李雷龍ea2756


クルディア・アジ・ダカーハ
eb2001)

ライカ・カザミea1168

アーサー・リーコック
eb3054


夜十字信人(ea3094

 その時、円卓の騎士アグラヴェイン卿は戦場の喧騒の中にいた!
  アグラヴェイン卿率いる集団は、比較的大きく散開しながら敵アンデット部隊を根切りにしながら進んでいる。
  砂埃が舞い上がり、あたりを茶色に染めている。
「大丈夫ですか? 血がでていますよ! 手当ては必要ですか?」
  最前衛、李雷龍(ea2756)が敵との僅かな間合いの隙に隣の血まみれの女ファイターに声をかける。
「うん? あたいの事かい? 平気平気、自分の血じゃないし」
 クリムゾン・コスタクルス(ea3075)の一撃が目前の敵の頭を粉砕する! 腐った血液が噴水のように吹き上がる。
「じゃ!」
 クリムゾンは、手薄そうな場所を見つけると風のように走り去った。
「敵の大将はどこだ!」
 クルディア・アジ・ダカーハ(eb2001)は、目前の敵には半分ほどしか注意を払っていなかった。
 彼にとってそれで十分な敵であったが、もっと強い敵を求めてダカーハの注意は戦場のさらに向こうへと向けられていた。
 
 血とアンデットの腐臭が入り混じった戦場‥‥ アグラヴェイン卿は腕を組み、にやにやと機嫌良さそうにあたりを見回している。
「アグラヴェイン卿!」
 声がする方向には山崎団右衛門(eb1562)がいつの間にか控えている。
「どうした? 敵の本隊はみつかったか?」
 アグラヴェインの問いに団右衛門は、何事か耳打ちする。
「敵の本隊が接近してくるだと! ・・・・ハハッ面白い。最後の破れかぶれというわけか!」
 見ると、直接は見えないものの北東の方角には砂埃が立ち上り、大部隊の接近を示している。
「愚か者には永遠の消滅をお見舞いするしかないな。 強襲するぞ!」
 分散していた部隊が呼び集められる。一丸となって敵の中央を突こうと言う作戦である。
「前進だ! ついて来れない奴は置いていけ!」


<救護所>

「そんな! そんなの無理よー! いきなり移動なんて!」
 ここは戦場後方にある臨時の救護所である。
 ライカ・カザミ(ea1168)は持てるだけの医療品を持ち込んで、手当てに没頭していた。
 手馴れた治療系冒険者達が、段取り良く怪我人を手当てしたため、医薬品の充実もあって、今のところうまく機能している。
「ここは危険になっちゃうんです! 本隊がいきなり前進し始めてしまって、ここは孤立してしまいます!」
 ユーニ・ユーニ(eb2473)は前線での怪我人の発見と救護の活動をしていたため、いつの間にか救護所直属の情報屋のようにな役割になっていた。その彼女が最前線の異変に気づいて、報告にきたのだ。
 事態を察してか、先ほどまで騒がしかった救護所のなかは静まり返っている。
 歩けない重傷者が治療班のメンバーの顔を不安な目で見つめる‥‥。
「ここに残りましょう。 私はここに残ります! みんな心配しないでください! セーラ様、どうか皆をお守りください!」
 アーサー・リーコック(eb3054)が立ち上がり、笑みを作ると全員を安心させる。
 治療班は、重傷者とここに残ることに決め、改めて治療の準備を始める。

  ・・・・数分後、その治療所に薄汚れた鎧を身に纏った、一人の騎士が訪れた。


<前線>

「アグラヴェインさん! 敵は3集団にわかれていて、それぞれわが軍と同じくらいの数!我が輩、上から見てて思うのだけど、このまま突っ込むと囲まれそうなんだよね」
 強行軍を続けるアグラヴェイン本隊。
 宿参対向刈(eb0948)は、アグラヴェインの上空にいて、常に情報を報告していた。
 
 アグラヴェイン敵が中央の一隊と衝突し、冒険者の部隊は巨大な楔のように敵の集団に突き刺さっていく。
 だが、中央の集団が分断されそうに見えたその時、まるでその瞬間を待っていたかのように左右に展開していた残りの集団がアグラヴェイン軍の側面に殺到する。
 短時間のうちに両軍入り乱れる乱戦となるが、アグラヴェイン軍は数に勝りながらアンデッド相手に互角以上の戦いを展開できない。
「っちぃ! なにをしている! アンデッド如き踏みつぶせぇ!」
「喋ると凄みが減るぜ、アグラヴェイン卿。ここは黙って叩き潰すに限るぜぇ!」
 アンデッドを脳天から真っ二つに切り裂きながら、絶叫する夜十字信人(ea3094)。いかに包囲された状況になろうとも、もとより冒険者は乱戦に慣れた存在。今更二、三体のアンデッドに囲まれようとも、動揺する輩はそれほどいない。
 乱戦は意地と実力が展開する中で尚も続き、戦局は奇妙なこう着状態を迎えたかに見えた。
 

 
ジョーイ・ジョルディーノ
ea2856)


シルヴィア・クロスロード
eb3671


ギリアム・バルセイド
ea3245


リト・フェリーユ(ea3441


セレナ・ザーン(ea9951


橘木香(eb3173


ゴールド・ストーム
ea3785


尾花満(ea5322


レジエル・グラープソン
ea2731


双海涼(ea0850

<城内>

 城内を守る兵士は冒険者12名を含む40名。
 対する城内にいると思われる敵モンスターの数は凡そ50〜80。

  歴戦の冒険者であれば、厳しいものの決して互角以上に戦えなくはない数字であると言える。
ただひとつの懸念材料・・・・数多いる怪我人の存在を除いては。

「ジョーィ!!」
  悲鳴のように轟くリ・ル(ea3888)の声。獰猛な犬獣は、高々と跳躍すると、天井を蹴り飛ばすように・・・・『美味そうな』匂いがする負傷者へと牙を剥く!
「やれやれだ。超過勤務手当ては出そうにないところが厳しいところだねぇっ!」
  視界を塞ぐ鮮血を拭うこともできずに、ナイフを投擲するジョーイ・ジョルディーノ(ea2856)。犬は甲高い悲鳴と共に転がり落ちるが、間髪居れず目の前に現れたオーガに、武器を持たないジョーイの表情が明るくなることはない。

「守りながらの戦い・・・・聞こえはいいが、投げなくてもいいナイフを投げ、受けなくてもいい敵の攻撃を受けてしまう。回避することすら許されない・・・・動ける者と我らだけで逃げればよかったのに・・・・愚かなものだ」
 冒険者に守られながら、ブツブツと呪文のように何かを唱える貴族の一人。ここ数日の篭城戦ですっかり心を蝕まれてしまったのか、その瞳に生者としての光は既にない。
「デビルはいない! 戦えば必ず勝てる相手だ。みんな・・・・!」
 苦戦を続ける戦士たちを励まそうと、声をあげるクレー・ブラト(ea6282)。・・・・だが、そんな彼らをあざ笑うかのように轟音と共に壁は崩れる。
「ミノタウロスの登場か? ・・・・やれやれ、ここは迷宮(ラビリンス)じゃないんだから、アンデッド以外のご来訪はお断りしているんだが」
 壁の向こうから現れた、荒々しい鼻息をふきだす斧を携えた二頭の巨大な牛モンスターを視界に、フリッツ・シーカー(eb1116)は誰へともなく文句を吐き出さずにはいられなかった。


<空>

「まだか!? いそがねぇとみんなやばいぞ!」
「わかっています! ですが・・・・・・・・」
 地上で蠢いているアンデッドの群を通り過ぎ、上空からの侵入を試みるシルヴィア・クロスロード(eb3671)と、ギリアム・バルセイド(ea3245)。空を飛ぶモンスターの存在はないと思っていたが、ゴーストや下からの弓撃など、脅威は意外にある。

 さらに、お世辞にも卓越しているとはいいがたいシルヴィアの騎乗技術は、ただでさえ戦場という不安定な状況で、グリフォンの挙動を乱すには十分な者であった。
『UUUUUU!!!』
「しまっ・・・・!」
 腹部に矢が刺さり、大きく暴れるグリフォン。傾いた身体にギリアムはしがみつくことはできず、モンスター蠢く地面へと落下していく。
『オオオオオオ』
 まるで『悪魔賛歌』のように、獲物の落下に喜ぶ眼下のアンデッド。
「ッチィ! 馬鹿にするな! 俺みたいなのは筋張ってて・・・・うまくはねぇんだよ!!」
 命の危険に猛然と叫び、腕を伸ばすギリアム。伸ばされた腕は、城門に掲げられていたイギリス王国旗を掴み、彼の身体に推力をつけることを許す!
「ガアァァアアアア!!」
 あらんばかりの力を全身に込め、彼は両手両足をバタバタとさせながら、城めがけて・・・・空中を飛んでいった。


<地上>

 戦場には風が吹き荒れていた。
 自然のものとは言い難い、風・・・・それは時に吹雪を含んでいたり、イカヅチを含んでいたり、断つことも困難であるほどの暴風であったり・・・・。
 ひとつの点に集められた魔法という名の範囲攻撃は、あっという間に一面のモンスターをなぎ払う。
 
「道はできました! がんばってきてください!」
「わかりました。・・・・突撃します! ラーンス卿、ついてきてください!」
 セレナ・ザーン(ea9951)は魔法隊を指揮していたリト・フェリーユ(ea3441)に軽く手を挙げて感謝の意を示すと、ラーンスに先んじて城門へと走っていく。
「すぐさま進路を塞ごうとしているところをみると、やはり指揮官の類が?」
「さぁな、だがどっちにしろ、王妃様や城の奴らを死なせるわけにはいかないんだ!」
 すぐさま彼女たちの進路を塞ごうとするアンデッドを豪腕でなぎ払うセレナとアラン・ハリファックス(ea4295)。スケルトンは悲鳴もなくバラバラと崩れ、その向こう側からさらに数匹のスケルトンが現れる。
「っちぃ! お前たちの顔はもう見飽きたんだ・・・・ッよ!」
 刃をなぎ払い、砂埃を巻き起こしながらスケルトンを弾き飛ばすアラン。地面に転がる骨を踏みしめ身体の軸がゆらぐが、それでも尚骨は踏み砕き、片膝をつきながら敵を弾き飛ばす!
 だが、そこから先が続かない。既に刃をふるい、あまつえ片膝までついてしまったアランに敵の刃を回避する力は残されていない。突き出された一本の槍は彼の左腕に刺さり、ついで振り上げられた刃は彼の顔面目掛けて振り落とされる!
「失礼しますよ!」
 アランの地面についた片膝を足場に、一言の謝罪と共に躍動するセレナの肢体!
 振り上げられた刃は振り落とされることなく、肉亡き身体と共に遥か後方へと弾き飛ばされた。
 
「やれやれ、どうも最近詰めが甘いような気がする・・・・こんなところで手間取るとはな」
 城門を視界に収める中、再び現れた敵の群に溜息を吐くアランとセレナ。どうやら治療も救出も、もう少しだけ、先の話になりそうだ。


<場面は再び城内に移る>

「・・・・・・・・・・・・ん?」
 比較的弱いモンスターばかりを狙い、前へ前へと進んでいた橘木香(eb3173)がふと上を見ると、そこには既に空はなく、石造りの天井が広がっていた。
「・・・・・・・・ん?」
 念のためにもう一度見る。
 だが、もちろんもう一度見ても結果は同じ。そこにあるのは石造りの天井。
「ったく。結局ゴミ捨て場から侵入かよ。スマートじゃねぇなぁ」
 彼女のが現在の状況を整理しようと頭をひねっている視界にゴールド・ストーム(ea3785)が現れる。薄汚れた彼の衣服は、ここに辿り着くまでの行程が困難であったことを暗に示していた。
「お前も城内に侵入できたのか? 要人はどこにいる? 早いところ救出して・・・・」
 ゴールドが香へ声をかけたその時、城の奥・・・・大広間から悲鳴が漏れた。


<大広間>

「フレイアアアァアア!!」
「だめだ・・・・だめだ! どう考えても助かるはずがない!」
 大広間に響き渡る尾花満(ea5322)の叫び声と、すべてを絶望したかのように轟く貴族の声。ミノタウロスの一撃から王妃をかばったフレイア・ヴォルフ(ea6557)は、意識を失っているのか、ぐったりとしたまま動かない。
「阿アアァァアアアア!!」
 激昂と共に刃を振り上げる尾花。だが、怒りに身を任せた直線的なその一撃は、ミノタウロスに軽々と防御姿勢をつくらせてしまう。
「・・・・やれやれ、どうにか間に合ったか」
 尾花の武器がミノタウロスに受け止められる刹那、レジエル・グラープソン(ea2731)が放った二本の矢がミノタウロスのわき腹に突き刺さる!
 激痛に驚くモンスターは、尾花の一撃をも受け、その場で仰向きに倒れこんだ。
「レジエルさ・・・・!?」
 戦い始めて小一時間、初めての味方の登場に感謝の言葉を放とうとする双海涼(ea0850)を遮るかのように、壁が再び轟音と共に破れ・・・・その向こう側から、全身を筋肉で包み、荒々しい息を放つ男が現れる。
「出遅れちまってスマン! だが、一番乗りだったろう!?」
「・・・・悪いなギリアム。タッチの差で二番手だ」
 感覚のなくなった腕をだらりと垂らしながら、助っ人の登場に破顔するリル。なんとかやり遂げたと安堵するその表情は・・・・一瞬にして弾け飛ぶように冒険者のそれへと変わる。
『GOUOOOO!!!!』
 倒れていた状況から起き上がったミノタウロスがなぎ払う斧は風斬り音と共にリルの胴体に向かい、すべてを破壊しようと突き進む! 鈍い音が響きわたり、空中に投げ出されるリル、再び大広間に響く悲鳴。
「それは少しばかり・・・・修羅場を潜り抜けてきた冒険者を馬鹿にしているだろ!!」
 だが、弾き飛ばされたのは受けた武器のみ! 空中で立て直される体勢と共にニヤリと歪んだその口元は、自らの誇りを込めた言葉を紡ぎだす!
 天井にリルの足がつき、本能的に上へ向けて防御姿勢をとるミノタウロス。だが、既に感覚のなくなった腕に握られたもう一本の武器は、敵に向かうことなくポトリと地面に落ちる。
 彼の本当の狙いは・・・・既にこの場に到着した、一人の騎士に花道を譲るためのものであった。

「遅くなってすまない。・・・・グィネヴィア」
 無防備を曝け出した胴体に深く、深く刻まれる二本の剣。
 白金に輝くその髪は、共に刃を奮った円卓を夢見る騎士の赤い髪と、真っ二つになったミノタウロスの胴体から噴出した紅と重ね合わせても、決して美しさを失うことはなかった。

「お待ちしていました。皆さん」
「うん。待たせてごめんね。・・・・あれ、その人は?」
「あ? ええ・・・・ちょっと興奮のあまり眠られてしまったようです」
 レイジュ・カザミ(ea0448)の質問に、あくまで上品に手を口元に当てて微笑むフィーナ・ウィンスレット(ea5556)。彼女の傍には、先ほどまで叫んでいた貴族が頭にこぶをつくって倒れていた。

「どうやら王妃様はもう大丈夫みたいですね。・・・・あとは・・・・外の決着が一段落すると・・・・いいんですけど」
「・・・・やれやれ、まったくだ」
 周囲の警戒を行いながら、意図的に視線を中央から逸らす橘とゴールド。
 冒険者たちが背を向けた先には・・・・人目をはばかることなく抱擁する、
騎士と貴婦人の姿があった・・・・

 

  御山閃夏ea3098

ウェンディ・ナイツ
eb1133

  きっかけは小さなことだった。
  傷ついた兵士や冒険者が救護所に襲撃を仕掛けてきた3匹のズゥンビと戦っていた時、一人の騎士があらわれ、ただの一撃をもってそれらを大地に這わせたのだ。 

 騎士の鎧は・・・・薄汚れても栄光を失わぬ、イギリス王家の紋章を携えていた。
 
「此度の帰還、まことに感謝いたしますよ。・・・・アーサー・ペンドラゴン王」
 聖剣エクスカリバーを視界に、微笑む御山閃夏(ea3098)。
 不眠不休で馬を乗り継ぎ、馬が倒れれば走って戦場までたどり着いたアーサー王の姿はとても王家の華麗さを持っているとは言いがたかったが、それでも全身から放たれる威厳は、戦に疲弊していた冒険者たちの心を再び奮え上がらせる!
「遅れてすまない諸君! だが、勝利はすぐそこだ! 戦える者は剣を取り、私についてきてくれ!」
『オオォオ!!』
 戦場に巻き起こる歓声。たった一人の加勢であったが、皆剣をとって敵陣へと向かっていく!
「よぉし! それじゃあモンスター退治の総決算をやっちゃいましょうか!」
「私も・・・・及ばずながら空から助勢いたします」
  李斎(ea3415)、リースフィア・エルスリード(eb2745)に先導されるようにして動き始める冒険者達。その勢いはあっという間にアグラヴェイン軍に合流し、アーサー王到着の報せを聞いた兵士たちは、包囲されている状況下でありながらも敵軍を押し返していく!

「お体は大丈夫ですか。アーサー王様?」
 アーサー王の護衛役を請け負ったウェンディ・ナイツ(eb1133)はゾンビを切り伏せながら、先ほどからゆっくりとしか前に進まないイギリス国王に声をかける。
「ああ、大丈夫だ。・・・・ひとつだけ聞いておきたいことがある。グィネヴィアは・・・・生きているのか?」
「・・・・ええ、城へラーンス・ロット様ら精鋭の冒険者が向かっていると聞いています。もしものことはないと・・・・思われます」
 ナイツにかわって返答するアルアルア・マイセン(ea3073)。アーサーは彼女の言葉を聞くと、口元をほころばせてその場に座り込み、小さく呟いた。
「やれやれ・・・・自分の愛する妻すら自分で守れないとは。国王とは・・・・難儀な職業だな・・・・」