5月7日はカルディア王国建国記念日である。
この日は祝日となり、王宮から記念品が下賜される。
また、各要人を集めた式典が行われたり、パレードも行われる。
王宮の一部が開放され、無料で飲み物や料理が振舞われるといった様相だ。
国王リーカス・アスラ・ジュレイガーはいつものごとく式典に顔を出すことはないが、
代わりにエリューシア姫が王の名代となり、各式典などに顔を出し、催しに参加する。
例年四月の下旬から準備が始まり、約一ヶ月の間国はお祝いムードに包まれるが、
やはり盛り上がりが最高潮に達するのは記念日当日周辺だ。
逆に、その辺りがもっとも不埒な輩が出没しやすくなるともいえる。お祭り騒ぎに乗じようとする者はどこにでもいるものだ。
「各国への招待状と記念品の用意はどこまですすんでいて?」
「はい。それはこちらの書類に」
王女エリューシア・リラ・ジュレイガーは多忙を極めていた。なにせ一連の催しの最高責任者を務めているのである。だがこれももう毎年のことなので慣れているといえば慣れている。
国民全員を信じたいが、何がしか騒ぎに乗じてよからぬ事をたくらむ者もいるのでそちら方面でも油断は出来ない。まあ警備に当たる兵士やブリーダー達のおかげで大体毎年、大事にはならずに済んでいるのだが。
「‥‥姫様、少し気になることが?」
「何ですか?」
書類を抱えたまま戸惑いを見せる事務官に、エリューシアは書類から目を上げて首を傾げる。
「いえ、でも‥‥式典には関係ないかもしれませんし‥‥」
「そこまで言ったのなら最後までおっしゃい」
「あの‥‥」
はっきりしない事務官に若干の苛立ちを覚えた姫だったが、次に続けられた言葉を聞いてすっと目を細めた。
「クヴァール島対岸とシュネイテーシス対岸での暴走エレメントとモンスターの出現報告が増えているような気がするんです」
「どういうことです?」
目を細めた姫に、事務官は一枚の書類を差し出して。
「――敵を全て倒した後、ふと海の方へ目を向けると、小船に乗った青緑色の髪をした女性が、微笑んでいるように見えた。もしかしたら見間違いかもしれないが、追記しておく――」
「青緑色の‥‥」
その記憶は薄れてはいない。
先のアレハンドロ−シュネイテーシス戦で首魁として現れた女性がそのような容貌ではなかったか。
「クレイを‥‥眠らせた?」
ほぼ無意識に、姫はその言葉を発していた。そして一瞬の後我に返って。
「引き続き警戒を続けてください。もしかしたら――大規模な侵攻があるかもしれません」
「はっ、はいっ!」
「けれども式典の準備を遅らせるわけにもいきません。そちらも引き続き続けます」
ばたばたと部屋を出て行く事務官の足音を聞きながら、姫は思考の海に落ちていく。
「(一体何を――わざと人出のあるこの時期を狙って――?)」
敵の真意は、杳として知れない。
■解説
◇連動シナリオ一覧
情報1(建国記念式典について)
情報2(青緑色の髪の女とは)
情報3(先の戦いにより発見されたモンスターについて)
情報4(特別賞とは)
■NPCより
式典のお手伝いをしていただいた方の中から 特に印象に残った方をたたえる「特別賞」が発表されたようですね。 皆様、ご協力ありがとうございます。 |
|