★応援合戦リプレイ
ケンブリッジの大通りでは今、各チームによる応援合戦が繰り広げられており、只でさえハロウィンで人通りが多い中、更に拍車を掛けては人で賑わらせていた。
「これは‥‥凄いものだな」
その光景を前に十河小次郎(ez1039)は初めて目の当たりにする西洋の祭に驚くばかり。
とは言え、驚いているのは彼ばかりではなくケンブリッジに住まう人々もそうであれば、妖精王国からわざわざやって来た妖精王と妖精女王も特別競技をこの光景を見ては、驚いていたりする。
まぁ応援に参加している者達がヒートアップしているだけに、雰囲気からそう感じるのは当然と言えば当然の反応だろう。
「秋組、必勝!!!」
そんな事でボーっと応援合戦に魅入る小次郎だったが、その耳に飛び込んで来たのはサラン・ヘリオドール(eb2357)の気合が篭った檄。
慌ててその方を見やれば彼女、先端に火を点した棒を持っては器用に回して激しく舞い踊っていた‥‥そしてサランの回りにいる者達も同様で、オータムチームはどうやら踊りを中心に応援に臨んでいる様子。
「確かに、目は引くなぁ」
ただ難点を挙げるとすれば、舞はそれぞれ個々が得意とするもので統一感がないのが少しだけ気になった‥‥言うなれば、踊りの無法地帯とも言える。
だがそれでも目立つのは自然の成り行き、その傍らに集うウィンターチームが人数少なく且つ、声に歌と仮装だけで他のチームに挑んでいたからだろう。
「く‥‥俺達も負けてはいられない!」
「この声が皆へ届きます様、皆の声が多くの人へ響きます様に‥‥」
しかし騎士であるライノセラス・バートン(ea0582)が愛馬に跨り叫べば、それにレテ・ルシェイメア(ea7234)が竪琴を爪弾き応え、魔力の篭った曲を奏で冬の一陣を紡ぐ言の葉とは逆に明るい曲で鼓舞する。
「これは中々に」
至って無難な応援手段で纏めているものの連携は何処よりも群を抜いて非常に良く、見守る人々の誰しもが好印象を抱いているのは間違いなく小次郎もまた感心する‥‥が
「何で‥‥僕がこんな」
その中で異質であるが故に目を引いたのが、何故か一人だけ女装に化粧まで施し吸血鬼をイメージしたふりふり衣装に身を包み、舞を披露するショウゴ・クレナイ(ea8247)。
「くっ、憐れ!」
顔を真っ赤にしながらも彼の奮戦に周囲から忍び笑いが漏れるが、小次郎は同情の涙を流しつつその思いを振り切るとまた別のチーム‥‥今度はサマーチームの動きを見やる為、頭を巡らせた。
「‥‥怖いぞ」
そして呟く彼の目に映った光景は仮装しているのは何処のチームでも見受けられるが、シャルディ・ラズネルグ(eb0299)を筆頭に右へ左へゆらりゆらりと動いては、全員が全員揃ってランタンを動かしている様は‥‥日中とは言え、少し背筋が寒くなる。
「皆、負けるなー! 全ては勝利に為に〜!」
だがその一団の後方、リトルフライで宙に浮いては風に靡き舞う『勝利』と記された垂れ幕を掲げ、いつの間に確保したのか大量の木の葉を舞い散らせる風のウィザード、キルト・マーガッヅ(eb1118)の声が響けばやはり真剣に応援しているのだと言う熱意が伝わって来て、小次郎は安堵する。
「あっ、あー‥‥落ちてしまいましたわ」
直後、誤って垂れ幕を落下させる彼女によってもたらされた混乱は見ない事にして
「頑張れ〜、頑張れ〜、力の限りっ、魂を燃やし尽くせー!」
(「‥‥まだ後一日あるのだから、今ここで魂を燃やし尽くされると困るのだが」)
小次郎自身がサポートするスプリングチームのいる方から響いて来るクリノ・ヒューマイト(ea7434)の声援に振り返り、内心でだけ思ったその時‥‥不意に爆発音が大通りの中空に鳴り響いた。
「‥‥おーい、変な所に打ち込むなよ」
「分かっていますよ、小次郎さん」
それを放った主がフォーリス・スタング(ea0333)である事に気付いた小次郎、今更なのでこっそり小声で釘を刺しておけば、発破によって巻き起こる煙の中から何故か現れたのはフィーナ・ウィンスレット(ea5556)で、その装いに小次郎思わず呟いた。
「‥‥魔女?」
フライングブルームを駆りながら妖艶な邪笑を見物客へ振り撒く彼女の姿は正しく、小次郎の言う通り魔女に見えてしょうがなく人々の反応も様々ではあったが他にはない独特な雰囲気に受けは良かった。
「ふふふ、皆さん頑張って下さいね。女装好きな小次郎先生の為にも‥‥」
「‥‥むぎゃー!」
その折、自軍を応援しながらもとんでもない事を言う魔女に対し、彼は手近にある植木鉢を引っ掴み、彼女目掛け放るのだった。
そして魔女の高笑いが響く中で応援合戦は色々ありながらも盛況の内に終わる‥‥と思いきや、実はまだ幕は下りていなかった。
その翌日‥‥ネフィリム・フィルス(eb3503)は何故か一人で未だ、旗を振ってはオータムチームの為に応援を続けていた。
誰かしら止めたのだろうが、巨人の彼女は聞く耳持たずに今まで不眠不休で応援を継続していたらしい。
「応援合戦は終わったぞ、次の競技も控えているからいい加減休め」
「押忍」
その話を聞いて小次郎の制止にやって来ては彼女を諭すとネフィリム、十時間以上続けただろう旗を振るだけの静かな応援を止め‥‥そして此処に応援合戦は幕を下ろした。
「まだ全然、いけたんだけどな」
だがそれでも彼女は平然とそれだけ言ってのけるのだった‥‥タフである。
(担当:蘇芳防斗) |