戦闘の結果
ティエ・セルナシオ
ea1591

ケイ・メイト
ea4206

ジェラルディン・ブラウン
eb2321

ユリゼ・ファルアート
ea3502

■村人の保護と消火活動

●村の現状

 救出隊が村へ無事突入して真っ先に見たものは、教会が吐き出す灰色の煙が立ち込める中、地面に伏して動かなくなっていたり、建物の中でうずくまって立ち上がれなくなっていたりする村人達の姿だった。
 建物の中を見て周ると、怪我人の数が思ったよりも多い。息絶えた人も居る様だ。
 座り込み、両親の名を力無く叫ぶ子供連れの母親の姿も見える。まだ歩き回れる体力が有る人は、少数の様だ。
 煙を吸い込んで咳き込む事で残り少ない体力を使ったのか、独り横になって寝て空ろな眼を泳がせる子供も居た。親らしき人の姿は見当たらない。
 時折、小さな爆発音が響く。建物の窓を少し開けて教会の方を見ると、教会の窓から火の粉が飛び散っているのが見える。
 村の状況を見るに、一刻の猶予も無い。冒険者達は、すぐにそれぞれの行動を開始した。

●村人の避難

 ティエ・セルナシオ(ea1591)は、怪我をしている村人の手当てを始めた。
 虫に襲われるのではないかという恐怖心と戦いながらでは、手当てに充分な時間をかける事が出来なかった。
 その後、虫の排除をしている冒険者達によって安全な場所が確保される様になってくると、手当てを施した人達から順に、その安全な場所へと避難させる事が出来る様になった。
 ケイ・メイト(ea4206)は、虫の脅威に怯まず村の中を飛び回り、比較的軽症の村人を探して治療しては、重傷者の避難に協力してもらう様説得していた。
 そうして確保された村人達と何人かの冒険者達がティエとケイに協力し、歩けなくなった村人を担いでは避難場所へと運んでいく。ティエも自力で歩ける村人の避難誘導を行った。
 本格的な治療は、村人の安全が確保されてからになるだろう。

●教会の消火活動

 複数の冒険者が教会へと走る。
 燃え盛る炎は教会内部を舐め回すに飽き足らず、時折窓からその身を乗り出してみせる。
 ダージ・フレール(ea4791)は、教会の周囲を飛び回りながら火災の状況を分析する。
 火災で建物が脆くなっているかもしれない。ダージ達は、ウォーターボムの衝撃に依る建物の倒壊に注意しながら、出来た水球を教会内部に投げ込んで消火を試みる。
 時折、燃え盛る炎に水をかけた瞬間、爆発するかの様に炎の勢いが強くなる事が有った。そこでは油が燃えていたのかもしれない。
 時間はかかったが、大量の水を使い、なんとか鎮火させる事が出来た。

●虫の排除と治療活動

 何人かの冒険者達が、村に入り込んだ虫を探しては戦い、それぞれのやり方で駆逐している。
 ジェラルディン・ブラウン(eb2321)は安全な場所に待機し、負傷した冒険者達をリカバーで回復させていく。
 城壁での虫の侵入阻止の活動の方もうまくいっていた為、やがて村人を脅威させた虫は、村の中に限れば全く居なくなった。
 そうして村人の治療に専念出来る場所が確保される様になると、治療活動が本格的に始まった。
 リカバーの魔法があちこちで唱えられていく。
 ジェラルディンは、はぐれた村人の確認をしつつ、傷ついた村人にリカバーを唱えていく。
 村のあちこちで聞こえた村人のうめき声は、少しずつ数を減らしていった。

●飲料水の配布

 ユリゼ・ファルアート(ea3502)は、村の中を駆け回って集めた壷や鍋などを開けた場所に一箇所に並べた。それらの真上から、クリエイトウォーターで生み出した水を注ぎ込む。
 そうして出来た飲み水を、手の開いた冒険者達が手分けして衰弱して動けない村人達の元へ運んだ。衰弱の激しい村人には、様子を見ながらゆっくりと水を口に含ませていく。
 炎上する教会の熱風の影響か、より水分が奪われていた村人にとっては、ありがたい頂き物であった。

●肉体だけではないダメージ

 サレナ・ブリュンヒルド(eb2571)は怪我を負った村人をリカバーと応急手当を駆使して治療していた。
 手当てしている老人が訴えかける。
「お願いだ。ワシを殺して楽にさせてくれ。婆さんは行方不明でもう駄目じゃろう。ワシよりも孫の方を看病して欲しい。孫は空腹と虫に襲われた怪我でひどく苦しんでおる。孫に何か食わせてやってくれ。ワシはもういい。孫の苦しむ姿をもう見たくない。早く婆さんの元に連れて行ってくれんか」
 サレナは静かに微笑むと囁く様に諭した。
「貴方が諦めたら、生きている人達が悲しみます。苦しいでしょうが、心の傷はいつか和らぎます。諦めずに生きてください。お婆さんと私達の為に」
 目に涙を浮かべた老人は、横たわったまま目を閉じると、静かにすすり泣いた。

●感謝する村人

 やがて、冒険者達は、それぞれが出来る事をやり終えていく。
「全滅を覚悟していた。貴方達が助けに来てくれて、本当に嬉しい」
 村人達はそれぞれの言葉と感情で、口々に喜びと感謝の気持ちを冒険者達に伝えていた。
 村に漂う教会の焦げる匂いは、風に運ばれて、次第に薄くなっていく。
 いつもの村の風景が戻るかの様に錯覚させる心地よい風。
 だが、煙と焦げ臭い匂いが運ばれる先の城壁の向こうには、まだ多くの虫が徘徊しているのだった。
 そんな状況下では衰弱の重い村人達をすぐにパリへ移動させる事は出来ないと、騎士団は判断せざるを得なかった。 (by猫乃卵 MS)
 
ヘルヴォール・ルディア
ea0828

シャルウィード・ハミルトン
eb5413

クレー・ブラト
ea6282

利賀桐 まくる
ea5297

■村の防衛と虫の撃退

 漆黒の夜空を月の冷たい光が照らしている。昨日と変わらぬ平穏な夜空だが、その空の下では恐ろしい災厄がとある村を襲っていた。村の名はリブラ。その村の教会が燃えていた。ひときわ高く空へと向かって伸びていた尖塔は今や巨大なかがり火となって、得体の知れぬ虫どもを数限りなく呼び寄せている。明けぬ夜はないというが、一体何時まで持ちこたえれば希望という名の朝を迎えることが出来るのか。村はまさに壊滅寸前であった。

 村を囲む城壁は長い年月を経て崩れかけている場所もあったし、亀裂や穴があいてしまっている場所もある。カブトムシに似たとてつもなく大きく、獰猛で危険な虫たちは村へとまっすぐ向かって来る。あるモノは城壁を乗り越え、あるモノは亀裂や穴をかいくぐる。
「でもやっぱり虫は虫ね。どう頑張っても虫の習性には逆らえないのよ」
 村を囲む城壁の外でヘルヴォール・ルディア(ea0828)は篝火を焚いていた。真っ直ぐに村を目指していた筈の虫たちのうち、かなりの数がヘルヴォールの篝火に惹かれ、その進路を変えていく。
「悪いけど、ここで食い止めさせて貰うわよ」
 光に向かって地を走る虫の頭を狙い、ヘルヴォールは武器を振る降ろす。
「なるほどね、こいつは効率がいいじゃないか。あたしも派手に暴れさせて貰うよ」
「どうぞお好きに!」
 大振りの武器を振り回すシャルウィード・ハミルトン(eb5413)にヘルヴォールはチラッと笑みを浮かべて言う。
「悪いね。じゃ害虫駆除させてもらうよ」
 シャルウィードも僅かに笑みを浮かべると、光へ集まる虫たちを押しつぶし、切り裂き、突き通す。

 それでも虫の数は半端なく多い。燃える尖塔の光に吸い寄せられるかのように、数多くの虫どもが城壁へと走り、それを乗り越えようとしていた。
「僕にはわかるよ。僕にも飛ぶための羽があるからね。ここ! ここが弱点だよね」
 アルフレッド・アーツ(ea2100)は濃い色の髪を揺らし、その髪と同じ色合いの羽を巧みに動かし城壁の上へと飛び上がる。そして狙いを外さずちょうど城壁のもっとも高い場所にいた虫の羽と羽の間に武器を突き刺した。引き抜くと体液を吹き上げながら虫は下へと落下していく。アルフレッドは空中で回転しつつ更に上空へと飛びあがりながら、目を凝らして虫の様子を確認する。落下した虫は背を下にしたまま力無く足をばたつかせたが、すぐに動かなくなった。
「次! 行くよ。力の限り、僕は村を守るんだ!」
 アルフレッドはまたも城壁へと今度は急降下を敢行する。倒すべき虫の数はとてつもなく多いのだ。

 城壁の下では漆黒の髪と同じ夜色の目をした戦士が武器を振るっていた。遠い炎にエグゼ・クエーサー(ea7191)の武器が閃くたび、カブトムシに似た大きな虫が1つか、2つ、ボトリと地面に落ちていく。
「‥‥っく」
 不快な羽音が不意に耳元で大きく響いた。考えるよりも早く身体が動いた。一瞬前までエグゼが居た場所を巨大な虫たちが3匹揃って突進してきていた。髪の先、そして袖の一部が切り裂かれる。それでもエグゼの闘志は消えることはない。
「俺に傷をつけるとは‥‥虫どもにしてはよくやった。だが、2度目はないぞ!」
 視界はどこもかしこも虫だらけだ。気力が衰えたらやられてしまう。
「怪我してはる人はおへんか? ってキミ、腕から血ぃが出てるやないか」
 クレー・ブラト(ea6282)は怪我をおして戦うエグゼに気が付いた。
「俺は平気だ。他を‥‥」
 向かってくる虫を叩きつぶしつつ、クレーへと声を向ける。
「他には他のモンが行ってる筈や。心配せんとほら、もそっとこっちへ」
「‥‥わかった」
 獰猛な虫どもは今や明らかにエグゼの怪我をした腕を狙っていることが明らかだ。人の血肉に惹かれるとはなんと呪われた虫どもなのか。いよいよもって村へ入れるわけにはいかない存在だ。クレーの伸びた指の先がエグゼに触れる。すっと痛みが退いていった。

「攻撃こそは最大の防御! 村への被害を最小限に食い止めるには1匹でも多く虫どもを屠る事と判じた」
 武器を手にキサラ・ブレンファード(ea5796)は押し寄せる虫どもへと真っ先に駆ける。象牙色の肌にかかる赤い髪は情熱の炎そのままに燃えさかる。キサラが駆け抜ける先々で虫どもが幾匹も切られ、潰され、引き裂かれていく。その光景は怯え逃げまどう村人達を勇気づけ、同じく村を守らんとする冒険者達の指標ともなる。
「美しき炎の乙女か。よし! 俺はあの女に賭ける」
 ごく簡単にそう心に決めると、ウリエル・セグンド(ea1662)は目の前を駆け去っていったキサラの後を追う。とにもかくにも敵の数が多すぎる。少しでも減らさなくてはどうにもならない。
「虫ども! これ以上先へは行かせない!」
 手も足も使い、ウリエルは手当たり次第に虫を潰していった。海を行く船が灯台の光を求めるように、ウリエルの目の端にはいつもキサラの鮮やかな髪が映っていた。

「これ以上先には‥‥進ませない!」
 虫の複眼や節を狙い利賀桐 まくる(ea5297)は攻撃を仕掛ける。狙いすまして繰り出される攻撃は撃てば必ず虫が転がるが、後から後から虫は同胞の骸を越えやってくる。
「数が多すぎるわよ! これじゃキリがないわ」
 あまり上すぎる場所は見ない様留意しながら李 美鳳(ea8935)は城壁の亀裂から這い寄ってくる虫を正確に仕留めていく。武器が虫の体液でドロドロになってしまっても、まだ亀裂から虫が不気味な顔を覗かせる。
「みんな! ちょっと数は多いけど敵は弱いよ!」
 小柄だが、しなやかな筋肉を持つジャンヌ・バルザック(eb3346)は大斧を振り上げ、力任せに虫の殻をうち破り潰していく。

 1匹、また1匹と虫は冒険者達によって倒れされるが、それでも虫の行軍は止まらない。この悪夢の様な夜はどこまでも再現なく続くのか。少しずつ皆の心に暗い影が落ち始めた頃、尖塔の火が消えた。すると炎の昼間の様に明るい光に惹かれていた巨大虫の行軍が途切れ始める。
 東の空が白み始める頃、冒険者達はようやく武器を降ろした。リブラ村は壊滅を免れた。 (by深紅蒼MS)