鐘の音が何処からともなく、聞こえてくる。
 恐らくは、この城に備えられている教会の鐘堂からだろう。
 シュヴァルツ城――黒き城との名に相応しく、荘厳な構えを見せている重厚な城壁の上に、人影が見える。
「来るか‥‥」
 冷たさを含んだ風が、その者のマントをはためかせる。
 華美なマスクでその素顔を隠した人物の名は――怪盗ファンタスティック・マスカレード。





 神聖暦1000年の春。海を渡って現れた一人の怪盗「ファンタスティック・マスカレード」
 彼の人物の訪れとともに、ノルマン王国に幾つもの悪意が姿をあらわにし始めました。
 王国の全域で囁かれる「悪魔」の存在。そして発見された聖遺物「聖櫃」。
 それらの悪意と希望が結実した、マント領領主ヴァン・カルロスの反乱。
 敵味方も、その先もわからない戦いが、王国に吹き荒れ始めました‥‥。


■聖櫃とは?

 『聖櫃』とは、神との契約を書き記した石版を収めるために作られたとされる伝説の箱です。神との契約が何を示しているのかは不明ですが、その力は世界を揺るがすことができると伝えられています。
 その真偽は不明ですが、パリに近いマントの地下には聖櫃が眠っているという伝説がありました。それを手に入れるため、ヴァン・カルロスなる人物が神聖暦1000年の春、反乱を起こしています。
 ブランシュ騎士団に回収された聖櫃は、銀を箔押しした、宝石と白金で装飾された金製の箱で、封印と保存の魔法がかけられていました。また、現在では使われていない文字のようなものが、表面には刻まれているようです。
 現在はブランシュ騎士団の管轄の下、調査が進められていますが、その進展は公にされていません。


■ブランシュ騎士団

 純白の鎧とマントをトレードマークとした、ノルマン王国に忠義を誓う騎士たちです。
 多くは10年ほど前のノルマン復興戦争において功を立てたものたちであり、東洋の武術や日本刀などの技術を備えた、実力ある騎士団として名をはせています。
 現在の団長はヨシュアス・レイン。その下にギュスターヴ・オーレリー以下6名の分隊長とそれに従う騎士たちが所属しており、彼らはノルマン王国のため日夜奔走しています。


■怪盗と花嫁

−パリ郊外マント領−

   事の発端は、突如舞い込んだ花嫁誘拐の予告状でした。
 マント領領主代理ヴァン・カルロス伯爵のもとに届けられたその予告状は、彼の花嫁となる前領主の娘、クラリッサ・ノイエンを誘拐するという内容でした。そして差出人は、一時隣国イギリス王国を騒がせた怪盗「ファンタスティック・マスカレード」。
 伯爵はこの事態に、冒険者ギルドに依頼し、花嫁の護衛を要請することを選択します。
 黒い噂が絶えない伯爵とマント領の実態に疑問を抱いた、冒険者ギルドマスターのフロランス・シュトルームは、秘密裏の調査を行なう目的もあわせ、護衛の依頼を引き受け、冒険者たちを派遣することとなりました。

 紆余曲折の末、冒険者たちは花嫁の護衛に成功し、怪盗とその仲間を退散させる事ができました。
 しかしその一方では、伯爵に従うデビルが出現したとの報告もあり、伯爵の黒い噂の信憑性はいや増すばかりでした。  


■カルロスの反乱

−パリ郊外・シュヴァルツ城−

   護衛依頼の直後、冒険者ギルドが次の行動に移るより早く、事態は急転します。怪盗がカルロス伯爵の策により、マントの街に幽閉されたとの報が、怪盗の仲間によりもたらされたのです。
 この事態に冒険者ギルドは怪盗の救出を決定。数十名の冒険者たちを送って、マントの街の秘密と伯爵の陰謀を探り出そうとします。
 街中で行なわれた陽動作戦が功を奏し、デビルや伯爵の家臣たちの妨害にあいながらも怪盗の救出は成功。そして同時に行われた調査により、マント領の地下に眠る遺跡と聖遺物‥‥聖櫃の実在が明らかにされました。

 しかしカルロス伯爵はすでに次の行動に移っていました。
 パリ郊外にあるシュヴァルツ城に向かい、オーガやアンデッド、デビルを含む軍勢をもって、パリに侵攻を開始したのです。
 突然の動きに対応し切れなかった騎士団に代わり、初動の早かった冒険者ギルドは有志を募って対抗。
 パリ郊外での3日に渡る戦いの後、敵を撃滅し、勝利を手にすることになります。

 そして戦いの中、クラリッサは無事救出され、カルロス伯爵もその命を奪われたとされていました‥‥。


■悪の台頭

−パリ郊外、現在−

 カルロス伯爵の反乱から約半年。再びパリに戦乱の気配が忍び寄っています。

 パリ周辺では、次々と集まるオーガの姿が確認されており、冒険者ギルドは各個、その退治を行なっています。その数はかなりのものですが、それでも多数のオーガたちが集結を開始しているとの話もあります。
 アンデッドは伯爵の反乱以後、姿を完全に消すことはなかったようでです。それ以外にも、組織だって不死者たちを操っている存在がいると推測されています。
 そして、つい最近、死んだはずのカルロス伯爵がデビルとともにその姿を現したとの報告も入っています。
 彼ら悪の存在の台頭に、ブランシュ騎士団は冒険者ギルドをはじめとする民間団体と連絡し、対抗策を練っているとのことです。

 そんな悪の勢力が狙いを定めたのは、秘密裏に聖櫃が運び込まれたとの噂のあるシュヴァルツ城でした‥‥。



   
反逆の徒
ヴァン・カルロス(ez0084)
[人間?・男・45才]

 元マント領領主代理。爵位は伯爵。前領主の娘クラリッサとの婚姻を進め、マント領を治めていた人物でもあります。
 しかしその領主としての裏側は非常に利己的な人物であり、遺跡の出土品や工芸品をはじめとして闇の世界に影響力を持ち、そうして集めた資金で、力を手に入れるために悪魔と結んでいました。実際にその契約はかなり進んでおり、春の反乱のおり直接戦った冒険者からは、悪魔の力の一端を使用していた、との報告もあります。
 春の反乱の際、死亡(正確には行方不明)したとされていましたが、最近、悪魔とともに現れたカルロスの姿が目撃されており、今回の異変の首謀者であることは間違いないとされています。
ブランシュ騎士団分隊長
ギュスターヴ・オーレリー
(ez0128)
[エルフ・男・150]

 ブランシュ騎士団の分隊長の一人で、最も古株の騎士でもあります。礼儀正しいノルマン騎士ではあり、騎士団のお目付け役と目されている人物です。
 ノルマン王国と国王ウィリアム3世にもっとも有益になるように行動していますが、年の功とその性格から、時折、騎士団と対立するような独断行動を起こすこともあります。
パリ冒険者ギルドマスター
フロランス・シュトルーム(ez0036)
[人間・女・33才]

 パリの冒険者ギルドを一手に引き受ける女性です。その手腕や情報網は一目置かれており、政治的な問題でもにこやかに対処することができるといわれています。
 今回の一連の、カルロスと怪盗に関わる事件でも、何か別の情報を得て騎士団と協力しているとの噂もあり、前回の反乱、今回の救援作戦と、冒険者ギルドを円滑に動かすことに成功しています。
 
ノルマン王国国王
ウィリアム3世(ez0012)
[人間・男・20才]

 ノルマン王国建国者ウィリアム1世の孫にあたる、ノルマン王国の若き国王。
 復興戦争後の王国復興直後はお飾りの国王であると囁かれていましたが、成長につれて政治・剣技に如何なく才能を発揮し、ブランシュ騎士団とともに民衆が豊かに暮らせるよう、尽力しています。
 幼い頃から心臓が弱く、長くはないと言われていますが、そのようなそぶりも見せず、ノルマンのためにと力を傾けています。
マント領領主
クラリッサ・ノイエン(ez0083)
[人間・女・17才]

 前マント領領主バッハルートの娘で、現在マント領の領主を務めている女性です。
 カルロス伯爵の策謀により、悪魔への生贄に捧げられるところでしたが、冒険者たちの活躍により救出されました。その後、継ぐものがいないマントの街の領主位を継ぎ、カルロスに荒らされた街の復興のために力を尽くしています。現在ではカルロスに独占されていたベルト工芸品を広めるためにはどうすればよいか、と知恵を絞っています。
 今回のカルロス再来の報と、その目的がマントより持ち出された聖櫃であるとの知らせを受けて、冒険者ギルドに協力を求めています。