<アグラヴェイン陣地>
「アグラヴェイン様に伝令だよっ。ラーンス・ロット軍は尚も攻勢だってさっ!」
ケヴァリム・ゼエヴ(ea1407)からもたらされた情報に、突撃するために控えていた騎兵部隊から『おおっ!』と、歓声があがる。
「アグラヴェイン卿、敵陣は乱れ始めています。あとはこちらの先陣が敵を崩したときに突撃の号令をかけてくだされば、一気に城門まで辿り着くこともできます!」
少し興奮気味に語るシアン・アズベルト(ea3438)。ラーンス・ロットの力か冒険者の力かは分からないが、二倍近い敵を押し返しているのだ。否応なしに手綱を握る指には力が入り、昂ぶる感情を必死に抑える。
「・・・・っ、ラーンスロットめ! 女がかかると途端に働くか!? ・・・・何をボサッとしているお前たち! 突撃だ! 合図の笛を鳴らせ!! 馬でも猛獣でも疾走でも構わぬ! アンデッド程度軽く蹴散らし、一気に城門を陥れ、グィネヴィア王妃をお救いするのだ!」
「りょうかいっ。天駆隊も出陣だよ〜〜〜っ!」
ロック鳥に乗り、声をあげるパラーリア・ゲラー(eb2257)。ふだんは恐れられもするグリフォン、一目見れば威圧感を与える軍馬であったが、こと戦場で見るや、その姿はなんと頼もしいことか!!
「悪くない・・・・そんな気分ですね」
笛の音が高らかに鳴り響く中、ポツリと呟くテスタメント・ヘイリグケイト(eb1935)。
そしてズラリと並んだ突撃兵団は、敵陣を一気にかき乱すべく、雄たけびと砂埃とをあげながら突撃していった。
<前線>
「やはりアグラヴェイン卿は俺が見込んだ通りの男のようだな。・・・・どうしようもなく気が短い」
騎乗し、敵の前線と戦闘を繰り広げていたジャン・ビュート(eb1649)は、予定よりも大分早い突撃の合図に苦笑いと呆れの溜息とを同時に吐く。まだ歩兵が敵陣をそれほどかき乱していない状況では、いかに勇壮な騎馬突撃といえども、敵を壊滅状態に陥れるのは難しいだろう。
「まあ、そんなことくらい慣れっこさこっちは。せいぜい卿の花道をつくってやろうじゃないか」
ジャンの視界にあったスケルトンが骨片へと変わり、その向こうから名無野如月(ea1003)が現れる。彼女の口元は僅かに綻んで見え、この戦いを楽しんでいるようにすら思える。
あっという間に大きさを増していく騎馬の足音。味方のものであるのだから不安になることはない。今はただ、純粋にこの時間を楽しみたい!
「チェストオォオォオ!!!」
咆哮とともに振り落とされる名無野の刃! 大地のさらに下までも砕く心づもりで振り落としたその一撃は、モンスターの巨大な体躯をはしり、右腕を大地に弾き落とす!
「ちぃっ! ・・・・しくじったか!?」
「・・・・悪いな、こいつは俺がもらっていく!」
死に体を晒した如月に振り上げられるモンスターの左腕は、ジラルティーデ・ガブリエ(ea3692)が振りぬいた褐色の刃によって、大地によこたわっていた。ならばと覆いかぶさるように敵は身体を預けようとするが・・・・ゴトリと首が転がる時、彼の身体も大地に倒れていた。
「悪いな。俺も卿ほどじゃないが気が長い方じゃない。ゲームオーバーだ・・・・うるさい時がやってくる」
ジャンが敵を貫いた時、すべてを覆い尽くすような騎馬のいななく声が、戦場に響き渡った。