フレデリック・ホワイトez0050
 みんな、対抗戦の結果はどうだった? 全力は出し切れた?
 競技の結果は次の通りになっているよ。みんな、がんばってるね。
 優勝したのはどこのチームだろう‥‥?



★総合得点
592点  247点 381点  290点


★インテリジェンスランナー:開催場所『グランド』

1位 スプリングチーム 完走者14人(31人) 得点:47
2位 オータムチーム 完走者 9人(26人) 得点:22
3位 ウィンターチーム 完走者 8人(20人) 得点:20
4位 サマーチーム 完走者 6人(19人) 得点: 2

 インテリジェンスランナーでは、借りてくるものを探し出す問題が明暗を分けました。
 結果、学問を得意とするメンバーが集まったスプリングチームが勝利をおさめました。
 最優秀選手には、一瞬の差で問題を解いたアルカード・ガイスト ea1135)が選ばれました。

★優秀選手

アルカード・ガイストea1135)
クライフ・デニーロea1085)
ファラ・ルシェイメアea4112)
エルンスト・ヴェディゲン ea8785)
セルゲイ・サルガノフeb1211)
東間 宮古eb2120)


アルカード・ガイスト(ea1135)
★コンビネーションエクササイズ:開催場所『理の門』

1位 スプリングチーム 9.28(14人) 得点:48
2位 オータムチーム 7.80(9人) 得点:26
3位 サマーチーム 7.26(9人) 得点:14
4位 ウィンターチーム 5.54(11人) 得点: 11

 コンビネーションエクササイズでは、各人の身体能力とチームワークが試されました。
 最終的な結果として、効果的にチームメンバーを引き立たせたスプリングチームが優勝となっています。
 最優秀選手にはスプリングチームで美しいポーズを見せたコーカサス・ミニムスea3227)が選ばれました。

★優秀選手

コーカサス・ミニムスea3227)
ターム・エリックea6818)
フィノ・アンテニィeb0074)
シルキー・マリアンルージュeb3566)


コーカサス・ミニムス (ea3227)
★キャバルリーファイト:開催場所『グランド』

1位 オータムチーム 12本(19人) 得点:43
2位 ウィンターチーム 10本(16人) 得点:33
3位 スプリングチーム 9本(19人) 得点:15
4位 サマーチーム 5本(16人) 得点: 1

 キャバルリーファイトでは人馬役それぞれの連携と、戦略的な冴えが問われました。
 最終的にはオータムチームが連携でやや勝り、トップに立っています。

★優秀選手

フリーシャ・ヘイゼルeb0945)
エア・クラナドea0533)
マカール・レオーノフea8870)
テスタメント・ヘイリグケイトeb1935)
シルヴィア・エインズワースeb2479)
クラウ・ソラスeb3228)
三久間 菜月eb3655)

フリーシャ・ヘイゼル(eb0945)
★サーチアンドアンブッシュ:開催場所『迷いの森』

1位 スプリングチーム 20本(26人) 得点:51
2位 ウィンターチーム 15本(29人) 得点:31
3位 サマーチーム 12本(29人) 得点:11
4位 オータムチーム 10本(18人) 得点: 2

 サーチアンドアンブッシュには各チームから多数の選手が参加し、森の中で激戦が繰り広げられました。
 結果、奪った鉢巻の数が大台の20に乗ったスプリングチームが優勝となっています。
 最優秀選手にはその身軽さを生かして果敢に4本のはちまきを奪った楼 風空ea1717)が選ばれています。

★優秀選手

楼 風空ea1717)
ヴァラス・ロフキシモea2538)
ポーシャ・ロッシュea3606)
イーグレット・ウァールウィンドea7362)
ル・ルブea9812)
リノルディア・カインハーツeb0862)


楼 風空(ea1717)
★チーム対抗リレー:開催場所『ケンブリッジ外周』

1位 スプリングチーム 11周(62人) 得点:80
2位 サマーチーム 10周(48人) 得点:50
3位 ウィンターチーム 9周(51人) 得点:30
4位 オータムチーム 8周(48人) 得点: 0

 各チームの2/3が参加した総力戦であるチーム対抗リレーは、非常に接戦となりました。それぞれのチームは概ね正々堂々と、自分たちのリレーを確実に成功させることに意識を注いでいました。
 その中で個々の能力とチームワークの差が少し勝り、スプリングチームが1週多く回って優勝となりました。
 優秀選手としては、その脚力を生かした月 白兎eb1017)と永連 零ea7443)が選ばれています。

★優秀選手

月 白兎eb1017)
風月 皇鬼ea0023)
永連 零ea7443)
東間 宮古eb2120)
フィーネ・オレアリスeb3529)

月 白兎(eb1017)

★チーム対抗リレーリプレイ


  快晴の青空の中、賑やかなハロウィンもついに最終競技『チーム対抗リレー』を残すのみとなりました! この競技の結果で、全てが決まります。長かったチーム同士の競い合いもこれが最後だ!
  さて、スタート地点の『理の門』には多くのギャラリーが詰めかけて、始まりをいまかいまかと待ち受けています。おっと、あそこにおみえになっているのは、特別招待客の妖精王国の王様と女王様だ! お二人も楽しみといった感じで見ていらっしゃるようです!
  さぁ、ようやく準備も整った模様。待ちに待った、最後の戦いの火蓋が切って落とされる!
「いちについて、よーい、スタート!」
  各チーム一斉にスタート! ついに始まりました、『チーム対抗リレー』。ギャラリーから、大きな歓声が上がります。
「うおおお! どけどけぃ!」
  おおっと! いきなり雄たけびを上げての猛ダッシュはスプリングチーム風月皇鬼(ea0023)だ! ジャイアントの体格を活かした大股走法で、他チームから一歩抜きんでる!
「逃がしません!」
  それを追いかけるのはサマーチームのイェーガー・ラタイン(ea6382)! 風月の勢いに負けない走りで、その後ろを追走している! そのまま、二人は平坦な道を駆け抜けていく。他チームも懸命に彼らを追いかけますが、なかなかこれに追いつくことはできないようだ!
  しかし、競技は始まったばかり。これからいったいどのような展開になっていくのでしょうか! 皆の健闘を祈りつつ次のチェックポイントへ向かいましょう。

 第1チェックポイント、ケンブリッジ東の森前です。ここで次の走者へとバトンを渡し、森を抜けて次のチェックポイントへと向かいます。鬱蒼と茂った木々が走者の行く手を阻み、暗いので足元にも気をつけなければいけません。
  さて、どうやら走者が向かってきたようです。
「任せておいて! 疾走の術!」
  バトンを受け取ったスプリングチーム蔵王美影(ea1000)。準備しておいた術で森の中を駆け抜けます! これは早い! この競技では付与系の魔法がOKとなっておりますので、これは反則ではありません!
「めざせはだしの女王!!」
  追いかけるサマーチームのフィーネ・オレアリス(eb3529)は‥‥なんと、裸足の女性です! しかし、森の中を裸足で走るのはどうでしょうか、いささか心配です。
「あんた邪魔よ!」
「おぬしこそ、リレーの邪魔はさせん!」
  なにやら森の中が騒がしいですが、どうやら森の影に潜んでいたオータムチームのミリランシェル・ガブリエル(ea1782)と、護衛として馬で併走していたサマーチームの蔵馬沙紀(eb3747)が乱闘を始めた模様です! 妨害でもされそうだったのでしょうか?
  残り2チームも次の走者へとバトンを渡し、森へと入っていきました。では次のチェックポイントへと向かうことにします。

 第2チェックポイントは、森を抜けた先の北の林前です。この先は東の森ほど木は密生しておりませんが、山肌に近いため、いささか走りにくいようです。
「どいて! どいて!(キラーン!)」
  おおっと、ハプニング発生! ウィンターチームの朱華玉(ea4756)が、チェックポイントで待機していたサマーチームの選手を吹き飛ばした! 勢いあまっての行為か!?
  どうやら、いまのは事故として判断されたようです。一瞬目が光ったような気もしたが、気のせいでしょう。朱は何事も無かったかのように次の走者にバトンを渡したあと、吹き飛ばした選手を助け起こしている。
「走るの大好き! たっのしぃ! あはははは!!」
  隙をついてオータムチームのマルコ・エルイスト(ea6355)が、バトンを受け取り走っていく! 何故か、妙に楽しそうだ!
  そして、ようやく衝突のショックから立ち直ったサマーチームがそれを追いかけていく。というところで、次のチェックポイントへと向かいます。

 第3チェックポイントは、西の丘陵前です。もう少し西に行くと、急な崖もある少し危険な場所です。
  さぁ、向かってまいりましたのはスプリングチーム! と、その後ろからウィンターチームとオータムチームが追いかけてきております!
「無理すんじゃねぇ、あとは俺に任せておきな」
  トップを維持しようと無理をしたのか息絶え絶えの走者に声をかけて、スプリングチームのオラース・カノーヴァ(ea3486)がバトンを受け取りました!
「バトンは重いのね〜」
  おや? ウィンターチームのル・ルブ(ea9812)は受け取ったバトンに紐を巻きつけています。シフールにとっては、30cmのバトンは大きいため、落とさないための工夫でしょうか? っと、そのまま飛びたち‥‥ああ! 他のチームの選手にバトンをぶつけています! 紐はそのための物だったのか! あからさまな妨害ですが審判は気付いていません!
  さて、徐々に戦いもエスカレートしてきました! はたして、このあとどのような戦いが繰り広げられるのでしょうか!

 序盤も終わり、各チームもコースに慣れてきた模様です。さてここからは、中盤以降のレース展開を見てみましょう。
  序盤に続き、スプリングチームがトップを守り続けていますが、中盤以降は特に月白兎(eb1017)の活躍が大きかった!
「宅配で鍛えた遠距離走に任せて!」
  ルール上それぞれのチェックポイントを続けて走ることはできないが。なんと彼は、その強い持久力で4ヶ所のチェックポイント全てで参加し、スプリングチームのトップの維持に貢献しました。おかげで、スプリングチームの独走状態に入ります。
  一方、残りのチームは抜きつ抜かれつのデッドヒート。三つ巴の戦いは混迷を極めております。特に、サマーチームとオータムチームの戦いは激しいものがありました。
「ここは通さないわよ!」
「邪魔だ、どけ!」
  サマーチームのメリーアン・ゴールドルヴィ(eb2582)が走者の邪魔をしようとしたところを、オータムチームのレーヴェ・フェァリーレン(ea3519)が吹き飛ばすという一面もありました。審判の目の届かない場所では、どのような戦いがあるのか。まったく予断を許しません!
  そしてウィンターチームには、頼もしい先導者が現れました。シフールのリデト・ユリースト(ea5913)が、空からコースの指示をしてレースを有利に進めます。
「私がついている! がんばるのであ〜る!」
  彼の指示の元、他のチームの妨害を切り抜けて、トップのスプリングチームを追いかけるウィンターチーム!
  そんななか、微笑ましい場面もいくつかありました。
「はぁ、はぁ、ファラさんにだけは負けられません!」
「がんばるんだ、一緒に完走を目指そう」
「は、はい‥‥」
  サマーチームのミラファ・エリアス(ea1045)がバテている所に、ウィンターチームのファラ・ルシェイメア(ea4112)が駆け寄り、一緒に手をつないでコースを走ります。仲睦まじいカップルの姿に周囲のギャラリーからも祝福の声が聞こえます。
  また、サマーチームのグリフォン・フェザーライト(ea5056)は途中で転んで泣き出してしまった他チームの子供を背負って、一緒に完走したということもありました。勝ち負けにこだわらない、とても紳士的な態度です。
「さぁキミ、泣くんじゃないよ」
  レースでありながら、このようなチームの垣根を越えた行いに、感動を禁じえません。
  そうこうするうちにも、残り時間は少なくなってきました。ついにレースの終盤、クライマックスを迎えようとしております!

 さて、レースも終盤、徐々に日も暮れてまいりました。赤い夕日に照らされながら、この『理の門』前では多くのギャラリーが、最後の走者が現れるのを待っています。
  さぁ、皆が見守る中、最終走者が見えてまいりました! トップを走るのは‥‥スプリングチームの永連零(ea7443)だ! やはり強い、スプリングチーム! 終始レースをリードしてトップを独走だ!
「負けられない! 甘いお菓子は私のものですっ!」
「俺の決死の覚悟を見ろ!」
  っと、その後ろから追いかけてくるのはサマーチームの東間宮古(eb2120)! そしてウィンターチームの鳳令明(eb3759)が、何故か騎士学校のペナントを翻しながら飛んできている! オータムチームはまだ見えないか!
  そしてついに、多くのギャラリーに見守られながら永連が、ゴール地点である『理の門』をくぐります!
「ゴール! 優勝、スプリントチーム!」
「やったぁ! 私達勝ったよ!」
  ついにこの長い耐久レースにも終止符が打たれました! 一位はスプリントチーム! 序盤のリードを保ち続け、そのまま逃げ切りました! 大きな歓声があがり、チームの仲間達が永連のもとに集まります。最後まで手を抜かずに全力で走りきった永連にねぎらいの言葉をかけています。
  続いて向かってくるのはサマーチームとウィンターチーム。どちらも、一歩も引かない激しい戦いだ!
「お菓子〜!」
「くっ! さすがに‥‥」
  っと、ここでラストスパートをかける東間! それに対し、辛そうに失速する鳳! 遠距離走の技能の差か、はたまた抱えるように持つバトンのせいか、東間が前に出る!
  そしてそのままゴール! 2位はサマーチーム! ようやく激しい2位争いを制しました! 喜ぶ東間と、がっくり肩を落とす鳳。対照的な姿だが、どちらもがんばった!
  ようやくオータムチームの走者も姿を見せます。もちろん、この最後の走者にも惜しみない拍手が送られます。
  これで、ハロウィンの全競技が終了しました。参加者は、順位に関係なく各々の健闘を称えあい、力の限り戦ったことを誇りに思うでしょう! 皆さんにもう一度惜しみない拍手を!!

(担当:緑野まりも)

 ★ハロウィンデート
 
 「Trick or treat!!」
「ライラだったのか」
  理の門の前でライラ・フロイデンタール(ea6884)を待っていたアシュレー・コーディラン(ea6883)の後ろにいた魔女が突然声を掛けてきた。
「あまり驚いていませんか?」
「驚いたけど、ライラの可愛さに驚きが引っ込んだよ。その魔女の仮装、とても似合っているよ」
  そのあと、2人は露店の並ぶ市場へと繰り出した。今日はハロウィン当日、ハロウィン一色に染まった街へ繰り出す者も多かった。
「‥‥あら? アッシュ? アッシュ!?」
「俺はここだよ。ライラの驚く顔も可愛いね」
「もぅ、わざとはぐれたのですか!?」
  先程のお返しとばかりに、今度はアシュレーがわざと人混みの中をはぐれてライラの驚く顔を見る番となった。アシュレーを見付けると、ぽかぽかと胸を殴るライラに、彼は露店で買ったお菓子を差し出すのだった。
「人通りが多いから、俺がはぐれないようにな」
「は、はい、宜しくお願いします」
「‥‥一緒に歩くだけだから、そんなに畏まらなくてもいい」
  陸琢磨(eb3117)はディアナ・シャンティーネ(eb3412)の前を歩き、彼女が歩きやすいよう人混みを掻き分けていった。
「それをデートと言うのではないでしょうか?」
「手も握った事のないようなあの2人に決定ね」
  琢磨とディアナの後を歩いていたレナフィーナ・フリーア(ea8009)と鷹杜紗綾(eb0660)は頷き合うと、彼らを前後から挟むように展開した。
「ごめんなさい」
「そこの彼氏、悪いわね〜」
  レナフィーナは琢磨に、紗綾はディアナにわざとぶつかり、そのままそそくさと離れていった。
「大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫です‥‥が」
「はぐれないように手を繋いだ方がいいな」
  まだ手を握った事もないディアナだが、琢磨に手を握られつつ、抱き抱えられており、頬が紅く火照っていた。
  レナフィーナと紗綾の応援は、先ずは成功のようだ。

 ディアッカ・ディアボロス(ea5597)は妖精王国からハロウィンに迎賓として招かれた妖精王と女王の護衛を買って出ていた。
「悪戯をしている子供達は伸び伸びとしておるな」
「あなた、今は迎賓として来ているのですから」
  ディナ・シー達を束ねる王とはいえ、妖精王もディナ・シーには変わりなく、子供達の悪戯に加わりたい素振りを見せると女王が軽く窘めた。
「妖精王の笛はお返ししましたし、妖精王の石版は解読中ですので生徒会が保管しています。しかし、グランタのベルは‥‥」
  ディアッカが残念そうに告げる。グランタのベルは、何者かによって持ち去られてしまったのだ。
「あのベルにはグランタの掛けた特殊な石化の魔法を解除する力があるがのぉ」
「ただ、ゴクマゴクの丘の祭壇を破壊した以上、ゴクマゴクを蘇らせる事はできませんわ」
  妖精王と女王は、もうゴクマゴクが蘇る事はないとディアッカを安心させる。
「妖精王、女王、お腹が空きませんか? 美味しいお菓子を買ってきましょう」
  だが、妖精王の言葉に引っ掛かりを覚えたディアッカは、話題を変えるように露店へと向かった。

「お姉ちゃん、いつもケガを治してくれてありがとう」
  リナ・ファローダ(ea7233)はエイミー・ストリーム(ez0049)と一緒に街に繰り出していた。
  エイミーは対抗戦の為、治療棟に詰めていたが、リナに誘われて出てきたのだ。
  露店で買った焼きたてのお菓子を差し出しつつ、武闘大会での負傷を治してもらっているお礼を言うリナ。
「ありがとうございますわ。お礼に、2人で何か仮装をしましょうか?」
「うん! あたい、魔女がいいな!」
「魔女ですか‥‥リナでしたら可愛い魔女になりますわよ。衣装を貸して下さる露店があったはずですわ」
  リナとエイミーは手を繋いで仮装の衣装を貸してくれる露店へと向かった。

 大宗院透(ea0050)と大宗院亞莉子(ea8484)は、フリーウェルの校舎の屋根の上で、寄り添って夜空や街の明かりを見つめていた。
  街のあちこちに焚かれた篝火や、人々の持つランタンや松明の灯りが夜のケンブリッジを照らし、闇の中に朧気ながら浮かび上がる街はいつもと違って幻想的に見えた。
「‥‥寒くない‥‥ですか?」
「透と一緒だから寒くないしぃ。っていうかぁ、今の私、透の愛でぽかぽかってカンジぃ」
  夫婦水入らずの中、今まで無言だった透が声を掛けてくると、亞莉子は彼に身体を預けて微笑んだ。
「‥‥亞莉子と一緒でも、私の財布はいつも寒いです‥‥」
「あはは、透の駄洒落は最高だしぃ」
(「寒(さぶ)」)
  透の駄洒落に吹き出す亞莉子。2人に甘い雰囲気を提供しようと悪戯を仕掛ける寸前だった紗綾は、心の中で呟いていた。もちろん、毒気を抜かれたのは言うまでもなかった。

「ユーシス、元気出してよ。ユーシスの女装、凄く素敵だったよ!」
「‥‥女装を素敵って言われても‥‥」
  せっかくの2人きりのデートなのに、システィーナ・ヴィント(ea7435)が腕を絡めるユーシス・オルセット(ea9937)は先程から溜息ばかり。システィーナに女装させられて落ち込んでいるのだが、元凶の彼女に慰められ、しかも「素敵」と言われるのは普段から女性と間違えられる彼にとって、複雑な気分だ。
「もう、仕方ないなぁ」
  システィーナは辺りを見回して人がいない事を確認すると、少しだけ爪先立ちになってユーシスの頬にキスをした。突然の事に思わず頬を押さえるユーシス。
「‥‥シ、システィーナ!?」
「さぁ、パイが冷めないうちに2人っきりでお茶にしよう! ユーシスの為に焼いた、とっても甘いリンゴパイと紅茶だよ!」
「‥‥ありがとう、戴くよ」
  バスケットを胸の前で掲げるシスティーナに、ユーシスも微笑んだ。
(「せっかく2人っきりなのに、言葉が出ないよ」)
  ユーシス達の横を通り過ぎたミカエル・クライム(ea4675)は、義兄ルシフェル・クライム(ea0673)を誘ってハロウィンを見て回っていた。しかし、勇気を出して誘ったにも関わらず、ミカエルは先程から一言も言葉が出なかった。
「戦いの連続だったから、こういう雰囲気もいいな。誘って‥‥どうした、疲れたか?」
「うぅん、そんな事ないよ。そうだ、一緒に行って欲しい所があるの」
  露店を楽しそうに見ていたルシフェルは、無口な義妹を気遣うが、ミカエルは何とか微笑んで誤魔化した。

「いたか!?」
「いえ、こちらにはいませんでした」
「見失ったか‥‥」
  ジェファーソン・マクレイン(ea3709)とシルヴィア・クロスロード(eb3671)が、慌ただしく通り過ぎてゆく。2人はハロウィンにも関わらず、完全武装の出で立ちをしていた。
「あの、ル・フェイ様を見掛けませんでしたか?」
  そこへ和泉綾女(ea9111)が声を掛けた。ル・フェイ(ez0130)は競技中はサマーチームの応援席にいるのだが、時折、姿が見えなくなる事があるのだ。
  疑問に思った綾女が聞いたところ、『花を摘みに行っている』らしいのだが。
「競技終了時にサマーチームの皆様に労いのお言葉を掛けて戴きたいのですが、先程から姿が見えないのです」
「私達もル・フェイ嬢を探しているのですけど、見失ってしまったのです」
  シルヴィアとジェファーソンが2人掛かりで監視していたにも関わらず、ル・フェイを見失ってしまっていた。
  彼女をマジカルシードの校舎近くで見たという情報があるのだが、生徒や講師でない綾女達では理由もなく校舎に入る事は出来なかった。

「マジカルシードの8階から最上階はミステリーに包まれていて、生徒の間では色々な噂が飛び交っているんだよ。例えば『秘密の部屋』とか‥‥って、きゃぁぁぁぁぁ!」
  その頃、ミカエルはルシフェルとマジカルシードの9階に足を踏み入れていた。噂の『秘密の部屋』をルシフェルと一緒に見ようと思ったのだが、暗がりの中、渦中の部屋の扉が開き、その音に悲鳴を上げて兄に抱きついた。
  ルシフェルは反射的にミカエルを庇いつつ身構えるが‥‥装備を置いてきてしまった事に気づく。
「な、なんじゃ、ミカエルではないか。こんな所でデートか?」
  扉から出てきたのはル・フェイだった。隣には女性を伴っていた。
「この辺りが隠れスポットだと聞いてな。そういう貴殿達は?」
「まぁ、お主達と同じようなものじゃ。儂の場合、見ての通り女の子(おなご)とだがな」
  ルシフェルの質問に肩を竦めるル・フェイ。しかし彼は、ル・フェイとその隣にいる冠に似た帽子のようなものを被った女性が立ち去るまで、得も知れないプレッシャーに緊張を解く事が出来なかった。

「今日は楽しかったです」
「私もです」
  アディアール・アド(ea8737)とソフィア・ファーリーフ(ea3972)はエールの入ったジョッキをお互い傾けていた。
  アディアールはハロウィンが終わった後、旅立つという。露店を見て回り、子供達からお菓子をねだられ、一緒に仮装をし‥‥その最後の1日をソフィアと共に過ごしてきたのだ。
「どんなに遠く離れようと、今、この共に過ごす時間を忘れません」
  アディアールに身体を預け、彼の肩に頭をちょこんと寄せるソフィア。
(「お節介かもしれませんが、このくらいいいですよね」)
「え!?」
  その時、アディアールとソフィアの顔が軽く動き、2人は軽く唇を重ね合わせていた。2人を尾行していたシャルディ・ラズネルグ(eb0299)が少しだけ気を利かせたのだ。
  本当に忘れられない時間になったのはいうまでもなかった。


(担当:菊池五郎)


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キャメロットへ入る ケンブリッジに入る