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ラーンス・ロット(ez0006)
アグラヴェイン・
オークニー(ez0096) |
『イギリス王国、グィネヴィア王妃、突如現れたアンデッドを中心とするモンスターにより、窮地!』
前触れもなく‥‥いや、あれやこれやと考えを巡らせればあながち前触れもないとは言い切れないが、とにかく突発的に起こった事態に、伝令役の駿馬はあわただしくキャメロット城に入り、時間を置くことなく主だった者に伝令が伝えられる。
チェスターに向かっているアーサー王がキャメロットにおらずとも、混乱を表には出さないその迅速な対処はアン・ペンドラゴンの手腕を関係者に認識させるものとなったが、さらに詳しい事情を知った関係者は眉間に皺を寄せる。
そう、多忙を極める円卓の騎士の内、現在キャメロットにいるのは僅かに2名!
一人は円卓の騎士随一の呼び声もあり、「湖の騎士」と誉れも高いラーンス・ロット。
そしてもう一名は‥‥
<キャメロット・エールハウス>
「アグラヴェイン様! アン・ペンドラゴン様が至急キャメロット城に参るように‥」
「うるさい! グィネヴィア王妃の話であろう。それならば先ほどから腐るほど聞いている。昼間から酒が不味くなるような話を‥‥」
エールをぐびりと飲み干して、大きく息を吐いたのは円卓の騎士であり、ノルマン出身でありながら円卓の騎士筆頭と誉れ高いラーンス・ロットを敵視していることでも有名なアグラヴェイン・オークニーであった。
見れば顔は既に赤く、昼間から大量に酒を飲んでいたことが伺える。事件の全容を公衆の面前でペラペラと喋るほどではないことが救いと言えば救いだが、それもいつまでもつかは分からなかった。
「わかっているのでしたらアグラヴェイン様、今すぐ‥‥いえ、せめて水を浴びた後、城に! いかにラーンス・ロットが‥‥」
「黙れ! 確かにラーンス・ロットも、そいつに心惹かれる輩も気に食わぬが、アーサーの信義を裏切るほど俺は愚かではない! 今、城に行ったところで、同じことを幾十と聞かされるのが関の山よ」
わたわたと慌てる伝令を殴り飛ばし、もう一度酒をグビリと飲むアグラヴェイン。赤いその顔とは裏腹に、瞳はひどく冷静に見える。
「そんなことより考えねばならぬことは幾らでもある。 ここ数日、アーサー王のチェスター訪問に端を発したように、キャメロット周辺で事件らしい事件が頻発し、円卓の騎士は俺と、ラーンス・ロットを除いてここにはおらぬ。円卓の騎士を減らし、王族の命を奪うことがデビルの策略とすると‥‥あまりに滑稽だな!!」
ガハハと大笑いし、テーブルをおおげさに叩く。エールの泡がこぼれ、盛り付けられていた料理の一部が床に落ちる。
「愚かなデビルどもに教えてやろう。奴らの児戯など、円卓の騎士が一人いれば十分屠れるということをな! ラーンス・ロットと協力するのは気に喰わぬが、王命とあれば従おう‥‥俺なりのやり方でな!」
呆然とする部下を尻目にアグラヴェインは立ち上がると、床に落ちた食器を片付けようともせず、エールハウスをあとにする。
彼の頭上に広がる空は快晴。
しかし、この王国に広がる暗雲は、もはや誰の目にも明らかなほど、栄誉ある王国を覆い尽くそうとしていた。
「フン、くだらん策をうってきおってモルゴースめ。‥‥一族と兄上と不始末、なんとしてもこの俺の手で決着をつけねばならぬか‥‥例え、あの忌々しいラーンス・ロットの力を借りることになろうとも!」
叫び声と共に拳を壁に突き当てるアグラヴェイン。
壁は猛烈な音と共にボロリと崩れ落ち、彼は城へと向かっていった。
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