ヘルヴォール・ルディア
(ea0828)
シャルウィード・ハミルトン
(eb5413)
クレー・ブラト
(ea6282)
利賀桐 まくる
(ea5297) |
■村の防衛と虫の撃退
漆黒の夜空を月の冷たい光が照らしている。昨日と変わらぬ平穏な夜空だが、その空の下では恐ろしい災厄がとある村を襲っていた。村の名はリブラ。その村の教会が燃えていた。ひときわ高く空へと向かって伸びていた尖塔は今や巨大なかがり火となって、得体の知れぬ虫どもを数限りなく呼び寄せている。明けぬ夜はないというが、一体何時まで持ちこたえれば希望という名の朝を迎えることが出来るのか。村はまさに壊滅寸前であった。
村を囲む城壁は長い年月を経て崩れかけている場所もあったし、亀裂や穴があいてしまっている場所もある。カブトムシに似たとてつもなく大きく、獰猛で危険な虫たちは村へとまっすぐ向かって来る。あるモノは城壁を乗り越え、あるモノは亀裂や穴をかいくぐる。
「でもやっぱり虫は虫ね。どう頑張っても虫の習性には逆らえないのよ」
村を囲む城壁の外でヘルヴォール・ルディア(ea0828)は篝火を焚いていた。真っ直ぐに村を目指していた筈の虫たちのうち、かなりの数がヘルヴォールの篝火に惹かれ、その進路を変えていく。
「悪いけど、ここで食い止めさせて貰うわよ」
光に向かって地を走る虫の頭を狙い、ヘルヴォールは武器を振る降ろす。
「なるほどね、こいつは効率がいいじゃないか。あたしも派手に暴れさせて貰うよ」
「どうぞお好きに!」
大振りの武器を振り回すシャルウィード・ハミルトン(eb5413)にヘルヴォールはチラッと笑みを浮かべて言う。
「悪いね。じゃ害虫駆除させてもらうよ」
シャルウィードも僅かに笑みを浮かべると、光へ集まる虫たちを押しつぶし、切り裂き、突き通す。
それでも虫の数は半端なく多い。燃える尖塔の光に吸い寄せられるかのように、数多くの虫どもが城壁へと走り、それを乗り越えようとしていた。
「僕にはわかるよ。僕にも飛ぶための羽があるからね。ここ! ここが弱点だよね」
アルフレッド・アーツ(ea2100)は濃い色の髪を揺らし、その髪と同じ色合いの羽を巧みに動かし城壁の上へと飛び上がる。そして狙いを外さずちょうど城壁のもっとも高い場所にいた虫の羽と羽の間に武器を突き刺した。引き抜くと体液を吹き上げながら虫は下へと落下していく。アルフレッドは空中で回転しつつ更に上空へと飛びあがりながら、目を凝らして虫の様子を確認する。落下した虫は背を下にしたまま力無く足をばたつかせたが、すぐに動かなくなった。
「次! 行くよ。力の限り、僕は村を守るんだ!」
アルフレッドはまたも城壁へと今度は急降下を敢行する。倒すべき虫の数はとてつもなく多いのだ。
城壁の下では漆黒の髪と同じ夜色の目をした戦士が武器を振るっていた。遠い炎にエグゼ・クエーサー(ea7191)の武器が閃くたび、カブトムシに似た大きな虫が1つか、2つ、ボトリと地面に落ちていく。
「‥‥っく」
不快な羽音が不意に耳元で大きく響いた。考えるよりも早く身体が動いた。一瞬前までエグゼが居た場所を巨大な虫たちが3匹揃って突進してきていた。髪の先、そして袖の一部が切り裂かれる。それでもエグゼの闘志は消えることはない。
「俺に傷をつけるとは‥‥虫どもにしてはよくやった。だが、2度目はないぞ!」
視界はどこもかしこも虫だらけだ。気力が衰えたらやられてしまう。
「怪我してはる人はおへんか? ってキミ、腕から血ぃが出てるやないか」
クレー・ブラト(ea6282)は怪我をおして戦うエグゼに気が付いた。
「俺は平気だ。他を‥‥」
向かってくる虫を叩きつぶしつつ、クレーへと声を向ける。
「他には他のモンが行ってる筈や。心配せんとほら、もそっとこっちへ」
「‥‥わかった」
獰猛な虫どもは今や明らかにエグゼの怪我をした腕を狙っていることが明らかだ。人の血肉に惹かれるとはなんと呪われた虫どもなのか。いよいよもって村へ入れるわけにはいかない存在だ。クレーの伸びた指の先がエグゼに触れる。すっと痛みが退いていった。
「攻撃こそは最大の防御! 村への被害を最小限に食い止めるには1匹でも多く虫どもを屠る事と判じた」
武器を手にキサラ・ブレンファード(ea5796)は押し寄せる虫どもへと真っ先に駆ける。象牙色の肌にかかる赤い髪は情熱の炎そのままに燃えさかる。キサラが駆け抜ける先々で虫どもが幾匹も切られ、潰され、引き裂かれていく。その光景は怯え逃げまどう村人達を勇気づけ、同じく村を守らんとする冒険者達の指標ともなる。
「美しき炎の乙女か。よし! 俺はあの女に賭ける」
ごく簡単にそう心に決めると、ウリエル・セグンド(ea1662)は目の前を駆け去っていったキサラの後を追う。とにもかくにも敵の数が多すぎる。少しでも減らさなくてはどうにもならない。
「虫ども! これ以上先へは行かせない!」
手も足も使い、ウリエルは手当たり次第に虫を潰していった。海を行く船が灯台の光を求めるように、ウリエルの目の端にはいつもキサラの鮮やかな髪が映っていた。
「これ以上先には‥‥進ませない!」
虫の複眼や節を狙い利賀桐 まくる(ea5297)は攻撃を仕掛ける。狙いすまして繰り出される攻撃は撃てば必ず虫が転がるが、後から後から虫は同胞の骸を越えやってくる。
「数が多すぎるわよ! これじゃキリがないわ」
あまり上すぎる場所は見ない様留意しながら李 美鳳(ea8935)は城壁の亀裂から這い寄ってくる虫を正確に仕留めていく。武器が虫の体液でドロドロになってしまっても、まだ亀裂から虫が不気味な顔を覗かせる。
「みんな! ちょっと数は多いけど敵は弱いよ!」
小柄だが、しなやかな筋肉を持つジャンヌ・バルザック(eb3346)は大斧を振り上げ、力任せに虫の殻をうち破り潰していく。
1匹、また1匹と虫は冒険者達によって倒れされるが、それでも虫の行軍は止まらない。この悪夢の様な夜はどこまでも再現なく続くのか。少しずつ皆の心に暗い影が落ち始めた頃、尖塔の火が消えた。すると炎の昼間の様に明るい光に惹かれていた巨大虫の行軍が途切れ始める。
東の空が白み始める頃、冒険者達はようやく武器を降ろした。リブラ村は壊滅を免れた。 (by深紅蒼MS)
|