■建国記念式典について■



 カルディア歴は1009年前、初代カルディア王が現在の首都エカリス周辺の勢力を制圧し、建国した時から始まるということは周知の事実ではあるが、そのカルディア王家に残る文献は意外にも古く、約3000年前にまで遡る。
 カルディア歴紀元前2000年前後『神がその身体の一部を切り落とし、広大な陸地とした』というカルディア王家に残る最古の文献が示した記述をカルディア大陸及びカルディア王家の起原として定めたものである。

 (少なくとも今我々が目にすることはできない、実体化した神という存在がいることをふまえたうえで、文献の示すことを丸呑みすればであるが)カルディア王家の源流は大陸が発生してから凡そ20〜30日後、神託を受けて登場した最初の生命体が生まれた時から始まっており、それから2000年の時を経て、カルディアは成立したと定められている。

 そして時を経て、カルディアにも文化というものが生まれて来た時、
 最初の人間が生まれた時と定められた、5月7日をカルディア王国建国記念日として定めるに到った。

 この日は祝日となり、王宮から建国を記念した記念品が下賜される。
 また、各要人を集めた式典が行われたり、パレードも行われる。
 王宮の一部が開放され、無料で飲み物や料理が振舞われるといった様相だ。

 国王リーカス・アスラ・ジュレイガーはいつものごとく式典に顔を出すことはないが、
代わりにエリューシア姫が王の名代となり、各式典などに顔を出し、催しに参加する。
 例年四月の下旬から準備が始まり、約一ヶ月の間国はお祝いムードに包まれるが、
 やはり盛り上がりが最高潮に達するのは記念日当日周辺だ。

 だが、その辺りがもっとも不埒な輩が出没しやすくなるともいえる。
 カルディアがその発展と共に拡大するにつれ、お祭り騒ぎに乗じよう、あるいはこの騒ぎ自体を利用しようとする者の存在はもはや無視できないレベルまでふえてきている。

 そしてカルディア歴1009年、本年も期待とわずかばかりの不安の中、
 カルディア王国建国記念日は訪れようとしていた‥‥




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