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■NPC対抗リレー■




 まだ朝も早い競技会場の一角、人の姿もまばらなグラウンドの片隅で朝っぱらからテンションの高い集団が顔を突き合わせていた。
 それはブリーダーギルド主催のリレー競技に参加予定の面々。
「参加希望者は‥‥これで全部か?」
 オールヴィル・トランヴァース(hz0008)が一同を見渡す。
 手にしたリストに上がった名前は全部で13人。
「ダグの奴はこの場にいないが、あいつは強制的に参加させるとして‥‥ん?」
 肝心な名前がいくつか抜けている気がする。
「ローラ、お前は出ないのか?」
 訊かれて、管理局長ローラ・イングラム(hz0004)はいつもと同じ事務的な口調で淡々と答えた。
「私は監督責任者として顔を出させて頂いたまでです。選手として競技に参加するつもりはありませんので‥‥どうぞ、私の事はお気になさらずにお話をお続け下さい」
「いや、気にするなって言われても‥‥な」
 ヴィルは助けを求める様に、冷たく晴れ渡った空を仰ぐ。
「管理局の代表って事で、何とかならんか? それに‥‥ほれ、ダグの奴を、な」
 サボリ魔大臣フェイニーズ・ダグラス(hz0002)の名前を聞いて、ローラのこめかみがピクリと震える。
「頼むよ、あいつを走らせるにはお前の参加が不可欠なんだ」
「‥‥‥‥」
「あいつを説得しろとは言わない。参加するだけで良いんだ。お前が走るなら、負けず嫌いのあいつの事だ。必ず乗って来る」
「‥‥‥‥‥‥」
 暫しの沈黙の後、小さな溜息と共にローラは言った。
「わかりました。参加させて頂きます。その代わり‥‥」
 その眉間に深〜いタテジワが寄る。
「大臣には必ず参加して頂きます。そして、参加するからには責任をもってチームを勝利に導いて頂きますので」
 あれ、体感温度が5度くらい一気に下がった様な。
「あ、ああ‥‥わかった。後でダグの奴に伝えておく」
 突然の寒波に身を震わせつつ、ヴィルは続けた。
「もう一人‥‥ジェイリーはどうしたんだ?」
 お祭り好きのジェイリー・ベイガー(hz0011)が、こんな機会を見逃す筈はないのだが‥‥参加者リストにその名前は見当たらなかった。
「この俺がダサイ体操着なんか着てられっか〜。俺を応援してくれる世界中の女の子達が泣くだろ」
 ‥‥はい?
 しかし、ジェイリーのそんな答えにもヴィルは動じなかった。
「‥‥そうか。いや、走りたくないなら仕方ないな。今回は応援に回って貰うとしよう」
「え?」
 あっさりと引き下がったヴィルに、ジェイリーは思わず拍子抜けした様な声を漏らす。
 ‥‥引き止めるとか、食い下がるとか‥‥もっと何か他のリアクションはないのだろうか? 粘られた時の為に、色々と理由も考えておいたのに‥‥持病のぎっくり腰が悪化とか、超大作魔道具が完成間近で手が離せないとか。
「そりゃないぜ、ヴィル‥‥っ」
 ジェイリーはがくりと膝を付く。構って欲しかったらしいが‥‥最早、彼のターンは終了していた。
「これで15人か」
 是非とも参加したいと張り切っていたオルソン・グエンガー(hz0013)は、流石に年齢を考えた医師によって自重を言い渡されている。
 しかし、ジェイリーが抜け、オルソンが抜けても尚、白組の人数が一人足りなかった。
「エリューシア姫‥‥は、今回中立の立場だし‥‥」
 ぶつぶつ。
「‥‥クレイは‥‥走れるのか?」
 5年に亘る昏睡状態から目覚めたばかりのクレイ・リチャードソン(hz0032)。寝起きと言うか、病み上がりと言うか‥‥何れにしろ体調が万全ではないだろうと、今回の競技には一切参加していないのだが。
「まあ、もうそろそろ大丈夫か」
 この場にはいないが、事後承諾で構わないだろう。
「よし、これで紅白同数で揃ったな」
 ヴィルは満足げにリストを眺め‥‥
「後は出走順だが、ダグの奴はどうせギリギリまで駄々をこねてるだろうから、あいつは白組の最後に回すとして‥‥」
 紅組のアンカー希望はいないかという声に、元気な声が上がる。
「はいはいっ! あたしっ! あたしアンカーやるっ!!」
 ジル・ソーヤ(hz0005)が真っ先に名乗りを上げた。
「おぉ、相変わらず元気が良いな。アンカーはトラックを2周走る事になるが、大丈夫か?」
「あったりまえじゃない! 日頃の鍛え方が違うんだから、2周でも3周でもどーんと任せてっ!」
「よし、じゃあ決まりだな」
 自信満々。ヤル気も満々。ついでに若くて元気いっぱい。このアンカー勝負、白組に勝ち目はあるのだろうか‥‥
「あの、オールヴィルさん」
 遠慮がちに声をかけたのは弟のリアン・ソーヤ(hz0006)だ。
「僕もそのリストに載ってるみたいなんですけど‥‥あの、僕、立候補‥‥してませんよね?」
「何だ、どこか具合でも悪いのか?」
「いえ、そうじゃありませんけど‥‥」
「なら心配はいらない。なに、勝ち負けなど気にせず楽しめば良いんだ。出走順は‥‥そうだな、大人に混ざるのはきついだろうから、うちのララと一緒にトップで良いか?」
「え? えええ!?」
 何だかもう、走る事に決まっているらしい。嬉しそうに話を進めるヴィルを、もう誰も止める事は出来なかった。
 そして、残る順番はくじ引きで決められ‥‥

 後は競技開始を待つばかり。
 そして、あのサボリ魔が「走れる状態で」会場に現れてくれる事を祈るばかりだった。


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