って上空から「鳴弦の弓」をかき鳴らす。魔を払う調べは、すべてではないにせよそれなりに門周辺の敵に影響を与えているようだ。その隙を駆け抜ける孫 陸(ea2391)はただ前だけを見据え、わずかでも隙の見えた魔物へと猪突猛進に突っ込んでいく。
 そんな戦場には勿論、魔物との戦いで傷つき、力尽きかけた者も居る。そんな者達を助けるべく、『TN守護隊』レリアンナ・エトリゾーレ(ec4988)や『TN特攻隊』エメラルド・シルフィユ(eb7983)も戦場を勇敢に駆けた。

「傷ついた皆さんを救護所へ!」
「私も続こう、皆に援護を」

 自分や仲間達にレジストデビルを施して剣を振るいつつ、傷ついた仲間の傍に駆け寄って手当てをし、救護所への道が閉ざされれば仲間が再び切り開いてくれることを信じてけが人を励ましながらその時をじっと待つ。
 全員が力を合わせた成果か、次第に、戦況はこちらに有利に動き始めた。

「あと一息です! 砦の一角を制圧して、モレクの心胆を冷やしてさしあげましょう」
「ええ、悪魔の砦など、美しくありませんからね」

 剣を両手に魔物と切り結びながら突破を目指すフラガ・ラック(eb4532)の言葉に、水晶の小盾で攻撃を凌ぎながら相槌を打つ狩野 幽路(ec4309)。どうやら気のせいでなく、この辺りの戦況はこちらが優勢のようだ。その報がまた、冒険者達を勇気付ける。
 負けてはいられない、と戦線の穴を縫うように仲間と駆け回る『陽光隊』シータ・ラーダシュトラ(eb3389)やテティニス・ネト・アメン(ec0212)の上空を、『ウィル双翼騎士団』カテローゼ・グリュンヒル(eb4404)のチャリオットが駆ける。

「突破、もう少しですー! 頑張ってくださいー!」

 上空から降ってくる大声。それを『VizurrOsci』のシェリル・シンクレア(ea7263)をはじめ、テレパシーを使えるものが一人でも多くの仲間に伝えていく。
 だが魔物も、不利を挽回しようと本体の力を引き出すなどしてますます猛攻を繰り出してくる。幾ら情勢は有利とは言え、気を抜けばひっくり返されるかもしれない。
 さらに。

「右門の方はかなり厳しいらしいって」

 伝令から伝えられた冒険者劣勢の報。あちらで戦っている仲間は無事だろうか。そしてモレクはどうなった?
 不安に駆られながらも、ならばいっそうこの拠点は押さえなければ、と仲間達と共にシオン・ユエ(ec3740)、アクア・リンスノエル(ec4567)も奮闘する。仲間の不利を助けようと駆けつければ、せっかく有利になった左門までも情勢をひっくり返されかねない。
 だからまずは目の前の、この戦場。血に沸き返る魔物達は、だが確実にジリジリと押し返されているように思えた。

(担当:蓮華・水無月)


●知らない悪魔
──左門攻略部隊・後方ベースキャンプ
「‥‥駄目です‥‥参考になりませんわ‥‥」
 大量の写本やスクロールを目の前に、エリカ・パドリオ(eb5575)がそう呟く。
 地獄にやってきてから確認されている悪魔について、持ってきてあった大量の資料から調査していたのだが、まったくといっていいほど参考にはならない。
 悪魔についての大雑把な情報は引出せたものの、個々の戦力や癖、どのような力をもつ者なのかという部分については、資料にあったもの以外は得る事が出来ない。
 むしろ、こっちで確認したデータが、それらの資料に書込まれていないものが多く、新しく資料の方を改竄する必要まで出ている。
「前戦からの怪我人が到着しました!! 手の空いている方は治療を御願いします!!」
 レリアンナ・エトリゾーレ(ec4988)がベースキャンプに到着した怪我人達を確認するやいなや、大声でそう叫ぶ。
 その声が聞こえたのか、次々と待機していたクレリック達が治療を開始する。
「怪我人はブリジットの所へ!! 心が砕かれたものは私のところに!!」
 空木怜(ec1783)が叫びつつ、ペガサスのブリジットを連れてやってくる。
 さらに近くでは、かなり重度の怪我人達を相手に、馬狗鷹(ec2734)が次々とリカバーを唱えていた。
「むぅぅぅぅぅっ‥‥よし、これで怪我は塞がった。次のものをここに!! 志摩殿、そちらはどうですか」
「はいっ!! こちらも順調です!! 次の方どうぞ!!」
 志摩千歳(ec0997)もまた、馬狗鷹の横で治療に専念している。

 そのベースキャンプもまた、悪魔の顎に狙われていた。
──ドシュッ‥‥ドシュッッッッ
 後方から打ち出される大量の矢。
 リュシエンナ・シュスト(ec5115)がこのベースキャンプに向かってくる悪魔達に向かって、先制攻撃を叩き込んでいた。
「さーて。ここから先には一歩も進ませないわよっ!!」
──ドッゴォォォォッ
 さらに、レシーア・アルティアス(eb9782)が、襲いかかってくる悪魔やシュストの矢に酔って手傷を追ったに向かって拳を叩き込む。
 レミエラによって強化されている『ヌァザの銀の腕』を装備しているのであるから、殴り倒された悪魔もかなりの痛手を受ていた。
 やがて、悪魔達はベースキャンプから離れていく。
 このベースキャンプは、守りという点ではかなり優れているようである。
 
──その頃
「おかしいですね‥‥」
 シェアト・レフロージュ(ea3869)が倒れている悪魔に手を当てて、頭を捻っている。
 調査隊のメンバーが次々と城壁まで向かおうとしているなか、シェアトは倒されている悪魔からリシーブメモリーを駆使して情報を入手していた。
 数体の悪魔に同じ様に試してみた所、居着くかの悪魔からは、やはり同じ様な記憶が確認された。
 ただ、全てを引出せた訳ではなく、いつくかの単語がかろうじてというところであった。
 『丘‥‥儀式‥‥時間までに間に合わせなければ‥‥』という曖昧なものであったが、この城塞で戦っている悪魔以外にも、何か目的があった行動している悪魔の部隊があるというのを確証するに至ったシェアトであった。

(担当:久条巧)


●突破
 ディーテ城砦、右門。
 猛将モレク率いるデビルの軍団による激しい攻撃を、冒険者達は必死に耐えていた。
「これ以上の進軍は許しません!」
「怪我をした方は退がって! 無理をしてはなりません!」
 アーシャ・イクティノス (eb6702)の矢、リディエール・アンティロープ(eb5977)の魔法が悪魔達を牽制する。
『力の差も分からぬ人間どもが、まだ我らの進軍を阻むか! ならばその行い、このモレクが今一度、無駄なことだと教えてやろう!!』
 声を上げ、周囲の悪魔を退かせるモレク。その口より吐き出されんとするは先の戦いで多くの冒険者の身を焼いた灼熱の炎。
 しかし‥‥。
「この時を待っていました!」
 地獄に吹き荒れる凄まじき風。『皇牙』の仲間達に守られながら、ただこの機会をひたすらに待ち構えていたゼルス・ウィンディ(ea1661)の魔法。それは、モレクの吐き出した炎を全て、そっくりそのままモレクの軍へと返す。
『むう!!』
「反撃開始だ! 行くぞ!!」
 悪魔の軍に生まれる動揺。その隙を見逃さず天城烈閃(ea0629)は大きく声を上げ、周囲の冒険者達へと一斉攻撃を呼びかける。
 その声に応じて、まずモレクへと突撃を駆けたのは、ペガサスを駆る『TN戦乙女隊』、リリー・ストーム(ea9927)。
「倒す事が難しくとも、足を止める事くらいは!!」
 類稀なる強き魔力を宿せし聖なる槍を持て、モレクの巨体へと突撃をかける。そして‥‥。
 ――ゴッツツツ!!!
「きゃああっ!!」
『無駄だと言ったぁ!!』
 モレクの剛腕に捕らわれ、己が駆る天馬ごと地獄の大地に叩きつけられるリリー。止めとモレクの斧が振るわれようと‥‥。
「させません!」
「セクティオ!!」
 アニエス・グラン・クリュ(eb2949)、ルエラ・ファールヴァルト(eb4199)が悪魔殺しの名を冠する武器を手に、グリフォンやペガサスを駆って空よりモレクへと攻撃を行う。それは確かにモレクの身体を捉えた。だが、先のリリーの攻撃に同じ。モレクの身には掠り傷一つ無い。
『ほう、お前達から先に殺されたいか!!』
 振われた斧より生まれ出でる衝撃波。怯んだ次の瞬間に、目を開けば空に踊るモレクの巨体。
「しまっ‥‥!!」
 ――ドッツツ!
 重そうな体に似合わず、何と鋭敏な動きか。一瞬にして間合いに入られた二人は、続けざまにモレクの攻撃を受けて地に堕ちる。
『さあ、次は誰だ!!』
「そうやって油断すると痛い目を見ますわよ!」
「一人は小さな火でも、合わされば地獄すら焼き尽くす炎となる! 喰らえ!」
 戦闘馬に跨ったマミ・キスリング(ea7468)、西中島導仁(ea2741)がモレクへと突撃をかける。ユニコーンを駆るゼナイド・ドリュケール(ec0165)、アーデルハイト・シュトラウス(eb5856)も隣に続き、デュラン・ハイアット(ea0042)やイフェリア・エルトランス(ea5592)が魔法や弓で狙撃する。さらには地に潜り、奇襲をかけんとするアンリ・フィルス(eb4667)。次々にモレクへと攻撃を仕掛けていく冒険者達。だが、突きつけられる現実は‥‥。
『クハハハッツ!!!!』
 圧倒。蹂躙。虐殺。
 モレクは、アンリをその身を潜めた大地ごと重斧にて粉砕し、突撃する騎馬達を大木のような足で蹴散らし、あるいは踏み潰した。デュランやイフェリアの攻撃に至っては、シフールの羽ばたき程にも気にした様子が無い。幾多の戦いを経験し、世界に名立たる冒険者達が束になってかかっていながら、まるで相手になっていなかった。
「‥‥まいったね」
 敵の能力を観察すべく戦場を走り回っていたヒムテの額に流れる汗。自分の理解を遥かに超えた存在。これが地獄の上級悪魔の力なのか。
 この状況を見て、皇牙を指揮する烈閃は攻めに転じた仲間の陣をすぐさま防衛の形に戻し、周囲の冒険者らの助力も得て、モレクの猛攻に耐えながら必死の時間稼ぎを始める。幸いに、天下無双の重厚な鎧兜に身を固めながらも機敏に攻撃をかわす烈閃には、さすがのモレクも決定打となる攻撃が出せず時間をとられる。この間に、ラディッシュ・ウォルキンス(ec1503)が率いる『堅牢』の面々やリリス・シャイターン(ec3565)がモレクに倒された負傷者を運んで治癒していく。
「もたもたするな! 急いで運び出せ!!」
「一度、後退して態勢を立て直しましょう! 今はそれしかありません!!」
 彼らの活躍によって、冒険者側の死傷者はその数を抑えることが出来た。しかし、崩壊した戦線より悪魔達は次々と荒野へ侵攻していく。負傷者の運び出しが終わるのを見届けて、モレクの足止めを行っていた冒険者達も一時撤退した。
「あの圧倒的なモレクの力‥‥何か、特別な仕掛けでもあるのでしょうか‥‥」
 酒井貴次(eb3367)はモレクの周囲を観察する。残念ながら、それらしいものは何も見つけられなかった。

 巨大な力を持つ地獄の猛将はこの後、荒野の戦場へと姿を現したのだった。

(担当:BW)


●荒野に哂う悪魔
 ディーテ城砦前、荒野。
 集結した冒険者は目まぐるしく変化する戦局に嘆息していた。
「なんでこんな事に‥‥」
 グラン・バク (ea5229)をはじめとする【☆メイ・ゴーレム隊】の面々はフロートシップの周囲で目の前に展開される敵戦線の一角を見つめていた。巨大な影がそびえ立っている。炎を吐き冒険者を威圧する。

 時間を少し戻す。

 前回の経験を踏まえ慎重に進軍を開始した冒険者。【黙示録調査隊】、【しふしふ同盟】【TN口伝部】【VizurrOsci】【世界騎士団】【突破阻止】【ベイリーフ】が戦場を駆け抜けた。戦場において情報は何よりの武器である。捜索の目標は機動力で勝るという悪魔の騎士達、そして悪魔の将である。
「今度は包囲されないように」
 フィオナ・ファルケナーゲ (eb5522)が決意をこめて偵察にあたる。
「そうそうデビルの思い通りにはさせぬぞ」
 雷瀬龍(eb5858)もそれに同意する。体勢が整っていたのは探索のチームだけではない。魔法攻撃を担当するチームも白兵戦を担当するチームも緊密な連動を見せていた。
「遮蔽物のない場所が有利なのは、貴方がただけじゃありません!」
 コルリス・フェネストラ (eb9459)の声が上空から響く。たとえデビルの軍が神出鬼没であったとしても漏れがない陣を敷いていた。
「敵影! 見つけたわ!」
 テレスコープで遠視を行っていたサラン・ヘリオドール(eb2357)の声が響き渡る。斜めに陣を展開する斜行陣を敷いていた軍を発見したのだ。
「突撃!」
 先のモレク戦で甚大な被害を受けた【ベイリーフ】が突撃を開始する。
「皆の心を力として!」
 リール・アルシャス (eb4402)が声をあげる。
 【ウィル双翼騎士団】のキャペルス、【WG鉄人兵団】のドラグーンが戦線に投下された。
「やるではないか」
 敵中央で軍を指揮するハルファスが思わず漏らす。前回は許してしまった敵騎士団の侵攻は偵察部隊の力と、超長距離射程からの魔法攻撃によって出足を挫かれる形となった。いまや戦況は冒険者側の優勢へと徐々に移りつつあった。
 ルナ・フィリース(ea2139)に背中を守られた九竜鋼斗(ea2127)のブラインドアタック合成技「居合」が炸裂しデビルの騎士が倒される。
「滅せられるまでせいぜい私達を嘲ってろデビル共」
 メグレズ・ファウンテン(eb5451)の剛剣から繰り出されるソードボンバーが炸裂し、戦線の一角が崩壊する。

「モレクの秘密を教えなさい」
 晃塁郁(ec4371)が捕らえたアガチオンにデッドコマンドをかけようとした時、「危ないです!」と声が上がる。その時、陽小明(ec3096)の傍らに月のエレメント、アルテイラが姿を現していた。
 瞬間、その場にいた皆は事態が全く掴めなかった。塁郁が捕らえていたアガチオンは剣で貫かれていたのである。
 背中に羽を生やし紅い目で見据える姿。
「ハルファス、か?」
 口止めに来たとしか思えないが、その行動となによりその底知れぬ能力に一瞬冒険者に隙が生じた。
 その隙に、ハルファスは泰然とした表情のまま冒険者の中を抜けて行った。冒険者に手を出すのではない。捕らえられたデビルを、次々に始末していくために。
「舐めるな!」
 数人の冒険者が飛びかかるも、ハルファスはステップでそれを交わすと、わざと潰したように見える剣の片刃で相手の得物を叩き落として行った。

「今回は我の負け、としよう」
 だらんと剣を落としたハルファスが口惜しそうに呟く。
「モレクの力を借りることになった以上は、な」
 それまで憤ってハルファスを囲んでいた冒険者たちは目の前で忽然と消えてしまったハルファスに、まずは驚く。そして上空から伝えられた急報にどよめいた。
「モレク、右門から突き抜けて荒野に進軍! 武器、魔法が効かないみたい! みんな、急いで!」
 戦場にマール・コンバラリア(ec4461)の絶叫が響き渡る。
 間もなく、破壊音と共にその巨魁が姿を現した。
 モレク。その前に何が存在しようと構わない。真っ直ぐに、居丈高に、無造作に突撃してくる圧力に、荒野で陣を構えていた冒険者は破られる。
 吐き出される炎、振り下ろされる斧に対し、冒険者の攻撃はそのほとんどが損傷を与えないように見えた。

(担当:谷山灯夜)


●護る為の戦い
●染み渡る策謀
 薄闇の中、目を開く。
 呼ぶ声がーーー聞こえた。


「陣を崩すな! 戦える者は俺に続け!」
 グレイ・ドレイク(eb0884)の檄に、崩れ落ちそうな膝を叱咤し、ボルカノ・アドミラル(eb9091)は大身槍を支えにしながら立ち上がった。度重なる戦闘で体は疲れ切っている。だが、城砦に攻め込む仲間の為にも、ここで退くわけにはいかない。
「リーン、この方をお願い致します」
 抱え起こした怪我人をリーン・エグザンティア(eb4501)に預けて、アルフレッド・ラグナーソン(eb3526)はボルカノの腕に手を当てた。白く柔らかな光がボルカノを包み、疼く傷口がみるみるうちに塞がっていく。
「ありがたい!」
「あまり無理はなさらないで下さい」
 アルフレッドの言葉に力強く頷いて、ボルカノはデビルの部隊を押し返すべく、仲間達が組む陣へと駆け戻っていった。
 無傷の者など1人もいない。
 それでも、彼らは武器を奮い、術を使い続ける。
「痛い? それは生きている証だから我慢なさい!」
 負傷者を叱りつけ、手早く包帯を巻いていくリーンも、あちこち傷を作って満身創痍だ。
 誰もが、自分の持てる力を尽している。
「歩ける者は今のうちに救護所へ戻れ。動けない者は応急処置を受けろ!」
 鋼蒼牙(ea3167)の指示で、負傷者達も動き出す。
「食べられるうちに食べておくんだ。それから、ゆっくりと休め。戦っている者が戻って来たら、次はお前達が戦うのだ!」
 今、戦えない事を悔しく思う必要はない。
 蒼牙の励ましに、落ち込んでいた負傷者の士気もあがっていく。
「怪我をしている人達は、私達が守ります!」
 グリフォンに騎乗したルーラス・エルミナス(ea0282)に頷いて、天城月夜(ea0321)は馬首を巡らせた。先へと向かった仲間達も疲弊している。隙を突かれたら一網打尽だ。
 空の上から戦いの様子を確認した月夜と視線を交わし、カナード・ラズ(ec5148)も彼女の肩から飛び立つ。
 戦っている仲間達が戻るべき場所、疲れを癒すべき場所は、敵の動きを何1つ見逃すまいと目を凝らし、的確に状況を判断して仲間に伝えてくれる彼らの働きあればこそ、平穏に保たれているのだ。
 しかし、戦況は刻一刻と移り変わる。
「大変だ!」
 負傷者にシチューを配っていたミスリル・オリハルコン(ea5594)は、走り込んで来た夕弦蒼(eb0340)の叫びにその手を止めた。
「デビルの、軍勢がっ」
 忍者として鍛えられた蒼の息が上がってしまっている。余程の事があったのだろうか。椀に汲んだ水を、ミスリルは蒼に差し出す。
 それを一気に飲み干した後、自分を落ち着かせるように深く呼吸をすると、蒼はやや上擦った声で仲間達に告げた。
「俺達と、ディーテ城砦の間にモレクが陣を敷いた! 前線がどうなっているか、今は混乱していて分からない!」
 温かな心尽くしの食事と、白翼寺花綾(eb4021)達の歌う呪歌で和やかだった救護所の空気が一瞬にして凍り付き、動揺とざわめきが波のように広がっていく。
 荒野に出現したモレクの軍勢は、後方の陣を預かる者達にも衝撃をもたらした。
「セーラ様、この戦いをどう感じておられるのですか‥‥」
 頬に跳ねた泥を手の甲で拭うと、リーディア・カンツォーネ(ea1225)は太陽のない空を見上げて呟いた。彼女達の慈しみ深き聖なる母は、子らの戦いに心を痛めているのだろうか。
「デビルも元は天使‥‥セーラ様の愛する子‥‥ですよね」
 魔の皇帝ルシファーは、かつて最も輝ける天使だった。ルシファーに従った天使達もまた神の愛し子達。
 未だ、彼らの全ては謎に包まれたままだった。

「Mater Dei,ora pro nobis peccatoribus‥‥」
 紡がれる言葉には、どこか嘲りの音が混じっていた。
 冷たい夜風に髪を靡かせる主へと、彼は膝をつく。
「オレイ、誰かが呼んでいる」
「誰か、ですか」
 露台に肘を突くと、首を傾げた男に頷いて唇を酷薄に歪める。
「そう、誰か。我を呼ぶなら、相応の代償を払って貰わねばならないが」
 主の意図を察して、彼はにぃと笑った。
「では、このオレイめが取り立てて参りましょう」
「うん。モレクに協力しておやり。だからといって、こちらの手を抜くんじゃないよ。‥‥まあ、お前に限ってそれはないだろうけどね」
 我らが王の復活の為に。
 歌うように囁く主の声に、「闘争の七将軍」オレイは深く頭を下げた。

(担当:桜紫苑)


●戦いの気配
 中央門前線。
「負傷者はチャリオットヘ! 救護所へ運びます!」
 ウィル双翼騎士団団長シャルロット・プラン(eb4219)はフロートチャリオット・ゴーレムグライダー部隊の指揮を執っていた。ゴーレム機器の機動力は負傷者の運搬、そして弓隊など騎馬隊の足止めを努める部隊の足として戦場を動き回っている。
「うおおおおっ!!」
 上空では、伊藤 登志樹(eb4077)がゴーレムグライダーを駆りながら、レミエラでのソニックブームで地上の敵へ攻撃を行っていた。同じくグライダー騎乗のキース・ファラン(eb4324)は急降下からの突撃を仕掛けている。
 更に近くには登志樹のチームメイト、☆ メイ・ゴーレム隊所属のシルビア・オルテーンシア(eb8174)が月下部 有里(eb4494)を後部に乗せて旋回している。グライーダの機動力を生かした一撃離脱、上空からの射撃と魔法の二連撃という戦法に、敵騎馬隊は度々隊列を崩されている。

 一方、前線から離れて後方では魔法隊が弓隊と入れ替わりながら、騎馬隊の足止めに努めていた。
「ほいほい、騎馬小隊右から来るぞい!」
 敵の布陣を観察していたバ・ジル(eb0246)が、魔法隊へ騎馬の動きを速やかに報告する。即座にリル・リル(ea1585)は敵騎突撃を伝えるほら貝を吹き鳴らした。
「こんなトコじゃなくって天国に逝ってね!」
 合図を受け、待ち構えていたティアラ・フォーリスト(ea7222)が一声を上げ、モニカ・マーベリック(ec3699)、サラ・シルキィ(ec4856)、リーリン・リッシュ(ec5146)と共にローリンググラビティーを騎馬隊後部目掛けて放つ。後部のそこかしこで馬諸共に魔物が持ち上げられて叩きつけられた。
 更に、前部へはアルスダルト・リーゼンベルツ(eb3751)達が騎馬の足を狙ってグラビティーキャノン。マイユ・リジス・セディン(eb5500)とハロルド・ブックマン(ec3272)もアイスブリザードで機動力を封じ、勢いを殺そうと試みている。

 この魔法隊とそして弓隊の活躍もあってか、デビル達を乗せた騎馬隊は思うようにその力を発揮出来ずにいた。もっと言えば、冒険者達の陣を割ることに苦戦し、防戦一方に追い込まれていた。
「ここは攻め時だな」
 中衛に控えていた雪切 刀也(ea6228)が戦況を見て言った。今が押し時――そして、それが自分達のチームの方針。この好機に乗じ、一気に中央門を突破する。
「よし‥‥皆、城砦内部への一番乗りを狙うわよ!」
 Ochainチームリーダー、シオン・アークライト(eb0882)は陣の先頭に立って仲間達へ声を張り上げた。最前線より後方にいて機を待っていた彼女達は体力もまだ十分。アクエリア・ルティス(eb7789)、御神楽 澄華(ea6526)らによって底上げされた力でもって、疲労が蓄積されているだろう前衛に代わって一気に敵陣深くへと切り込んでいく。


「しふしふ〜♪ 左、中央門共に味方優勢しふよ〜。この調子しふ〜☆」
 伝令役のしふしふ同盟、クリスタル・ヤヴァ(ea0017)が仲間と共に戦況を伝えて回る。優勢との報せに、味方陣は大きく沸いた。
「中央門に人が集まってる。ここで抜きたいね」
 門付近に潜み中を探ろうとしていたマキリ(eb5009)にも、疾走の術をかけて敵軍の動きを探ろうと懸命な紀珠 舞(ea5856)、葛葉 麗奈(eb5587)らにとってもその報せは朗報だった。

 だが、一方では右門はモレクに簡単に突破を許し、モレクが陣を布いた荒野もまたやや劣勢と分が悪い戦場もあった。
「自軍優位‥‥とだけは言えん状況やなぁ」
 フレア・カーマイン(eb1503)は空飛ぶ木臼に乗って偵察を行っていた。空の上から見た状況は、互いが互いののど元に剣先を突きつけた形とでも言えばいいだろうか。どちらが優位というわけではない。
 全体で見れば、状況は完全な痛み分けだった。

(担当:まどか壱)