フィオナ・ファルケナーゲ
eb5522


マナウス・ドラッケン
ea0021)

ジョセフィーヌ・
マッケンジー
ea1753

アルフレッド・アーツ
ea2100


ルシフェル・クライム
ea0673


アラン・ハリファックス
ea1753


イフェリア・アイランズ
ea1753

レイジュ・カザミ
ea1753
 夜明けと共にラーンスロット隊の前進が開始された。
 まだ、あたりは薄暗い‥‥。
 これだけの人数の前進にしては奇妙なほどに静かな前進である。
 静寂の中‥‥ かすかに鎧や装備の触れ合う音だけが響く‥‥。

 目前の地形は起伏は少ないものの背丈ほどの雑木が所々群生して藪を構成しており、薄暗さも手伝って敵の姿は見えない。
 しかし‥‥ 300m、いや100mかもう少しの距離に敵は必ずいる!
 朝日が稜線から少し覗く‥‥ あたりの明るさが増し、徐々に濃淡だけだった世界に彩色を持たせ始める‥‥。
「正面の藪の影! 右前方の窪地にも敵です! 50づつ‥‥ いや100は隠れています!」
 その時、先頭を行くラーンスロットと前衛グループにオリタルオ・リシア(ea0679)のテレパシーでの情報が飛び込んでくる!
「敵は逆Uの字に布陣しているわ。このまま進むと包み込まれちゃうわよ! 手薄なのは‥‥」
 続けてフィオナ・ファルケナーゲ(eb5522)の敵陣の配置の情報がはいる。上空の偵察部隊からはつぎつぎと情報がもたらされてくる。

「いいか! アンデットには3人一組で当たれ! 3人一組だぞ! 忘れるな! 前進!!」
 マナウス・ドラッケン(ea0021)の声がした次の瞬間、先頭がアンデット軍の先鋒と衝突した!
「さあ、来るが良い」
 波となって押し寄せるアンデット! 御影天禅(eb1707)の眼前にも種々雑多なアンデットが押し寄せる。
「いけー!!」
「突っ込めー!!」
 剣の煌き! 怒号と喧騒と戦場の幕が切って落とされたのだ!

 数分のうちに、すべての前線で戦闘が開始された。
 数ではゆうに2倍以上の敵を前に、百戦錬磨のつわもの達は退くことを知らず、先鋒隊を中心にじりじりと敵を押しさえする!
 前衛の戦士達の頭越しに援護部隊の遠距離攻撃が炸裂する!
 炎! 水! 光! そして無数の矢が、アンデットの頭上に降り注ぐ!
「飛行する敵はいないようだね! これで前方に集中できるよ」
 ジョセフィーヌ・マッケンジー(ea1753)の矢は狙いたがわずターゲットを射抜く。
「これは‥‥ これだけ敵がいれば狙わなくたってあたるな」
 エリオス・ラインフィルド(eb2439)がにやりと笑いながら呟く。

 2時間‥‥ 3時間‥‥ 戦いは続く。
 しかし、つぎつぎと現れる敵の新手に、前線の疲労は頂点に達する。
 ラーンスロット隊は一向に減らない敵の大群に、いつしか円陣を組み必死の守りの状態へと変化していた。
 
 円陣の中心にシエレス・アーハルッサ(ea3465)は救護所を開設していた。 怪我人の数が時間と共に増え、怪我の度合いもどんどんひどくなって行く。
 救護所は重傷者でいっぱいになった。集まった医療斑のメンバーも魔力を消耗しつくし、薬草も底をつきかけている。
「このままじゃ、もうすぐ看板やわ‥‥」
 その時上空から声がする。
「だれか手伝って! 怪我が酷くてここまで下げれない重傷者が沢山いるんだよ!」
 ターニア・アイオライト(eb3578)は、ここより前線に近い位置で応急的な治療に当たっていたのだが、負傷者のあまりの数に処理の限界に達してしまったのだ。
 しかし、ここにも余裕はない‥‥。
「水を‥‥ 水を‥‥」
 救護所には重傷者の声が響いていた。

「よーし! 次!」
 アルフレッド・アーツ(ea2100)はお得意の運動性を生かして、空中からの急降下攻撃で前衛の援護を行っていた。
 素早い動きに鈍重なアンデットはついてこれない。
 得意になって攻撃を繰り返しているうち、ふと視界の外れに、奇妙なものが飛び込んできた。
「うわ‥‥」

 地獄の様相を呈する戦場に、まるでそれを傍観するかのような集団が、少しはなれた丘の上にたたずんでいる。
 そこには古代の墓地から復活したかのようなアンデットの兵士達が整列していた。
 4mはある長槍を林のように構え、虚ろな空洞の瞳で、命令を待っている‥‥。
 一騎の黒い馬にまたがった騎士が、この軍団の前に進み出てくる。首がない大剣を携えた騎士だ。
 
 アンデットの第一陣との戦闘で疲労困憊し、かろうじて円陣を維持しているラーンスロット隊を小脇に抱えた頭から睥睨する。
 敵に反撃の余力なしと見たのか、かすかに笑みを浮べると、左手を高く掲げ、軍団に前進の合図をする。

「新手だ! 円陣が突破されるぞ!」
 味方の悲壮に満ちた声にツァイード・フェンネル(ea6260)は振り返った。
 今まで敵の圧力がほとんどなかった側面に、新手が殺到しているのが見える。
「敵の精鋭の新手ですか? うん? あれが敵の指揮官ですか!」
 新手の後方に、首のない騎士が采配を振るっているのが見て取れる。
 今までの烏合の衆にない動きに、側面の防備は限界に達している! 突破は時間の問題‥‥ そして、その先には身動きの出来ない怪我人の横たわる救護所がある。

 ラーンスロットは、この事態に気づくと、きびすを返して敵精鋭部隊の後方へと突破をかける! そしてこれに呼応した冒険者達が後に続く‥‥。


「っ、この相手は・・・・!」
 『普通の奴とは違う』。首のない騎士と刃を交えながらそう言おうとしたルシフェル・クライム(ea0673)の視界が一瞬暗くなる。
 頭上を鳥が羽ばたき、通り過ぎるような影。
 驚いた彼が頭上に視線を向ければ・・・・そこには、湖から飛び立った、円卓の騎士、ラーンス・ロットの天駆ける姿が!
「そうなれば、手助けいたしましょう!」
 心強い味方の登場に褐色の口元は微笑を取り戻し、銀の髪は再び輝くことを知る。
 ラーンス・ロットをサポートしようと敵の足腰目掛けて刃を突き出すルシフェル! 鋭い音と共にその攻撃は受け止められるが、彼はさらなる攻撃をもって、この強力な敵の注意を逸らそうと身体を躍動させ・・・・首のなかった騎士の胴体が崩れ落ちる姿をおさめた。

『グィネヴィアーーーー!!!!』

 戦場に木霊し、どこまでも響いていくラーンス・ロットの叫び声。
 彼が刃をひとつふるうたびに、その刃を向けられた相手は倒れることを宿命付けられる。例えどんな存在であろうとも、どれほど強力なモンスターであろうとも、その一撃を受け止めることすら許されはしない!
 彼の剣技は極限まで洗練されており、荒々しく扱おうともどこまでも優雅ゆえに、見る者に恐怖心すら与えてしまう。

「ど〜したんアランさん? こんなところでボ〜っとしてたらあぶないで」
 呆然と立ち尽くすアラン・ハリファックス(ea4295)に、イフェリア・アイランズ(ea2890)はヒラヒラと舞い飛びながら声をかける。
「・・・・いや、なんでもない。どうやらこっちにきた甲斐も少しはあったと思っただけだ」
 口元を『ニヤリ』と綻ばせるアラン。 『格が違う』
 一人の戦士としてなら間違いなく悔しい事項に入る事実であったが、彼はいつしか自分より一回り小さなその背中を追いかけ、少しでも追いつこうと、敵を双腕でなぎ払っていく。
「ぼ、僕も続かないと!」
 同じく武器を取り、ラーンスの後を追うレイジュ・カザミ(ea0448)。
 否、彼だけではない。
 もはやすべての兵士が、冒険者が、この戦場にいる数多のものが、その心強い背中を追い、助力しようと弓を引き、肩を並べようと足を踏み出す。突撃を止めようと雄たけびをあげた者は次々に倒れていく。

  笛が鳴り響くまでの時間は・・・・ひどく短くすら感じられた。

 

 
ケヴァリム・ゼエヴ
ea1407)

パラーリア・ゲラー
eb2257

ジャン・ビュート
eb1649

<アグラヴェイン陣地>

「アグラヴェイン様に伝令だよっ。ラーンス・ロット軍は尚も攻勢だってさっ!」
 ケヴァリム・ゼエヴ(ea1407)からもたらされた情報に、突撃するために控えていた騎兵部隊から『おおっ!』と、歓声があがる。
「アグラヴェイン卿、敵陣は乱れ始めています。あとはこちらの先陣が敵を崩したときに突撃の号令をかけてくだされば、一気に城門まで辿り着くこともできます!」
 少し興奮気味に語るシアン・アズベルト(ea3438)。ラーンス・ロットの力か冒険者の力かは分からないが、二倍近い敵を押し返しているのだ。否応なしに手綱を握る指には力が入り、昂ぶる感情を必死に抑える。

「・・・・っ、ラーンスロットめ! 女がかかると途端に働くか!? ・・・・何をボサッとしているお前たち! 突撃だ! 合図の笛を鳴らせ!! 馬でも猛獣でも疾走でも構わぬ! アンデッド程度軽く蹴散らし、一気に城門を陥れ、グィネヴィア王妃をお救いするのだ!」
「りょうかいっ。天駆隊も出陣だよ〜〜〜っ!」
 ロック鳥に乗り、声をあげるパラーリア・ゲラー(eb2257)。ふだんは恐れられもするグリフォン、一目見れば威圧感を与える軍馬であったが、こと戦場で見るや、その姿はなんと頼もしいことか!!
「悪くない・・・・そんな気分ですね」
 笛の音が高らかに鳴り響く中、ポツリと呟くテスタメント・ヘイリグケイト(eb1935)。
 そしてズラリと並んだ突撃兵団は、敵陣を一気にかき乱すべく、雄たけびと砂埃とをあげながら突撃していった。


<前線>

「やはりアグラヴェイン卿は俺が見込んだ通りの男のようだな。・・・・どうしようもなく気が短い」
 騎乗し、敵の前線と戦闘を繰り広げていたジャン・ビュート(eb1649)は、予定よりも大分早い突撃の合図に苦笑いと呆れの溜息とを同時に吐く。まだ歩兵が敵陣をそれほどかき乱していない状況では、いかに勇壮な騎馬突撃といえども、敵を壊滅状態に陥れるのは難しいだろう。
「まあ、そんなことくらい慣れっこさこっちは。せいぜい卿の花道をつくってやろうじゃないか」
 ジャンの視界にあったスケルトンが骨片へと変わり、その向こうから名無野如月(ea1003)が現れる。彼女の口元は僅かに綻んで見え、この戦いを楽しんでいるようにすら思える。
 あっという間に大きさを増していく騎馬の足音。味方のものであるのだから不安になることはない。今はただ、純粋にこの時間を楽しみたい!
「チェストオォオォオ!!!」
 咆哮とともに振り落とされる名無野の刃! 大地のさらに下までも砕く心づもりで振り落としたその一撃は、モンスターの巨大な体躯をはしり、右腕を大地に弾き落とす!
「ちぃっ! ・・・・しくじったか!?」
「・・・・悪いな、こいつは俺がもらっていく!」
 死に体を晒した如月に振り上げられるモンスターの左腕は、ジラルティーデ・ガブリエ(ea3692)が振りぬいた褐色の刃によって、大地によこたわっていた。ならばと覆いかぶさるように敵は身体を預けようとするが・・・・ゴトリと首が転がる時、彼の身体も大地に倒れていた。
「悪いな。俺も卿ほどじゃないが気が長い方じゃない。ゲームオーバーだ・・・・うるさい時がやってくる」
 ジャンが敵を貫いた時、すべてを覆い尽くすような騎馬のいななく声が、戦場に響き渡った。

 

  クレー・ブラトea6282

フレイア・ヴォルフ
ea6557

リ・ルea3888


イグニス・ヴァリアント
ea4202

<数刻後・城門付近>

「現在の味方軍の状態はどうなってるんですか!?」
「尚も乱戦中ってとこや! 王妃様はこんな顔の人らしいから、間違えんとって・・・・」
 シン・オオサカ(ea3562)から王妃の似顔絵と城の見取り図を受け取るルフィスリーザ・カティア(ea2843)。手紙が指に触れたとき、シンはがくりとその場に倒れ・・・・背後から血塗られた剣を持ったスケルトンが現れる。
「ッ・・・・・・・・!!」
「生亡き後もこの世に留まる渦者よ、慈愛神の教えにより、地に還ることを許そう!」
 カティアが口をおさえ、悲鳴を押し殺した刹那、クレー・ブラト(ea6282)の放った白い光が動く骨を大地に横たわらせる。
「彼女の手当ては任せてください。今は一刻も早く王妃様の救出を! ここも長くはもちそうにありません!」
 イギリス王国軍は攻勢に出ているとはいえそもそもの状況が、ただでさえ数の多い敵を王妃をはじめとする人質をとられているという・・・・いわば圧倒的に不利な状況であったのだ。
 一刻も早く救出を行おうとすれば必然的に陣形に無理が起こり、負わなくてもいいリスクを背負ってしまう。混乱の間隙を縫って城門にたどり着いた十数名は、数倍の敵に囲まれて撤退すら考えなければならない状態に追い込まれていた。
「ここは私が食い止める! ・・・・なんてことは言わないけど、ここまで来て手ぶらで帰るってのもなんだろ? いってきな」
「・・・・悪いな、後で気の抜けてないエールでも奢らせてもらう」
「ばーか、せめてイリュージョン・フードにしてくれ」
 燃えるような赤い髪に鮮血を滴らせながら微笑むフレイア・ヴォルフ(ea6557)。リ・ル(ea3888)は目の前のズゥンビの腹を右足で蹴り飛ばすと、背を向けて既に開門されている城内へと走っていく。
 
「味方が開門してくれたんならありがたいんだがな・・・・」
「リル。それは少しばかり・・・・希望的観測過ぎると思うぞ!」
『GUUUU!!!』
 テーブルクロスの下から涎を滴らせながら飛び出す二匹の黒い犬! 獰猛な声と共に大きく開かれた口は、は極上の料理を味わおうとイグニス・ヴァリアント(ea4202)へ迫っていく!
「その程度・・・・わざわざ見るまでもない!」
 掠める牙を音だけで見極めたかのように、身体をひねらせて攻撃を回避するイグニス! 次いで円を描くように繰り出された二本の刃は、涎を滴らせる口を頭ごと切り裂く!
 壁に激突した犬は、悲鳴すらあげることなくその場に倒れて動かなくなった。
「やりますねイグニスさん。その調子で、脱出にしろ護衛にしろその時はお願いします」
「脱出? 何を言っているんだ。これから王妃を・・・・・・・・」
 頬から滴り落ちる血と汗を拭うイグニスに声をかける双海涼(ea0850)。イグニスは突然現れた彼女の、素っ頓狂とも思える言葉に反論を唱えようと口を空け・・・・ポリポリと頬を掻くカティアと、彼女の傍の椅子で気絶したまま座っているグィネヴィア王妃の姿を視界におさめた。
「王妃様は私が発見し、手当てもしておきました。問題は・・・・っ!」
 会話の途中で木剣を投げつける双海。リルの頬を掠めてカーテンを引き裂いたその向こうからは、涎を滴らせていた犬に噛み付く双海の忍犬、シマキの姿があった。
「・・・・問題はこれからです。ラーンスロット軍もアグラヴェイン軍も攻勢には出ていますが、主力部隊は城門までたどり着いてはいないようです。城には怪我人がだいたい100人くらいはいます。王妃様は確保しましたが、私たちだけでは持ちこたえられるかどうか・・・・」
 言葉を濁しているものの、双海の提示している選択肢は単純明快であった。
『王妃だけを救出し、確実にこの城から脱出する』か、
『皆を救うという大義をもって、全滅のリスクを負うか』か、

二つにひとつ。
それは間違いなく重大な決断であったが、彼らに与えられている時間は数えるほどしかなかった。



<続く・・・・>