アンリ・フィルス (eb4667


ミィナ・コヅツミ (ea9128


ジークリンデ・ケリン (eb3225


香月 睦美
eb6447


ジェシュファ・フォース・ロッズ (eb2292


シオン・アークライト (eb0882


イルコフスキー・ネフコス
eb8684


西伊織 晴臣 (eb1801


エイリア・ガブリエーレ (eb5616
●王宮防衛戦

 反乱を起こした領主軍が完全に鎮圧された今、ラスプーチン率いるクーデター軍に最早後は無かった。包囲が完成する前にマリンスキー城を制圧するしかない。
 その事実は、領主軍が退けられたことにより下がっていた士気を補って余りあるほどの勢いをラスプーチン軍に与えることとなった。


 ――おぉぉおおお‥‥
 怒号、雄叫び、絶叫。両軍の声がマリンスキー城に響き渡り‥‥そして更に剣戟の音が加わる。
「臆するな、我に続け!」
 勇壮に先陣を駆けるアンリ・フィルス(eb4667)が、眼前の敵を槍で貫き、雄叫びを上げる。それに呼応するように、冒険者達は続く。が、敵もそうやわではない。
「‥‥強いっ!」
 オーラシールドで攻撃を受け止める鴻 蓬麟(eb7154)が思わず漏らす。正に猛攻。その勢いは目を見張るものがある。
 が、次の瞬間思わぬところから飛来した矢を受けよろめく敵。その隙を見逃さず蓬麟は奥義・鳥爪撃の蹴りを叩き込んだ。矢を放ったのは樹上に潜み狙撃を敢行するスティンガー・ティンカー(ec1999)。だが効果的だった奇襲を行う彼も、矢の出所から発見され、何度も続けることは出来ずに追われる。


「思ったよりも敵の攻撃が激しいな‥‥突出はするな! 負傷者はすぐ手当てを!」
 徐々に混戦となって行く戦場を見、状況を把握しながら檄を飛ばすマナウス・ドラッケン(ea0021)は忌々しげに呟く。その側では、ミィナ・コヅツミ(ea9128)がホーリーフィールドを張りながら運ばれてきた負傷者を治療している。敵味方とも血が止め処なく流れ、城内を赤く染めあげる。
 重装甲に身を固めたカイザード・フォーリア(ea3693)は敵の攻撃を物ともせずランスを振るい続けその場を堅守するが、次第に敵の刃がその鎧を揺るがす数も増えていく。敵の攻撃が激しさを増しているのは明らか。


「進め、この先に――ぐぉあ!?」
 進行する一団を襲ったのは、ジークリンデ・ケリン(eb3225)のファイヤーボム。ただの一撃でそれは一団の体力、そして覇気を焼き尽くすほどの威力。更にそこで足を止めてしまった彼らは今度は苛烈な吹雪に襲われる。オリガ・アルトゥール(eb5706)の放ったアイスブリザード、こちらはジークリンデ程の威力ではなかったが、それでも十分すぎるほどの威力を持って、この者達の戦意を完全氷漬かせる。高威力なだけにそう何度も使えるものではないが、敵戦力を削るには十分すぎるほどだ。
「国は変われどやることに変わりねぇな、行くぜ!」
 さらに傷を負い動きが鈍ったところににアラン・ハリファックス(ea4295)らが突っ込み、敵をなぎ倒していく。
 だが、その冒険者の苛烈な攻撃にも関わらず、変わらぬ、いや益々勢いをます猛攻を続けるラスプーチン軍。押されている場所も少なくない。
 ――轟!
 大きな破砕音と共に門の一つが破られた。そのまま突撃を続けようとするラスプーチン軍。が、その進攻は遮られた。――足元に転がされた木々に。
「足元がお留守だぜ!」
 勝ち誇った笑みを浮かべた辰若 清吉(ec1606)はウォーアックスを構えて手間どう敵に切りかかる。城内の木をただ妨害のために切り倒すというその作戦は、思った以上の効果だ。城ごと制されてしまうか、木を犠牲に敵を阻むか。彼の選択が正しいことは疑いようもない。
 だが、それで崩れる惰弱な敵ではなかった。進行の妨害に惑いながら、ラスプーチン軍は攻める冒険者達と対等に渡り合う。
「纏まった軍ほど怖い者はない、か。‥‥だが」
 ラドルフスキー・ラッセン(ec1182)のマグナブローが部隊長らしき男を襲う。相手の勢いがその一丸となったところにあるなら、その指揮から乱せばいい。炎の柱が作った隙に近付いた香月 睦美(eb6447)振り下ろした白刃に、男は地に伏した。動揺が走る部隊に、冒険者達は畳み掛ける。

 負傷者の数は続々と増えていく。所所楽 杏(eb1561)が束ねる治療班の元へ送られてくる者は増える一方。片時たりとも気を抜くことは出来ない。既に魔力が底をついている者、消耗が激しい者も少なくない。
 それは、魔法を放ち敵の足を止めようとしているジェシュファ・フォース・ロッズ(eb2292)や、ヴェニー・ブリッド(eb5868)達にも同じことが言えた。予想外ともいえる敵の粘り強さに最早魔力は底。
「魔法をジャンバリ打ち続けるっつーのも、難しいぜ‥‥」
 ぼやくヴェニーは敵が体勢を立て直す前に、速やかに後ろへ下がる。


 両軍入り乱れでの死闘に変化が訪れたのは、日が傾きかけた頃。
 脇目も振らずに直進していた敵が、続々と、しかし乱れなく反転していく。
「守りきった‥‥のか?」
 刃を交えていた眼前の敵と決着を、スタンアタックに依る意識の刈り取りでケリをつけた阿倍野 貫一(ec1071)は敵の姿を見ながら呟く。戦況はほぼ五分五分。だがこのまま続けても目はないと悟ったのか。ならば、と彼は取り残された敵へ切っ先を向けながら降伏を勧告する。王を裏切った怪僧がお前達を裏切らない保障はない、と。

 撤退するラスプーチン軍の整った陣形を見て、冒険者達は今この場でのこれ以上の追撃は断念する。あの様子では崩せない。
 だが、ラスプーチン軍はマリンスキー城から撃退された。これは揺るがない事実で、冒険者達、そして王国軍があの激戦の結果勝利をもぎ取ったのは確かだった。
 満身創痍の冒険者達はこの勝利を喜びながら、次の戦いの舞台へと思いを巡らす。王を裏切り反逆した男はいまだ健在なのだから。

<担当 : 長谷 宴>



●血路

 突然やってきた反乱の知らせ。重臣ラスプーチンの謀反の知らせは式典を一転して混乱へと叩き込んだ。
 しかし、毅然たる態度の王ウラジミール一世と冒険者たちの働きにより一応の落ち着きは取り戻したのだが‥‥。
「いいですか。貴方達はこの王国に必要な人物なのです。今はお逃げください」
 混乱する貴族たちを諭すのはシオン・アークライト(eb0882)。
 本心はさておき、貴族たちのプライドを逆手に取った誘導で、なんとか貴族たちを説得する。
 状況を把握できない貴族たちを冒険者たちは手を焼くが、脱出用の秘密通路へと移動を開始するのであった。
 しかし、混乱が収まりきったとはいえない上に、今回の敵は内部に潜むのだ。
 要人たちをはじめ、貴族たちの行動は遅遅として進まず、冒険者たちの内心の焦りは募る。
 そして、決死の大脱出に迫るラスプーチンの魔の手。
 それは冒険者たちの予想を上回る速さで伸びてくるのだった。

「‥‥くっ、ここも先回りされていますか‥‥」
 つぶやく声は聞こえれども姿は見えず。
 ティスア・アル・ハヤール(eb3330)は魔法によって姿を消して先行していたのだが行く手にはすでに敵の姿が。
 どうやらラスプーチンは要人脱出のための秘密通路の存在に気づいたらしい。
 ゆえに冒険者が護衛しつつ移動を始めた要人たちは真っ向から迎え撃たれるのであった。
「きりがありませんね! ですが、なんとしても突破しないと‥‥」
 乱 雪華(eb5818)が拳で敵の急所を打ち抜くと、敵はうめきながら崩れ落ちる。
 先行している彼女は潜んでいた追っ手たちをスタンアタックで気絶させながら突破口を開こうとするのだが、追っ手の数は予想以上であった。
 どこに裏切り者が潜んでいるかわからない状況の中で、反乱軍を正面突破しなければならない。
 このように無謀とも思える状況であったのだが、冒険者たちはあきらめていなかった。
「きっと神様が守ってくださるよっ! だから、みんなおいらについて来て」
 イルコフスキー・ネフコス(eb8684)は、神へと助力を祈りながら貴族たちをまとめている。

 そう、いくら貴族たちが怯え恐れようとも冒険者たちは毅然と立ち向かっているのだ。
 お互いに連絡を取り合って、隠れ潜む追っ手たちを撃退しているのはキルト・マーガッヅ(eb1118)たち。
 内に潜む不振人物を探し出し、それをウィルフィン・シェルアーチェ(eb1300)とキール・マーガッヅ(eb5663)が追い詰める。
「おそらくそこの奴は裏切り者だ。それ以上近寄らせてはまずいぞ」
 西伊織 晴臣(eb1801)はリヴィールエネミーを使い裏切り者をあぶり出す。
 一度見つかれば、それを周囲の冒険者が排除するのだが、敵はそれだけではない。
 次々に潜んでいた刺客たちが現れたり、こちらの脱出を阻むための妨害者たちが続々と現れるのだ。
「‥‥さぁ、みなさんこちらに!」
 フェノセリア・ローアリノス(eb3338)は要人たちを導きながら神の力で結界を張る。
 追っ手たちの放った矢がその表面でむなしくはじけ、要人たちは息をつくのだが、さりとて苦境を抜けたわけではない。
 ラスプーチンの読みが上回ったのか、脱出するためには正面突破するよりほかに無い状況。
 その中を冒険者たちは決死の覚悟で突き進んでいくのであった。
「私が守る限り、指一本触れさせはせぬっ!!」
 エイリア・ガブリエーレ(eb5616)が気迫と共に敵の攻撃を紙一重で受けきると反撃の一撃。
 守るべき対象は王だけではなく、王妃をはじめ大公たちなど要人たちを冒険者たちは死に物狂いで守っていた。
 華やかな式典は瞬く間に刃の行き交う戦場へと変貌した。
 耳に聞こえるのは和やかな楽の調べではなく、剣戟の響き。
 目に見えるのは絢爛豪華なダンスではなく、命を賭けた剣たちの舞。
 華やかな装いであった冒険者たちを含め、ドレスと礼服は血と埃にまみれその輝きを失っていた。

 正面から反乱軍たちと戦い血路を開かなければいけなかったため、冒険者たちは苦戦を強いられた。
 だが、ついに冒険者たちは成し遂げた。彼らは辛うじて反乱軍を撃破、脱出用の秘密通路へとたどり着くのであった。
 要人たちの避難は無事完了し、冒険者たちは安堵の声を上げる。
 しかし、キエフの動乱はまだ終わっていない。
 これからの展開の鍵を握ることになるのは、おそらく冒険者たちだとこの場にいた多くの者は確信するのであった。

<担当 : 雪端為成>