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黙示録の戦いの勇姿を!

3人で!

4人で!

皆で!

第1回行動結果報告書第2回行動結果報告書第3回行動結果報告書

■第1回報告書

●ノルマン王国・パリ 〜情報こそが勝利〜
 パリ。
 郊外及び市内では、悪魔との戦いに備えての情報収集及び偵察が始まっていた。
 いつどこから襲ってくるのカ、それが全く解らないのでは後手にまわってしまう。
 悪魔相手にそれは危険であると考えた有志は、パリ市内にベースキャンプを構え、行動を開始していた。

──ベースキャンプ内
「コノ一連の騒動、悪魔ノ動キ‥‥何カ裏ガアリマス。僕、占ッテミマス」
 ラムセス・ミンス(ec4491)が調査班の詰め所でそう呟くと、そこに置いてあった水晶球を使って占いを始めた。
──ビシッ
 と、突然水晶がくだけ散る。
「不吉ナコトガ‥‥」
 とまあ、そんなの放置しておいて。

──パリ市内
「商業区‥‥特に問題ありませんわ」
 物陰に隠れつつ情報収集している大宗院透(ea0050)。
 だが、その地区では特に怪しい動きはない。
「こっちは行政区か。なんや、このあたりは騎士団の方がおおいわ。こっちは問題なしやな‥‥」
 とミケイト・ニシーネ(ea0508)呟きつつ、別のエリアへと移動。
「しふしふ♪〜このあたりでは、特に変わった事はない?」
 キャル・パル(ea1560)は一般居住区にて、道を通る人たちに色々と訪ねている。
「このあたりでは特にねぇ‥‥」
「まあ、市内は大丈夫なんじゃない?」
「郊外に続く旧街道があったでしょ? あの辺りが昨日騒がしかったけれど‥‥」
 とまあ、。ありきたりの情報を集めつつも、旧街道付近についての情報を得るキャル。
「ありがとー。郊外だね」
 ということで、キャルは一旦ベースキャンプに戻り、別働隊に郊外地区の調査を頼んでいった。

──そして郊外区域
 旧街道を真っ直ぐに。
 その両側は深い森。
 キャルのもたらした情報では、この辺りで昨晩何かがあったらしい。
 ということで偵察にやってきた神無月明夜(ea2577)は、周辺を細かく調べていた。
「奴らが来たという月道を見付けられれば、瀬戸際で叩けるものね‥‥」
「そうですね。こちらがより優位に立つ為には必要ですから‥‥」
 島津影虎(ea3210)も彼女と共に周辺調査を行なっている。
 だが、そのあたりにはなにも怪しいものはなかった。

──そして森の奥
「やれやれ‥‥ここは一体どういうことなんだ‥‥」
 眼の前にあるのは巨大なムーンロードのような光の柱。。
 大地に描かれているのは不可思議な魔法文字。
 そしてそれをじっと見つめているロックハート・トキワ(ea2389)は、その光の柱の向うに、何か見た事のない世界が広がっているのを確認した。
 荒涼とした荒れた大地、地のように赤く染まった空。
 黒く澱んだ待機の世界が、ロックハートの視界に見えていた。
「ふむ‥‥判っていることは‥‥ここは危険だということか」
 そう呟くと、ロックハートは素早くその場から離れていった。
 その柱の向うに大量の悪魔達が姿を表わしたのである。
 そしてそれらは次々と柱からこの世界に出現し、周辺に集まりつつあった。
(死ぬ‥‥見つかったら確実に死ぬ‥‥)
 そう思うや否や、自身の持てる技術の全てを駆使して、ロックハートはパリへと帰還していった。
 そして入れ違いにその場に姿を現した『チーム・ノルマン』の偵察担当、リスター・ストーム(ea6536)。
「‥‥ロックハートが見つけたのはこれか‥‥」
 そのまま出現する悪魔達を見過ごすように隠れ、そしていなくなったら近寄ってまじまじと見つめる。
「嫌な空気だな‥‥?」
 と、リスターはその柱の向うの世界で、何かを見つけた。
 それは人間の女性。
 しかもかなりの美人である。
「お、お嬢さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん。そんな所にいたら危険ですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
 と叫びつつ光の走りに向かって駆け出す。
 そして飛込んだ瞬間、光の柱は消滅し、リスターはその向うにたって居る毛むくじゃらのなにかに抱きついてしまっていた。
「グフフ‥‥君、思ったよりも毛深いんだねぇ‥‥」
「ウホッ!!」
 と、その声に正気に戻るリスター。
 自分が抱きついているのが屈強なるオーグラであることを、瞬時に理解した!!
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。彼女はどうした? 一体どこに隠したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 オーグラに向かって叫ぶが、すぐさま臨戦体勢になってしまったために、リスターは撤収を余儀なくされてしまった。

 やがて、街道側では大規模な戦闘が開始された‥‥。

(担当:久条巧)


●イギリス王国・キャメロット 〜異変〜
「皆さん、落ち着いて下さい。慌てないで、怪我をした人を優先してあげて下さい」
 怪我人や避難民を誘導するクリステル・シャルダン(eb3862)の声が響く。大きくはないが、通る声。ほっとする、優しい声だ。
 デビルとアンデッドの群れから逃れて来た人々の、何かに追い立てられているかのような足取りが緩む。
 周囲の気配を探りつつ、アヴァロン・アダマンタイト(eb8221)は、足下にしがみついて来た幼い少女を抱き上げた。親とはぐれたのだろうか。泣きじゃくる少女の頭を躊躇いながら撫でると、彼は人々を誘導するクリステルの元へと歩み寄った。
「もう大丈夫」
 すぐに事情を察したクリステルは、アヴァロンが説明をする前に少女の手を取る。状況を説明するだけの会話も、子供に不安を与えるだけだ。そんな事態を避けられた事に、アヴァロンは安堵した。
 だが、それも束の間のこと。
「来ますっ!」
 叫んだのはヒルケイプ・リーツ(ec1007)だった。
 彼女の指輪の石の中、蝶が羽ばたいている。
「なに、心配するな! 我が輩に任せておけばよいのである!」
 マックス・アームストロング(ea6970)がカラカラと笑うと、肩に担いでいた剣をぶんと一振りした。その剣圧に乾いた土が舞い上がる。
「マックスさん、上です!」
 ヒルケイプが指し示す空に、無数のデビルの影が浮かぶ。それだけではない。いつの間にかアンデッドの群れも現れていた。敵意を漲らせ、次々と降下して来るデビルの標的は、武器を手にした冒険者だけではない。無抵抗に逃げ惑う一般人を、何匹かのデビルが追いかけた。
「駄目ですの!」
 牙を剥き出しにして襲いかかって来るデビルに、小さな子供を抱き締めたラヴィサフィア・フォルミナム(ec5629)はぎゅっと目を瞑る。恐れていた衝撃は、いつまで経っても来なかった。
 恐る恐る目を開けると、不気味なデビル達が鈴なりになって目に見えない壁を叩いている。
 ぎりぎりでホーリーフィールドの詠唱が間に合ったようだ。
「でも、長くはもちませんわ‥‥」
 怯えて自分の周りに集まった子供達を引き寄せて、ラヴィサフィアはフィールドの外のデビル達を睨み付ける。と、その時、フィールドに群がっていたデビル達が耳障りな悲鳴をあげながら吹き飛ばされた。
「守りの騎士の名にかけて、ここは一歩も通さない。だから、皆は安心していいよ」
 槍を構え、にっこりと笑ったユーシス・オルセット(ea9937)の傍らで、アレクセイ・ルード(eb5450)も刀を鞘から引き抜いた。
「魅力的なお嬢さん方が多いから心惹かれるのは分かるが、君達はお呼びではないようだ。お帰り願おう」
 こんな時にも関わらず、思わず赤面してしまったラヴィサフィアに、ユーシスは深く同情した。

 気合い一閃、邪を断つ剣がデビルの体を斬り裂いた。
 これまでに何匹のデビルを屠ったのか、フリッツ・シーカー(eb1116)にも分からない。
「こいつらはどこから湧いているんだ!?」
 さらに1匹、剣を返してもう1匹。
 斬れば斬るだけデビルの数が増えて行くように感じるのは、気のせいだろうか?
「フリッツ殿!」
 注意を促すシルヴィア・クロスロード(eb3671)の声。
 正面のデビルと打ち合った隙をついて、背後からアンデッドが襲いかかってくる。
 小さく舌打ちして、フリッツは体を沈めた。
 視界から消えた彼の姿を探して、デビルが視線を巡らせる。僅かに生まれた空白の間を逃さず、首を狙って剣を滑らせた。そのまま振り返り、背後のアンデッドを貫く。
「巻き込まれるなよ!」
 リース・フォード(ec4979)のライトニングサンダーボルトが放たれると同時に、ウェーダ・ルビレット(ec5171)もアイスブリザードの詠唱を終える。稲妻と吹雪に吹き飛ばされ、デビル達は後退したかに見えた。
「ここで退いてはキャメロットへの侵攻を許す事になる‥‥。一気に行きます!」
 シルヴィアの声を合図に、彼女を隊長とする「月虹」の仲間達が動き出す。
 魔法攻撃によって消沈したのか動きを止めたデビル達を切り崩すべく、それぞれの武器を手にとった。
 リースとウェーダも再び詠唱を始め、彼らの護衛についたミシェル・コクトー(ec4318)が反撃に備えて身構える。
「待って下さい! 何か変です!」
 振り仰けば、天馬を駆るリースフィア・エルスリード(eb2745)が手綱を操りつつ、前方を凝視していた。
「変? 変って何が!?」
 戦場の騒音に掻き消されないよう叫んだミシェルに、リースフィアは困惑したように首を振る。
「分かりません! デビルの様子がおかしいんです! 一斉に動かなくなって‥‥!」
「怖じ気づいているのではなくて!?」
 先陣を切ったシルヴィア達は、既に何匹かのデビルを斬り捨てていた。動かないのであれば好都合、こちらに有利だと安堵したミシェルの背後で、詠唱が完了し、風の精霊力と水の精霊力が急速に高まっていく。
「吹き飛んで下さい!」
 ウェーダの言葉と共に再び放たれた雷と吹雪。
 空気を伝って届く衝撃に手応えを感じ取って、勢いづく冒険者達。だが‥‥。
「何なの‥‥これは‥‥」
 刀を振り下ろしたまま、伏見鎮葉(ec5421)が呆然と呟いた。
 吹き飛ばされたはずのデビルが、何事もなかったかのように起き上がる。
 ゆっくりと、ゆっくりと魔が侵食を始めた。

(担当:桜紫苑)


●ノルマン王国・パリ 〜悪魔との戦い〜
 パリ郊外。
 旧街道筋の森林地帯を中心としたエリアでは、現在も悪魔との戦いが繰り広げられていた。
 奴等がいつ、どこから、どのような手段で姿を表わしたかはまだ確認されていない。
 だが、判って居るのは、悪魔達はあきらかに、このノルマンに侵食しつつあるということ‥‥。

──前線では
「魔法兵団、前へ!!」
 ウィルフレッド・オゥコナー(eb5324)が叫ぶ。
 その声に導かれるように、リディエール・アンティロープ(eb5977)やコトネ・アークライト(ec0039)、ヴィルジール・ヴィノア(ec0235)といった高位? 魔法使い達が一列に並ぶ。
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
 一斉に詠唱を開始すると、街道筋や森から姿を出した悪魔に向かって、ライトニングサンダーボルトやアイスブリザードなどを一斉に発動した。
 これにより敵の先制を挫くと、その背後で待機していた冒険者達が、各々手に獲物をもって突撃していった。

──上空から
「敵の部隊は両サイドの森林から!! 戦闘エリアの者たちはそれを踏まえてください!!」
 上空で、ペガサスに跨ったリリー・ストーム(ea9927)が叫ぶ。
 自身も戦いに赴くのだが、まずは上空から立体的に戦局を見る必要があったらしい。
 そのリリーの叫びを聞いて、地上では幾つかの部隊が、森から姿を現わした悪魔達との戦いに突入していた。
──ファサッ
 と、リリーのペガサスの横に、もう一頭ペガサスが近寄っていく。
 ナノック・リバーシブル(eb3979)もまた、リリーと同じ様にペガサスに跨がっていた。
「俺は左にまわる。リリーは右にまわってくれれ」
「あら、あたしに命令するの? アタシに命令できるのはダーリンだけよ☆」
 そう微笑みつつ、リリーは命じられたとおりに右へとまわった。 
 そして二人とも急降下で悪魔の軍勢に近付くと、そのまま接近戦に突入。
 
──ヒュヒュンッ!!
 近くの建物の影からは、アルフレッド・アーツ(ea2100)が手にしたダガーで援護射撃を行う。
 それは近くで徘徊しているアンデットやインプ、グレムリンなどの目に直撃し、そしてアルフレッドの手の中に戻る。さらに同じ目標にダガーを投げて、アンデットの視界を完全に奪っていた。
「僕じゃあ勝てないけれど‥‥援護ぐらいはできるさ!!」
 
──ズシャァッ!!
 近くの路上では、デュランダル・アウローラ(ea8820)が奮戦中。
 手にしたアラハバキで、グレムリンやグリマルキンなどを次々と殲滅していくが、彼の知っている強さではなかった。
 それよりも強力な、そう、少しでも油断をすると窮地に追い込まれるような強さを、彼らが身につけていたのである。
「デュランダルさん、こっちは片付きました!!」
 そう叫びつつ駆け寄ってくるのはエイジス・レーヴァティン(ea9907)。
 彼もまた、デュランダルと同じ様に尖兵の殲滅を行なっていたらしい。
 そして以外な敵の強さに一瞬追い込まれたものの、それでもなんとか持前の力で突破してきたのである。
「こんな奴らが、街の人たちを襲い始めたら大変だからね」
「ああ、全くだ‥‥。奴等、何等かの理由で強くなっていたな‥‥」
 確かにそれは感じている。
 いつもとは違う強さ。
 同じグリマルキンでも、その体の周囲に黒い霧城のものを纏っているものと、そうでないものとが存在していた。
 そして霧を纏っている方は、今までよりも気揚力な強さを持っている。
「さて、他の奴等が心配だ。1度戻るぞ」
 そう呟き、デュランダルは次の獲物をさがしつつ撤退の準備を始めた。

(担当:久条巧)



●イギリス王国・ケンブリッジ 〜侵攻〜
 地獄の扉は開かれた。
 あらゆる悪徳と罪悪が光射さぬ地下奥深くから、太陽と月の支配する地上へとあふれ出した。
 しばらく平穏だったケンブリッジにも、地獄からの軍勢の足音がゆっくりと近づいていた。
 ――文字通りの意味で。
「われは地獄の騎士アビゴールなり! 大地に生きる全ての者を滅ぼすために地の底より参った!」
 突如地上に現れたそれは、蝙蝠の翼をもつ邪悪な黒き馬に跨り、闇そのもののような鋼鉄の鎧で全身を覆った悪魔だった。本人が名乗る通り、一見すると礼儀正しく誇りに満ちた騎士であるかのように見えた。
 だが、悪魔が忠誠を誓うは殺戮。則とするは修羅道。
 アビゴール率いる隊の進軍は、その通り道に数多の破壊と残虐を残していった。

 そして今、地獄の軍隊はケンブリッジの街に迫りつつあった。まずは尖兵として、数十の武装したインプとスカル・ウォーリアーが街へたどり着く。
「この拳、存分に喰らわせてやるネ! この世界に現れたことを後悔させるアル」
 そう言いながら紗夢紅蘭(eb3467)が隊の先陣を切るスカル・ウォーリアーに拳を振るう。
「アンデッドよ、立ち去りなさい!」
 アニス・リカール(ea2052)もスカル・ウォーリアーにホーリーを放つ。
「この世の破滅が来るなんて私、絶対に認めないわ!」
 フレイア・ハールフラム(eb0582)が、マグナブローでインプを蹴散らしながら叫ぶ。
 その隣では、ロイ・クリスタロス(eb5473)がインビンシブル・ガントレットを武器代りにしてインプを殴りつける。
「アクマ‥‥、嫌い」
 ラピス・ブリューナク(ec4459)はそう言いながら、手近のインプにアイス・コフィンをかけて氷漬けにしている。
 秦劉雪(ea0045)は魔法使いを守るようにインプに向かってオーラショットを放つ。
 街の中ではインプが放った炎の魔法によって燃え上がった並木をシャルロット・スパイラル(ea7465)がファイアーコントロールで鎮火させ、やけどを負った一般人をレイル・セレイン(ea9938)が治療して回っていた。
 それだけだった。前衛で戦う冒険者はたったのこれだけ。引き換え、敵の軍勢は数倍以上。
 しかも、さらに戦況が悪くなることが起こる。
「キキッ!」
 耳障りな声を上げてインプが叫ぶ。どうやら笑っているらしい。
「イマナラ、ホンタイノチカラヲ、カイホウスレバ、オマエラノコウゲキナド、キカナイ!」
「本体の、力?」
 首を傾げる冒険者たちを尻目に、インプ達はなにやら目を閉じて集中し始めた。
「か、体の周りに‥‥」
 見れば、インプの周りに黒い靄のようなものがあらわれ体を覆い始めたではないか。‥‥いや、インプ達の体が内側から黒く歪み始めた、と言うべきだろうか。
「‥‥なんだか知らないけど、邪悪なものはみんなこの炎に包んで焼いてしまうわよ!」
 フレイアが再びマグナブローを放つ。しかし、炎に包まれたインプは涼しい顔をしている。
「ケケッ! キカナイキカナイ!」
「このっ!」
 今度はロイが、インプを殴りつける。
「‥‥ウソだろ、魔法の武器だぜ?」
「アイスコフィン! ‥‥こっちもだめみたい」
 ラピスも悔しそうな声を上げる。
「これならどうですか? ホーリー!」
 アニスが放った魔法は、邪悪なものには抵抗すらできないものだ。
「ギギ!」
 インプが驚いたような声を上げる。
「効いたアル!」
「けれど‥‥普通より効果が低いみたいです」
 まともに食らったはずのインプは、すぐに何事もなかったかのようにへらへらとした笑いを浮かべていた。
 慄然とする冒険者たちに、不気味な笑みを浮かべたデビルたちが迫っていた――。

(担当:saggita)


●ロシア王国・キエフ 〜恐怖〜
 数多の死霊と悪魔が蠢く大地で、冒険者達は命を賭して戦っていた。
「はあっ!!」
亡者が嘆きの声を上げて牙を剥けば、迎え討つのは王冬華(ec1223)の鉄扇。オーラを纏ったその連撃を受けた生ける屍は、再びただの肉塊へと変わり果てる。
「足止めくらいは‥‥!」
 如月小夜がその盾にスカルウォーリアーの剣を受ける。
「神様、おいらは、おいらができることをするから、力を貸して!」
 小夜の背後から聞こえたのは、イルコフスキー・ネフコス(eb8684)の祈りの声。そして、彼の身体が魔法の発動で輝けば、小夜の身を包むのは神の幸運をもたらす力。
「ありがたい!」
 ホーリーメイスが振り下ろされて、骸骨の戦士は再び永久の眠りにつく。
「双撃の刃、その身に刻め!」
「これ以上の勝手はさせないわ!」
 叫ぶイグニス・ヴァリアントがグールに大技を決めれば、ヒポグリフに乗ったシオン・アークライト(eb0882)がその剣で仕留める。
『ガアアッ!!』
「‥‥‥‥」
 爪を振りかざし飛びかかろうとするインプ達の禍々しい姿。だが、常のまま冷静にハロルド・ブックマン(ec3272)が空の悪魔達へと吹雪を浴びせれば、手負いの悪魔達をグリフォンを駆るナスリー・ムハンナド(ec1877)の魔槍が貫き、ペガサスを駆るディアルト・ヘレス(ea2181)の魔剣が切り払う。
『ギイッ!』
「逃がさないよ!」
 霧の息を吐き視界を封じてくる厄介なクルードをアクア・リンスノエル(ec4567)は魔力を秘めたバラの鞭で捕えると、桜色に輝く刃で止めを刺した。
 善戦する冒険者達。だが、一体一体は弱くとも、敵は数で押してくる。それに悪魔の中には、冒険者達の予想を超えた力を使う者達もいた。
「くっ、何故だ‥‥俺の武器が通じないなんて」
 朱空牙(ec3485)の顔に浮かぶ、焦りの表情。彼が対峙した敵は、下級悪魔に過ぎないはずのアガチオン。悪魔に対し通常の武器は通じず、魔力を帯びたものでなければ効果が無いというのは、冒険者達の間では良く知られた話。そして、彼もまた確かに魔力を帯びた武器を使い、その刃を悪魔へと振るった。だが、それにもかかわらず、目の前の悪魔は平然としていたのだ。
「そこの貴方、諦めてはいけません!」
 そこに現れたのは、戦闘馬を駆る騎士の男。その名をレドゥーク・ライヴェン(eb5617)と‥‥。
「仮面はありませんが、仮面レッダー、ウェイクアップ!!」
「同じく、仮面で顔は見せませんが、美女仮面クラースヌゥイ参上! 愛ある限り戦いましょう!!」
「むむっ‥‥ええい、何だか知らんが来なくてはならない気が‥‥。ウサミミのリュー、ここに見参!!」
 いつの間に現れたのか、カーシャ・ライヴェン(eb5662)とラザフォード・サークレット(eb0655)まで登場し、それぞれに妙な名乗りを上げていた。
 まるで英雄気取りの三人だったが、その実‥‥相応の実力があったりする。悪魔殺しの剣と天使の弓、それに強力な魔法。それらが一斉にアガチオンへと向けられれば、悪魔は断末魔の叫びを上げて消滅した。
「よしっ、片付いたか。では次だな。‥‥そこの悪魔ども、何処を見ている!? さあ、私を見ろ!!」
 聞きようによっては、別の意味で危険な印象を与える台詞を放ちつつ、ラザフォードは次の敵へと向かっていった。
 一連の出来事に呆気に取られた空牙だったが、気を取り直して次の敵を見つけて挑む。先とは別のアガチオン。今度は、確かな手応えがあり倒すことが出来た。
「何だったのだ‥‥先の悪魔はいったい‥‥」 
 謎の経験をしたのは彼だけでは無い。実はこの戦いの最中、同じように魔法の武器での攻撃が通じない悪魔に遭遇したという報告が、冒険者達の中から幾つも上がっていたのだった。

(担当:BW)


●ジャパン・江戸 〜退却〜
「‥‥悪魔に、武器が効かないだと?」
「ええ」
 今回の異変に対して集った有志の者、そのうちの一つ『誠刻の武』主席として、江戸郊外にて仲間たちの戦いの指揮を取っていた陸堂明士郎(eb0712)は、その場に居合わせた九紋竜桃化(ea8553)の言葉に静かに眉をひそめた。
 江戸のみならず日の本の下、色々と腹の奥で思われている伊達家に縁のある者ゆえ、その反応はしょうがないだろう。相手の態度の拭いきれない根っこのものを感じ、そういう風の笑みを浮かべながら桃化は静かにうなずくと、改めて監視していた悪魔たちの湧き出てきた穴でのことを語る。
「魔物たちが意識を集中した後でしょうか。その体を黒い靄のような揺らめきが覆って‥‥それからです。相手に武器が効かなくなったのは。魔法も効かなかったものがある様子で」
「こいつくらいになると、何とかなるみたいだがなあ。あと一応、雑魚には退魔の力がある武器は効いていたみたいだが‥‥軽く使ったオーラアルファ程度じゃ効きやがらねえ」
「しかし‥‥そんな能力は、初めて聞いた。いったいどんな妖術だ‥‥?」
 戦いの途中、一息入れるように戻ってきた虎魔慶牙(ea7767)は、手にした力ある刀・斬魔刀を示しながら鼻を鳴らすと、小鳥遊郭之丞(eb9508)は鎌倉での悪魔たちとの戦いの経験を思い出しつつ、ふと、首をひねる。
「ここは、一度退くところか」
 意見が飛ぶ中、思案の表情を元に戻すと、陸堂はさらに伝えられてくる他の隊・一団の様子と、今聞かされた悪魔たちの状況に、厳かに陣払いをつぶやいた。
「敵の戦力も確認できたようだ。そのような化外の能力を使うということがわかっただけでまずは充分。次なるに向けての対策とすべき‥‥それこそ今は、民たちに被害が出ないように、動くべきときだろう」
「さぁて、それじゃあ、もういっちょ、暴れていくかねえ」
 その断に虎魔は獣も恐れるようににやりと口端を歪めると、その肩に大刀を担ぎ上げた。

 江戸市中より離れた別の郊外、その場所では悪魔のみならず、迫る面妖なる不死者との戦いが行われていた。
 こちらでも悪魔の怪しげなる力は発揮されていたが、下位の悪魔のその力には限界があるらしく、高次の術を操る陰陽師や志士、あるいは僧侶から支援と攻撃が飛びつつあり、形勢は膠着していた。
「退き時、か」
 悪魔たちの勢いが小康状態になるのを見て、大蔵南洋(ec0244)はつぶやくと、戦いの中孤立した冒険者たちを助けるべく、あたりの仲間とともに、再び撃って出る。
 ひとまずは一進一退。冒険者には数と錬度、そして連携があり、悪魔たちは一方で、初めて見せる特異なる能力に対して、最初の優位を失いつつあったためか、様子を見るかのように勢いを緩めつつあった。
「なあ」
「なんだ?」
 主席の命に従い支援に向かったレジー・エスペランサ(eb3556)が、取り残された冒険者を囲む敵に向けて、魔力ある矢を放ったその時、音無響(eb4482)が尋ねるようにつぶやいた。
 レジーにとって彼は、こことは異なる『地球』から来たと称する、変わった人物であったが、人品卑しからぬ点、そしてなによりも別なる世界アトランティスでも悪魔たちの侵攻が起こっている現在は、ともに戦う仲間として協力するほうが優先である。
「あいつらって、カオスじゃないのか?」
「‥‥?」
 カオス。西洋の言葉を意訳すれば混沌と呼ばれるもの、というところか。
「よくわからないことを言う。あれは悪魔‥‥デビルとヨーロッパでは呼ばれるものだがな」
「だけどさ、あれはアトランティスでは、カオスって言うんだ。インプとかいうあの気味の悪いやつは、邪気を振りまく者って呼ばれてるし。俺の世界にはいないから、どっちも同じに見えるんだ‥‥」
 レジーの問い返しに音無はやはり、思案顔で悩むも、ひとまず仲間を助けた後、退却の声に従い戻り始める。
「まあ、そんな難しいことではないのでは? 同じ生き物が洋の東西で別の名前で呼ばれる、そういう、言葉遊びだろう?」
「‥‥本当に、そうなんだろうか?」
 大蔵の軽い呼びかけにも、音無の表情は変わらなかった。

(担当:高石英務)


●ロシア王国・キエフ 〜伝承の中に〜
 突然のデビル共の侵攻に、真っ先に反応したのは冒険者達であった。
 夢の預言。神託。
 精霊達の異常と、デビル達の活動。
 予兆があり、予感があったのだろう。デビル、そして無数のアンデッド達が現れたとの第一報に、キエフ中の冒険者達が誰に命令をされるまでもなく、自らの思いでもって立ち上がったのだ。

 戦闘は、まず術士達の大呪文によって幕を開けた。
 ヴェニー・ブリッド(eb5868)たちが唱えた達人級の広範囲呪文が空を飛ぶ悪魔共の大群に向かって解き放たれると、続いてレンジャー、ファイター達による弓矢が傷ついた悪魔を狙い撃つ。一矢放たれる度に、空からは黒い影がばらばらと地に墜ちた。
 しかし。
「これは‥‥」
「‥‥多すぎるでやすね」
 森の向こう。敵陣の奥深くへと侵入していたフォックス・ブリッド(eb5375)と以心伝助(ea4744)は、そこで無尽蔵とも思える悪魔、そしてアンデッド共の大群を目にする。悪魔達に対抗してキエフ中の冒険者達が集まった、その事自体に嘘はない。しかし、敵は冒険者達の想像を超えて遙かに強大であった。
「どうやら、デビル達はあちらの方角から来ているようですね」
 フォックスをはじめ、偵察に赴いた冒険者達は、尚森の中を進む。ともかく今は情報が必要だった。暗く、深い森を抜け、冒険者達はついにその光景を目にする事に成功する。

「‥‥川‥‥でやすか? あんなところに、川などなかった筈でやすが‥‥」
 伝助は、小高い丘から、伏して遙か前方の眺望を望んでいた。
 川が見える。赤い空の下で、黒い大地の上を流れる大河。その地に存在などしなかった筈のその川を越えて、デビル達はこの世界に現れてきているようであった。
「‥‥見付かった」
 有り得ぬ光景に目を見張る伝助の隣で、共に潜入していたエムシ(eb5180)がデビル達の異常に気が付いた。空を飛んでいたデビルの一隊が、冒険者達の潜んでいる丘へとその進路を変える様が目に映る。
 判断は一瞬。一行は素早く身を翻し、上空から姿を隠せる森の中へと駆け込んでいく。
 ここで、今捕まるわけにはいかない。
 俄にざわめきを増す空気を背中に感じながら、一行は全力で暗い森の中を駆け抜ける―――


 戦いは、前線以外の場所でも行われていた。
 武器は知恵と、そして本。
 ユリア・サフィーナ(ec0298)ら冒険者達の嘆願を受けて開放された、マリンスキー城宮廷図書館の禁書区域の一角で、十名近い冒険者達が書物を読み漁っていた。狙いは過去の文献から、デビル達の生態と、そして彼らが今、この世に現れた理由を見つけ出す事。

「‥‥デビルの住む世界と、この世界とは、本来はそう簡単に行き来できる物じゃない筈なんだ」
 ランティス・ニュートン(eb3272)が、誰とも無しに呟く。
「デビルが自由で出入りできるくらいなら、とっくに世界は地獄そのものになっている‥‥」
「では何故、今になって地獄への門が開いたのか‥‥」
 沖田光(ea0029)がランティスの言葉を受ける。

 調査は難航していた。
 ロシア屈指の蔵書量を誇るマリンスキー城宮廷図書館であっても、デビル達に関する書物は多くなく、まして地獄からどうやって悪魔達がジ・アースへと這い出てきたのか、その疑問に答えられる書物となると皆無に近い有様である。
「辺獄に流れるアケロンの川‥‥か。古代魔法語の書物を総浚えして、それらしい言葉がたったこれだけとはな」
 ラドルフスキー・ラッセン(ec1182)が首を振り、古代魔法語の分厚い書物を机に置く。
 デビル達に対する記述が薄いのは、古代魔法語の書物といえども同様である。写本と翻訳を幾重にも重ねられた書物の中には、元の言葉の意味さえ判然としないものも多かった。

 そんな中で、一人地獄の瘴気について調べていたアナスタシヤ・ベレゾフスキー(ec0140)が、キエフの古い風土記の一遍から、不可思議な記述を見つけ出してきた。
「『一時、地の底より瘴気溢れ、死人は蘇り、黒き靄をまとった羽有りし人、暴虐の限りを尽くす。銀剣効かず、魔剣効かず。ただ旅の戦士の携えし、強き魔剣のみが其れを打倒せり』
 ‥‥なんじゃ、これは? 銀や魔剣の効かぬ怪物など、例え高位デビルであっても存在しないはずじゃが‥‥」

 アナスタシヤの言葉に、その場の誰もが沈黙する。
 魔剣さえ効かぬデビルがもし現れたら、それは、人間にとって真に恐るべき敵となるだろう‥‥


 前線で剣を振るっていたフォン・イエツェラー(eb7693)が、黒い靄を身にまとった中級位らしきデビルと遭遇したのは、丁度その時。
 オーラパワーを込めた聖剣が弾かれる?!
 デビルが希に使用すると言う、エボリューションの呪文でもなかった。
 より禍々しいその力を前に、フォンは聖剣を握り直す。

「‥‥相手が強くとも負けられない時。そんな時があるとするなら、それは今をおいて他はないでしょう。全力で行きます!」

(担当:たかおかとしや)


●アトランティス・ウィルの国 〜戦闘〜
 突如として現れたカオスの魔物の大群。先陣を切って現れたのは、邪気を振りまく者と呼ばれる魔物と動く屍、彷徨いし骨兵の大群だった。
 冒険者たちはそれぞれに連携して、魔物たちに立ち向かう。
 ゴーレムグライダーに搭乗した市川 敬輔(eb4271)、リール・アルシャス(eb4402)、越野 春陽(eb4578)、カテローゼ・グリュンヒル(eb4404)が上空から魔物の動きを偵察し、地上へと報告する。
「とりあえず目に付いたのからブン殴ってやりゃ良いんだろ?」
 阿武隈 森(ea2657)は言って、スマッシュ全開で魔物の群れに突っ込んでいく。
「吹き散らせ! 魔剣ストームレイン」
 勇ましい科白ともども切り込んでいくのはグラン・バク(ea5229)。アレクシアス・フェザント(ea1565)はオーラパワーを用い、陸奥 勇人(ea3329)はスマッシュEXで武器を振り下ろした。飛 天龍(eb0010)はオーラエリベイションを発動させ、空中での戦いに挑む。紋章剣『一角獣』と共にデビルの群れに斬り込むのはシン・ウィンドフェザー(ea1819)。辺りには一瞬にして怒号が乱れ飛んだ。
 一方、魔物たちとは距離を置きつつ、魔法や射撃で攻撃を試みる者たち。シルバー・ストーム(ea3651)、チカ・ニシムラ(ea1128)がほぼ同じタイミングでライトニングサンダーボルトを発動し、空から襲い掛かる魔物たちを怯ませた。セーツィナ・サラソォーンジュ(ea0105)はミストフィールドで視界を塞ごうと試み、その隣でレン・ウィンドフェザー(ea4509)がグラビティーキャノンを放つ。
 華岡 紅子(eb4412)は周囲に気を配りつつファイヤーボムを放ち、ピノ・ノワール(ea9244)はブラックホーリーで一気に数体の魔物を狙う。
 やや後方から、十人張を用いて空を飛ぶ魔物を攻撃していたジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)は、さらに魔物の動きを探りつつ、ダブルシューティングEXを駆使する。アシュレー・ウォルサム(ea0244)もダブルシューティングEXで次々に攻撃を繰り出すが、一向に減る気配のない魔物たちに、息をつく暇もない。
「新手の魔物が来る! 気をつけろ」
 偵察部隊から伝令が入る。最前線で戦う者の中には負傷するものもおり、陣形を組み替えつつ、激しい戦闘は続いた。
 彼らの攻撃は確実に魔物にダメージを与えているはずだった。しかしどうしたことか、一向にその数は減ってはいないようだ。それどころか無傷の者たちが次々に現れ、攻撃を仕掛けてくる。
 接近戦や魔法を使っての戦闘をしている冒険者たちに比べ、ゴーレム騎乗者――シャルロット・プラン(eb4219)とエリーシャ・メロウ(eb4333)の戦果は目覚しいものがあった。空戦騎士団に属する二人は、ウイングドラグーンに騎乗し、空中にて次々に魔物を撃退してゆく。ニ体のゴーレムの攻撃により、傷ついた魔物たちが次々に消滅して行く。しかしそんな中、大きな傷を負い満足に動けないような魔物たちでさえ、その身が消滅するまで攻撃を繰り出してくる。どの魔物も戦意を喪失した気配がないのだ。
 思うように効果の上がらない地上部隊の対魔物戦は、動く屍や彷徨いし骨兵を中心に攻撃を仕掛けるよう、目標を切り替えた。さらにウイングドラグーンが攻撃し、傷を負った魔物たちを、地上部隊が切りつけ、魔法で応戦する。次第に魔物の数が減り、追い詰めて行くのだった。

 魔物たちを追い詰め、戦線は動く。上空からの偵察部隊や、隠密行動部隊から時折入る報告で、新たな魔物たちが現れると言う地点に、次第に迫って行くようだった。
 やがて前線での地上部隊が、その地点へと辿り着いた。目前に広がるのは、やや窪んだ大地。何の変哲もない――としか言いようのないその地が、突如、大きな口を開ける‥‥!
 ――それは、かつて見たことのない光景だった。
 世界の全てがどす黒い赤。そう、まるで――血の色のような。魔物と思われる影があちらこちらに蠢き、はるか遠くにはどうやら川のような流れが確認できるが、それすら赤く染まっている。
「‥‥ここがカオス界への入口――ってことか」
 目前に広がる光景の、あまりの異様さに、誰しもそれ以上の言葉が出ない。
 カオスの魔物たちも警戒しているのか、新たな勢力が襲ってくることはないようだ。
 その場に居合わせた面々は、暫くはただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。

 一応の戦果を挙げた冒険者たちは、体勢を立て直すべく、一度帰還することに決めた。傷ついたものも多数いるし、MPが尽き、これ以上戦闘や救護に回れないものもいるからだ。

 大地を大きく穿つ、穴。
 それが何故開いてしまったのかは、未だ、謎のまま――。

(担当:小椋杏)


●アトランティス・ウィルの国 〜偵察〜
 地上での前線部隊、後方支援、救護班、さらにゴーレムの空中部隊が戦線にて魔物や動く屍、彷徨いし骨兵と戦っている中、魔物や戦況の偵察のために、さらに二つの部隊が編成された。シフールたちによる空中偵察部隊と、地上で動く隠密行動部隊である。
 フィリア・ヤヴァ(ea5731)、燕 桂花(ea3501)、ターニア・アイオライト(eb3578)らシフールたちは、激しい戦闘が繰り広げられる空域を遠めに、あちらこちらを飛び回り、魔物たちが現れる場所を探していた。
 ディアッカ・ディアボロス(ea5597)はテレパシーを用い、伝令として働く。彼の元にもたらされたのは、どうやら魔物たちはどこからともなく次々と現れ、戦闘部隊を苦しめているという情報だった。
「‥‥まずは、おおよその場所を特定しましょう」
 他のシフールたちと連携して、なるべく魔物に襲われないよう、調査を続ける。ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)はテレスコープによって周囲の状況を見極め、戦闘に巻き込まれないよう、他のシフールに指示するのだった。
 地上での隠密行動に向かうのは、サレナ・ヒュッケバイン(ea8357)、マリー・ミション(ea9142)、ガルハ・ヌスフ(eb0572)、竜胆 零(eb0953)、アルジャン・クロウリィ(eb5814)らの面々。彼らもまた、互いに連携を取り合い、各処で繰り広げられている激しい戦いを横目に、戦場を駆け回るのであった。


 アレクセイ・スフィエトロフ(ea8745)はひとり、前線のさらに先へと向かった。他の偵察部隊と情報を交換し、魔物たちが現れると思われる場所の近いところに、潜む。
(「カオスの魔物といえども集団で動く以上、リーダー格となる存在がいる筈‥‥」)
 そう思い、湧いては出る魔物たちを注視していたが、これと言って思い当たるような魔物を見つけられなかった。
 しかしそうして行動を見つめているうち、不審な点に気がついた。
(「‥‥ん? あれは一体――?」)
 現れた魔物たちは、全てが戦線に加わっているのではなかった。あるいは方々を飛び回り、そしてあるいは彷徨うように辺りをうろついているのである。


 一方その頃、上空から偵察を行っていたシフールたちもまた、魔物たちの見せる行動を不審に思っていた。
 これと言って命令が下っているようにも見えないが――どうやら何かを、探し回っているようである。そのうちにこちらの戦闘部隊と行き会い、そのまま惰性で戦闘になだれ込むのである。上空から見ていると、初めのうちは優勢に見えた魔物の群れだったが、ウイングドラグーンの攻撃を受け、それに伴い統率の取れた冒険者たちの戦いぶりに、次第に追い詰められていくようだった。
 ふと視線を転じると、どうやら目指す地は近いようだ。
 それには、地上の隠密部隊も気がついているようだ。急ぎ連絡を取り合い、追い詰めるように迫ってゆく。


 彼らはその暫く後、かつて見たこともない光景を目の当たりにすることを、まだ知らない――。

(担当:小椋杏)


●アトランティス・メイの国 〜疑念〜
 一体に何が起こったというのだ――?
 突如現れたカオスの魔物の軍勢に、動く死体達。
 カオスの魔物や動く死体は近年アトランティスでも出現するようになり、様々な事件を起こしていたが、それがここまで群れを成して出現する事はなかった。何か起こっているのは明らかである。それが何であるかは分からないが――。
「数が多いですね」
 バーニングマップを使用したアリウス・ステライウス(eb7857)だったが、敵はまさに大群。その知識を駆使して数体のカオスの魔物の名を上げて前線に向かう仲間達に伝達する。念の為にレジストデビルをを己にかけ、飛ぶモニカ・ベイリー(ea6917)も、慧斗萌(eb0139)と共に目に映ったカオスの魔物の種類と特徴を伝えるべく前線へととんだ。
「見るに、低級のカオスの魔物がやはり多く感じるが。何か様子がおかしくはないか?」
 愛馬に跨り魔物の軍勢を見やるマフマッド・ラール・ラール(eb8005)に問われ、朝海咲夜(eb9803)は問いを返す。
「ジ・アースでも悪魔の軍が動き出したらしい。今アトランティスに現れているのは本当にカオスの魔物なのか?」
「それはどういう意味かのぅ?」
 住民の避難を誘導していたメイの鎧騎士トンプソン・コンテンダー(ec4986)が問い返す。アトランディスの人々にとってはカオスの魔物はカオスの魔物。デビルという似て非なる存在を知る者の方が少なく、逆にジ・アースの者はカオスの魔物のことを良く知らない。故にその相違点を述べるのは難しくもあった。
『敵の動きがおかしいです』
 テレスコープで敵の集団を偵察していた土御門焔(ec4427)が、上空をグライダーで飛んでいるエリオス・クレイド(eb7875)にテレパシーで話しかける。
『ああ、まるで何かを探しているような‥‥だろう?』
 二人の言う通り、カオスの魔物の集団はただ人々に戦いを挑んでいるわけではなく、何かを探しているように見えた。
「自分達は偵察部隊。あまり前に出すぎるな!」
 ルゥナ・アギト(eb2613)は偵察中の仲間を護るように位置どる。
「地獄に出現した転移門はどこかしら? 敵はどこを目指しているの?」
 愛馬を駆って魔物達の動きを探るメリーアン・ゴールドルヴィ(eb2582)の呟きを、アクティオン・ニアス(ec0777)が拾った。
「月道に関係なく出現しているのか? いや、これは‥‥」
 彼が感じたのは以前どこかで感じたような感覚。それは、巨大な壁の時の――。

「バの国に動きはないか」
 よもやこの機会に乗じて敵国がどっと攻めてきたりはしないかとシュバルツ・バルト(eb4155)は警戒していたが、幸か不幸か今のところその気配はない。
「カオスの魔物達の目的は何なんだ?」
 布津香哉(eb8378)は図書館の本のページを繰る手を止めずに次々と目を走らせていく。同じく文献を繰り、情報を纏めていたシファ・ジェンマ(ec4322)が顔を上げた。
「これを」
 香哉が覗き込むと、そこにはカオスの魔物の目的らしきものが書かれていた。

 曰く――世界が戦争や災害のような不幸に満ちることで高まるカオスの力が、邪悪なる地獄の汚染を強くしていくという――。

 今メイディアを襲っているのはカオスの魔物なのか?
 それとも地獄の門から侵攻してきたデビルという存在なのか?
 はっきりと結論付ける事はいまだできない状況だ。

(担当:天音)


●イギリス王国:ケンブリッジ 〜進むべき道〜
「偵察部隊を作って行動するしふ〜☆ そして、色々な情報を手に入れてみんなに伝えるしふ〜☆」
 テルミナ・ヤヴァ(ea7351)アメジスト・ヤヴァ(eb5366)とルー・リ(ea7989)、三人のシフールが上空をふわふわと浮かんで、ケンブリッジの街から偵察に出る。これでも当人たちは極めて真面目なつもりだ。
「あたいも偵察するです〜」
 同じくシフールのレミィ・ヴァランタイン(ea1632)とカナード・ラズ(ec5148)がそれに続く。ライア・マリンミスト(eb9592)とディロ・カラベルン(ec5020)、ミント・キャラウェイ(ea8753)は飛べないので、物陰に身を隠しながら彼らに付いていく。
 彼らが辿っているのはアビゴール部隊の足取り、つまりは、奴らが「どこから来たのか」ということ。
「見えてきたしふ〜☆」
 シフール偵察部隊が一斉に言う。
 彼らの目の前には、整然と固まった黒い影。地獄の騎士に率いられたデビルどもの軍勢が、規律正しくケンブリッジの方角へ向かっている。その進路は、ピンと張った糸のようにまっすぐで一筋の乱れもない。
「敵の出てくる場所はどこだろう? きっとあっちにばっかり都合がいいわけじゃないよね。行きたい場所に出口があるとは限らないと思うんだ。‥‥うーん、ずっと進路が直線だったとすると、普段の月道とは違うところからきているようだね」
 物陰から軍勢を見つめながら、ライアが首をひねる。
「率いているのはあのアビゴールという悪魔。それは間違いないね。でも、おそらくはあれも、もっと上位のデビルから指示されているんだろう」
 そう言ったのはディロ。
「敵の数は‥‥ここで確認できるだけでも一〇〇近く、か。ほとんど下級デビルとアンデッドみたいだ。細かい種類まではわからないけど」
 カナードが言う。
「何を元に動いているのか、わかればいいんですが‥‥部隊は完全に指揮をしている者に従っているようですね。では、指揮官の意図は何なのでしょう?」
 ミントが首をかしげる。

 一方、ケンブリッジの図書館では、デメトリオス・パライオロゴス(eb3450)、シャノン・カスール(eb7700)、フォン・メイファン(ec1135)の三人が、文献とにらめっこをしていた。
「いわゆる黙示録の描写に、今の状況が合致しそうだね」
 聖書関係の書物を片っ端から当たっていたデメトリオスが呟く。
「世界の地下深く、地獄(インフェルノ)に潜んでいた者たちが地上へと侵攻してきている」
「やつらの目的も確認したいな。最終目的は人間界の征服だとしても、今はいったいどういう段階なのか」
 シャノンが言う。
「いや‥‥黙示録で言えば、最終目的は、神との戦い、か?」
「地獄にいた者がこちら側へ来ているということは、地獄と、地上世界とをつなぐ次元の門が世界の各地にできた、ということが考えられますよね。‥‥向こうからこちらに来られる、ってことはもしかして、こちらから向こうへ行くことも可能なのでしょうか?」
 フォンが、自分で話しながらもその考えに戦慄する。
「向こう‥‥地獄へ、か」

 その頃ジェファーソン・マクレイン(ea3709)は、一人でケンブリッジ内を奔走していた。来るべき戦いに備えるため、ケンブリッジに住む人々に対する応援の呼びかけをしていたのである。呼びかけに対する反応は決してよくはなかったが、誰もが漠然とした危機感を覚え始めていたことは間違いない。

(担当:saggita)


●ジャパン・京都 〜世界と精霊〜
 歴史を誇るは国の都、されど裏に百鬼夜行が繰り広げられる。
 しかしほんの二年ほど前、突如都を襲った妖、黄泉人の時より、百鬼夜行は表に現れるものとなった。
 そして今また、新たなる百鬼が迫りつつあった。
「仏敵の次は悪魔とは‥‥まさに末法の世よな!」
 飛柳丞雲(eb0910)は吐き捨てるように叫ぶと、抗する手段を持たぬ悪魔ではなく、それを取り巻く不死者に向けて、詠唱、黒き力の塊を撃ち放った。
 その魔力に傷を受けた悪魔の隙を見計らってマフリ(ec4944)が走ると、心得無き者では近づくこともできぬ近い間合いで、悪魔の動きを牽制。そのすぐ後ろから、山王牙(ea1774)が強い気の力をまとわせた刀を振り払うと、魔力の手品の種が切れたのか、隙を突かれたデビルは特異なる力を発揮しているものとは別、常と同じく霞むようにその死体を消し去る。
「直接傷つけることができなくても‥‥やりようはあるってね!」
「時間を稼ぎつつ、戦えば何とかなりそうです。‥‥このまま、彼奴らと、イザナミを呼応はさせませんよ」
 デビルたちの真の意図はわからない。しかしこれだけの不死者を従え、そして何かを探している様子だという情報が飛び交っている現状、いくら小さくとも、人の世を滅ぼす可能性はできうる限り小さくしなければならない。
「貴様ら悪鬼羅刹に、誰がこの大地を踏んでいいと許したか? 剣無き者は、剣を取るがいい!」
 無頼厳豪刃(eb0861)がそう目を細めて言い放つと、自らの魔力で水晶の剣を作り上げる。
 地の精霊魔法・クリスタルソードで作られた魔剣は、時間は短いながらも、通常の魔剣よりも高い魔力を発揮する。その力は下級のデビルたちの特異なる守りを破ることができているようだった。
 それを見、そして聞いた高次の術を操る陰陽師や志士といった面々も、高位の力で魔法を使い、そして支援を開始する。

「はーい、炊き出しだよっ。みんながんばってー」
「これはすまないネ」
 都そのものへの大規模な進入はなく、街の外へは敵を押し返しているものの、町の闇、人の心の闇にまぎれることが得意とされる悪魔への警戒を緩めるには、いささか油断が過ぎる。
 そんな中、ジーザス会に従って警護を行う張真(eb5246)は、『医療局』と名乗る有志の者たちに従い各寺社仏閣を回って炊き出しを行っている陽小娘(eb2975)に軽く礼をし、その食事を受け取った。
「はい、こちらもどうぞ」
「ありがとう」
 陰陽寮に蔵されている文献と、他の寺社、あるいは御所の図書寮にある文献をつき合わせるため、そこを通りがかったエレオノール・ブラキリア(ea0221)は、陽の勧める稲荷寿司を受け取ると、にこやかに微笑みを返す。
「そちらの状況はいかがでしょうか?」
「なかなかですね‥‥勉強不足が祟ったかも」
 彼女とは別の方、各地のデビルの伝承を調査をしているフィディアス・カンダクジノス(ec0135)の尋ねに、エレオノールは苦笑を浮かべると、手元の絵図面に視線を落としつつ応える。
 陰陽寮にあった資料は、まだ彼女にとってはやや専門的に過ぎたようだ。
「相手が月道‥‥次元転移の門を使っているということは、地脈や霊脈を調べれば、何かわかると思ったんですけど」
「こちらも、なかなかに資料探しに骨が折れます。デビルに関する話ですと‥‥この地では黄泉と地獄が別個に存在しているようですね」
「‥‥同じものではないのカネ?」
「違うものみたい‥‥この国では」
 ジーザス教の伝えるところを思い出し懸念をつぶやく張に、エレオノールは頭を振り、今までの経験と調べた結果をつぶやいた。
「神だけではなく、悪魔や精霊が雑多に、複雑に組み合わさっている。もしかして、今各地で強力な精霊や悪魔‥‥伝説の神がその姿を現しているのも、何か意味があるのかも」
「あの謎の壁のときにも、精霊の力が動いていたという噂を聞いています。今回も、彼らの助けが得られれば‥‥」
「確かに。人同士での争いをしている場合ではないのかもシレナイネ」
 フィディアスの言葉に張は同意の意を見せると、さらに警護を深めるべく謝してその場を去る。
「どうかこの戦いが無事に、終われますように‥‥」
 それに続いて調査に向かう二人を見送り、また一踏ん張りと思ったその前。
 ふと気づいた陽は、道端にある小さな稲荷社に油揚げ料理を備え、静かにお参りした。

(担当:高石英務)


●アトランティス・メイの国 〜共闘の道、つながる〜
 オーラパワーとオーラエリベイションを自身に施した風烈(ea1587)がコンバットオプションを駆使して目の前のカオスの魔物に攻撃を仕掛ける。厄介な能力を使われる前に倒してしまうのが吉だ。
 彼の隣でスマッシュを使い動く死体達を沈めているのはルイス・マリスカル(ea3063)。カオスの魔物に襲撃を仕掛ける者達の露払いを勤めていた。
 戦場の緊迫感で狂化したラフィリンス・ヴィアド(ea9026)はただただ敵に突っ込み、そして魔物を打ち払っていく。ミルフィー・アクエリ(ea6089)は槍を振るい、同じく敵の真ん中へ突っ込んでいた。
「ゲイボルグに貫けぬものはないのです、悪魔さん、覚悟ですよ!」
 シュンッ‥‥
 威力の高いコンバットオプションを利用して魔物を屠っていたウォルター・スティーヴンス(ec0506)の横を矢が駆け抜けた。ロリンティア・ローリス(eb7874)の矢に貫かれた魔物は、バランスを崩す。
「ボクの一撃一撃が、勝利の舞なんだっ!」
 その魔物に舞うような一撃を与えるのはレムリナ・レン(ec3080)。彼女の剣に斬られた魔物は姿を消した。
「他にオーラパーワーを付与して欲しい方はいませんか!?」
 風姫ありす(eb7869)は恐れずに前線の仲間達にオーラパワーを付与して回る。その援護を受けたルエラ・ファールヴァルト(eb4199)はペガサスを駆り、上空にいる敵に攻撃を仕掛けていく。
「このクリスタルソード、使ってください!」
 アリス・メイ(ec5840)からクリスタルの剣を受け取った冒険者は、礼を言って前線へとかけていった。
 まだまだ戦いは終わりそうにない。

「まったく‥‥面倒な事になったな」
 そう呟きつつも、アン・ケヒト(eb2449)は次々と運ばれてくる怪我人にリカバーを施してゆく。レフェツィア・セヴェナ(ea0356)やアルフレッド・ラグナーソン(eb3526)、ファル・ディア(ea7935)もその対応に追われていた。
 一方、回復魔法の手が回らない、もしくは軽傷の者達には応急手当が施されていく。美芳野ひなた(ea1856)や、地球の医学の心得のある黒崎龍哉(eb4400)や月下部有里(eb4494)らがその知識と腕をいかんなく発揮していた。地球と同じ器具はなくとも、できる限りの事をする。それが医療に従事する者の心。
「危ない!」
 ペガサスに騎乗し上空から敵を警戒していた雀尾煉淡(ec0844)が救護所を狙う敵影に気がつき、高速詠唱でホーリーフィールドを張る。すかさず忌野貞子(eb3114)がアイスブリザードで飛来する敵を牽制した。同じく救護所を護る夢野まどか(ec5194)やマリアール・ホリィ(ec5844)の力もあって、救護所は護られていた。

 メイディアではゴーレムの出動が許可されていた。さすがに機数の少ないドラグーンを回すわけにはいかなかったが、グライダーやモナルコスだけでなくアルメリアの出撃も許可された。
「軽く整備をするから、整備の済んだ機体から順に出撃して! 整備不足で怪我をしたくはないでしょ?」
 ゴーレムニストの門見雨霧(eb4637)の言葉に、気がはやる冒険者達も頷かざるを得ない。整備を断ったために戦場で実力を十分に発揮できなかったとなるのはさすがに困る。
『よし、行くぞ』
 いち早くモナルコスに搭乗した伊藤登志樹(eb4077)が飛び出していく。その後を追うようにして難波幸助(eb4565)、グレナム・ファルゲン(eb4322)が続いた。
『ゴーレム自体に魔法がかかっているので、魔物にも攻撃が効くはずです!』
 ベアトリーセ・メーベルト(ec1201)がフェイントアタックを交えながら拳や蹴りで下級のカオスの魔物を蹴散らしていく。
 ゴーレム部隊の活躍もあって、戦線は魔物達が出現した付近まで近づいていた。だが、その付近――恐らく地獄の入り口と呼ばれる場所に近づくにつれて、彼らはおかしなことに気が付いた。
『今まで効いていたゴーレムのパンチが効いていないみたいだよ!?』
 フィオレンティナ・ロンロン(eb8475)が叫ぶ。
 そう、今まで効いていたはずの攻撃が効きにくくなっているのだ。良く見ると、下級の魔物の身体を黒いもやが取り巻いている。
 上空ではグライダーに騎乗したシルビア・オルテーンシア(eb8174)が魔法の弓で攻撃をしている。それは下級のカオスの魔物には今まで通りダメージを与えていた。
『誰か、ゴーレムの武器にオーラパワーをかけてみてください!』
 ベアトリーセの呼びかけに応じた烈が、取り急ぎモナルコスの武器にオーラパワーを施術する。するとその武器での攻撃は、下級の魔物には効果を表した。
「魔物の防御力が上がっているという事でしょうか?」
 グライダーの高度を下げて来たシルビアが、戦闘音にかき消されないように叫ぶ。
「恐らく」
 そう、今は推測でしかないが、魔物の出現した地獄の入り口付近に近づいた事で、何かが変わったに違いない。
『うん?』
 ふと、登志樹が周りを見渡すと、見た事のない冒険者達が増えていた。メイから共に出撃した者達ではない。様々な格好をした様々な人々。
「まさか‥‥ジ・アースから?」
 ルイスがぽつり、呟いた。
 そう、月道を通らなければ行き来できないジ・アースの人々が、今同じ場所にいる。
 という事は、今後は彼らと共闘できるという事だ。

(担当:天音)


●ノルマン王国・ドレスタット 〜戦いの地へ〜
 ドレスタット郊外。
 溢れ出たデビルとアンデッドの群れが、陸地と海の境界、海岸線を埋め尽くすようだった。
「船団からの報告が来たわよ」
 その光景を遠目に見遣る位置で、龍陽友(ec1235)がシャーリア・オレアリス(eb4801)に各所からの報告を告げる。月道めいた穴から出てくるのは目撃証言があるが、正確な位置と数は判明していない。デビル達の進軍具合から、それらの位置を割り出しているところだ。
 偵察にも多くの者が志願していたが、
「なんてことだ! 早く皆に知らせなくては」
「声出したら見付かるよ」
 ユノーナ・ジョケル(eb1107)やメル・ティア(ec5482)など、ただの戦であれば上空からの偵察で役立てるシフール達は、多くが飛ぶ術を持っているデビルの群れ相手ではかえって危険が増す。よほど偵察に適した技能がない限りは、早いうちに後方に戻っていた。
 反面、地上にはアンデッドが多い場所もあり、その流れを逆に辿っていったキルゼフル(eb5778)や夕弦蒼(eb0340)などの報告で、徐々に位置が絞り込めてくる。僅かの異変も報告され、また整理された情報として各所に巡っていった。

 そうした情報を受ける中には、ドレスタット領主のゼーラント辺境伯エイリークも含まれており、マクダレン・アンヴァリッド(eb2355)の提案も入れて、人を各所に配置している。しかしリュリス・アルフェイン(ea5640)の精霊の島イグドラシルへの共闘申し入れは、そこに向かわせる船団のやりくりがすぐにはつかないことで保留とされた。目の前のデビル達をどうにかしないことには、話を持っていくには遠い場所だ。
「向こうから来てくれるってことは、ないか」
「あそこの精霊が出てきたら、世も末だろうよ。四の五の言う前に、ちょっとそこらのごみを払ってくれ」
 手が足りないところがあると地図で指された中には救護所の警戒もあって、容易ならざる事態を示している。

 海岸線での攻防は、海中を苦もなく移動してくるアンデッドの存在で前線が広がってしまっていた。迎え撃つ側は水中で戦うとは行かず、海岸で迎え撃つ形が多い。
 猫小雪(eb8896)がオーラパワーを付与した拳で、比較的装備が厚い敵を引き受ける。鳳爛火(eb9201)は埴輪に背後を守らせて、倒れたアンデッドを攻撃不能に追い込む。そうやって拓かれた道を、レジストデビルの魔法付与を受けたイクス・グランデール(ec5006)や篁光夜(eb9547)、セリア・バートウィッスル(ec0887)達が、波打ち際まで進んで新たに上がってこようとするアンデッドの群れを薙ぎ倒す。同様に前線に出て、リューフェル・アドリア(eb8828)が武装の薄さで負傷したが、ただそれだけでは本人含めて誰も後退しない。
 いよいよとなると、戦線各所を精力的に回っている桐谷たつ(eb0298)や純哉くう(eb5248)らが、後方に設置された救護所まで抱え、運んでいく。それを護るのは鳳麗春(ec5846)や夜闇握真(ea3191)だが、後者は異様にアンデッド達に追い立てられることが多く、半ば囮として周囲に活用されていた。
「物なんかに呪われてたまるかー」
 簡易設置された救護所そのものはレシーア・アルティアス(eb9782)や日御碕空(ec5488)達が、敵には触れさせぬどころか近寄らせぬ勢いで警護していた。
「‥‥雑魚は任せろ」
 身動きがままならないほど群れた敵を、アルナ・ガルシアーノ(ec3909)が打ち払う。時間と共に前線の位置にも変化が見られ、徐々に狭い範囲に人もデビルもアンデッドも集っていく。
「波打ち際、『穴』が見えたよ!」
 リリアナ・シャーウッド(eb5520 )達の遠物見や何度となく飛び出して行く偵察担当達が、デビル達が護るようにしている『穴』をようやく見い出した。そちらに目を向けた複数が、姿を隠したデビルが多くの連中とは違う流れで、偵察か、それとも別の何かを探すのか、不規則な動きをしていることを知らせる。
 そうした見えない敵は、動きを感知している人々の指示で、多くは魔法使い達の攻撃に晒されることになった。これは逆に魔法使い達が狙われることにも繋がるが、そこはテオフィロス・パライオロゴス(ec0196)などが、一指たりとも触れさせぬ覚悟で控えている。
 前線となった波打ち際では、ジャッカル・ヘルブランド(ec3910)が押し寄せてくるデビルの群れを薙ぎ切り、それでもまだ蠢く輩は瀬名騎竜(eb5857)が引っ掴んで投げ飛ばす。それだけで塵とはならないが、態勢が崩れたところを次々と攻撃がえぐり、出来た塵はあっという間に波にさらわれていく。
 前線は海戦騎士団と冒険者、ドレスタット近郊の騎士団、神聖騎士達が入り混じり、場所場所で小さな集団を作ってデビル達と相対している。ローラン・グリム(ea0602)は戦線の維持に声を張り上げ、ドルニウス・クラットス(ea3736)は剣を振り抜く。
 ツルギ・アウローラ(ea8342)が弾き飛ばしたデビルの下を掻い潜り、『穴』から今まさに出てきたアンデッドの爪を盾で受け、ソニックブームを返したレオ・エルバード(ec4770)とハスラム・エルバード(ec1623)とは、そのアンデッドの背後にありえないものを見た。

 干潮に近い海岸線の波打ち際で、不自然に開いた『穴』の向こう側には荒涼たる大地が広がっていた。
 その光景を目撃した者は多く、遠方に建物を見た、川、山があった、敵とは思えない人々がやはりデビルと戦っていたなどと証言する者も複数いたが、満ち潮と共にその光景は見えなくなり、デビル達の猛攻も一段落したのである。
 後刻の偵察で『穴』が沖合いに移動したことも確認されたが、それ以外に開いていただろう地点では『穴』の存在は見付からず、残った一つへの警戒が続いている。

(担当:龍河流)